20 / 29
・Back・
#1
しおりを挟む
「湊。世の中にはな、目に見えないものもあるんだぞ」
当時の湊にとって父は、憧れの存在だった。
物知りで。力持ちで。格好良くて。家の外でもいつも讃えられている。
だからこそ父の言葉は絶対とも言えた。
「父さんはな、仕事で成功して欲しい時なんかはいつも、神社にお願いしに行くんだ。すると必ず上手く行く。それって言うのは、父さんの願いを神様が聞き届けて叶えてくれたからなんだぞ」
未成熟な体を抱え上げながら、父は娘に語り掛けた。
娘は大好きな父の言葉なら全て信じ込む。それはまだ一般的な人格だ。
「見えないものは、どうやったら見えるようになるの?」
「どうだろうなぁ? 湊と父さん、それに母さんも既に家族って言う見えない繋がりはあるぞ。まあ信じていれば、感じる事なら出来るさ」
父は楽しそうに笑う。だから、娘である湊も楽しくなって夢を膨らませた。
見えないもの。
それは確かにあるのかもしれない。
少し大きくなれば「嘘だ」と断じて。
更に背を伸ばせば「あるかもね」と受け入れて。
成長していくにつれて。現実を見ていくにつれて。
父が言った事は正しいようで、確たるものではないというのは分かるはずだった。
湊に子供が出来たなら、同じように伝える未来もあったかもしれない。
けれどその未来はあり得なかった。
それは、彼女の辿る成長が変わっていたのか。
それとも、彼女が見る現実がズレていたのか。
どちらであっても彼女は、歪んでいた。
「くそ! こんなはずじゃ……!」
高級住宅街に立つ、二階建ての一軒家。一つ一つの部屋が広く、庭はいくらでも駆け回れる。そんな家の玄関で父は悪態を吐いた。そして連れていかれた。
湊は追いかけようとするのを母に止められて、父の曲がる背中を見送る事しか出来なかった。
ある日、父は捕まった。
湊は理由を詳しくは知らなかった。当時、まだ幼かったからというのはあったが、ある程度分別がついてからも知ろうとはしなかった。仕事で何か悪い事をしたという認識だけがあった。
具体的な事などどうでも良かったのだ。
ただ事実として、父とは引き離されてしまった。
憧れの父がいなくなってしまった。
だからこそ湊は父の姿を求めるようになる。
世の中には目に見えないものがある。
その父の教えを、ひたすらに信じ込んだ。
家族の繋がりもそうだと父は言っていた。だから父がいなくなったって、繋がりなら感じられるはずだと思ったのだ。
けれど湊にはどうしても感じられなかった。
なぜ感じられないのか、その理由も分からなかった。
湊はその頃から既に、心や感情というものに疎かったのかもしれない。
そもそも、父との離別で湊が泣く事はなかった。悲しみもしなかった。
彼女はただただ、起きた事をそのままに受け止める。
故に、目に見えないものが分からない。
見ないと分からない。触れないと。聞かないと。嗅がないと。味わわないと。
そうして、見たいと思うようになった。
その芽吹きが、湊の始まりだった。
父の事件を機に両親は離婚。湊は母に連れられて、前の家の一〇分の一にも感じられるアパートでの二人暮らしが始まった。もちろん湊が文句を言う事はない。
湊の母はプライドの高い性格で、父らしき人物が何度か謝罪に来ていたが全て門前払いをしていた。
昔から犯罪を毛嫌いして、ニュースを見るたびに嫌悪を募らせている。それなのに伴侶が手を染めてしまい、激昂したのだ。湊がふと父の話題を上げただけでも声を荒げて制止された。潔癖症とも言えたのだろう。
それでも湊は母が好きだった。とは言え、母のどこが好きかという質問には答えられなかった。
見えない関係性。親子という繋がり。
唯一知る、見えないもの。
それがあるから。あるいは母と娘という関係性だから、好きだった。
母の言う事は何でも聞いた。周りからも出来た子だと褒められる事は多かった。
湊は、父がいた頃とも変わらずにいた。
しかし、母の方は変わっていった。
女手一つで子供を育てるのは難しかったらしい。
それに母は誰かに頼ろうとしなかった。母の親とは既に縁を切っているらしく、何があったって親戚に連絡は入れなかった。
それに加えて潔癖症の性格は、職場の関係を悪化させていく。生活に行き詰まればそれはどんどん悪循環を生んだ。
母は職を何度も変えた。家にいる時間が増えた。逆に全くいない時間も。
そうして、湊の生活も変わっていく。
一日一食になった。文房具を補充出来なくなった。服は破れたままだった。誰も話しかけてこなくなった。
次第に学校の給食費も払えなくなって。遠くで噂を囁かれる。
それでも湊は変わらなかった。
目に見えるものになんて興味を示せなかったから。
「お母さん、テスト一〇〇点とったよ!」
そう報告すれば、前までの母なら頭を撫でてくれた。けれど、やつれた母は耳をすまさないと聞き取れない音量で「そう」としか返してくれなくなった。
湊はニコニコしながら、母の隣に座る。親に甘える娘のように。
彼女にとっては目に見えないものの方が大切だった。
「お父さんも喜んでくれるかなっ」
離別してからより父を考える機会が増えた。
現在どうなっているかは知らないが、そんな事は関係なく。見えないからこそ、自分の後ろから見守ってくれているのだと。
そんな、見えない父をいつかは見てみたいなとも。
けれど母は違った。
「あの人の話はしないでッ‼」
初めてだった。
母から手を上げられたのは。
怒鳴られる事はあった。それは躾の範囲。その範囲を超える事はあり得ない。何より母は暴力を嫌う人だったから。
けれどその時、母は抑えきれないものが噴き出してしまった。
湊は痛みで目を丸くした。母と目が合う。その瞳は次第に戸惑い始めて。
そんな様子に、湊は純粋な疑問を浮かべた。
「何か、ほっぺたについてた?」
泣く事もなく。不思議そうに腫れた右頬を撫でる。
母が子供に暴力を振るうわけがない。
そう言った制約があるのだと、湊は心の底から信じていた。
それこそ見えないものだから。
けれど、全く間違っていた。それが正される事もない。
母は自分が犯してしまった行動に狼狽しながら、娘のケロッとした表情に恐怖を覚えた。
それから母は更に壊れていった。
決して湊を見放したりはしない。それはプライドの高い性格が許さなかったのだろう。
でも無邪気に話しかけてくる娘を遠ざけた。次第には顔を合わせない日が増えて、そうして母は、ついに逃げ場を作った。
母が閉じこもる部屋の中。そこからは母の楽しそうな声が聞こえてくる。
湊は大好きな母が笑っているのだから、自分も一緒にと覗いてみた事があった。
すると、笑う母に顔面を殴られた。迫った拳。その中には使い終わった注射器。
湊はそれらが何を意味するのか察せなかった。母に聞いても要領の得ない言葉ばかり。更には翌日になればその事すら忘れていて。
また笑い声。湊も同じように部屋を覗き込めば、今度は頭を踏みつけられた。
何度も。何度も。
「部屋には入らないでって言ったわよねぇ?」
言われた記憶はなかったが、湊は自分の方が間違えているだろうと考えた。
「お母さんごめんね。もう入らないよ」
笑いながら頷いて、部屋を出た。
全身の痛みを不思議に思いながらも、青あざが出来た顔で小学校に登校した。
それからは部屋に入らなくても母の暴力が増えた。でもその後は決まって取り乱し、どんどん不安定になっていった。
次第には、何もない場所を指すようにもなった。
「湊。あそこに虫がいるわ。追い払ってくれない?」
「? いないよ?」
母に言われて見てみるも、そこはただのフローリングの床。湊がそう伝えると、母は見えると言い張った。
そして殴って、また取り乱す。
「ごめんなさいっ! なんてことをっ……!」
「大丈夫だよ。お母さんはすごいね、見えないものが見えるんだ」
湊は泣きながら謝る母を尊敬した。
母はついに、自分がずっと見たかったものを見られるようになったのだと。
だからこそより彼女は思うようになった。
自分も、見えないものを見てみたいと。
それが、小学六年生の頃。
それからすぐ、彼と出会った。
当時の湊にとって父は、憧れの存在だった。
物知りで。力持ちで。格好良くて。家の外でもいつも讃えられている。
だからこそ父の言葉は絶対とも言えた。
「父さんはな、仕事で成功して欲しい時なんかはいつも、神社にお願いしに行くんだ。すると必ず上手く行く。それって言うのは、父さんの願いを神様が聞き届けて叶えてくれたからなんだぞ」
未成熟な体を抱え上げながら、父は娘に語り掛けた。
娘は大好きな父の言葉なら全て信じ込む。それはまだ一般的な人格だ。
「見えないものは、どうやったら見えるようになるの?」
「どうだろうなぁ? 湊と父さん、それに母さんも既に家族って言う見えない繋がりはあるぞ。まあ信じていれば、感じる事なら出来るさ」
父は楽しそうに笑う。だから、娘である湊も楽しくなって夢を膨らませた。
見えないもの。
それは確かにあるのかもしれない。
少し大きくなれば「嘘だ」と断じて。
更に背を伸ばせば「あるかもね」と受け入れて。
成長していくにつれて。現実を見ていくにつれて。
父が言った事は正しいようで、確たるものではないというのは分かるはずだった。
湊に子供が出来たなら、同じように伝える未来もあったかもしれない。
けれどその未来はあり得なかった。
それは、彼女の辿る成長が変わっていたのか。
それとも、彼女が見る現実がズレていたのか。
どちらであっても彼女は、歪んでいた。
「くそ! こんなはずじゃ……!」
高級住宅街に立つ、二階建ての一軒家。一つ一つの部屋が広く、庭はいくらでも駆け回れる。そんな家の玄関で父は悪態を吐いた。そして連れていかれた。
湊は追いかけようとするのを母に止められて、父の曲がる背中を見送る事しか出来なかった。
ある日、父は捕まった。
湊は理由を詳しくは知らなかった。当時、まだ幼かったからというのはあったが、ある程度分別がついてからも知ろうとはしなかった。仕事で何か悪い事をしたという認識だけがあった。
具体的な事などどうでも良かったのだ。
ただ事実として、父とは引き離されてしまった。
憧れの父がいなくなってしまった。
だからこそ湊は父の姿を求めるようになる。
世の中には目に見えないものがある。
その父の教えを、ひたすらに信じ込んだ。
家族の繋がりもそうだと父は言っていた。だから父がいなくなったって、繋がりなら感じられるはずだと思ったのだ。
けれど湊にはどうしても感じられなかった。
なぜ感じられないのか、その理由も分からなかった。
湊はその頃から既に、心や感情というものに疎かったのかもしれない。
そもそも、父との離別で湊が泣く事はなかった。悲しみもしなかった。
彼女はただただ、起きた事をそのままに受け止める。
故に、目に見えないものが分からない。
見ないと分からない。触れないと。聞かないと。嗅がないと。味わわないと。
そうして、見たいと思うようになった。
その芽吹きが、湊の始まりだった。
父の事件を機に両親は離婚。湊は母に連れられて、前の家の一〇分の一にも感じられるアパートでの二人暮らしが始まった。もちろん湊が文句を言う事はない。
湊の母はプライドの高い性格で、父らしき人物が何度か謝罪に来ていたが全て門前払いをしていた。
昔から犯罪を毛嫌いして、ニュースを見るたびに嫌悪を募らせている。それなのに伴侶が手を染めてしまい、激昂したのだ。湊がふと父の話題を上げただけでも声を荒げて制止された。潔癖症とも言えたのだろう。
それでも湊は母が好きだった。とは言え、母のどこが好きかという質問には答えられなかった。
見えない関係性。親子という繋がり。
唯一知る、見えないもの。
それがあるから。あるいは母と娘という関係性だから、好きだった。
母の言う事は何でも聞いた。周りからも出来た子だと褒められる事は多かった。
湊は、父がいた頃とも変わらずにいた。
しかし、母の方は変わっていった。
女手一つで子供を育てるのは難しかったらしい。
それに母は誰かに頼ろうとしなかった。母の親とは既に縁を切っているらしく、何があったって親戚に連絡は入れなかった。
それに加えて潔癖症の性格は、職場の関係を悪化させていく。生活に行き詰まればそれはどんどん悪循環を生んだ。
母は職を何度も変えた。家にいる時間が増えた。逆に全くいない時間も。
そうして、湊の生活も変わっていく。
一日一食になった。文房具を補充出来なくなった。服は破れたままだった。誰も話しかけてこなくなった。
次第に学校の給食費も払えなくなって。遠くで噂を囁かれる。
それでも湊は変わらなかった。
目に見えるものになんて興味を示せなかったから。
「お母さん、テスト一〇〇点とったよ!」
そう報告すれば、前までの母なら頭を撫でてくれた。けれど、やつれた母は耳をすまさないと聞き取れない音量で「そう」としか返してくれなくなった。
湊はニコニコしながら、母の隣に座る。親に甘える娘のように。
彼女にとっては目に見えないものの方が大切だった。
「お父さんも喜んでくれるかなっ」
離別してからより父を考える機会が増えた。
現在どうなっているかは知らないが、そんな事は関係なく。見えないからこそ、自分の後ろから見守ってくれているのだと。
そんな、見えない父をいつかは見てみたいなとも。
けれど母は違った。
「あの人の話はしないでッ‼」
初めてだった。
母から手を上げられたのは。
怒鳴られる事はあった。それは躾の範囲。その範囲を超える事はあり得ない。何より母は暴力を嫌う人だったから。
けれどその時、母は抑えきれないものが噴き出してしまった。
湊は痛みで目を丸くした。母と目が合う。その瞳は次第に戸惑い始めて。
そんな様子に、湊は純粋な疑問を浮かべた。
「何か、ほっぺたについてた?」
泣く事もなく。不思議そうに腫れた右頬を撫でる。
母が子供に暴力を振るうわけがない。
そう言った制約があるのだと、湊は心の底から信じていた。
それこそ見えないものだから。
けれど、全く間違っていた。それが正される事もない。
母は自分が犯してしまった行動に狼狽しながら、娘のケロッとした表情に恐怖を覚えた。
それから母は更に壊れていった。
決して湊を見放したりはしない。それはプライドの高い性格が許さなかったのだろう。
でも無邪気に話しかけてくる娘を遠ざけた。次第には顔を合わせない日が増えて、そうして母は、ついに逃げ場を作った。
母が閉じこもる部屋の中。そこからは母の楽しそうな声が聞こえてくる。
湊は大好きな母が笑っているのだから、自分も一緒にと覗いてみた事があった。
すると、笑う母に顔面を殴られた。迫った拳。その中には使い終わった注射器。
湊はそれらが何を意味するのか察せなかった。母に聞いても要領の得ない言葉ばかり。更には翌日になればその事すら忘れていて。
また笑い声。湊も同じように部屋を覗き込めば、今度は頭を踏みつけられた。
何度も。何度も。
「部屋には入らないでって言ったわよねぇ?」
言われた記憶はなかったが、湊は自分の方が間違えているだろうと考えた。
「お母さんごめんね。もう入らないよ」
笑いながら頷いて、部屋を出た。
全身の痛みを不思議に思いながらも、青あざが出来た顔で小学校に登校した。
それからは部屋に入らなくても母の暴力が増えた。でもその後は決まって取り乱し、どんどん不安定になっていった。
次第には、何もない場所を指すようにもなった。
「湊。あそこに虫がいるわ。追い払ってくれない?」
「? いないよ?」
母に言われて見てみるも、そこはただのフローリングの床。湊がそう伝えると、母は見えると言い張った。
そして殴って、また取り乱す。
「ごめんなさいっ! なんてことをっ……!」
「大丈夫だよ。お母さんはすごいね、見えないものが見えるんだ」
湊は泣きながら謝る母を尊敬した。
母はついに、自分がずっと見たかったものを見られるようになったのだと。
だからこそより彼女は思うようになった。
自分も、見えないものを見てみたいと。
それが、小学六年生の頃。
それからすぐ、彼と出会った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる