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優斗が勇気を出して初めて抱き寄せる回
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――触れたい気持ち――
それは、写真を見返して距離が縮んだ翌日の放課後だった。
里奈と優斗は、いつもの帰り道を少し外れて、川沿いの遊歩道を歩いていた。
夕方の空は淡いオレンジ色で、風がやさしく頬を撫でる。
会話はあるけれど、どこか落ち着かない空気。
二人とも、何かを意識していた。
「今日さ」
里奈が言う。
「数学、最悪だった」
「俺も」
優斗は苦笑する。
「赤点回避できてるか微妙」
「それはがんばって」
そんな他愛ない話をしながら歩く。
でも優斗の頭の中は、それどころじゃなかった。
(昨日、“好き”って言って)
(電話して)
(写真見て)
胸の奥が、ずっとざわざわしている。
隣にいる里奈が近い。
肩が触れそうで触れない距離。
優斗は何度も拳を握った。
ベンチの前で、里奈が立ち止まった。
「ちょっと座ろう」
二人は並んで腰を下ろす。
川面に夕焼けが映って、きれいだった。
しばらく無言。
里奈は空を見上げながら言う。
「なんか最近、優斗静かだね」
ドキッとする。
「そう?」
「うん。考え事してる顔」
優斗は視線を落とした。
正直に言うべきか迷って、それでも口を開く。
「……里奈のこと考えてた」
里奈は驚いたようにこちらを見る。
「なにそれ」
「そのまま」
優斗は深く息を吸う。
「俺さ、触れたいとか思うの、初めてで」
里奈の目が少し大きくなる。
「手つなぐのも、肩並べるのも」
声がかすれる。
「全部、里奈が初めて」
沈黙。
風の音だけが流れる。
里奈は小さく笑った。
「私もだよ」
優斗は意を決した。
ベンチから立ち上がり、里奈の前に回る。
「里奈」
「なに?」
優斗は一瞬ためらってから、そっと腕を伸ばした。
里奈の背中に、遠慮がちに触れる。
「……いい?」
里奈は一拍置いて、うなずいた。
その瞬間。
優斗は、思っていたよりずっと優しく、里奈を抱き寄せた。
強くない。
でも離れない。
里奈の額が、優斗の胸に当たる。
心臓の音が、はっきり伝わる。
「……緊張する」
優斗が小さく言う。
里奈は優斗の制服をつまんだ。
「私も」
二人はそのまま、しばらく動かなかった。
夕焼けの中で、ただ呼吸だけを共有する。
初めてのハグは、ドラマみたいじゃなくて。
静かで、不器用で。
でも、ものすごくあたたかかった。
しばらくして、優斗がそっと離れる。
里奈の頬は赤い。
優斗も同じだった。
「……ありがとう」
優斗が言う。
「なにが?」
「受け入れてくれて」
里奈は首を振る。
「優斗だから」
その一言で、胸がいっぱいになる。
帰り道、二人は自然に手をつないでいた。
さっきより、指の絡み方が少しだけ深い。
初めて抱き寄せた日。
それは、恋人として一歩進んだ、静かな記念日になった。
それは、写真を見返して距離が縮んだ翌日の放課後だった。
里奈と優斗は、いつもの帰り道を少し外れて、川沿いの遊歩道を歩いていた。
夕方の空は淡いオレンジ色で、風がやさしく頬を撫でる。
会話はあるけれど、どこか落ち着かない空気。
二人とも、何かを意識していた。
「今日さ」
里奈が言う。
「数学、最悪だった」
「俺も」
優斗は苦笑する。
「赤点回避できてるか微妙」
「それはがんばって」
そんな他愛ない話をしながら歩く。
でも優斗の頭の中は、それどころじゃなかった。
(昨日、“好き”って言って)
(電話して)
(写真見て)
胸の奥が、ずっとざわざわしている。
隣にいる里奈が近い。
肩が触れそうで触れない距離。
優斗は何度も拳を握った。
ベンチの前で、里奈が立ち止まった。
「ちょっと座ろう」
二人は並んで腰を下ろす。
川面に夕焼けが映って、きれいだった。
しばらく無言。
里奈は空を見上げながら言う。
「なんか最近、優斗静かだね」
ドキッとする。
「そう?」
「うん。考え事してる顔」
優斗は視線を落とした。
正直に言うべきか迷って、それでも口を開く。
「……里奈のこと考えてた」
里奈は驚いたようにこちらを見る。
「なにそれ」
「そのまま」
優斗は深く息を吸う。
「俺さ、触れたいとか思うの、初めてで」
里奈の目が少し大きくなる。
「手つなぐのも、肩並べるのも」
声がかすれる。
「全部、里奈が初めて」
沈黙。
風の音だけが流れる。
里奈は小さく笑った。
「私もだよ」
優斗は意を決した。
ベンチから立ち上がり、里奈の前に回る。
「里奈」
「なに?」
優斗は一瞬ためらってから、そっと腕を伸ばした。
里奈の背中に、遠慮がちに触れる。
「……いい?」
里奈は一拍置いて、うなずいた。
その瞬間。
優斗は、思っていたよりずっと優しく、里奈を抱き寄せた。
強くない。
でも離れない。
里奈の額が、優斗の胸に当たる。
心臓の音が、はっきり伝わる。
「……緊張する」
優斗が小さく言う。
里奈は優斗の制服をつまんだ。
「私も」
二人はそのまま、しばらく動かなかった。
夕焼けの中で、ただ呼吸だけを共有する。
初めてのハグは、ドラマみたいじゃなくて。
静かで、不器用で。
でも、ものすごくあたたかかった。
しばらくして、優斗がそっと離れる。
里奈の頬は赤い。
優斗も同じだった。
「……ありがとう」
優斗が言う。
「なにが?」
「受け入れてくれて」
里奈は首を振る。
「優斗だから」
その一言で、胸がいっぱいになる。
帰り道、二人は自然に手をつないでいた。
さっきより、指の絡み方が少しだけ深い。
初めて抱き寄せた日。
それは、恋人として一歩進んだ、静かな記念日になった。
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