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第四章 皇女様の帰還
第4話―2 初めての射撃
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「お前たち地球人は殿下のお気持ちを……所詮は侵略者か!」
そう言ってミルシャが一木に向かって走り出そうと足に力を込めるが、その瞬間グーシュの叫び声が聞こえた。
「やかましいぞミルシャ! ミュニちゃんの説明が聞こえないだろうが!」
今にも駆けだそうとしていたミルシャは機先を削がれ、その場でたたらを踏む。
一木がグーシュの方を見ると、先ほど実射を披露した班長のミュニ伍長に拳銃の説明を受けていたグーシュが、額に青筋を立てながら叫んでいた。
「で、殿下しかし……皇太子殿下と敵対するなど……しかもこのルニ子爵領を巻き込むのですか!?」
ミルシャの怒りももっともだ。
外国の勢力と手を結び、兄であり皇太子とその派閥と敵対する。
現代的価値観で言っても控えめに言って売国奴だ。
だからこそ、ルニ子爵領を巻き込む必要があるのだが。
グーシュもそのことは当然分かっていただろう。
一木と盟約を結んで、連邦を後ろ盾として皇帝を目指す時点で皇太子と穏便な関係など築けるはずがない。
「まあ、そういえば会談で決まったことの説明をしてなかったな。簡単に言うとだな、わらわは一木達、地球連邦軍と協力することにしたのだ」
グーシュの言葉にミルシャは驚きを隠せない。
だが、その一方である程度分かってもいた事のはずだ。
一木達が橋爆破の主犯であろうが、そもそも暗殺を皇太子たちが決行したのは事実なのだ。
そんな状況で、ノコノコとこのまま帝都に戻る選択肢などあるはずがない。
今起こっているのも帝国への忠義からくる反発と、驚きの発散行為に過ぎないはずだ。
だが、もしここでグーシュの言葉に本気で反発するようなら……。
「しかし……」
「まあ聞け。一木達はわらわを支援し、皇帝か皇太子に据える。そしてその見返りにわらわは、兄上亡き後、地球連邦軍と融和的な交渉を行う。そういうめ……契約を結んだのだ」
さすがに連邦大統領の件を言わない分別がグーシュにもあったらしい。一木は安堵した。
そして、グーシュの説明を聞いたミルシャは、ポロポロと涙を流した。
「しかし殿下……それでは殿下は帝国を裏切る事に……」
「ミルシャ」
一木は、初めて聞いたグーシュの冷たい、感情の籠っていない声に恐怖を覚えた。
それはミルシャも同様、いや。それ以上だったようで、青い顔をして震えていた。
「はっきりしておくが、わらわが兄上や帝国を裏切ったのではない。兄上とその取り巻きが帝国を誤らせ、そして裏切ったのだ。いいな?」
その言葉に、ミルシャは跪くと、両手を前に差し出した。
どうも、ルーリアトにおける全面的な謝罪を表す格好らしい。
日本で言う土下座の様なもののようだ。
「申し訳ありません、僕の殿下。不用意な言葉、この両手を斬られる程の罪です。どうか……」
あの両手はそういう意味か……。
一木が恐怖を感じながらその様子を眺めていると、溜飲が下がったのか、グーシュから冷たい空気が消えていった。
そして、無言でミルシャを抱き起こすと、軽く口づけをした。
「一木や兵たちの前で、大げさなやつめ。わらわも怒りすぎたな……そう落ち込むな」
グーシュは再び無邪気な少女の顔に戻ると、背後でヤキモキしていたミュニ伍長へと向き直った。
「さあ、続きを頼むぞ」
朗らかに微笑みながら、グーシュはミュニ伍長から拳銃の打ち方のレクチャーを受け始めた。
その場には、まだ青い顔をしているミルシャと、無表情に佇むマナ、そして一木が残された。
周囲にはルニの街への出発準備に追われる連隊のSS達の声や、ミュニ伍長の声だけが響く。
時間にして三十秒ほど。
沈黙に耐えかねた一木は、ミルシャに話しかけた。
考えてみると、十代の人間の女の子に話しかけるなど、脳冷凍処置中を除いても随分と久しぶりだ。
再び陰キャのネガティブな思考に囚われそうになるのを抑えながら、一木は慎重に話題を選んだ。
「ミルシャさんは撃たないのか?」
「……僕はあくまで殿下のお付きですので……それに僕は騎士ですので、鉄弓は使いません」
「そうですか」
案の定会話がこれで終わってしまった。
状況を考えれば仕方ないのであるが、どうにも生身時代のトラウマを刺激される会話パターンに、一木は脳と内蔵コンピューターをフル回転させる。
一木がそうして艦内ネットから入手した、「素敵な女性型SSをトリコにする方法」を試そうとしていると、突然マナがミルシャに話しかけた。
「ミルシャ……どうしてあなたは、グーシュに、……グーシュ殿下に仕えているのですか?」
そう言ってミルシャが一木に向かって走り出そうと足に力を込めるが、その瞬間グーシュの叫び声が聞こえた。
「やかましいぞミルシャ! ミュニちゃんの説明が聞こえないだろうが!」
今にも駆けだそうとしていたミルシャは機先を削がれ、その場でたたらを踏む。
一木がグーシュの方を見ると、先ほど実射を披露した班長のミュニ伍長に拳銃の説明を受けていたグーシュが、額に青筋を立てながら叫んでいた。
「で、殿下しかし……皇太子殿下と敵対するなど……しかもこのルニ子爵領を巻き込むのですか!?」
ミルシャの怒りももっともだ。
外国の勢力と手を結び、兄であり皇太子とその派閥と敵対する。
現代的価値観で言っても控えめに言って売国奴だ。
だからこそ、ルニ子爵領を巻き込む必要があるのだが。
グーシュもそのことは当然分かっていただろう。
一木と盟約を結んで、連邦を後ろ盾として皇帝を目指す時点で皇太子と穏便な関係など築けるはずがない。
「まあ、そういえば会談で決まったことの説明をしてなかったな。簡単に言うとだな、わらわは一木達、地球連邦軍と協力することにしたのだ」
グーシュの言葉にミルシャは驚きを隠せない。
だが、その一方である程度分かってもいた事のはずだ。
一木達が橋爆破の主犯であろうが、そもそも暗殺を皇太子たちが決行したのは事実なのだ。
そんな状況で、ノコノコとこのまま帝都に戻る選択肢などあるはずがない。
今起こっているのも帝国への忠義からくる反発と、驚きの発散行為に過ぎないはずだ。
だが、もしここでグーシュの言葉に本気で反発するようなら……。
「しかし……」
「まあ聞け。一木達はわらわを支援し、皇帝か皇太子に据える。そしてその見返りにわらわは、兄上亡き後、地球連邦軍と融和的な交渉を行う。そういうめ……契約を結んだのだ」
さすがに連邦大統領の件を言わない分別がグーシュにもあったらしい。一木は安堵した。
そして、グーシュの説明を聞いたミルシャは、ポロポロと涙を流した。
「しかし殿下……それでは殿下は帝国を裏切る事に……」
「ミルシャ」
一木は、初めて聞いたグーシュの冷たい、感情の籠っていない声に恐怖を覚えた。
それはミルシャも同様、いや。それ以上だったようで、青い顔をして震えていた。
「はっきりしておくが、わらわが兄上や帝国を裏切ったのではない。兄上とその取り巻きが帝国を誤らせ、そして裏切ったのだ。いいな?」
その言葉に、ミルシャは跪くと、両手を前に差し出した。
どうも、ルーリアトにおける全面的な謝罪を表す格好らしい。
日本で言う土下座の様なもののようだ。
「申し訳ありません、僕の殿下。不用意な言葉、この両手を斬られる程の罪です。どうか……」
あの両手はそういう意味か……。
一木が恐怖を感じながらその様子を眺めていると、溜飲が下がったのか、グーシュから冷たい空気が消えていった。
そして、無言でミルシャを抱き起こすと、軽く口づけをした。
「一木や兵たちの前で、大げさなやつめ。わらわも怒りすぎたな……そう落ち込むな」
グーシュは再び無邪気な少女の顔に戻ると、背後でヤキモキしていたミュニ伍長へと向き直った。
「さあ、続きを頼むぞ」
朗らかに微笑みながら、グーシュはミュニ伍長から拳銃の打ち方のレクチャーを受け始めた。
その場には、まだ青い顔をしているミルシャと、無表情に佇むマナ、そして一木が残された。
周囲にはルニの街への出発準備に追われる連隊のSS達の声や、ミュニ伍長の声だけが響く。
時間にして三十秒ほど。
沈黙に耐えかねた一木は、ミルシャに話しかけた。
考えてみると、十代の人間の女の子に話しかけるなど、脳冷凍処置中を除いても随分と久しぶりだ。
再び陰キャのネガティブな思考に囚われそうになるのを抑えながら、一木は慎重に話題を選んだ。
「ミルシャさんは撃たないのか?」
「……僕はあくまで殿下のお付きですので……それに僕は騎士ですので、鉄弓は使いません」
「そうですか」
案の定会話がこれで終わってしまった。
状況を考えれば仕方ないのであるが、どうにも生身時代のトラウマを刺激される会話パターンに、一木は脳と内蔵コンピューターをフル回転させる。
一木がそうして艦内ネットから入手した、「素敵な女性型SSをトリコにする方法」を試そうとしていると、突然マナがミルシャに話しかけた。
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