地球連邦軍様、異世界へようこそ

ライラック豪砲

文字の大きさ
59 / 116
第三章 出会いと契約

第14話―3 昼食会

しおりを挟む
「それでは最初の料理です」

 グーシュとミルシャがミネラルウォーターを飲んでいると、シャルルの指示の下数人の女給たちが料理を運んできた。

 グーシュがワクワクしながら待っていると、意外にも見慣れた食材を使った料理が出てきた。
 脂身だ。薄く切った脂身と、見たことのないキノコと生の野菜と思しき物が盛り付けられた皿が目の前に置かれた。

「地球の一部の地域で用いられるフルコースという料理の提供の仕方です。一皿ずつ順番に料理が出てまいります。最初は前菜です。これはフルコースの最初に提供される軽めの料理で、食欲を増進させるようにやや塩気や酸味の強い味付けに仕上げてあります」

 驚くほど美しく白い、とろみのある光沢をもった皿に絵画の如く盛り付けられた料理には驚いたが、内心グーシュはガッカリしていた。
 というのも、グーシュが苦手な脂身が出てきたからだ。
 グーシュは幼いころから、ルーリアト料理では必須ともいえる脂身の塩漬けが苦手だった。
 正確に言うと肉が苦手だった。
 
 口に入れると鼻に抜けてくるあの臭み。
 臭みが分かって初めて大人だの子供舌だのバカにされていたが、無理して食べようとしても結局美味しくないのだから仕方ない。

 そのためグーシュはもっぱら主食である雑穀の餅や野菜の煮物。たまに出る希少な甘い果物を主に食べてきた。
 ルーリアトでは珍しいほどの偏食であり、結果ミルシャとは正反対の細い体つきになってしまった。

 とはいえ、遠い場所から来た者達からのもてなしだ。
 何とか耐えきってこの場をしのがなければ……。
 グーシュがそう覚悟を決めていると、ミルシャが視線をシャルルの方へ向けた。

 だが、ミルシャが声を発するよりも早く、シャルルが応対する。
 武人として鍛えているミルシャより素早く視線に気が付いて対応することに、グーシュは驚きを隠せなかった。

「どうしましたか、ミルシャ様?」

「あ、ああ。申し訳ないのだが、グーシュ様の料理を一口食べさせていただけないだろうか?」

「申し訳ありません、配慮が足りませんでした。毒見ですね、準備させます」

 シャルルは奥の女給に目配せして、小鉢と箸を持ってこさせた。
 その動きを見てグーシュは確信した。
 今、ミルシャから毒見の提案をさせたように見えるが、実のところシャルルはミルシャが毒見をすることを見越してあらかじめ準備していたのだ。
 
 ただ、従者の面子を潰さないように配慮したのだ。
 シャルルという女は侮れないとグーシュが心の中で警戒度を上げる。

 そうしているうちに、ミルシャがグーシュの皿から脂身と野菜を少しづつ取り出して小鉢に持った。

「それでは殿下、いただきます」

「うむ」

 ルーリアトの箸は両手で筆を持つように、二本の箸を間を開けて持ち、食べ物に刺すことで食する道具だ。
 刺しにくい食材の場合は反対の手で大きめの匙を持ってすくって食べる。

 しかし、上質なマナーでは箸のみで食べるのが理想とされていた。
 ミルシャはその点箸の使い方が上手かった。
 むろん、シャルルの料理が箸で食べやすい大きさに切ってある配慮も大きい。
 もてなしに関してはあのシャルルという女は驚くべきこだわりを持っているようだ。

 そんな事を知ってか知らずか、ミルシャは毒など知らないとばかりに小鉢の中身を空にしてしまった。
 もぐもぐと咀嚼するミルシャ。
 だが、その表情はどんどん驚愕に染まっていく。
 ようやく咀嚼し終わると、ミルシャは大きな声を上げた。

「で、殿下!」

「わっ! どうしたミルシャ!?」

「は、早く食べてみてください。欲しければ私の分も食べていいですから! 

 ミルシャのあまりの剣幕を見てグーシュは驚いた。
 ミルシャがグーシュが脂身が嫌いな事を知らないはずない。
 なのに勧めるという事は……。

 グーシュは意を決して箸を握ると、三枚ある脂身のうちの一つと、その下にあるキノコと葉物野菜を箸にさして口に入れた。

 脂身はやはり塩につけてあるのか強い塩味を感じた。
 だが、口に広がる香りは香ばしく、いつものような臭みは全くない。
 そして脂身の香ばしさの後には、キノコと野菜にかけられた酸味の強いたれの味が口の中に広がった。
 昔食べた南方蛮地産のすっぱくて水分の多い果物のようなさわやかな味と香りだった。

 そして、野菜と脂身を飲み込むと、口に広がるのは脂身の油分によるまったりとしたコクだった。
  
 結局、一切の臭みが感じられなかった。

「シャルル殿、これは……」

 グーシュが驚いてシャルルに声をかけると、シャルルはにこりと微笑んだ。

「この脂身は地球の豚という代表的な家畜の脂身を塩漬けにしてからソテーした物です。厳重な品質管理の下飼育された豚の脂身ですので、一切の臭みがなく、油も切れがよく、後味にはまろやかなコクが残ります。この脂身をエリンギというキノコとレタスとパプリカという野菜の盛り合わせに合わせることで、野菜に味付けのためかけたドレッシングというたれの酸味と合わさり、より後味の良さを際立たせてくれます」

 グーシュは途中からシャルルの話を聞く余裕すら無くし、次々と口元に料理を運んでいく。
 隣ではミルシャが、涙を流しながらグーシュの食事を眺めていた。

「で、殿下……うう、お、お、お肉が食べられたのですね……よかった……偏食が治らない時はどうしようかと心配しましたよ……」

「シャルル殿! すまぬがもう少し食べたいのだが……」

 グーシュのおねだりにミルシャは満面の笑みを浮かべた。

「グーシュ殿下、料理はまだまだ続きますので、少しだけにしてください。さあ、一木司令達も召し上がってください。参謀の二人には特製野菜ジュースが用意してあります」

 そこまで言うと、シャルルは再びグーシュの方を見てこう言った。

「殿下。今回の料理のテーマは地球とルーリアトの出会いです。ぜひ、殿下にはいろいろな食材のおいしさを知っていただきたいと存じます」

 シャルルは優雅に一礼した。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

処理中です...