あばずれローニャ

黒神譚

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第3話

女子風呂での決闘 1

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きっとアルバートは最初から俺と共に行動するプランがあったのだろう。そうでなければ、指名手配書を都合よく持っているはずがない。
彼はつまり、ローニャという女がどういう人間かわかるまでは色々な探りを入れて、俺の人格を判断し、その結果次第で共に行動するか逮捕するかを決めるつもりだったんだろう。相変わらずしたたかな男だ。
もしかしたら、あの時のキスだって俺を逆に手籠めにして操ってやろうとか考えていた可能性だってある。しかし、いざ試してみると俺が噂と違って純潔だと悟って、俺に対して同情と信頼と罪悪感を抱いたのかもしれない。それで俺にとって都合のよすぎる提案をしてきたのかもしれない。

・・・それにしても、キスだけで俺を純潔だと見抜くってどんだけ女性経験が豊富なんだよアルバート。おまけに、匂いがどうとか言ってたな。・・・におい? 俺ちゃんと香水つけてるんだけどなぁ。におうのかなぁ・・・。ちょっとショック。香水変えようかな?

それはともかくとして、俺は蜘蛛の巣にかかった蝶のように彼の術中にはまってしまったのだ。
彼と旅ができるのは嬉しい。正直、アルバートの側にいられるのはとても幸せ。
でも、同時にそれはとても危険な事。
彼ほど勘のいい男の場合、俺の正体に気が付く可能性があるし、気が付かなくても旅を続けて行くなかで俺の正体が発覚する可能性もある。

そうなった時、彼は俺を嫌いになるどころか、素性を偽り騙したことを理由に殺しにかかってくるかもしれない。プライドの高い彼の事だ。やりかねない。
だから、俺は彼が旅に同行することに条件を付けた。

「アルバート様。それならば俺と旅を続けるうえで条件がある。
 いいかい?」

口調を男口調に戻したことにアルバートは「今更私の前で阿婆擦れ女を演じる必要があるのかい?」と苦笑いをしたが、俺は覚悟を決めて一世一代の芝居を打つ。

「まず、先に告訴を無効にしてもらう。そうでなければ俺はあなたを信用できない。」
「・・・それは勿論だ。」
アルバートは神妙な顔で誓った。これでやっと交渉に入れる。決して情にほだされてはいけない。俺は一気に要求を突きつける。

「結構だ。
 先ず第一にお互いのプライベートは守ってもらう。つまり宿は別々の部屋に寝るし、野宿の際も馬3頭分の距離を保ってもらう。
 俺がどこの誰を口説こうと邪魔をしないでもらおう。
 第二にお互いの素性を探らないこと。俺は過去を捨てた女だ。根掘り葉掘り聞かれたり探られたりするのはかんに障る。
 第三に俺を金輪際、口説かないこと。つまり俺を女として見てはいけない。
 以上を守ってもらいたいが、いかがか?」

アルバートは俺の言い分を聞いて、俺が警戒していると解釈したらしい。「なるほど女性として当然の警戒心だ」と納得した。
しかし、その上で意地悪な笑顔を浮かべて言う。

「それでいい。ただし・・・。君も私が他の女を口説いても文句言うなよ。」
「そんなの駄目――――っ!!」
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