僕は誰も選べない

蓮見 黎

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 どこかで、電子音が響いた。愁が、音に気付きふと顔を揺らす。
「おっと、もう時間かよ」
 電子音は加瀬の腕時計から響いていた。
「遅れる」
 愁に挿入したまま、加瀬は起き上がる。不意に突き上げられた愁は再び射精した。
「ハハッ、まだ足りないって?でもそろそろ時間なんだよ」
 加瀬は愁のペニスに巻いた革のブレスレットを外すと、同じように両腕の拘束を解いた。
 強張った愁の両腕を撫でるように元に戻すと、ベッドに押し倒すように押し付ける。
 先ほどまでの乱雑な仕草ではなく、恋人をそっと扱うように、加瀬は動いた。
 虚ろな愁の瞳が、加瀬を見る。
 加瀬は唇を舐め、そして柔らかく噛みつくように愁の唇へ自らの唇を重ねた。
「…メインイベント。愛し合おうぜ、シュウ?」
 そっと咥内に挿入された加瀬の舌が、柔らかく愁の舌を愛撫する。
 舌に付けられたピアスが、愁の歯茎を撫でる。突然触れ方の変貌した加瀬の愛撫に、ピクリと愁の眉が反応した。
「気持ちイイ?…もっと、よくしてやるよ」
 言って、加瀬はゆっくりと腰を揺らした。頬に口付け、耳朶を舐める。首筋を甘く噛み、胸元に唇が降りていく。
 愁は、誰が愛撫を施しているのか、判別不能に陥っていた。
 もしかしたら、貴遠が帰って来て、慰めてくれているのかもしれない。
「シュウ、愛してる」
 耳元に、低い声が響いた。
「…ん…」
 甘い響きは、耳にくすぐったい様な、腰を辿る指も、優しい。
 そっと肌を滑る指が、愁のペニスを撫でた。まだ熱く、痛む愁の性器を、そっと扱いていく。
「…ぁッ」
 瞬く間に上り詰めた愁は、小さな声を上げて達した。目を開くと、ぼんやりと視界に誰かが映った。
 世界が歪み、回る。
「可愛い顔して。たまんねー…」
 唇に、柔らかい何かが触れた。唇だと、愁は求めるようにそれに応えた。
 その首に腕を巻き付けると、ベッドに押し付けるように深く口付けされ、愁は目を閉じて夢中に舌を絡めた。ベッドが軋みを上げ、熱い吐息が重ねた唇を引き離すように速度を速めていく。

 離れては貪るように唇を求めあうと、愁の胎内で熱く何かが弾けた。

「…ッ」
 閉じた昏い世界が白く染まり、愁は抱きついたその首に縋った。

「愛してる、シュウ」

 そう囁くのは誰だったのか。
 愁は、意識が昏い奥底に堕ちていくのを、静かに、そっと手放した。
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