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13. カ
13.カ
しおりを挟む「人工的に作られたら人権はないって考えかよ…畜生。」
純鋭は独り言を呟きながらバンドの事務所に向かった。
まだメンバーは誰もいなかった為、個人の部屋にこもりソファに身体を沈めた。
「屡鬼阿だって、本来は普通の女子高生なんだよな…」
…
超人並の力…
髪の色の変化…
もしかしたら本当に人間なのか、だんだんと純鋭も不安になっていた。
クリーム色の淡い壁紙が純鋭を少し安心させた。
「最近…赤ばっかり見てたからなぁ…」
純鋭はそのままうとうとと眠ってしまった。
いつまで寝ていたのだろうか。
ふと目覚めると、あたりは暗くなっていた。
「まだメンバー来てないのか?」
純鋭はスマホを取り出し画面をみた。
「麗からは休みのメッセージ来てんな…。あいつ、レコーディング先終わったからって。」
にしても、他の3人のメンバーからはメッセージが入ってはいなかった。
「もう来てんのか。」
純鋭は個室をの扉を開けた。
部屋にはメンバーのカバンらしきものが置いてあった。
純鋭はそれを確認するとレコーディング室に向かった。
やけにいつもと違う雰囲気に純鋭は違和感を感じていた。
静かな空間が続く長い廊下。
スタッフの姿はなく、誰ともすれ違わない。
レコーディング室に着くと3人のスタッフが機材に伏して寝ており、自分達の曲を爆音で流しながらの気を失っていた。ガラス一枚隔てられた向こうに、最近よく見るどす黒い紅蓮が目に映った。
「起きろ!おい!なんなんだよこれ!」
純鋭は音響を切るとスタッフの一人を揺さぶり起こした。
「あぁ、JUNさん、来まし…」
スタッフは純鋭を見たあと目の前のガラスの向こうに目線を向け、その瞬間叫んだ。
その声に他のスタッフ達が目覚め、最初のスタッフと同じ反応をした。
「向こうに行くな!いいから、早く警察を呼べ!」
純鋭は狼狽えるスタッフに指示を出した。
警察が到着する前に、重たい一枚の扉が開かれた。
鉄と生臭さの不快な死臭がその場にいた者の鼻をついた。
スタッフ全員がその臭いに耐えきれず部屋を足早に去っていった。
「通報を受けて、びっくりしたな。特安の坊主がここにいるとはな。これは連絡する手間が省けた。」
1番に到着し、純鋭に声をかけたのは二瓶だった。
「特安のことは国の重要秘密事項ですよ。むやみやたらと、口に出さないでください。僕が特安にいることも世間がもし知るような事があれば、あなたを1番に疑いますからね。」
純鋭は二瓶に圧をかけるように笑い、純鋭から里京へと報告を入れた。
二瓶と一緒にレコーディング室に足を踏み入れた。3人分の血溜まりがピチャピチャと歩くたびに音が鳴った。
3人の共に音を奏でたメンバーは無惨な状態のモノになっていた。
近くで見れば見るほど、狂気的な殺人だった。
一人は目をくり抜かれ、口の中に指を詰め込まれ
一人は指が全て無くなり口の中がリスのように何かを詰め込まれ
一人は左胸に穴が貫通しており、大きな飴玉を食べるような片方の頬が膨らんでいた。
「これじゃぁ本当のカニバリズムじゃねーか…」
純鋭がふと目を逸らすと
ーDear 屡鬼阿ー
譜面台に乗っていたメモ用紙に赤い字で書かれていたものを確認した。
「やっぱりこのメッセージかよ。」
「おーい坊主。一応お前は保護されったっていう程で、署に連れてくぞその方がお前も裏にいる人間だとおもわれないだろう。あとで警察官が来るからよ。それじゃぁ署でな。」
二瓶は靴の裏をその場にあったタオルにペットボトルの水で濡らし拭き取っり先に署に戻った。
警官と同時に現場に着いた里京と廊下を急ぎばやに歩く二瓶がすれ違う。
2人は何も会話を交わさなかったが目でお互いの存在を確認した。
純鋭は駆けつけた警察と里京に安堵する。
純鋭も里京も、表舞台で純鋭がいる場所だけあって、会話せず無関係さを演じた。
「JUNさん。二瓶刑事がお待ちですので、ご同行お願いします。」
警官の1人が純鋭に声をかけた。
「譜面台に…」
里京の横を通りすぎる間際、純鋭
は里京にだけ聞こえる声量で先ほどのメモ用紙を渡した。
パトカー後部座席に乗せられた純鋭は、プライドがズタズタに傷つけられたようだった。
すでにカニバリズムのメンバーが殺害されたが噂とメディアに流れていた。
街の大きな電子版にメンバーのアーティスト写真が映る。
憤りと喪失感が純鋭を襲った。
情報が早く漏洩する社会
関係ない人が巻き込まれる背徳感
もっと自分が守れたはずじゃないかと自分の正義感が自分を鬩ぎ立てた。
警察署に行くとすでにマスコミが待ち伏せていた。
人の不幸に喰らいつく憎悪
純鋭は暗い感情に押しつぶされそうになった。
騒ぎ立てるマスコミに無言を貫き、署に入ると二瓶がいた。
「よぅ。すごいな。少し休んだらもう帰っていいぞ。」
「へ?」
純鋭は素っ頓狂な声をあげた。
「今回もどうせ裏だろ。ここで時間も取られていたら捜査も難航するんだろ。」
二瓶は純鋭に瀬を向けると数歩歩き足を止めた。
「あー、そういえば生活安全課の方に1人若い嬢ちゃんが保護されたそうだが、身元が分からないらしいって聞いたな。」
「え?」
二瓶はバサバサと髪を掻いた。
「嫌なんでもない。独り言だ。じゃぁな坊主。気をつけて帰れよ。」
二瓶はそういうと、再び歩みだした。
純鋭はその言葉を受け取り生活安全課へと向かった。
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