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救えない結末
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腹に突き刺さる熱と痛み、俺の腹に刺さる剣を握る男。
ポタポタと地面に真っ赤な水溜りが出来る。
剣を引き抜くと、身体から血が吹き出て止まらなくなる。
ぼんやりと「あぁ、俺…死ぬんだな」と頭に浮かび上がる。
また、俺は失敗したんだ…この世界を救う事が出来なかった。
俺が死んだらこの世界がどうなるか、俺は知っている。
世界の結末を知っているからこそ、俺にしか止める事が出来ない。
事前に人に危険な事を伝えた事もあったが、嫌われ者の俺の話を誰が信用する?
また嘘つきがホラを吹いているとしか思われないのが現実だ。
俺の言葉に真剣に耳を傾ける人なんていない、だからこそ俺自身が止めなきゃいけない。
じゃないと、この世界は崩壊して俺は二度と生まれ変わる事が出来ない。
そして、アイツとの約束…アイツを助ける事が出来なくなる。
この世界は妹が好きでやっていた乙女ゲームの世界だった。
兄妹で身体が弱かった俺達の唯一の楽しみは両親が買ってくれるゲームだった。
幸せの話を見ていると、俺達も病気が治って幸せになる希望が持てた。
ゲームの貸し借りをしていた中にこのゲームもあった。
ヒロインの少女と少女を守る男性キャラクターとの恋愛物語。
結局病気が治る事なく、俺は病気が悪化して生きられなくなった。
今世で出来なかった幸せを来世では必ず掴みたいと思いながら…
恋愛ゲームの最後は必ずハッピーエンドになるなんて誰が言ったんだ。
この世界は、バッドエンドの世界…そして俺はバッドエンドを引き起こすきっかけになる当て馬キャラクターに生まれ変わっていた。
最初こそ受け入れるのは難しかった、時間が気持ちを落ち着かせてくれた。
ヒロインを姑息な手で手に入れようとして、邪神王の力を借りた。
それが人間と神の戦争の引き金になり、俺は殺されてヒロインと男性キャラクターは結婚して幸せになる。
当て馬が幸せになるのはほとんどない、メインはヒロイン達だから当然だ。
生まれ変わっても幸せになれない未来は嫌だ、俺は自分の未来を変えるために頑張った。
惚れるはずのヒロインには近付かないようにしてひっそりと暮らしていた。
ヒロインに会わなければ戦争は起こらない、ゲームの当て馬と反した行動ばかり取った。
その時、攻略キャラクターの一人と幼少期の頃に出会った。
ゲームに反した一番の出来事が彼と親友になった事だ。
妹が気に入っていた騎士団長である彼はゲームでは俺に憎悪を向けていたが、この世界では優しくて頼れる人だった。
俺が証拠もない「前世の記憶があって、この世界はゲームの世界なんだ」という言葉を信じてくれた。
ゲームの存在もない世界で信じてくれる彼に何度も救われた。
他の人には信じてもらえなくて、二人だけの秘密のようになった。
友人として彼とヒロインが結ばれたらいいなと思っていた。
お互い惹かれ合っている様子で、このまま行けば二人の結婚式を間近で見れるかもしれない。
未来の幸せな物語を想像して、その俺の願いは叶う事がなかった。
邪神に関わらないようにしていたはずなのに、戦争は起きた。
邪神は別の人間に取り憑いて戦争を起こして攻略キャラクターやヒロインを次々と殺していった。
足が負傷した状態で、目の前で人が死んだ事がショックで固まる俺に覆い被さって守る親友。
身体がボロボロなのに、俺の盾になる彼に「やめてくれ!!」と泣きながら叫んだ。
今ならまだ彼は走って逃げられる、このままここにいたら彼は死んでしまう。
「君さえ生きていればまだ希望はある!だから早く逃げ…」
「リトのいない世界に生きて希望なんかない、逃げるなら一緒に」
「俺の身体は動けないんだ、だからクラウスだけでも…」
俺を運ぼうとしているが、攻撃は止まる事はなくて体力も限界だ。
二人は逃げられない、俺は死を覚悟したが彼はまだ諦めていなかった。
後ろから強い光が見えて、これに当たったら死んでしまう。
クラウスの体温を失った冷たい手が俺の涙でぐちゃぐちゃになった頬に触れる。
彼は最後に言葉を残して、俺の意識はプツンと消えてなくなった。
新しい記憶を抱いて、俺はもう一度生まれ変わる事になった。
また新しい自分になるのかと思って目を開けたら、綺麗な青空が広がっていた。
俺達が死んだあの戦争が起こる一年前、16歳に戻っていた。
助けたかった俺の気持ちがもう一度やり直す事を許してくれた。
彼が最後に言った言葉をついさっき言われた事のように思い出す。
『この結末がゲームというもののようにリセットして変わるなら、君に変えてほしい…俺はどんな君でも味方でいるから』
『クラウス…』
『俺は…君の事が…』
最後に何を伝えたかったか分からないが、もう一度やり直す事が出来るのなら彼を救いたい。
ゲームを正しく進めれば必ず世界は平和になる、それが難しいんだけど…
俺一人が当て馬にならなくても、バッドエンドは回避出来ない。
邪神をどうにかするしかない、出来るのか不安になる気持ちもあるがやらなければいけない。
やらないと同じ結末になるだけだ、今度こそハッピーエンドを見るんだ。
あれから俺は何度もやり直した、クラウスと親友になり救えなかった。
クラウスと関わってはいけないのかと思って避けていると、反逆者に間違われてクラウス以外の攻略キャラクターに殺される。
ゲームとは違う死に方だけど、何度も殺されたら恐怖はなかった。
俺が犠牲になってもクラウスと再会していないから心を痛める事はない。
幸せな結婚式は見えなかったけど、幸せになればいいなと思った。
そして俺は、同じ日同じ時間に戻されて「失敗したんだ」と思った。
占い師に扮して予知夢として未来を伝えても鼻で笑われるだけだ。
クラウスに伝えようとすると俺は必ず何者かに殺される。
何度もタイミングを見て伝えようとしても俺の死は回避出来ない。
必ずバッドエンドにするこの世界がそれを阻止するようだった。
それは、クラウスなら信じてくれるんだという確信にもなった。
どうすればいいのか分からない、クラウスと関わっても死んで関わらなくても死ぬ。
他の攻略キャラクターとも仲良くなる事も試したが、クラウスは何故か俺に冷たくなった。
攻略キャラクター達と仲良くなっても邪神を止める事は出来ないどころか邪神が攻めてくるのが早くなる。
それはクラウスの存在が大きかったんだと気付かされた。
俺に冷たくなったクラウスは騎士団長を辞めて国から出ていった。
ヒロインもクラウスの後を追いかけていき、いなくなってしまった。
クラウスという脅威はなくなり、ただ攻めやすくなっただけだった。
ゲーム内で最強と呼ばれるクラウスがいるだけで、命は引き延ばせていたんだ。
邪神を倒して世界が平和になるにはクラウスの存在が必要不可欠だ。
でも、クラウスだけと仲良くなっても他の人と仲良くなってもダメだ。
ポタポタと地面に真っ赤な水溜りが出来る。
剣を引き抜くと、身体から血が吹き出て止まらなくなる。
ぼんやりと「あぁ、俺…死ぬんだな」と頭に浮かび上がる。
また、俺は失敗したんだ…この世界を救う事が出来なかった。
俺が死んだらこの世界がどうなるか、俺は知っている。
世界の結末を知っているからこそ、俺にしか止める事が出来ない。
事前に人に危険な事を伝えた事もあったが、嫌われ者の俺の話を誰が信用する?
また嘘つきがホラを吹いているとしか思われないのが現実だ。
俺の言葉に真剣に耳を傾ける人なんていない、だからこそ俺自身が止めなきゃいけない。
じゃないと、この世界は崩壊して俺は二度と生まれ変わる事が出来ない。
そして、アイツとの約束…アイツを助ける事が出来なくなる。
この世界は妹が好きでやっていた乙女ゲームの世界だった。
兄妹で身体が弱かった俺達の唯一の楽しみは両親が買ってくれるゲームだった。
幸せの話を見ていると、俺達も病気が治って幸せになる希望が持てた。
ゲームの貸し借りをしていた中にこのゲームもあった。
ヒロインの少女と少女を守る男性キャラクターとの恋愛物語。
結局病気が治る事なく、俺は病気が悪化して生きられなくなった。
今世で出来なかった幸せを来世では必ず掴みたいと思いながら…
恋愛ゲームの最後は必ずハッピーエンドになるなんて誰が言ったんだ。
この世界は、バッドエンドの世界…そして俺はバッドエンドを引き起こすきっかけになる当て馬キャラクターに生まれ変わっていた。
最初こそ受け入れるのは難しかった、時間が気持ちを落ち着かせてくれた。
ヒロインを姑息な手で手に入れようとして、邪神王の力を借りた。
それが人間と神の戦争の引き金になり、俺は殺されてヒロインと男性キャラクターは結婚して幸せになる。
当て馬が幸せになるのはほとんどない、メインはヒロイン達だから当然だ。
生まれ変わっても幸せになれない未来は嫌だ、俺は自分の未来を変えるために頑張った。
惚れるはずのヒロインには近付かないようにしてひっそりと暮らしていた。
ヒロインに会わなければ戦争は起こらない、ゲームの当て馬と反した行動ばかり取った。
その時、攻略キャラクターの一人と幼少期の頃に出会った。
ゲームに反した一番の出来事が彼と親友になった事だ。
妹が気に入っていた騎士団長である彼はゲームでは俺に憎悪を向けていたが、この世界では優しくて頼れる人だった。
俺が証拠もない「前世の記憶があって、この世界はゲームの世界なんだ」という言葉を信じてくれた。
ゲームの存在もない世界で信じてくれる彼に何度も救われた。
他の人には信じてもらえなくて、二人だけの秘密のようになった。
友人として彼とヒロインが結ばれたらいいなと思っていた。
お互い惹かれ合っている様子で、このまま行けば二人の結婚式を間近で見れるかもしれない。
未来の幸せな物語を想像して、その俺の願いは叶う事がなかった。
邪神に関わらないようにしていたはずなのに、戦争は起きた。
邪神は別の人間に取り憑いて戦争を起こして攻略キャラクターやヒロインを次々と殺していった。
足が負傷した状態で、目の前で人が死んだ事がショックで固まる俺に覆い被さって守る親友。
身体がボロボロなのに、俺の盾になる彼に「やめてくれ!!」と泣きながら叫んだ。
今ならまだ彼は走って逃げられる、このままここにいたら彼は死んでしまう。
「君さえ生きていればまだ希望はある!だから早く逃げ…」
「リトのいない世界に生きて希望なんかない、逃げるなら一緒に」
「俺の身体は動けないんだ、だからクラウスだけでも…」
俺を運ぼうとしているが、攻撃は止まる事はなくて体力も限界だ。
二人は逃げられない、俺は死を覚悟したが彼はまだ諦めていなかった。
後ろから強い光が見えて、これに当たったら死んでしまう。
クラウスの体温を失った冷たい手が俺の涙でぐちゃぐちゃになった頬に触れる。
彼は最後に言葉を残して、俺の意識はプツンと消えてなくなった。
新しい記憶を抱いて、俺はもう一度生まれ変わる事になった。
また新しい自分になるのかと思って目を開けたら、綺麗な青空が広がっていた。
俺達が死んだあの戦争が起こる一年前、16歳に戻っていた。
助けたかった俺の気持ちがもう一度やり直す事を許してくれた。
彼が最後に言った言葉をついさっき言われた事のように思い出す。
『この結末がゲームというもののようにリセットして変わるなら、君に変えてほしい…俺はどんな君でも味方でいるから』
『クラウス…』
『俺は…君の事が…』
最後に何を伝えたかったか分からないが、もう一度やり直す事が出来るのなら彼を救いたい。
ゲームを正しく進めれば必ず世界は平和になる、それが難しいんだけど…
俺一人が当て馬にならなくても、バッドエンドは回避出来ない。
邪神をどうにかするしかない、出来るのか不安になる気持ちもあるがやらなければいけない。
やらないと同じ結末になるだけだ、今度こそハッピーエンドを見るんだ。
あれから俺は何度もやり直した、クラウスと親友になり救えなかった。
クラウスと関わってはいけないのかと思って避けていると、反逆者に間違われてクラウス以外の攻略キャラクターに殺される。
ゲームとは違う死に方だけど、何度も殺されたら恐怖はなかった。
俺が犠牲になってもクラウスと再会していないから心を痛める事はない。
幸せな結婚式は見えなかったけど、幸せになればいいなと思った。
そして俺は、同じ日同じ時間に戻されて「失敗したんだ」と思った。
占い師に扮して予知夢として未来を伝えても鼻で笑われるだけだ。
クラウスに伝えようとすると俺は必ず何者かに殺される。
何度もタイミングを見て伝えようとしても俺の死は回避出来ない。
必ずバッドエンドにするこの世界がそれを阻止するようだった。
それは、クラウスなら信じてくれるんだという確信にもなった。
どうすればいいのか分からない、クラウスと関わっても死んで関わらなくても死ぬ。
他の攻略キャラクターとも仲良くなる事も試したが、クラウスは何故か俺に冷たくなった。
攻略キャラクター達と仲良くなっても邪神を止める事は出来ないどころか邪神が攻めてくるのが早くなる。
それはクラウスの存在が大きかったんだと気付かされた。
俺に冷たくなったクラウスは騎士団長を辞めて国から出ていった。
ヒロインもクラウスの後を追いかけていき、いなくなってしまった。
クラウスという脅威はなくなり、ただ攻めやすくなっただけだった。
ゲーム内で最強と呼ばれるクラウスがいるだけで、命は引き延ばせていたんだ。
邪神を倒して世界が平和になるにはクラウスの存在が必要不可欠だ。
でも、クラウスだけと仲良くなっても他の人と仲良くなってもダメだ。
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