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第三章 出会いと契約
第14話―4 昼食会
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その後もシャルルの解説を聞きながら食事は続いた。
一木は他の異世界人に地球の食事を食べさせた際の恐ろしい逸話の数々を知っていただけに、グーシュ皇女とミルシャがどのような反応を示すか非常に不安だったが、それは杞憂に終わった。
前菜で肉への負の先入観を取り除かれたグーシュに続いて提供されたのはコンソメスープだった。
「これは何とも美しい汁だな」
「これは味付けは何なのですか? 香草や脂身も浮いていませんし、透き通っていますね」
グーシュ皇女とミルシャは興味津々と言った様子でシャルル大佐に尋ねた。
尋ねられたシャルル大佐はどことなく嬉しそうに答えた。
「これはバニフの肉と骨と筋、そして地球産の香味野菜を煮込みうま味を抽出して、そこにさらに地球産の肉類とルーリアトの香草を加えて二日煮込んだものです。コンソメスープと呼ばれる、地球の代表的なスープです。どうぞお召し上がりください」
一木が目配せすると、マナがスープを口にした。
マナの感じたスープの温かさと、バニフのかすかな獣臭さが一瞬感じられる。
ところが、その臭みは軽く振られた胡椒と独特の香りの香草の香りとすぐにまじりあい、後味にはルニの街でふるまった時の試食では気が付かなかった、バニフのうま味が残った。
バニフの臭みを消した香草は恐らく牛や豚と共に煮込まれたルーリアトの香草だろう。
胡椒の瞬間的な香りで消しきれないバニフの強い臭みを、後からしっかりと消し去り、地球人ではまず感じ取れないバニフのうま味を臭みから抽出することに成功している。
横を見るとマナやミラー大佐、殺大佐も驚いた表情をしている。
アンドロイドの味覚センサーでも、このコンソメスープの芸術的なバランスは分かるようだ。
そして無論、グーシュ皇女とミルシャも驚いた表情の後、夢中でスープを飲んでいた。
二人に用意されていたのは、ルーリアト料理で汁物を飲むときに用いられるレンゲのような深めのスプーンだった。
「美味い……まさかバニフの肉がこんなに美味いとは……知らなかったぞ!」
「臭みもうま味というのが常識だと思っていましたが、まさかこんな料理法があったなんて。もう城の料理を食べられませんね」
「しかし、どうもわらわ達の食べ方は一木代表から見ると不作法ではないか? その底の浅い匙や、先ほど見た三又に分かれた道具をわらわ達も使った方がいいのではないか?」
一木はグーシュ皇女の気配りに感心しつつ、やんわりと断ろうとしたのだが、口を開くのはシャルル大佐の方が早かった。
どうもこの部屋にいる人間の一挙手一投足を余さず見ているようだ。
「この昼食会は硬い雰囲気のものではなく、あくまでお二人を持て成すためのものです。ですので、一番ゆったりと安心して食べていただけるものをお使いください。料理もルーリアトの食器で食べやすいように調理させていただいておりますので、どうぞご安心ください」
そのシャルル大佐の言葉に、グーシュ皇女は匙を一旦置くと、胸元に手を当てて頭を下げた。
横にいたミルシャが驚いていた。
「何から何まで気遣い頂き本当に感謝する。わらわは、たった二品食べただけで今までの人生で培ってきた食への認識が大きく変わってしまった。こんなにおいしく食事がとれるのなら、わらわもそのうちミルシャのような体になれるかもしれんな」
そのグーシュ皇女の言葉に、部屋にいる一同の視線が一木も含めてミルシャの胸元に集中する。
当のミルシャは顔を赤らめると、グーシュ皇女を肘で軽く小突いた。
「それは良かった。グーシュ殿下が肉を食べられないと聞いた時から、私は殿下に満腹になるまでお肉を食べていただき、モチモチ……ではなくふくよかになっていただきたかったのです」
その言葉を聞いて、特に”モチモチ”のあたりで部屋にいる一同の中に笑いが起きた。
一木もついつい声を出して笑った。
そのため、誰一人として、シャルル大佐の言葉を聞いて、グーシュ皇女がピクリと反応したことに気が付かなかった。
「しかし、一木代表は先ほどから料理に口を付けず、マナ殿だけが食しているが、それはどういったことなのですか?」
笑い声が収まったころ、ふとミルシャが尋ねた。
当然、気になる事だろう。
一木は意を決すると、あらかじめ用意していた仕組みを作動させた。
「それはこういう事です」
そう言うと、一木は両腕で自分の頭部を外し、断面をグーシュ皇女たちの方へと向けた。
一瞬ミルシャが嫌そうな顔をしたが、断面に見える機械を見ると、目を見張った。
「なるほど、歯車人間……事故や病気の結果体を歯車仕掛けに変えたのか?」
説明しがいの無い理解力の高いグーシュ皇女の声を聞いて、一木はいささかガッカリした気持ちで頭部を胴体に取り付けた。
一木は他の異世界人に地球の食事を食べさせた際の恐ろしい逸話の数々を知っていただけに、グーシュ皇女とミルシャがどのような反応を示すか非常に不安だったが、それは杞憂に終わった。
前菜で肉への負の先入観を取り除かれたグーシュに続いて提供されたのはコンソメスープだった。
「これは何とも美しい汁だな」
「これは味付けは何なのですか? 香草や脂身も浮いていませんし、透き通っていますね」
グーシュ皇女とミルシャは興味津々と言った様子でシャルル大佐に尋ねた。
尋ねられたシャルル大佐はどことなく嬉しそうに答えた。
「これはバニフの肉と骨と筋、そして地球産の香味野菜を煮込みうま味を抽出して、そこにさらに地球産の肉類とルーリアトの香草を加えて二日煮込んだものです。コンソメスープと呼ばれる、地球の代表的なスープです。どうぞお召し上がりください」
一木が目配せすると、マナがスープを口にした。
マナの感じたスープの温かさと、バニフのかすかな獣臭さが一瞬感じられる。
ところが、その臭みは軽く振られた胡椒と独特の香りの香草の香りとすぐにまじりあい、後味にはルニの街でふるまった時の試食では気が付かなかった、バニフのうま味が残った。
バニフの臭みを消した香草は恐らく牛や豚と共に煮込まれたルーリアトの香草だろう。
胡椒の瞬間的な香りで消しきれないバニフの強い臭みを、後からしっかりと消し去り、地球人ではまず感じ取れないバニフのうま味を臭みから抽出することに成功している。
横を見るとマナやミラー大佐、殺大佐も驚いた表情をしている。
アンドロイドの味覚センサーでも、このコンソメスープの芸術的なバランスは分かるようだ。
そして無論、グーシュ皇女とミルシャも驚いた表情の後、夢中でスープを飲んでいた。
二人に用意されていたのは、ルーリアト料理で汁物を飲むときに用いられるレンゲのような深めのスプーンだった。
「美味い……まさかバニフの肉がこんなに美味いとは……知らなかったぞ!」
「臭みもうま味というのが常識だと思っていましたが、まさかこんな料理法があったなんて。もう城の料理を食べられませんね」
「しかし、どうもわらわ達の食べ方は一木代表から見ると不作法ではないか? その底の浅い匙や、先ほど見た三又に分かれた道具をわらわ達も使った方がいいのではないか?」
一木はグーシュ皇女の気配りに感心しつつ、やんわりと断ろうとしたのだが、口を開くのはシャルル大佐の方が早かった。
どうもこの部屋にいる人間の一挙手一投足を余さず見ているようだ。
「この昼食会は硬い雰囲気のものではなく、あくまでお二人を持て成すためのものです。ですので、一番ゆったりと安心して食べていただけるものをお使いください。料理もルーリアトの食器で食べやすいように調理させていただいておりますので、どうぞご安心ください」
そのシャルル大佐の言葉に、グーシュ皇女は匙を一旦置くと、胸元に手を当てて頭を下げた。
横にいたミルシャが驚いていた。
「何から何まで気遣い頂き本当に感謝する。わらわは、たった二品食べただけで今までの人生で培ってきた食への認識が大きく変わってしまった。こんなにおいしく食事がとれるのなら、わらわもそのうちミルシャのような体になれるかもしれんな」
そのグーシュ皇女の言葉に、部屋にいる一同の視線が一木も含めてミルシャの胸元に集中する。
当のミルシャは顔を赤らめると、グーシュ皇女を肘で軽く小突いた。
「それは良かった。グーシュ殿下が肉を食べられないと聞いた時から、私は殿下に満腹になるまでお肉を食べていただき、モチモチ……ではなくふくよかになっていただきたかったのです」
その言葉を聞いて、特に”モチモチ”のあたりで部屋にいる一同の中に笑いが起きた。
一木もついつい声を出して笑った。
そのため、誰一人として、シャルル大佐の言葉を聞いて、グーシュ皇女がピクリと反応したことに気が付かなかった。
「しかし、一木代表は先ほどから料理に口を付けず、マナ殿だけが食しているが、それはどういったことなのですか?」
笑い声が収まったころ、ふとミルシャが尋ねた。
当然、気になる事だろう。
一木は意を決すると、あらかじめ用意していた仕組みを作動させた。
「それはこういう事です」
そう言うと、一木は両腕で自分の頭部を外し、断面をグーシュ皇女たちの方へと向けた。
一瞬ミルシャが嫌そうな顔をしたが、断面に見える機械を見ると、目を見張った。
「なるほど、歯車人間……事故や病気の結果体を歯車仕掛けに変えたのか?」
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