英雄の孫は今日も最強

まーびん

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第21話  やらかしには後始末が必要らしい

 ネヴィルディア帝国の帝都から転移魔法でターセル子爵領に帰還した俺は、母上やルードルフ祖父ちゃんによって熱烈な出迎えを受けた。
 それはもう、鬱陶しいほどに……。

「ははうえ、おれそとにあそびにいきたい……」
「いけません!」

 帰還後すぐに食事と入浴を済ませてぐっすり眠った俺は、翌朝、早々に母上に捕まって客室に軟禁されていた。
 母上は、膝の上に乗せられた俺をがっしりと抱え込み、絶対に離さない構えだ。
 俺は自分の膝の上に竜騎の卵を持ったまま、身動き一つできない。

「ロイ、さすがに今回は疲れたであろう。ワシも一緒に居るから、しばらくは我慢するがよい」

 母上の隣に座ったルードルフ祖父ちゃんも、今回ばかりは母上の味方らしい。
 そして、反対側の隣に座った父上まで、うんうんと同意した。

「ロイはまだ4歳なんだぞ。ようやく敵国から帰って来られたんだから、少しはエマを安心させてあげなさい」
「あらあら、みんな過保護なこと」

 向かいの席で優雅に紅茶を傾けているのは、マリアンヌ祖母ちゃんだ。
 しかし、実はマリアンヌ祖母ちゃんだって、ずっとこの部屋から動こうとしないのだ。

「大げさだねぇ。ロイならピンピンしてるのに」

 シャルロット祖母ちゃんは肩をすくめたが、この空気の中俺の味方になるつもりはないらしい。
 四面楚歌か……!

 むっ、と頬を膨らませる俺に、父上はなだめるように俺の頭をポンポン撫でる。

「それに、ロイには帝国でのことをちゃんと話して欲しいんだ」
「ん~、おれおとなしくしてたから、そんなにはなすことないよ?」
「何言ってんだい……!」

 シャルロット祖母ちゃんは額を押さえ、天を仰ぐ。

「色々とやらかしてるだろう? 白髪の子供を助けたり、ア―スドラゴンを討伐したり、帝国兵から命を狙われたり!」
「白髪の子供だと……?」

 ルードルフ祖父ちゃんとマリアンヌ祖母ちゃんは何やら顔を険しくして、顔を見合わせている。
 母上は俺のお腹に回した腕に力を込めて、俺の頭にほっぺたを擦り付けた。

「命を狙われるなんて……怖かったでしょう?」
「え~と……ん~と……」

 どっちかっていうと、俺を囲んでた敵兵の方が怖がってた気もする。
 まぁ、俺は全然負ける気もしなかったし。

「懲りない子だねぇ、ロイは。まぁそれぐらい図太い方が安心ってもんか。何せ、これからロイは冒険者ギルドの『英雄』として有名になっちまうからねぇ」
「それは仕方がないであろうな! ロイはワシの孫なのだから!」

 むふん、と得意げに鼻を膨らませるルードルフ祖父ちゃんに、マリアンヌ祖母ちゃんが窘める様な視線を向ける。

「喜んでいる場合じゃありませんよ。これから先、ターセルにもロイ目当ての貴族たちが集まって来るでしょう」
「今までは、ガストールお義父様と王家の牽制で、なんとか来客をあしらっていられたのですがね……」

 父上も悩まし気に頭をかいた。
 しかし、俺自身は全然知らなかったが、俺って今までも貴族たちから目を付けられてたのか?

「今までは一部貴族が取り入ろうと動いていただけですが……これからは、モルグーネ王国内だけでなく、他国からの勧誘にも備えなければなりません」
「なぁに、気に入らん連中なら、応じなければいいだけの事であろう」
「うん」

 俺も祖父ちゃんに頷くが、俺と祖父ちゃん以外は疑わしそうな目で俺を見ている。

「ロイの場合、簡単に物で釣られそうなのがねぇ……」
「そんなことないもん!」
「じゃあ、発見されたばかりのダンジョンに連れて行ってあげる、って言われても、ついて行かないかい?」
「……ついて行くかも」
「そうでしょうねぇ……」

 父上や母上はため息をつき、ルードルフ祖父ちゃんを見た。

「父上。今まで以上にロイの事をよろしく頼みます」
「お義父様の言う事なら、ロイも少しは聞くと思いますので」
「うむ。ワシも、二度とロイを一人にするような失態は犯さぬ」

 祖父ちゃんは重々しく頷き、俺の頭をくしゃりと撫でた。
 話にひと段落がついた所で、シャルロット祖母ちゃんが思い出したように俺に尋ねる。

「あぁそうだ。ロイ、ガスから貰った宝石を渡してくれるかい? 手紙に書いてなかったから、売ってはないんだろう?」

 宝石?
 俺はちょっと首を傾げる。
 あぁ、あの青いちっさい石か。
 どこにやったっけ?
 確か小銭袋に入れたまま……。

「えーと……あ! リーバスにあげた!」

 俺は思い出してポンと手を打つ。
 すると、何故か部屋の空気が一気に凍り付いた。

「あ……あげた……⁉」
「そりゃ……例の白髪の子供かい……?」

 シャルロット祖母ちゃんが絞り出すように聞くので、俺はうんと軽く頷く。
 大人たちは何故かがっくりと肩を落とし、祖父ちゃんや祖母ちゃんたちに至っては頭を抱えている。
 大袈裟だなぁ、あんな小さい石程度で。

「モルグーネが帝国の内乱を支援した、などと言われなければよいが……」

 祖父ちゃんは何やら深刻そうな顔で首を横に振っている。
 あれ、俺またなんかやらかした……?
 俺は意味が分からなかったので、視線を逸らして適当にやり過ごしておいた。


 そして、その翌日になると、俺が帰ってきたという報告を受けたガストール祖父ちゃんが、猛烈な勢いの竜騎に乗って子爵領にやってきた。
 職権乱用して軍の竜騎をタクシー代わりに使い、しかも加速魔法の強行軍でやってきたガストール祖父ちゃんは、客室に軟禁されている俺を見るなり、涙と鼻水でぐずぐずの顔で縋り付いて来る。

「ロイくぅぅん! 無事でよかったですぅぅぅっ! じいじは……じいじは……!」
「ガ……ガスじいじ……ただいま……」

 俺はガストール祖父ちゃんにギュウギュウと抱きしめられながら、母上とガストール祖父ちゃんは血のつながった親子なんだなぁ、としみじみ現実逃避していた。
 
「私がエルンサルドなんかにロイ君を連れて行ったからあんな事故に……! 次に転移する時はじいじも一緒ですぅぅぅっ‼」

 ガストール祖父ちゃんは、俺の転移事故について随分責任を感じていたらしい。
 でも、元凶は800年前の賢者であって、祖父ちゃんは悪くない。
 それに、俺は帝都に行けてよかったと思っている。

「ガスじいじ、おれね、ていとたのしかった!」

 俺は、ガストール祖父ちゃんの腕をポンポン叩いて、にっこりと笑う。
 色んな知り合いができたし、冒険者ギルドの事も知れたし、帝国に対する印象も変わった。
 おかげで、俺の世界が大きく広がった気がする。

「ていとにいけたの、ガスじいじのおかげだもん! さいこうのたんじょうびぷれぜんとだった!」
「ろ、ロイ君……! なんて健気な子でしょうかっ‼」
「ぐえっ!」

 ガストール祖父ちゃんは感極まったように目に涙を溜め、数倍強い力で俺を抱きしめる。
 そろそろ中身が出そうなんですけど……。

「ガストール、その辺にせんか!」

 ルードルフ祖父ちゃんはベリッとガストール祖父ちゃんを引きはがし、椅子に座らせる。

「そう言えば、セクトたちもロイのために骨を折ってくれたのであったな。エマ、何日もロイを閉じ込めておいては、ロイも気詰まりであろう。セクトたちの所に礼に行くだけなら、外出を許可しても良かろう」
「しかし、お義父様……!」
「そうですね。いくら依頼だったとはいえ、ロイのために無理をさせたのでしょう? 自分でお礼を言いに行くのは、大切なことですよ」

 珍しくマリアンヌ祖母ちゃんも同意して、母上たちは口を噤み、何やら目配せをしている。

「ロイ、セクトたちの所にまっすぐ行って、すぐに帰ってくるのだぞ」
「? ルーじいじはこないの? ガスじいじも?」
「ワシらは大人だけで話がある。だが、もちろんロイ一人では行かせぬ。使用人を二人つけるから、ゆっくり行って帰って来なさい」

 そういうことなら、喜んで外出させてもらおう。
 ついでに、道すがらルードルフ私兵団の宿舎の前を通りかかったり、ミランダ姉ちゃんの店の前を通りかかったりするかもしれないが、そこはご愛敬だ。
 なにせ、俺は俺だけの竜騎の卵をみんなに自慢したくてうずうずしているのだ!

「じゃあ、おれいってくるね!」

 俺はぴょんと椅子から降り、卵の背負い紐を取りに二階へ駆け上がる。
 俺は昔から屋敷にいる執事と下男の二人を連れて、意気揚々と外出した。


【ディミトリ(ロイの父)】

 ロイが屋敷を出て行く音に耳を澄ませ、ガチャリと玄関のドアが閉まると、私たちはようやく息を吐く。
 そして、それぞれが疲れたように席につき、重い沈黙が訪れた。

「まず、確認しておくが」

 父上は腕を組み、眉を顰める。

「ロイが助けた白髪の子供、と言うのは、ネヴィルディア帝国の皇族で間違いないのか?」
「「はい⁉」」

 私とガストールお義父様は素っ頓狂な声を上げ、エマは口を押さえて瞠目している。

「どうやら間違いないねぇ。毒を盛られて、スラムに隠れていたそうだ。そこを、ロイが回復魔法で解毒したそうだよ」
「回復魔法で解毒を……」

 母上は額に手を当て、目を瞑る。
 母上が回復魔法で解毒をできるようになったのは、衛生兵を辞めてから、その後も修練を積んでようやくできた事。
 それを4歳の孫に独学であっさり習得されたら、眩暈の一つもするだろう……。

「いえ、ロイの事ですからね、今更何をしても驚きませんよ」

 母上は、父上の腕をちらりと見て、ため息を吐く。

「しかもねぇ、そのリーバス? とかいう子供に、ジェムゴーレムの宝石をあげたらしくてね」
「えぇっ⁉」

 お義父様はガバッと身を乗り出し、シャルロットお義母様を見る。

「ロイ君、あの宝石を売ってくれなかったんですか⁉ せっかく生活費にと……」
「馬鹿な事言ってんじゃないよ、ガス! あんなもの売ったら、大金を持ってるって情報が洩れて、返って命を狙われるよ!」
「まさか、お父様がそんな高価な物をロイに送っていたなんて……魔石か何かだと思っていましたのに」

 エマは顔を覆い、ソファに背を預ける。
 私も、シャルロットお義母様に聞いて初めて知ったのだが……今度から、お義父様のプレゼントにはよくよく注意をしておこう……。

「しかし、ロイはどうしてそんなことを? まさか、皇族と知ったうえで……」
「いや、ロイはどうも相手の正体を知らないようだね。友達になったから、宝石の価値も知らずにポンとあげちまったんじゃないかい?」
「リーバス……、まさか、リーヴァス・ヨハンハウゼン・ネヴィルディアでは……?」

 お義父様はサーッと顔を青くし、ぼそりと呟いた。

「誰だ?」
「知らないのですか、ルードルフ! 継承権一位の、現皇帝の弟です!」
「何ですって⁉」

 私は頭を抱え、うな垂れる。

「つまり、ロイは、皇帝に次いで地位の高い少年が毒殺されそうなところを、解毒した上に大金を渡して支援したと?」
「ガッツリ政争に関わってるじゃないか……」

 皆一様にため息をつき、冷めた紅茶に手を伸ばした。

「とにかく、問題は、ロイの正体が連中に知れたっていう事さ」
「モルグーネ王国が糸を引いていると言われても、否定できぬ状況か……」
「父上、いくらなんでも、王家に話を通さないわけにはいきませんよ、これは」
「分かっておるわ……」

 父上は不機嫌そうに腕を組み、鼻を鳴らす。
 もし帝国の皇位継承権に関わるような話になれば、事はモルグーネ王国だけで収まらない。
 対帝国同盟の国々に対しても言い訳が必要になる。
 これは王家に対してかなりの貸しを作る案件になるかもしれない。
 そして、王家に弱みを握られるようなことになれば、ロイや父上が何らかの形で協力を要請される可能性が高い。

「それだけじゃないんだよ。ロイは、冒険者ギルドのグランドマスター、オーフェンからも目を付けられたようだ。連絡用の魔道具までロイに持たせてたからね。ロイも妙に懐いているようだし、そっちも気を付けた方がいいね」
「グランドマスターというと、冒険者ギルドのトップですか」
「ふむ? 会ったことはないが、冒険者のロイが上に気に入られるのは良い事ではないのか?」

 貴族は本来あまり冒険者に関わらないので、冒険者ギルドのトップに対しても知識の持ち合わせがない。
 お義母様は、頭をかきながら眉根を寄せる。

「オーフェンはかなりの食わせ物だ。見た目は若いが、竜人族の200歳は超えてる爺だよ。腹に一物も二物も抱えてる奴さ、あの男は」
「ふむ……何かロイ君を利用しようと目論んでいると?」
「それが、どうもロイの方も協力的なようでね。二人で何を企んでいるのやら……」

 あぁ、それはとても嫌な予感がする……。
 うっすら頭痛がしてきた私がこめかみを揉んでいると、エマがそっと私の手を握ってくれた。

「何を企んでいるかは、ロイに聞くとして。とにかく、まずは無事に帰ってきてくれてよかったではありませんか」

 私たちもまずは気を落ち着けて休みましょう、と、エマはほほ笑んだ。
 確かに、山ほど問題が……それこそ、恐らくまだ見えていない物も含めて、かなりの問題が発生するのだろうが、今この瞬間だけは平和だ。
 まずは、冷静さを取り戻さなくては。

 紅茶を淹れてきますわね、とエマが席を立つと、父上はロイを探しに行くと屋敷を出て行き、お義父様もそれを追って行った。
 お義母様はエマの紅茶を待つようで、母上もそれに倣って部屋に残り、私はエマを手伝うためにキッチンへ向かう。
 いや、本当は、少しの間だけでもエマと二人きりになりたかったからだ。

「まったく、ロイは父上に似て、いや、父上以上にやんちゃに育ったものだなぁ……」

 散々苦労を掛けている手前、お義父様たちの前で愚痴は言いにくい。
 が、同じ苦労を感じているエマになら、安心して内心を吐露できる。
 今後、ターセル子爵領を背負って、王家を相手取った交渉をしなければならないのだから。
 少しぐらい、妻に弱音を吐いたって仕方がないじゃないか。


【ロイ】

 俺は、執事のボガートと下男のライノを連れ、背中に卵を背負うと、意気揚々とミランダ姉ちゃんのいる店を目指した。

「ミラねぇね!」
「ロイ! 大丈夫だった⁉」

 ミランダ姉ちゃんは、店先に俺が顔を出すと、一直線に奥から走ってきて、俺を前から後ろから確かめる。

「帝国まで行ってたんだってね? 怪我とかしなかった?」
「だいじょうぶだよ! それより、みて! おれのりゅう!」

 俺は、背中の卵をくるっと前に回し、両手で包んで見せる。
 白くてつやつやした、触り心地のいい自慢の卵だ。

「聞いたわよ、竜騎の卵なんでしょう?」

 さすが、ミランダ姉ちゃんは耳が早い。

「ロイはいいわねぇ。末っ子だから、プレゼントが豪華で」
「じゃあ、ミラねぇねもたまごもらったら?」
「要らないわよ、竜騎の卵なんて」

 ミランダ姉ちゃんは苦笑して、俺に耳打ちする。

「竜騎って、すっごく餌代がかかるのよ? それこそ、王様か貴族か軍隊じゃないと持てないの」
「そうなの?」
「でも、ロイなら自分で餌を狩って来られるから安心ね」

 そうか、ルードルフ祖父ちゃんも、ディアナの餌を狩りによく黒の森に入っているな。
 俺も、卵が孵ったら餌を狩ってきてあげよう。

「ミラねぇね、おれね、たまごがかえったら、ミラねぇねものせてあげるね!」
「あら、ロイの操縦で大丈夫かしら」

 ミラねぇねはクスクス笑い、でも、と付け加える。

「安全に乗れるようになったら、王都まで買い物に連れてってね」
「うん! やくそくね!」

 俺はミランダ姉ちゃんに見送られながら、ほくほくした気持ちで次の場所に向かった。
 次は、ルードルフ私兵団の宿舎だ。
 今の時間なら、庭で訓練という名の遊びをしている頃だろう。

「あっ! めいよこもんだ!」
「めいよこもんがかえってきた!」

 俺が姿を見せると、亜人の子供たちがわらわらと集まってくる。

「何それ!」
「すごーい!」
「これはりゅうのたまご! おれのりゅうだよ!」

 俺はまた卵をお腹側に回し、自慢の卵を紹介する。

「さわっちゃだめだからね! おれがまりょくをあげないとけないから!」
「わかった~!」

 俺は、おっかなびっくり興味津々で卵をのぞき込む子供たち一人一人に卵を見せてあげながら、建物から出てきたフィニアスを見つける。

「ロイ様! ご無事の帰還、何よりでございます!」

 フィニアスは跪かんばかりの勢いで俺に駆け寄ってきて頭を下げる。

「うん。おれはだいじょうぶだったよ」
「はい。それで、あの……冒険者ギルドで小耳に挟んだのですが……」

 フィニアスは、恐る恐る尋ねる。

「ロイ様がア―スドラゴンを一撃で倒した……というのは?」
「たおしたよ」

 俺が頷くと、フィニアスはひきつった笑みを浮かべて硬直する。
 俺の後ろに立っていた執事のボガートは、コホンと咳払いし、付け加えた。

「ロイ坊ちゃまはルードルフ様よりお強いので」
「…………⁉」

 フィニアスは、なんだかショックを受けたように固まっている。
 竜騎の卵を自慢したかったけど、これは長くかかりそうだ。
 俺は動かないフィニアスを放っておいて、次に行くことにした。

 俺はようやく、冒険者ギルド近くの宿場に泊っているセクトたちの所に向かった。
 セクトたちは、強行軍の旅の疲れを癒すために、1週間ほど冒険者活動を休んでいるらしい。
 その間実入りがないのはどうなのか、とちょっと心配したが、その辺はターセル子爵家から払われた報酬が結構な額だったようで、問題ないらしい。

「セクト、ニール、バルガ!」 

 俺は、セクトたちが泊っているという宿の部屋をノックし、声をかける。

「あれ、ロイの兄貴じゃないですか!」

 セクトたちは丁度一つの部屋に集まっていたようで、俺を部屋に入れてくれる。

「えっとね、マリーばあばが、ちゃんとおれいをいいにいきなさいって。むかえにきてくれてありがとう」
「そんなに畏まらなくてもいいんですよ、ロイ君」
「そうだな。俺たちは何の役にも立っていないし」

 苦笑するセクト達だったが、俺は首を横に振る。

「おれ、ほんとにうれしかったから、ちゃんとおれいしようとおもう」
「お礼っすか? でも、兄貴から高価なものはもらえませんし……」
「ううん、そうじゃなくて、おれにしかできないこと」
「「「?」」」

 顔を見合わせるセクトたちに、俺はふふん、と腕を組む。

「『じごくのきょうかがっしゅく』をしようとおもう!」
「地獄の……」
「強化合宿……?」

 セクトたちはわなわなと体を震わせ、一歩後ずさる。

「い、いえいえ、俺たちは舎弟として当然のことをしただけで……!」
「そ、そうですね、お礼を頂くようなことは何一つありませんから……!」
「むしろ、お礼と言うより拷問だろ……!」

 いまいち乗り気でないらしいセクトたちに、俺は首を傾げる。
 俺だったら、今より強くなれる強化合宿があるなら、大枚はたいても参加するのだが?

「セクトたちにしんでほしくないし……いいとおもったのに……」

 俺がしゅんと俯くと、セクトたちは慌てて弁解する。

「い、いや、そのお気持ちはホント嬉しいっすよ⁉」
「そ、そうですよね! 皆で合宿、いいかもしれませんね!」
「鍛えることも、冒険者には必要だしな……!」
「じゃ、きまりね!」

 俺がにっこり笑うと、セクトたちがはっとする。

「「「はめられた……!」」」
「だいじょうぶだよ。ほんとにしんだりしないから」

 俺は、ルードフル祖父ちゃんから教わった格言を教えてあげる。

『10割辛い訓練を積めば、9割の難敵に出会っても冷静に戦える!』

「いや、分かるけど過激すぎるんすよ!」
「基準がルードルフ様と僕たちじゃ違うんですって!」
「10割辛い時点で死人が出る……!」

 セクトたちはギャアギャア文句を言っているが、訓練が終わって一回り成長したころにはきっと俺に感謝するだろう。
 兄貴分として、しっかりセクトたちを鍛えないとな! 


 セクトたちの休養が終わるころに、俺も母上の軟禁から解放されて、それから毎日俺はルードルフ祖父ちゃんに見守られながら、セクトたちと一緒に訓練を始めた。
 といっても、やることはいわゆる鬼ごっこみたいなものだ。

 セクトたちは3人がかりで俺を捕まえれば勝ち。
 ただし、俺は魔法も使うし、反撃もする。
 俺が竜騎の卵を背負ったままなのも、セクトたちに有利なハンデだ。

 なのに、3人はすぐにバテて、休憩ばかりしている。

「はやくたたないと、まほうをうちこむからね?」
「か、勘弁してくださいよ、兄貴ぃ!」
「何でそんなにタフなんですかぁ!」
「うんうん……」

 何でと言われてもなぁ。
 俺の身体は4歳児だから、俺が動き回れているのは、ほとんどが身体強化魔法によるものだ。

「3にんとも、しんたいきょうかまほうがざつだから」

 魔力量の問題もあるにはあるが、そもそも身体強化魔法をちゃんと練れてない。
 動きながらだと、更に雑になって、そのせいで肉体の体力を無駄に消費している気がする。

「うごきながらのしんたいきょうかに、ちゃんとなれないと」

 これは、もう動いて動いて、実戦で慣れるしかない。

「はい、たって!」

 俺は、手に氷柱を発生させながら、3人を追い込んでいく。

「これじゃどっちが鬼か分かんねぇよっ!」
「ひいぃぃっ!」

 こうして、俺の地獄の強化合宿はまだまだ続くのだった。


 そんなこんなで、俺は訓練漬けの毎日を送っていたのだが、そこにいつもの男がやって来る。
 王弟オレリアスだ。

「またきたの?」

 俺は、白い馬にまたがってやってきた王弟に、呆れた目を向ける。
 しかし、当の王弟は、なんだか感動したような目で俺を凝視している。

「君がロイ君かい?」
「え……? しってるでしょ?」

 何を今更、と俺が首を傾げると、王弟はひらりと馬から降り、からからと笑う。

「あぁ知ってる、もちろん知ってるとも。噂のロイ君の事はね」
「ロイよ、またオレリアスが来たのか?」

 祖父ちゃんは顔をしかめてやってきたが、む? と足を止める。

「……こんなところで何をしておるのですかな?」
「これは、 ❝ 師匠 ❞ 。いつも通り視察に来たのだよ」

 何だか、今日の王弟はいつもより偉そうだな?
 なんて俺が考えていると、王弟は俺にウインクをする。

「君は帝国で随分活躍したみたいじゃないか。詳しく話を聞かせてもらうよ?」

 王弟、何かキャラ変わった……?
 俺は首を傾げながら、いつも以上に不機嫌になった祖父ちゃんについて、屋敷へと歩き出した。

「王弟殿下、ようこそおいで下さいました……」

 屋敷に着くと、父上が恐縮しきりでペコペコ頭を下げている。
 まぁ、今回の俺のやらかしを思えば、気まずくもなるのかもしれない……。

 俺がそっと視線を逸らすと、祖父ちゃんが父上に何やら耳打ちをする。
 父上はぎょっとして、祖父ちゃんと王弟を交互に見比べた。

「し、失礼いたしました! どうぞこちらへ……!」

 父上はやけに身を低くし、客間への道を案内する。
 王弟は何度もここに来ているから、今更そんなに気を遣わなくてもいいと思うんだけど。

「さて、それでは報告を聞こうか」

 王弟は、客室の二人掛けのソファに広々と腰かけると、足を組んで紅茶のカップを持つ。
 父上は冷や汗をかきながら、隣に座った俺に確認を取りつつ、転移事故から帝都での出来事を話し始めた。
 王弟は、いつもならすぐに顔面からテーブルに突っ伏すところなのだが、今日は時々笑顔を引きつらせるものの、落ち着いて話を聞いている。

 もしかしたら、これはそんなに怒られない流れか?
 俺はちょっと安心してきて、お茶請けのクッキーを取ってかじりながら、ふんふんと父上の話に頷いていた。

「それで、帝都の民に被害が出るのを危惧して、冒険者ギルドから依頼を受けたロイが、ア―スドラゴンの討伐に向かったという訳なのです」
「なるほど、それはそれは随分と目立つことを……」

 王弟は、こめかみを押さえてため息をついている。
 おかしいな、俺はいいことをしたはずなのに。

「ひとだすけだよ。おれ『えいゆう』になったし!」
「うむうむ」

 ルードルフ祖父ちゃんは、英雄というくだりで大きく頷いている。

「ていこくへいも、ころしてないし!」
「えらいではないか、ロイ」
 
 祖父ちゃんが俺の頭を撫でてくれる。

「ゆうしゃとも、たたかわなかったよ!」
「……んん?」

 祖父ちゃんはピタリと手を止め、俺の顔をのぞき込む。

「ロイよ……帝国に勇者がおったのか……?」
「うん、いたよ。ていとにゆうしゃがいるって、おーふぇんがいってた」
「「「は!?」」」

 祖父ちゃんも王弟も父上も、目を見開き顔を見合わせる。

「ロイ、それは聞いておらぬぞ⁉」
「えっと、いうのわすれてた」

 だって、勇者と直接顔も合わせてないから、いまいち記憶に残ってなくて。
 何かあればオーフェンが知らせて来るだろうと思って、すっかり忘れてた。

「ま、待て! ギネビアに侵攻したあの勇者が、帝国の戦力に加わっていると……?」

 王弟は眉間を押さえ、取り乱し始める。
 いつもの光景って感じだ。

「んー、たぶんそう。でもね、おれをこわがって、かくれてたんだって」

 俺は、オーフェンに言われたことを思い出して、ちょっと笑ってしまう。
 まぁ、あの勇者は少なくとも俺より強くはなっていないようだから、とりあえず安心だな。

「はぁ……ロイ、そう言う大事なことは必ず報告してくれ……」

 父上は顔を押さえ、うな垂れている。
 王弟は、気を取り直すように頭を振り、俺を見る。

「それで、まだ言っていないことはないかな? 何かあるんじゃないかい?」

 俺がちらりと父上を見ると、父上は疲れ切ったように続きを話し始めた。
 リーヴァスの事や、ジェムゴーレムの宝石の話を聞き終わると、王弟は組んだ指に額を着け、撃沈している。
 やっぱり、今日もこうなってしまったか。

「城で報告を聞いていた方が、まだ心臓の負担が少なかったかもしれない……」

 王弟は何かぶつぶつ言った後、ガバッと顔を上げる。

「これは明らかに同盟国を巻き込む事態だ。特に、帝国の皇位継承者を、モルグーネ王国が主導で援助したと思われるのは避けられない」

 何のことだ?
 俺は首を傾げるが、父上たちは頷いている。

「そこで、だ。近々行われる対帝国同盟の会議で事情を説明しようと思うのだが、そこに護衛としてこのロイ君の同行を要請したい」
「お待ちください! へい……お、王弟殿下!」

 父上は思わず立ち上がり、身を乗り出す。

「ロイはこのターセルに帰って来たばかりなのですよ⁉」
「それは承知しているが、今回の事はこのロイ君が招いたことだ。責任を取るべきだろう」
「ほう……責任だと?」

 ビシッ、とティーカップにヒビが走り、王弟が怯む。
 祖父ちゃんは、殺気と魔力をむき出しにして、王弟を睨んだ。

「ロイはまだ4歳。それも、人を救うために冒険者として当然の行動を取ったまで。その子供の件とて、命を救うために動いたにすぎぬ。それを、責任を取れと言うのか?」
「そ、そちらの怒りはもっともだが、事態はそう綺麗事では済まぬのだ。もしこの事が明るみに出れば、同盟国の国々の間では、モルグーネ王国が帝国に擦り寄ったのでは、と危惧する声が出るだろう。だから、外から知らされる前に、内々に事情を共有しておく必要がある」

 王弟は、祖父ちゃんの殺気にビクビクしながらも、言葉を続ける。

「それに、内政に干渉されたと分かれば、帝国が報復に攻勢を強めるのは必至だ。勇者の件も無視できぬ。全ての情報を同盟国にも周知させておかねばならぬのだ」

 それには当人を連れて行くのが手っ取り早い、と、王弟は俺を指し示す。
 何だかよく分からないが、俺のせいで同盟国に色々と報連相が必要と言う訳か。

「帝国との戦争はいつまで続くか分からぬ。このモルグーネ王国とて、今の備えでは兵糧が心もとない。シスタ教も治療薬を出し渋っては値を釣り上げるなど、嫌がらせをしてきていたが、ここに来て妙に大人しくなったのが返って不穏だ。予断を許さぬ状況だからこそ、今同盟国の心証を悪化させるわけにはいかぬのだ」

 王弟、祖父ちゃん相手でも今日はなんだか頑張っているな。
 祖父ちゃんは、王弟の言い分を認めてはいるようだが、うんとは言わない。
 父上はオロオロと二人を見比べることしかできないようだし、ここは俺が声を上げるしかないか。

「どうめいこくかいぎって、どこでやるの?」
「あ、あぁ、エルンサルド王国の南東にある、アロニア王国と言う所だよ」
「そう」

 俺は、一番大事なことを聞く。

「そのくにに、だんじょんはある?」
「「ロイ……」」

 俺のキラキラした目に、祖父ちゃんと父上はうな垂れる。
 王弟はいい笑顔を浮かべ、親指を立てて頷いた。
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 木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。  SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。  祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。  恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。  蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。  そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。  隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。

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