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優斗の嫉妬が描かれる回
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――新田里奈と藤川優斗――
それは、昼休みの出来事だった。
里奈はクラスの男子、佐伯と楽しそうに話していた。
文化祭の実行委員になったらしく、ポスターのデザインを相談していたのだ。
身振り手振りで説明する里奈に、佐伯が笑いながらツッコミを入れる。
その様子を、教室の後ろから優斗が見ていた。
胸の奥が、ざわつく。
(あんな顔、俺にはあんまりしないのに)
自分でも幼いと思う。
でも視線が離れない。
里奈が佐伯の肩を軽く叩いて笑った瞬間、優斗は目を逸らした。
放課後。
いつものように一緒に帰るはずだった。
けれど優斗はどこかよそよそしい。
「なんかあった?」
里奈が聞いても、
「別に」
短い返事だけ。
その距離が、里奈を不安にさせる。
校門を出たところで、里奈は立ち止まった。
「優斗、怒ってる?」
沈黙。
それから、少し低い声。
「……佐伯と楽しそうだったな」
里奈は一瞬きょとんとする。
「え? 文化祭の話だよ?」
「分かってる」
分かっている。
でも、面白くなかった。
優斗は視線を落とす。
「なんか、俺いなくてもいい感じだった」
その一言に、里奈の胸がぎゅっと締めつけられた。
「何それ」
思わず笑ってしまう。
「優斗って、そんなことで嫉妬するの?」
優斗は顔を赤くする。
「……悪いかよ」
その不器用な言い方が、可愛くて、切なくて。
里奈は一歩近づいた。
「私が好きなのは誰だと思ってるの?」
優斗は黙る。
「優斗だよ」
まっすぐ言われて、優斗は戸惑ったように瞬きをした。
「佐伯はクラスメイト。優斗は彼氏」
里奈は優斗の袖をそっと掴む。
「ちゃんと違う」
しばらくの沈黙。
やがて優斗は、小さく息を吐いた。
「……ごめん。俺、自信なくて」
その言葉は、里奈にとって初めて聞く弱さだった。
「里奈、人気あるし。俺、地味だし」
里奈は首を横に振る。
「優斗は優斗。私にはそれが一番」
夕焼けが二人を包む。
優斗はゆっくりと里奈の手を握った。
「次から、ちゃんと言う」
「うん」
「嫉妬してるって」
里奈は笑った。
「その方が分かりやすい」
二人の距離が、また少し縮まる。
嫉妬は苦しい。
でも、それは大切に思っている証でもある。
新田里奈と藤川優斗。
まだ未完成な二人は、少しずつ“本当の恋人”になっていく。
それは、昼休みの出来事だった。
里奈はクラスの男子、佐伯と楽しそうに話していた。
文化祭の実行委員になったらしく、ポスターのデザインを相談していたのだ。
身振り手振りで説明する里奈に、佐伯が笑いながらツッコミを入れる。
その様子を、教室の後ろから優斗が見ていた。
胸の奥が、ざわつく。
(あんな顔、俺にはあんまりしないのに)
自分でも幼いと思う。
でも視線が離れない。
里奈が佐伯の肩を軽く叩いて笑った瞬間、優斗は目を逸らした。
放課後。
いつものように一緒に帰るはずだった。
けれど優斗はどこかよそよそしい。
「なんかあった?」
里奈が聞いても、
「別に」
短い返事だけ。
その距離が、里奈を不安にさせる。
校門を出たところで、里奈は立ち止まった。
「優斗、怒ってる?」
沈黙。
それから、少し低い声。
「……佐伯と楽しそうだったな」
里奈は一瞬きょとんとする。
「え? 文化祭の話だよ?」
「分かってる」
分かっている。
でも、面白くなかった。
優斗は視線を落とす。
「なんか、俺いなくてもいい感じだった」
その一言に、里奈の胸がぎゅっと締めつけられた。
「何それ」
思わず笑ってしまう。
「優斗って、そんなことで嫉妬するの?」
優斗は顔を赤くする。
「……悪いかよ」
その不器用な言い方が、可愛くて、切なくて。
里奈は一歩近づいた。
「私が好きなのは誰だと思ってるの?」
優斗は黙る。
「優斗だよ」
まっすぐ言われて、優斗は戸惑ったように瞬きをした。
「佐伯はクラスメイト。優斗は彼氏」
里奈は優斗の袖をそっと掴む。
「ちゃんと違う」
しばらくの沈黙。
やがて優斗は、小さく息を吐いた。
「……ごめん。俺、自信なくて」
その言葉は、里奈にとって初めて聞く弱さだった。
「里奈、人気あるし。俺、地味だし」
里奈は首を横に振る。
「優斗は優斗。私にはそれが一番」
夕焼けが二人を包む。
優斗はゆっくりと里奈の手を握った。
「次から、ちゃんと言う」
「うん」
「嫉妬してるって」
里奈は笑った。
「その方が分かりやすい」
二人の距離が、また少し縮まる。
嫉妬は苦しい。
でも、それは大切に思っている証でもある。
新田里奈と藤川優斗。
まだ未完成な二人は、少しずつ“本当の恋人”になっていく。
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