魔王〜明けの明星〜

黒神譚

文字の大きさ
15 / 102
第2章 新国家「エデン」

第15話 着せ替え人形

しおりを挟む
 「ほ、本当にこんなドレスに着替えるのですかっ!?」
 
 明けの明星様の指示により、わたくしが他国の殿方をたぶらかしてお金を融資させるというゴミみたいな作戦が進行中です。今は、その殿方を誘惑するためのドレスを選別するための衣装替えを行っています。
 衣装には数十着の候補がありますので、魔神ギーン・ギーン・ラー様も協力してくださって二人でドレスルームで着替えを行い、そのあとに明けの明星様の前でお披露目をするという流れなのですが・・・。困ったことに明けの明星様が特別にデザインされたドレスはどれもこれも破廉恥はれんち極まりないほどに露出ろしゅつが多いドレスばかり・・・。これにはさすがの魔神ギーン・ギーン・ラー様も困惑されるばかり。

「本当に異界の女性はこのような布切れ一枚だけの・・・ビキニとか言う衣装を着て、日常生活なされておられるのでしょうか? 
 ね、ねぇ。ラーマ・・・。私達、旦那様に騙されてはいませんか?」
 
 と、滅多なことで明けの明星様を疑わない魔神ギーン・ギーン・ラー様ですら泣き言が出てしまうほど、露出の多い衣装ばかり着させられているのでした。
 当然、この試着にはドレスルームにもお披露目の場にも男性は締め出されており、明けの明星様以外は全員、女性という環境ではあるのですが、それでも恥ずかしさを覚えずにはいられないほど、破廉恥な衣装ばかりです。
 異界と違い、私たちの世界の淑女は足首よりも上は出さないものなのです。それなのに信じられないことに異界の女学生は下着スレスレの高さまでの丈しかないスカートをはくのだとか。

「アホたれっ!! ラーマっ!! お前、600年も生きとって何を恥ずかしがっとんじゃっ!!
 地球やったら15~6歳のJKが校則破ってまでスカートの丈を短くするんやぞっ!!」

「ええ~・・・。」

「しかも、おのれで丈を短くしたくせに、階段上り下りの時には下着が見えないか心配するねん。」

「アホたれじゃないですか。」

「違うっ!! それがええねん。突っ張ってみても恥じらいが残っとるのが男にはええねんっ!」

「先ほどは恥ずかしがるなって仰っておられましたが矛盾しておられませんか?」

「あああっ!! もううるさいわーいっ!
 それでのーても、こっちはスラックス導入に腹立っとんねん。黙ってセーラー服に着替えんかーいっ!!」

 と、こんな頓珍漢とんちんかんな問答を繰り返してきたのですが、さすがにこれはいけません。
 え~と・・・。ビキニでしたっけ?
 なんなんですか? これは・・・。異界の女性は頭おかしいんですか?・・・。
 それでも着替えないと怒り出すから仕方ありません。私と魔神ギーン・ギーン・ラー様はそれぞれ赤と白のビキニに着替えました。

「おおっ!! 二人とも着替えたかっ!!」

「「うう~っ・・・。は、はい。」」

 私と魔神ギーン・ギーン・ラー様は、気恥ずかしさから思わず、恨みがましい目で魔王様を見るのですが、魔王様ときたら、さして気に留めるそぶりも見せずに私たちの着替えた姿を舐めまわすようにご覧になっておられます。どうやらよほどお気に召されたのか、黒ヘビがずっとお元気なママなのです・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・ええ、そうですわよ?
 あいかわらず全裸のままです。この御仁は。

「わ、私たちよりも魔王様の方がお着替えあそばされた方がよろしいのではありませんか?」

 と、私が忠告すると「おいおい。どこ見とんねんみているの、エッチやのぅ」と、あおられるのが関の山。私と魔神ギーン・ギーン・ラー様はただ、耐えるしかないのです。

「ふむふむ。ええで、銀の髪のギーン・ギーン・ラーには白いビキニが似合うし、ピンクのラーマには赤のビキニがう合うとる
 しかもお前らアホみたいにデカい乳しとるさかいにしているのでビキニがよう似合うわ。」
※関西で「アホみたいに○○」とは、馬鹿げているほど常識外れ。つまり物凄いという意味。信じられないかもしれませんが「アホみたいに賢い」という言葉が通用します。

「・・・で? どないや? ビキニ着た感想は?」


 ・・・・・・(旦那様は、これでも女をめておられるおつもりなのでしょうか?)
 魔神ギーン・ギーン・ラー様がそんな苛立ちを覚えていそうな目でジッと私を見つめるものですから、私、もうおかしくって。つい、いたずらっぽい目くばせを魔神ギーン・ギーン・ラー様にお返してから、二人で息を合わせてご返答申し上げました。
 
「頭おかしいんじゃないですか?」
「頭おかしいんじゃないですか?」

「はっはっはっは。
 ようし、お前らきさきと側室じゃなかったら、ぶっ殺しとるからなぁ~?
 ・・・まぁ、ええ。」
「お前ら、ちょっとその場でジャンプしてみろ。」

 突然のジャンプ要請ようせい
 私と魔神ギーン・ギーン・ラー様が思わずキョトンとして「は、はい? ジャンプでございますか?」と聞き返すほど脈絡のないジャンプ要請でした。
 しかも、魔王様はただジャンプするのではだめだと仰る始末。

「ああ。でも、ただ飛ぶだけやったらあかんで?
 ほれ、こうやってな。両手で動物の耳の形を模した姿をとって、こんな風に腰を左右に振りながら飛ぶんや。」

 といって、ゴミみたいなダンスをご披露頂けたのですが・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・揺れてますっ!! もう、ビッタンビッタンと魔王様の逞しい黒ヘビ・・・が魔王様が飛ぶのに合わせて暴れまくっておられます。

「きゃあああっ!! きゃあっ!! きゃあああっ~っ!!」
 
 いやあああんッ!! 破廉恥ですっ!! こんなの破廉恥すぎますわ~~っ!!
 私はもう、目のやり場に困りながら、言葉にならない思いを込めて「きゃあ、きゃあ」と奇声を上げるばかり。
 対して魔神ギーン・ギーン・ラー様は、大喜びです。
「きゃああんっ!! だ、旦那様っ!! す、ステキですっ!!
 今夜も私が泣いてお許しをうまで可愛がってくださいましっ!!」

「アホたれっ!! お前ら二人して何をガン見しとるんじゃっ!!
 そんなことどうでもええから、飛ばんかいっ!! ほらっ!! 飛べ~~~っ!!」

 そこで私と魔神ギーン・ギーン・ラー様は魔王様の狙いがわかりました。
 私と魔神ギーン・ギーン・ラー様が半狂乱になっている原因と同じように魔王様は私たちの乳房が揺れるのをご期待されているのだと。
 そう、わかっていてもここまで来たら、もう飛ばないわけには参りません。
 私と魔神ギーン・ギーン・ラー様は、魔王様の命じられるままにその場で飛びます。

「おおおっ!!
 ええで、ええでっ!! お前らマジで凄い乳してんなぁっ!!
 もうっ、激しくタップン、タップンそんなデカいもんが揺れとるから、ビキニが可哀想なくらいやっ!!」

 ・・・・・・・そんな奇行がしばらく続いたのですが、やがて明けの明星様が突然、魔神ギーン・ギーン・ラー様をビキニ姿のまま抱きかかえてどこかへ連れ去ってしまわれたので、終焉しゅうえんを迎えたのでした・・・・・・。
 そして魔神ギーン・ギーン・ラー様の「いやあ~ん。もう、旦那様ったらぁ~。」という嬉しそうな絶叫が残る部屋に取り残された私はビキニ姿のまま、しばらく一人でピョンピョンするのでした。


 ・・・・・・何だったのですか? これ・・・・・・。


 奇行の一日が終わった翌日。我に返った私は明けの明星様にはっきりと申し上げました。

「却下いたしますわっ!! エデン国女王として、あのような破廉恥な衣装を着るわけには参りませんっ!!
 ドレスに関しては、伝統的な衣装にいたしますっ!!」

 それを聞いて明けの明星様からは

「お前、あんな衣装を本気にしたんか?
 あんなもん、冗談に決まっとるやろが・・・・・・。」

 とか、信じられないお返事をいただきました。
 ただ、魔神ギーン・ギーン・ラー様だけは、「白いチャイナドレス」をいたくお気に召されたようで、深い切込みスリットの入った物をすでに装着なさっています。
 ・・・・・・何を着ても信じられないほどお似合いになる美貌に、さすがにちょっと嫉妬いたします。
 て、いうか数日前までは、あなたは男性でしたわよね? なにをどうしたら、そんなに急に女の子になってしまえるのですか? ちょっと聞いてみたい気も致しますが・・・・・・。そんなことよりもっ!!


「あれだけご予算を掛けさせて、御冗談とは御無体ごむたい極まりませんっ!!
 一体、どういうおつもりなのですかっ!!」

 私、さすがに弄ばれて腹が立ちましたので、ここはビシッと進言申し上げるべき時と思ってかなり強い口調で申し上げたのですが、相手は異界の王さえ畏怖いふめされるほどの魔王様。きっと子猫が甘えてじゃれているくらいにしか思われてないのでしょうね。

「ええやん。めっちゃ可愛かったで? お前。
 いつかあんなにも可愛いお前を抱ける日が来るかと思ったら、胸が躍ったわ。」

 ・・・・・・。そんなに可愛いと言われたら、何も言えなくなってしまうではありませんか。
 というか・・・。こんなことをしていて本当に大丈夫なのでしょうか? 我が国は。

「何も心配することはない。
 外交が始まったらすぐに俺の言うたことがわかる。」
「でも、どんなドレス着ても構わんけど、忘れるな?
 タプンタプンとその凶悪なサイズの乳揺らすことと、それ以上にデカい尻を左右にクネクネ揺らすことをな。」

「私っ!! そんなに大きなお尻していませ~~~~んっ!!!
 もうっ!! なんなのですかっ!!」

 私が真っ赤になって必死に抵抗する姿を嬉しそうにご覧になっていた魔王様でしたが、突然、紙とペンをご所望されたかと思うと、信じられないほどお綺麗な字で何枚もの書簡をお書きあそばされました。

「す、すごい・・・。」
 文書作成する専門の職員である祐筆ゆうひつですら、その達筆ぶりには驚愕するばかり・・・。私もこれほど美しく、そして色気のある字を見たことが無かったので、驚かずにはいられませんでした。魔王様の文字は男性的な力強さではなくて柔らかい筆遣いが特徴的な女性的な文字だったのです。


「文書を見る目があるほど教養のある者はその文字の筆運びの美しさから色気も感じる。
 違うか?」

 文句のつけようのない文字を書かれた上でそう言われては反論の余地もなく、その場にいたもの全てが魔王様の書かれた文書を見ながら、ため息交じりにただ頷くばかり。

ええかよくきけ。この書状をすぐに各国に配るんやで?
 そうして外交官が訪ねてきたら、開戦の合図や。俺の言う通りに動けよっ!!」

 これが、この恐怖の魔王がもたらす破滅地獄の始まりだったのです・・・・・・。

 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...