地球連邦軍様、異世界へようこそ

ライラック豪砲

文字の大きさ
27 / 116
第二章 不幸な師団長

第13話―1 ファーストコンタクト

しおりを挟む
 降下艇に乗り込むと、すでに中には歩兵型SSで一杯だった。

 一木が、乗り込んでいた大隊の大隊長に挨拶すると、周囲のSS達がちょこちょこと寄ってきた。何事かと思っていると、体のあちこちをペタペタと触りながら「師団長だ」「人間だ」「初めて見た」などと呟いている。

 どう見ても幼児のような反応に驚いていると、大隊長が申し訳無さそうに謝罪した。

「申し訳ありません師団長。一緒に師団長が降下艇に乗り込んだことなど初めてなもので。みな地球の人間にこんな間近で出会うなど初めてで嬉しいんです」

「初めて……じゃあ前任の師団長はどうやって指揮を執っていたんだ? 」 

「軌道上の軌道コントロール艦や旗艦からですね。地上の占領が完了して安全が確保されてから降下されていました」

 こんな健気に頑張るSSたちだけを地上に降ろして高みの見物とは……一木の胸中に怒りにも似た感情が浮かんできたが、殺大佐がそれを見越したのか諌めた。

「そんなに怒んなよ一木司令。確かに前任者はあんたと違って臆病で部下にも優しいとは言えなかったが、あんたと違って生身の人間だったんだ。こんな事は言いたかないが、普通の人間の感覚を意識するのを忘れないようにしな」

 殺大佐の言葉に一木は反省した。しかしだからこそ、機械の体を持っている自分が率先していかなければならない。

「みんな、ここに来てから仮想空間で訓練するばかりで済まなかったな。これからは一緒に地上で行動するから、未熟な私を支えてほしい。よろしく頼む」

 一木がそう伝えると、幼稚園児の様な、はーい! という歓声がおこった。

 演習中の様子と違うので気になって大隊長に聞くと、初耳の事情を話してくれ?た。

「演習中や実戦中は表層的な感情をオフにしますからね。感情をオフにするとそれぞれ特化した能力等の発揮に影響が出ますが、これくらいの作戦ならオフにして命令に忠実に動かした方がうまくいきますから。今は作戦前なので感情をオンにしてあります。そうするとどうしても製造後触れ合いの少ないSSはこういう幼い性格になってしまうんです」

 なるほど、と相づちを打ちながら、一木はすがりついていたSSを一人、両脇に手を入れて抱き上げた。笑顔ではしゃぐSS。周囲のSSがわたしもわたしもと騒ぎ出す。

「かわいいな……よーしよしよし」

 思わず顔を蕩かせる(表情など無いが)一木だが、その様子を見て殺大佐は呆れ顔だ。

「一ヶ月前まで自分の態度がどうこう言ってたやつがさー。そういう事するから変に好かれるんだよ」

「俺はもうそこらへんで悩まないことにしたんだ。実際問題こいつらは人類のため、必死に働いてくれてるんだから、俺はそれに精一杯応えていきたいんだ」

 そんな話をしていると、大隊長が号令を掛けた。

「さあお嬢様達! いつまで師団長閣下にまとわりついてるんだ。とっとと隊列を組め! 感情オフ! さあさあ、動けうごけ!」

 大隊長が急かすように言うと、先程まで子犬のようにじゃれついていたSS達はまたたく間に機敏な動きで所定の位置に配置についた。 

「さすがの練度だ。しかしちょっと寂しいな……」

「いつまでも浮ついてないで、もうハッチ空くぞ」

 殺大佐の言葉通り、ガコンという音と振動と同時に、艦のエンジン音が若干低くなる。

 ハッチ開放! という放送と共に、ハッチが開いていく。

「さあ急げ急げお嬢様! 上陸次第部隊は中隊ごとに配置について、ムーンの車両部隊の受け入れ準備に入れ! 」

 一木達は、そんな喧騒が一段落してからゆっくりと降下艇を降りた。

 全員夜目が効くアンドロイドとサイボーグのため、あたりは闇に包まれたままになっている。

 そして一木が降下艇を降りて降下艇が離脱していくのと同時に、ムーンがゆっくりと崖沿いに空中停止してホバリングする。

 あの巨艦をここまで丁寧に操るのは、ベテランのSAならではの腕前だ。

 そうして停止している間に、中から百近い車両SAの集団が現れた。

 さて、準備開始だ。

 一木は先振れとしてルニの街に向かわせるSSを呼んだ。

「アミ中佐! 」 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...