16 / 102
第2章 新国家「エデン」
第16話 結婚外交
しおりを挟む
●
年来より特別の御計らい誠有難存知候 此度ルーカ・シュー不幸に尽き 跡式就任之義候者々 参じ候。御参事候者々 本意に候。恐慢謹言。
ミズリナ暦5年10の月20の日 エデン国王 ラーマ・シュー ●
(※日頃のお付き合いに感謝いたします。この度、ルーカ・シューが無くなり王権相続いたしましたので来てください。来ていただければ喜ばしいことです。恐れ入りますがよろしくお願いします)
魔王様が諸外国宛てにお書きになられた招待状は確かに達筆でありましたが、とても外交文書とは思えぬほどそっけないものでした。
「魔王様。しかし、これではまるで催促状のような言いぐさで御座います。こんな内容で誰が来てくださるでしょうか?」
私は、少し不安になって書状を送る前に魔王様に確認いたしましたが、魔王様は「行け。俺に逆らうな。」の一言で決定されてしまいました。
一抹の不安はあるものの、明けの明星様の御言葉とあらば従わぬわけにもいかずに、そのまま外交文書として王家の印を押して出しました。
そして、それから数日後の事。予感は的中いたしました。
12通の出した手紙の内、6通は返信があったものの就任後の挨拶には王族ではなく名代として外交官が当国に来るという内容でした。この対応には諸外国の怒りが感じられて、同盟どころか戦争の火種すら巻き散らかしてしまったような印象さえ覚えたのでございます。
ただ、一国だけ。お父様の叔母が嫁いだ先の国ドラァーゴ王国のみが皇太子アンドレア様を派遣してくださるという良き返事を下さいました。これで一応は、孤立無援という事態は避けられそうです。
それにしても・・・。魔王様は一体何をお考えなのでしょうか?
あのように無礼な書状を送りつければ諸外国の反発を買う事は目に見えていたでしょうに・・・・・・。
私がそんな不安を抱えておりましたら、そんな私の気配を察せられたのか明けの明星様は私の肩に手を置いて優しく話しかけてくださいました。
「大丈夫や。今に見とれ。直ぐにお前の美貌が外交官の口から知れ渡る。
”あのように美しい姫があの国にいたとは知りませんでした。
いや。まさに絶世の美女。濡れる百合の花とはあの方の事。”
などと、頼みもせんでも祖国で吹聴してくれるわ。勝負はそこからや。」
「はぁっ・・・。なんなのですか? その自信は。
そんな根拠のない自信で国の行く末をお決めになられましたら困ります・・・・・・。」
一体、この先どうなるのでしょうかと思って見ても、どうせこの世は明けの明星様任せ。なるようにしかならないことは明白でした。
ところがです・・・。
魔王様の仰ったことが的中したのでした。
不遜な態度で我が城に参じた外交官達は私を見るなり、慌てふためき、用件もそこそこに次々に帰国していきました。そして、その後から次々と各国の未婚の王や皇太子たちが我がお城を表敬訪問に来られるようになったのです。
「いやぁ、ルーカ殿はお意地が悪いっ!!
このようにお美しい姫をお隠しになられておられたとはっ!!」
「私は、先妻を病で亡くし、随分立つ身ですが、そろそろ跡目の事も考えなければいけないと思う日々を過ごしております。」
「貴方は野に咲く可憐な華。貴方は磨かれた宝石。貴方のその御髪は天女の落としものか?」
等々、訪れた王族たちは皆、私を褒めたたえたり、それとなしに結婚の意思があることをにおわせる言葉を私に話したかと思えば、毎日のように恋文を送ってくるようになりました。魔王様がご自分と魔神ギーン・ギーン・ラー様のことを他国にお隠しになるように厳命を下されているので諸侯は何もご存じありません。御存知ないからこそ私に対して口説いたり、恋文を送ったりができるのでしょうね。私が世界を滅ぼすほど恐ろしい最強の魔王の供物だと知ったら、戦々恐々とすることでしょう。
そして最初は返信すらして下さらなかった6か国もどこからか私の噂を聞き付けたのか、遅参ながらも続々と私の顔を見ようと集まってこられたのです。
正直、私はうんざりしてしまいます。
だって、彼らが私に惚れ込んでおられるのは魔王様の罠にはまった証拠であるからなのです。
初めに魔王様は王族や外交官に合う時、ドレスの下の肌着を緩めておくように仰ったのです。
それは勿論、私の乳房が歩くたびに大きく揺れることを期待しての事。さらにそれが際立つようにドレスの胸の下の部分は窮屈なほど締め付けるものですから、私がそう望まなくても乳房は歩くたびに大きく揺れたのでした。
「ええか? タプンタプンと揺らすことを意識せぇよ?
腰も大きく左右に振れっ!! 高いヒールの靴を履いたら勝手にそうなる。」
「お前は仕草と声は天然で子猫のように可愛い。
尚且つその美貌や。 お前の魅力には誰も勝てんっ!!」
と、まぁ・・・。こんな小賢しい悪知恵のおかげか、諸外国の殿方は私の乳房に夢中のようでございます。
ああ・・・。馬鹿馬鹿しい。
まぁ、確かに私も自分が魔王様への供物だったと知るまでは政略結婚の駒としての価値くらいしかないとは思っておりましたわよ? それでもお父様は私を供物に捧げるおつもりでしたから、当然、結婚させるつもりなどなく、私を諸外国から隔離してこられました。それで、てっきり私。自分に魅力がないからお父様は私を積極的に外交の場にお出しにならなかったとばかりに思っておりましたのに・・・。
それが、皆さま魔王様の小賢しい術にこんなにあっさりハマるなんて・・・。
あ~~、もうっ!!
殿方って破廉恥なことしかお考えになっておられないのかしらっ!!
そんな風に私が殿方に対して幻滅しそうになっていた中、従弟のアンドレア様だけは別でした。
お父様の叔母が嫁いだ先の国ドラァーゴの皇太子にして、唯一、幼いころから私と接した経験のあるアンドレア様だけは決して私をいやらし目で見ることはないのです。
アンドレア様は、私の3つ年上の従弟のお兄様。家の御用事でお訪ねになられた際は、幼いころから私のお相手を務めてくださいました。そんなアンドレア様は、私の成長を見守って下さった方。私をいやらしい目で見ることなどありませんでした。
ですから、度重なる諸外国からの謁見や恋文にうんざりしていた私にとって、アンドレア様とお会いする事ができる日だけが唯一、心安らかな日となったのでした。
「ようこそ、いらっしゃいましたっ!! アンドレアお兄様っ。
お会いできてうれしく思いますわっ!!」
「いやいや。私も嬉しいよ。ラーマ。
でも、ご迷惑じゃないかな? 今は戦後処理で忙しい時なのだろう?」
優しい優しいアンドレア様は私への気遣いをお忘れになった事はありません。私はもう、嬉しくて「大丈夫です。それに、アンドレアお兄様とお話しできる時が、唯一、私の気が晴れる時間ですからっ!!」と、満面の笑みを浮かべて答えると、アンドレア様も優しく微笑みかけてくださるのでした。
そんなお優しいアンドレア様の耳にも最近は、私の下に諸外国の王侯が頻繁にお訪ねになっていることが聞こえ始めたようでございます。
「大丈夫かい? ラーマ。
しつこい求婚や辛いことがあったら、いつでも私に言いなさい。なんだったら、決闘してでも相手を追っ払ってあげるよっ!」
などと言ってくださいますが、そんなことになったら、私は困ってしまいます。
「決闘っ!! そんなの・・・そんなのいけませんわっ!!
私、乱暴は嫌いです。どうか、皆さまで話し合ってわかりあいましょう。」
と懇願するのですが、殿方ときたら「ははは。全く、君は魔族の血を引いてるとは思えないほど清純だね。でも、我々は欲しいものは戦って奪うもの。君を守るためならいつかは戦う日も来るさ。」などと勇ましい事ばかり仰るのです。
「ああっ・・・・・・。もし、アンドレア様になにかあったら、将来、アンドレア様の后となるお方に何と申し開きすればよいのでしょうか・・・。」
最近は夜になると、そのような独り言が出てくるようになってしまいました。
そして、ある日の事でした。魔王様にそんな独り言が聞かれてしまったのです。茶化されるとは思っていたのですが、そのセリフが地獄の窯の蓋を開くことになろうとは、思いもしなかったのです。
「いやいやいやいや・・・。お前、マジでそんなこと言うてんのか?
お前の無自覚は最早、罪やぞ。」
「罪? 魔王様。私の無自覚が罪とはどういう意味ですか?」
魔王様の御言葉の真意を確かめようと私は尋ね返しました。
「お前な。お前の美貌はマジで人間離れしとるで? 魔族や人間とかそんなレベルのもんや無い。
お前と魔神ギーン・ギーン・ラーが並んで立っても、引けを取らん美しさやぞ。
顔だけやない。そのいやらしすぎる肉付きもそうや。お前に欲情しない男はおらん。」
などと下品なことを仰ってから、もっとひどいことを仰ったのです。
「あの皇太子だってそうやぞ。絶対に幼いころからお前のことを狙っとる。
お前は気が付いてないけど、相当お前の乳や尻を見まくってんで、あの男。
そして何よりお前を見る目がマジやし。」
な、なんという無礼なことを。アンドレア様はそんな人ではありません。私は必死で訂正いたします。
「そ、そんなことはありませんっ!!
アンドレアお兄様は、決してそんな下品なお人ではありませんっ!!」
そう言って返すのですが、魔王様は相手にもしてくださいませんでした。
それどころか続けてこんなことまで仰るのです。
「お前が男の欲情をそそるのは、そのいやらしい体だけやないぞ。お前の話し方とその子猫のように澄んだ甘い声が男の保護欲をそそる。」
「そして、なによりも女性らしい仕草と純粋無垢なお前のその性格は男を狂わせるんや。」
「お前の無自覚が罪やというのはそこや。」
そこ? どこですか?
今の会話の中身って結局、私になんの無自覚があるというのですか?
そんな疑問が口を出る前に明けの明星様は恐ろしいことを私にお告げ遊ばされたのでした。
「ラーマよ。相手の男どもからみて、お前が男に気があるように、お前が誘いをかけているように思わせている自覚はあるんか?」
・・・
・・・・・・は・・・
「はいいい~っ!?
な、なななな、なんですのっ!? どうしてそんなお話になるのですかっ!?」
いきなりの急展開は私に驚天動地の衝撃を与えたのでした。
「やっぱり無自覚か。
お前な。お前のその仕草一つ一つは、洗練されていると同時に王を欲情させる目的でしなやかにできている。
そうしなければ子供ができないからな。そうやって無意識に男を誘惑する仕草をお前は姫として身につけている。」
「でも、それはええ。それは仕方ない事や。
それでもお前は無自覚すぎる。男に話しかけるとき、男の目を見つめるとき、困った仕草を見せるとき、優しく微笑みかけるとき・・・・・・。お前の美しさの全てを男は愛情を注がれてしまうと勘違いしてしてしまうんや。」
「ええっ!? い、意味が解りません。他人に優しく接するのは当たり前のお話ではっ!?」
「ほらな。お前はまだ無自覚や。
だが、それでええ。それでこそ計画通りや。」
「そして、そろそろ諸侯もあの皇太子も限界に近づいて来とる。」
「白黒はっきりつける方法を与えてやらんと暴発するぞ。」
明けの明星様は、そこまでおっしゃってから、これまで見せたことがないような残酷な笑みを浮かべて仰いました。
「下準備は全部済んだ。ここからが本番や。
各国に向けてこう発表しろっ!
”この国のために最も多く貢献していただいたお方の下へ御輿入れいたします” とな。」
年来より特別の御計らい誠有難存知候 此度ルーカ・シュー不幸に尽き 跡式就任之義候者々 参じ候。御参事候者々 本意に候。恐慢謹言。
ミズリナ暦5年10の月20の日 エデン国王 ラーマ・シュー ●
(※日頃のお付き合いに感謝いたします。この度、ルーカ・シューが無くなり王権相続いたしましたので来てください。来ていただければ喜ばしいことです。恐れ入りますがよろしくお願いします)
魔王様が諸外国宛てにお書きになられた招待状は確かに達筆でありましたが、とても外交文書とは思えぬほどそっけないものでした。
「魔王様。しかし、これではまるで催促状のような言いぐさで御座います。こんな内容で誰が来てくださるでしょうか?」
私は、少し不安になって書状を送る前に魔王様に確認いたしましたが、魔王様は「行け。俺に逆らうな。」の一言で決定されてしまいました。
一抹の不安はあるものの、明けの明星様の御言葉とあらば従わぬわけにもいかずに、そのまま外交文書として王家の印を押して出しました。
そして、それから数日後の事。予感は的中いたしました。
12通の出した手紙の内、6通は返信があったものの就任後の挨拶には王族ではなく名代として外交官が当国に来るという内容でした。この対応には諸外国の怒りが感じられて、同盟どころか戦争の火種すら巻き散らかしてしまったような印象さえ覚えたのでございます。
ただ、一国だけ。お父様の叔母が嫁いだ先の国ドラァーゴ王国のみが皇太子アンドレア様を派遣してくださるという良き返事を下さいました。これで一応は、孤立無援という事態は避けられそうです。
それにしても・・・。魔王様は一体何をお考えなのでしょうか?
あのように無礼な書状を送りつければ諸外国の反発を買う事は目に見えていたでしょうに・・・・・・。
私がそんな不安を抱えておりましたら、そんな私の気配を察せられたのか明けの明星様は私の肩に手を置いて優しく話しかけてくださいました。
「大丈夫や。今に見とれ。直ぐにお前の美貌が外交官の口から知れ渡る。
”あのように美しい姫があの国にいたとは知りませんでした。
いや。まさに絶世の美女。濡れる百合の花とはあの方の事。”
などと、頼みもせんでも祖国で吹聴してくれるわ。勝負はそこからや。」
「はぁっ・・・。なんなのですか? その自信は。
そんな根拠のない自信で国の行く末をお決めになられましたら困ります・・・・・・。」
一体、この先どうなるのでしょうかと思って見ても、どうせこの世は明けの明星様任せ。なるようにしかならないことは明白でした。
ところがです・・・。
魔王様の仰ったことが的中したのでした。
不遜な態度で我が城に参じた外交官達は私を見るなり、慌てふためき、用件もそこそこに次々に帰国していきました。そして、その後から次々と各国の未婚の王や皇太子たちが我がお城を表敬訪問に来られるようになったのです。
「いやぁ、ルーカ殿はお意地が悪いっ!!
このようにお美しい姫をお隠しになられておられたとはっ!!」
「私は、先妻を病で亡くし、随分立つ身ですが、そろそろ跡目の事も考えなければいけないと思う日々を過ごしております。」
「貴方は野に咲く可憐な華。貴方は磨かれた宝石。貴方のその御髪は天女の落としものか?」
等々、訪れた王族たちは皆、私を褒めたたえたり、それとなしに結婚の意思があることをにおわせる言葉を私に話したかと思えば、毎日のように恋文を送ってくるようになりました。魔王様がご自分と魔神ギーン・ギーン・ラー様のことを他国にお隠しになるように厳命を下されているので諸侯は何もご存じありません。御存知ないからこそ私に対して口説いたり、恋文を送ったりができるのでしょうね。私が世界を滅ぼすほど恐ろしい最強の魔王の供物だと知ったら、戦々恐々とすることでしょう。
そして最初は返信すらして下さらなかった6か国もどこからか私の噂を聞き付けたのか、遅参ながらも続々と私の顔を見ようと集まってこられたのです。
正直、私はうんざりしてしまいます。
だって、彼らが私に惚れ込んでおられるのは魔王様の罠にはまった証拠であるからなのです。
初めに魔王様は王族や外交官に合う時、ドレスの下の肌着を緩めておくように仰ったのです。
それは勿論、私の乳房が歩くたびに大きく揺れることを期待しての事。さらにそれが際立つようにドレスの胸の下の部分は窮屈なほど締め付けるものですから、私がそう望まなくても乳房は歩くたびに大きく揺れたのでした。
「ええか? タプンタプンと揺らすことを意識せぇよ?
腰も大きく左右に振れっ!! 高いヒールの靴を履いたら勝手にそうなる。」
「お前は仕草と声は天然で子猫のように可愛い。
尚且つその美貌や。 お前の魅力には誰も勝てんっ!!」
と、まぁ・・・。こんな小賢しい悪知恵のおかげか、諸外国の殿方は私の乳房に夢中のようでございます。
ああ・・・。馬鹿馬鹿しい。
まぁ、確かに私も自分が魔王様への供物だったと知るまでは政略結婚の駒としての価値くらいしかないとは思っておりましたわよ? それでもお父様は私を供物に捧げるおつもりでしたから、当然、結婚させるつもりなどなく、私を諸外国から隔離してこられました。それで、てっきり私。自分に魅力がないからお父様は私を積極的に外交の場にお出しにならなかったとばかりに思っておりましたのに・・・。
それが、皆さま魔王様の小賢しい術にこんなにあっさりハマるなんて・・・。
あ~~、もうっ!!
殿方って破廉恥なことしかお考えになっておられないのかしらっ!!
そんな風に私が殿方に対して幻滅しそうになっていた中、従弟のアンドレア様だけは別でした。
お父様の叔母が嫁いだ先の国ドラァーゴの皇太子にして、唯一、幼いころから私と接した経験のあるアンドレア様だけは決して私をいやらし目で見ることはないのです。
アンドレア様は、私の3つ年上の従弟のお兄様。家の御用事でお訪ねになられた際は、幼いころから私のお相手を務めてくださいました。そんなアンドレア様は、私の成長を見守って下さった方。私をいやらしい目で見ることなどありませんでした。
ですから、度重なる諸外国からの謁見や恋文にうんざりしていた私にとって、アンドレア様とお会いする事ができる日だけが唯一、心安らかな日となったのでした。
「ようこそ、いらっしゃいましたっ!! アンドレアお兄様っ。
お会いできてうれしく思いますわっ!!」
「いやいや。私も嬉しいよ。ラーマ。
でも、ご迷惑じゃないかな? 今は戦後処理で忙しい時なのだろう?」
優しい優しいアンドレア様は私への気遣いをお忘れになった事はありません。私はもう、嬉しくて「大丈夫です。それに、アンドレアお兄様とお話しできる時が、唯一、私の気が晴れる時間ですからっ!!」と、満面の笑みを浮かべて答えると、アンドレア様も優しく微笑みかけてくださるのでした。
そんなお優しいアンドレア様の耳にも最近は、私の下に諸外国の王侯が頻繁にお訪ねになっていることが聞こえ始めたようでございます。
「大丈夫かい? ラーマ。
しつこい求婚や辛いことがあったら、いつでも私に言いなさい。なんだったら、決闘してでも相手を追っ払ってあげるよっ!」
などと言ってくださいますが、そんなことになったら、私は困ってしまいます。
「決闘っ!! そんなの・・・そんなのいけませんわっ!!
私、乱暴は嫌いです。どうか、皆さまで話し合ってわかりあいましょう。」
と懇願するのですが、殿方ときたら「ははは。全く、君は魔族の血を引いてるとは思えないほど清純だね。でも、我々は欲しいものは戦って奪うもの。君を守るためならいつかは戦う日も来るさ。」などと勇ましい事ばかり仰るのです。
「ああっ・・・・・・。もし、アンドレア様になにかあったら、将来、アンドレア様の后となるお方に何と申し開きすればよいのでしょうか・・・。」
最近は夜になると、そのような独り言が出てくるようになってしまいました。
そして、ある日の事でした。魔王様にそんな独り言が聞かれてしまったのです。茶化されるとは思っていたのですが、そのセリフが地獄の窯の蓋を開くことになろうとは、思いもしなかったのです。
「いやいやいやいや・・・。お前、マジでそんなこと言うてんのか?
お前の無自覚は最早、罪やぞ。」
「罪? 魔王様。私の無自覚が罪とはどういう意味ですか?」
魔王様の御言葉の真意を確かめようと私は尋ね返しました。
「お前な。お前の美貌はマジで人間離れしとるで? 魔族や人間とかそんなレベルのもんや無い。
お前と魔神ギーン・ギーン・ラーが並んで立っても、引けを取らん美しさやぞ。
顔だけやない。そのいやらしすぎる肉付きもそうや。お前に欲情しない男はおらん。」
などと下品なことを仰ってから、もっとひどいことを仰ったのです。
「あの皇太子だってそうやぞ。絶対に幼いころからお前のことを狙っとる。
お前は気が付いてないけど、相当お前の乳や尻を見まくってんで、あの男。
そして何よりお前を見る目がマジやし。」
な、なんという無礼なことを。アンドレア様はそんな人ではありません。私は必死で訂正いたします。
「そ、そんなことはありませんっ!!
アンドレアお兄様は、決してそんな下品なお人ではありませんっ!!」
そう言って返すのですが、魔王様は相手にもしてくださいませんでした。
それどころか続けてこんなことまで仰るのです。
「お前が男の欲情をそそるのは、そのいやらしい体だけやないぞ。お前の話し方とその子猫のように澄んだ甘い声が男の保護欲をそそる。」
「そして、なによりも女性らしい仕草と純粋無垢なお前のその性格は男を狂わせるんや。」
「お前の無自覚が罪やというのはそこや。」
そこ? どこですか?
今の会話の中身って結局、私になんの無自覚があるというのですか?
そんな疑問が口を出る前に明けの明星様は恐ろしいことを私にお告げ遊ばされたのでした。
「ラーマよ。相手の男どもからみて、お前が男に気があるように、お前が誘いをかけているように思わせている自覚はあるんか?」
・・・
・・・・・・は・・・
「はいいい~っ!?
な、なななな、なんですのっ!? どうしてそんなお話になるのですかっ!?」
いきなりの急展開は私に驚天動地の衝撃を与えたのでした。
「やっぱり無自覚か。
お前な。お前のその仕草一つ一つは、洗練されていると同時に王を欲情させる目的でしなやかにできている。
そうしなければ子供ができないからな。そうやって無意識に男を誘惑する仕草をお前は姫として身につけている。」
「でも、それはええ。それは仕方ない事や。
それでもお前は無自覚すぎる。男に話しかけるとき、男の目を見つめるとき、困った仕草を見せるとき、優しく微笑みかけるとき・・・・・・。お前の美しさの全てを男は愛情を注がれてしまうと勘違いしてしてしまうんや。」
「ええっ!? い、意味が解りません。他人に優しく接するのは当たり前のお話ではっ!?」
「ほらな。お前はまだ無自覚や。
だが、それでええ。それでこそ計画通りや。」
「そして、そろそろ諸侯もあの皇太子も限界に近づいて来とる。」
「白黒はっきりつける方法を与えてやらんと暴発するぞ。」
明けの明星様は、そこまでおっしゃってから、これまで見せたことがないような残酷な笑みを浮かべて仰いました。
「下準備は全部済んだ。ここからが本番や。
各国に向けてこう発表しろっ!
”この国のために最も多く貢献していただいたお方の下へ御輿入れいたします” とな。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる