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里奈が家で思い出して布団に転がる夜
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――胸いっぱいの静かな時間――
家に帰って、お風呂を済ませて、パジャマに着替えて。
新田里奈は自分の部屋の布団にごろん、と倒れ込んだ。
天井を見つめる。
……三秒。
「……っ」
急に思い出して、顔を両手で覆う。
(だめだめだめ)
さっきまで普通だったのに。
優斗の腕。
胸の鼓動。
制服越しに伝わってきた体温。
全部、一気に蘇ってきた。
「……抱きしめられた……」
声に出した瞬間、さらに恥ずかしくなる。
里奈は布団の上で転がった。
右。
左。
うつ伏せ。
枕に顔を押しつける。
「むり……」
心臓がまだ早い。
あんなに近くで、優斗の匂いがして、
あんなに静かで、優しくて。
ドラマみたいなキスもなかったのに。
ただ抱き寄せられただけなのに。
どうしてこんなに胸がいっぱいになるんだろう。
里奈は仰向けになって、スマホを手に取る。
ロック画面には、江の島で撮った夕焼けの写真。
二人の影が並んでいる。
指で画面をなぞりながら、小さく息を吐く。
(優斗……)
「ありがとう」って言ってた顔。
ちょっと照れてて、でも真剣で。
里奈はスマホを胸に抱きしめた。
「優斗、かわいすぎでしょ……」
自分でも何を言ってるのか分からない。
でも、それくらい愛おしかった。
ベッドの端に座り直して、里奈は膝を抱える。
(これが……恋人、なんだ)
今までも好きだった。
でも今日は、少し違う。
“守られてる”感じと、
“大切にされてる”感じが、ちゃんと形になった気がした。
布団に戻って、またごろん。
今度はうつ伏せで足をばたばたさせる。
「もう……」
枕に顔を埋めて、声にならない笑い。
そのとき、スマホが震えた。
優斗からのメッセージ。
無事帰った?
里奈は一瞬迷ってから打つ。
帰ったよ
優斗は?
すぐ返ってくる。
俺も。今日はありがとう
胸がきゅっとなる。
里奈は少し考えてから、勇気を出して送った。
さっきのこと、ずっと思い出してる
既読。
数秒後。
……俺も
それだけ。
でも、それだけで十分だった。
里奈はスマホを置いて、布団に潜り込む。
頬が熱い。
心はふわふわ。
(明日、顔見れるかな……)
そう思いながらも、口元は緩んでしまう。
初めて抱き寄せられた夜。
里奈は布団の中で小さく丸まりながら、
幸せなため息をついた。
家に帰って、お風呂を済ませて、パジャマに着替えて。
新田里奈は自分の部屋の布団にごろん、と倒れ込んだ。
天井を見つめる。
……三秒。
「……っ」
急に思い出して、顔を両手で覆う。
(だめだめだめ)
さっきまで普通だったのに。
優斗の腕。
胸の鼓動。
制服越しに伝わってきた体温。
全部、一気に蘇ってきた。
「……抱きしめられた……」
声に出した瞬間、さらに恥ずかしくなる。
里奈は布団の上で転がった。
右。
左。
うつ伏せ。
枕に顔を押しつける。
「むり……」
心臓がまだ早い。
あんなに近くで、優斗の匂いがして、
あんなに静かで、優しくて。
ドラマみたいなキスもなかったのに。
ただ抱き寄せられただけなのに。
どうしてこんなに胸がいっぱいになるんだろう。
里奈は仰向けになって、スマホを手に取る。
ロック画面には、江の島で撮った夕焼けの写真。
二人の影が並んでいる。
指で画面をなぞりながら、小さく息を吐く。
(優斗……)
「ありがとう」って言ってた顔。
ちょっと照れてて、でも真剣で。
里奈はスマホを胸に抱きしめた。
「優斗、かわいすぎでしょ……」
自分でも何を言ってるのか分からない。
でも、それくらい愛おしかった。
ベッドの端に座り直して、里奈は膝を抱える。
(これが……恋人、なんだ)
今までも好きだった。
でも今日は、少し違う。
“守られてる”感じと、
“大切にされてる”感じが、ちゃんと形になった気がした。
布団に戻って、またごろん。
今度はうつ伏せで足をばたばたさせる。
「もう……」
枕に顔を埋めて、声にならない笑い。
そのとき、スマホが震えた。
優斗からのメッセージ。
無事帰った?
里奈は一瞬迷ってから打つ。
帰ったよ
優斗は?
すぐ返ってくる。
俺も。今日はありがとう
胸がきゅっとなる。
里奈は少し考えてから、勇気を出して送った。
さっきのこと、ずっと思い出してる
既読。
数秒後。
……俺も
それだけ。
でも、それだけで十分だった。
里奈はスマホを置いて、布団に潜り込む。
頬が熱い。
心はふわふわ。
(明日、顔見れるかな……)
そう思いながらも、口元は緩んでしまう。
初めて抱き寄せられた夜。
里奈は布団の中で小さく丸まりながら、
幸せなため息をついた。
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