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シナリオ
姉妹
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G線上のアリアが鳴った。
いつもはサイレントかマナーにしているので久しぶりに聴いた気がする。
相手はシーナ。今まさに鳴っているアリアを設定した本人だ。
選んだ理由を訊いたことがあったけど、私に合うから、イメージにぴったりだからだといっていた。つき合いが長い彼女だけどそのセンスは未だに自分の理解を超えている。
私は着信音にも待ち受けにも興味がないので逆にそういうことに凝るシーナやティナが好き勝手にカスタマイズしている。今鳴ったのもいつの間にかサイレント解除したのかもしれない。
シーナは開口一番、週末空いている? と訊いてきた。ここのところ個人的な用件にかかりっきりであまり遊べなかったので了解して切った。
父方か母方かの曾祖父だったか曾祖母が外国人のシーナはいわゆる混血だけれど、ワンエイスで血は薄まっているのでそうだといわれなければ分からない。女子にしては背があるので運動系クラブから勧誘されない日はないというくらい先輩たちから熱視線を浴びている。運動は嫌いではないけど積極的にする方でもなく、どちらかといえばインドア派の部類に入るのだろう。ただ、運動神経はあるみたいでジムで何度か一戦交えたときは経験者の私が押される展開になったこともある。ヘアバンドのおかげで清楚なイメージがあるけれど、背の高さで相殺されてしまっている。中学のときはそのギャップがいいのだと男子は力説していたけれど。
むしろ好戦的でスポーツに向いているのはティナの方だ。ストレス解消というわけでもないようだけど、よくジムに行きたがるし、勝ったらデートという甘言で男子に勝負を持ちかけてはその驚異的な腕力でもって、四六時中女子の気を引くことにしか興味のない夢見る思春期真っ只中の男子たちにくやし涙と大量の血を流させてきた。
「人のこといえないじゃない」
ティナはいつもそういうけれど、少なくとも私はゴングが鳴る前に真顔で「殺すつもりでいくから」なんて不穏当なことはいわないし、ましてや戦闘意欲をなくした相手に容赦なく拳を揮い続けるような無慈悲なことはしない。
シーナもティナにそそのかされて何度か男子と拳を交えたことはあるけれど、常時リードしながら渡り合っていたのはさすがであった。
ちなみにその顔立ちからハーフだクォーターだと指摘されるティナだけど、両親はともに日本人でそういう意味ではシーナとは立場が逆だ。
そんなことを考えているうち、沸々と誰かを殴りたくなってきた。中学時代にいい寄られた男子はみんな使っちゃったし、さすがにもう釣ることは無理かな。懲りずに再チャレンジしてくれる子がどこかにいないものか。
液晶画面を指でなぞりながら次々と消えては現れる名前をぼんやり眺める。
秒間何枚だったかの連写機能がどうとか、グラビア印刷を超えた高解像度ディスプレイがどうとか、こだわりの高音質がどうとか、相も変わらないむだな性能満載の端末は購入の決め手にひと役買ったフラットなデザインだけは気に入ってる。サイドにあるアルミ削り出し技術の頑張りが光る電源キーもいいアクセントになっている。
ふいに指が止まった。ゴールデンウィーク明けに登録したひとりの男子。同世代の男子はいちいち数えたこともないけど、たくさんデータとしてここに詰まっている。でも彼は特別。絶対的存在。直接会ってまだそんなに経っていないけど、私にとってかけがえのない人。
もっとも愛らしく、憎らしい、ずっとそばにいて欲しい相手であり、永久に消え去って欲しい相手。最愛にして最大の敵。
こんな感情を抱くなんて今までなかったし、今後もきっとない。
私を追って学校までやって来たあの日。私の放った挨拶代わりの初弾をかわしたのは彼が初めてだった。そのあとさらに二発も避けられた。初めての経験に胸が高鳴った。
それならとフットワークを絡めてちょっぴり本気で振った左と渾身の右のコンビネーションを受けても意識を保っていたのには本当に驚いた。
そのあとダウンはしたものの、目は死んでいなかった。そのあとノックアウトするまで重めのと軽めのを交互に打ち込んでいるときはまさに至福のひとときだったし、キャンバスに沈んだあとの情けない表情はとっても愛おしかった。このまま結ばれたいとさえ思ったけれど、強い思念のようなものが彼の目に浮かんで私の気持ちを殺いでしまった。
あのときだけじゃない。初めて会った日の公園で腕を組んだとき、ショッピングモールでいろいろなステーショナリーグッズを見ていたとき……。その強い思念は時折、現われては私の邪魔をする。
そして彼の家に押し掛けた二週間前、その思念の正体がなんなのか分かった。
週末にやって来た沢山のガールフレンド。私が出会うずっと前から彼と出会い、多くの時間を過ごしたであろう彼女たちとのひとときは決して無駄ではなかった。だから当初の予定よりずっと早くステイを切り上げ、翌週、彼女に会った――。
ピンクの看板が見えてきた。瓊紅保駅西口に直結するお姉ちゃんの勤務先。今日は午後出だから時間的に休憩している頃かな。いつも食事の前に5階のレストスペースに自販機で大好きないちごミルクを買って飲んでいるはず。
ペデストリアンデッキに見知った顔が現われた。おそらく直結しているアシュコ瓊紅保店から吐き出されたのだろう。
男子は――彼の親友、ロクデナシ君だったかな。少し離れて後ろを歩いているのはこの間、会った彼女。
そしてその二人の足並みなど無視して先を行くのは今、いちばんの好敵手。半袖シャツにネクタイのふたりとは違い、一人だけ緑のジャケットを着ている。なんとなくこれからの季節もずっと脱ぐことはないような気がする。
それにしても、さすがは勘者。彼のこととなるとフットワークも軽いようだ。
私はボクシングや彼を翻弄することでは味わうことのできない快感に胸を躍らせながら、踵を返した。
*
お姉ちゃんが帰宅したのは十時前だった。父は出張、母は旅行で帰宅してからの数時間、一人でいる家の中はとても閑散としていたけど、こういうのも悪くないなと思った。
「今日ね、十鳥さんたちが来たのよ」
帰宅して、開口一番、お姉ちゃんはそういった。
好んでよく着ている白い丸襟のブラウスは清楚で控えめで未だに純潔を守り通してるお姉ちゃんにはとてもよく似合っている。
「六反園君と羽二生さんと一緒に。めずらしい顔ぶれだと思わない?」
いつもこうやって他の子の話を嬉しそうに話すお姉ちゃんと眺めながら、よそでは私のことをこういう風に話してくれているのだろうかと考えたりする。
「それでね、十鳥さんたちがやって来た理由なんだけれど、ほら、最近ハヤサが入院したじゃない? 初産の上に切迫早産で不安だろうからってナナミも時間見つけては病院に顔を出していたらおかしなことになっちゃってたみたいで」
お姉ちゃんは本当におかしそうに笑いながら私の隣じゃなく、向かい合うようにソファーに腰を下ろした。黒のプリーツスカートから覗く両足はきれいに閉じられている。家の中、それも妹の前でくらいもっとリラックスすればいいのに、こういうきちんとした隙のなさはお姉ちゃんらしいけれど、私を苛立たせる要因でもあったりする。
「いつの間にか妊娠したナナミが産婦人科に出入りしているっていう話になってたの。そうしたらその噂を聞いた六反園君が勘違いしたとかでその確認に来たんですって」
かわいいわよね、とそんなことをいうお姉ちゃんの方こそかわいいと私は思う。
「仮にナナミさんが妊娠していたとして誰が相手なんだろう」
お姉ちゃんは私がいったことをよく理解できなかったのか、不思議そうに首を傾げていた。私は静かに立ち上がると、きょとんとしている愛しい人に近寄った。
「たとえば、弟さんとすごく仲がいいみたいだけど、そういう関係になっていてもおかしくはないと思うんだ」
「さっきから何をいってるの」
眉をひそめるお姉ちゃんもかわいい。
「だからね、ナナミさんが産婦人科に通っていたのは自分自身のことであって、その父親は弟さんの可能性だってあるって話」
「……クシナ、いっていいことと悪いことがあるわよ」
声にかすかな怒りが滲み出ている。当然だ。かけがえのない親友を愚弄されているのだ。そして何より―――。
「可能性がまったくないとはいえないよ?」
「やめて」お姉ちゃんの語気が強まる。「さっきから何なの、あなたがナナミやナギ君の何を知ってるっていうの」
これだ。親友のナナミさんだけじゃなく、その弟である彼に対する過剰なまでの渇愛ぶりはいつだって私の感情を不用意にかき乱す。
「さすがにお姉ちゃんほどは知らない。でもね、羽二生さんだったかな、彼女がナナミさんに対して尊敬以上の想いを抱いているのはよーく知ってる。そういうのを……レズっていうのかな。本当にいるんだね、そういう性癖の人」
お姉ちゃんの顔がみるみる紅潮していく。普段、怒らないお姉ちゃんのこういう表情はとても貴重だ。
「だからね、彼女には正常になって欲しいからナナミさんには申し訳ないけど、弟さんともども協力して貰ったの」
「……どういうこと?」
顔だけじゃなく、だんだん目も赤くなってきた。こういうお姉ちゃんもかわいい。ぞくぞくしてくる。
「羽二生さんにいったの。ナナミさんと弟さんはもう日頃から愛し合う仲だって。そしてその結果、赤ちゃんが」
瞬間、立ち上がったお姉ちゃんの右手が飛んできた。怒られるだけではなく、手も上げられるなんて今日は見たことのないお姉ちゃんがいっぱいだ。だけど、小さい頃から身についた技術が反射的にガードしてしまう。
きっと生まれて初めて手を上げ、そしてあっさり止められてしまったのだろう。悔しげに息を荒げたお姉ちゃんは続けて左手を振ってきた。これも防御。こういう場合、蹴りだとか頭突きとかさらなる攻撃パターンもあるだろうけど、格闘はおろか暴力そのものに縁のないお姉ちゃんにそんな品のないことなど出来るわけもなく、これが精一杯。
「……クシナァ!」
全力の攻撃を防がれたからではないだろう、目に涙を湛えたお姉ちゃんは今まで出したことのないような声で私の名を叫び、今まで見たことのないような目で私を睨みつけた。
初めて触れる、負の感情をむき出しにするお姉ちゃんの姿に感動を覚える。
私の頬を打つことが叶わなかった両の腕をだらしなく下ろしたお姉ちゃんはその場にへたり込んで、肩をふるわせて、声を押し殺すように静かに泣いた。
「……お姉ちゃん、情けない。情けないよ」
身も心もボロボロになりつつあるお姉ちゃんを抱き締めたい情念に駆られる。
でも、まだだ。まだ熟していない。
「…………いこ」
何かをいった気がする。形づくられていないその言葉の欠片を読み取ろうとすると、消え入りそうな声がゆっくりと補正した。
「一緒に行こう、お姉ちゃんと謝りに。ナナミとナギ君と羽二生さんと、迷惑かけた人たち全員に」
「どうして?」
とぼけたつもりはない。私は自分の好きなもののために行動したにすぎない。
「……いいから行くの。みんなにごめんなさいするの。一緒に行ってあげるから」
まるでいたずらをした我が子を諭すお母さんのようにいう。私にとっては姉でもあり母でもあるから違和感はない。さらにいえば友人でもあり――お姉ちゃんは認めないだろうけど――恋人でもあるのだ。
「……ね、クシナ? いい子だから……お願い、ね? クシナ、クシナ」
きっと自分でも何をいっていいのか分かっていないのだ。かわいそうなお姉ちゃん。でも、叶わぬ恋に身を焦がすお姉ちゃんの方がもっと、ずっとかわいそうで見ていられない。だから私はあの、ナナミさんに不浄で不埒な劣情を抱いているお嬢様に目を覚まさせてあげたようにお姉ちゃんもどうしようもできない現実から引っ張り上げてやらなくちゃいけない。
あのお姫様は、彼女に密かな想い――あの小さいくせに強くてしつこい思念の正体――を抱いている彼に、私の思惑通りなら手痛い一発を食らわせたはずだ。私が今まで放ったどんなパンチよりも効いたであろう、最高で最悪な一発を。
物理的な攻撃ならすぐに引いても精神的なものは後々まで傷を残す。最悪、一生。
同じようにこれから私がすることはお姉ちゃんも傷ついてしまうかもしれない。でもやらなくてはいけない。他でもない二人きりの姉妹なんだから。
「ねえ、お姉ちゃん」
ぐずぐずと泣きじゃくっているお姉ちゃんにやさしく話かける。まったく見込みがない女の子を慰めるみたいに。
「ナナミさんの弟さんのこと、好きなんでしょ?」
嗚咽によって小刻みに上下していた肩が止まる。できるなら口にしたくなかった言葉。
お姉ちゃんはじっと床を眺めたまま動かない。聞こえているはずだ。だけど、もう一度、はっきりと問いかける。
「ナナギ君のこと、好きだよね?」
小さな息が漏れた。お姉ちゃんなりの気合いのつもりだったのかもしれない。その甲斐あってか涙と涎でぐしゃぐしゃだった顔には笑みが浮かんでいる。でも残念、ちょっぴり引きつってる。
「……なに、いってるの?」
「だから、お姉ちゃんがナナギ君のこと好きだって話」
いくら頑張って笑顔を作っても付け焼き刃。ただでさえ引きつり気味なのが、どんどん崩れていく。お姉ちゃんの精神状態みたく。
「ナギ君は、ナナミの弟なのよ? あなたと同じ歳なの。知り合って長いし、ナギ君はすごくいい子だから弟みたいに思ってはいるけど、そういうのじゃないの」
変な勘ぐりはやめて、と震える声で抵抗する姿は小動物みたいでたまらなかった。ただ、親友の弟だから、歳が離れているから、そんなありがちで退屈な理由を使ってまで否定したのはがっかり。無理しないでよ、知ってるんだから。
「お姉ちゃん、ナナギ君の話をしているとき、すごく幸せそうな顔してるじゃない」
それは、とお姉ちゃんは息を必死に飲み込みながらまだ抵抗を試みるようだ。
「ナナミの弟だもの。よく知ってる子なのよ、知ってる子の話をして楽しそうにしちゃいけないの?」
じゃあ、外では私のことも楽しそうに話してくれてる?
「………えっ?」
いけない、本音が出てしまった。今はそんなこというべきじゃない。
「どうしてそう思ったかっていうとね」
これから口にすることを思うと、それを聞いたお姉ちゃんのことを思うと心の底から叫び出したい気分になる。人を殴るのとはまったく違う、別の愉悦。大好きなものを拳で、言葉で嬲り、汚し、陵辱する快感は何物にも代えがたい。
――――待っててね、お姉ちゃん。いま、楽にして、あげる。
「いつだったか、お姉ちゃんの部屋から声が聞こえたんだ」
あえて目を見ない。
「すごく切なそうな声。私心配したんだよ、夜中にあんな声が聞こえるんだもん。どこか苦しそうな、押し殺したような声だからうなされていると思った」
ここでお姉ちゃんを見遣る。何かを見られてしまったかのような絶望的な表情。
「よく耳を澄ましたら、ナギ君、ナギ君って、ナナミさんの弟の名前を呼ぶから何ごとかと思っちゃった」
強張った顔から血の気は失せて、ふたたび身体がゆっくりと静かに震え出す。怒りや情けなさから込み上げたさっきまでのとは種類の違う震え。それはきっと恥辱と、もう一つ。
「たとえばあのとき何か怖い夢でも見ちゃって、それで大好きなナナギ君の名前を呼んじゃったのかな?」
顔は伏せ、身を守るように自分の身体を抱きしめて震えを押えようと必死になるけれど、もうどうにもならない。ごめんね、お姉ちゃん。でも姉ちゃんも悪いんだよ?
「ねえ、お姉ちゃん、どんな夢見てたの? 聞かせて。どうして彼の、ナナギ君の名前呼んでたの?」
たぶん涙はもうあふれているのだろう。それが零れ落ちるのも時間の問題。そろそろ引導を渡すとき。
「聞き間違えじゃなきゃ、お姉ちゃん、こんなことをいってた」
確か――、といいかけたとき、お姉ちゃんはハッと顔を上げ、やめて、お願いだからやめてと怯えた目で懇願した。お姉ちゃんにこんな顔でお願いされるなんて初めての体験。だけど私はやめない。これはお姉ちゃんのためでもあるんだから。
「うん、確かこういってた」
私はあの夜、お姉ちゃんの部屋から聞こえてきた淫猥でいびつで哀しい女の独白を思い返しながら一字一句、ゆっくりとなぞった。
上四元アツミという、普段のお姉ちゃんを知る人は決して想像だにしない、できない禁忌にも近い吐露の数々は私の感情を激しく揺さぶり、カラダの中心にある、奥深い秘部にやんごとない熱をもたらした。
それは若く健康的な女としてはむしろ健全な願望。年下とはいえ、ひとりの男に恋焦がれ、その相手の子を欲することの何が問題なのだろう。
たくさんの子種を欲することの何が――――――。
すべて再現し終える前にお姉ちゃんは口を押えて、駆け出していた。逃げたわけじゃないのは行き先で分かった。
お姉ちゃんは洗面所に駆け込むと嘔吐していた。刺激が強すぎたようだ。すごくかわいそうだけど、でもこれは天罰。そして私の救いの手でもあるんだよ。
苦しそうなお姉ちゃんの背中を擦りながら、大丈夫? と訊いた。
私の存在に気付いたお姉ちゃんは目を見開き、怯えたように口を戦慄かせた。ふたたびへたり込むと、手のひらや腕で顔を覆ってしゃくり上げ始める。本当にかわいいお姉ちゃん、今、楽にしてあげるからね。
その手や腕を顔からそっと剥がし、しっかりと見つめながら、私はいった。
「ねえ、お姉ちゃん、気持ちよかった?」
その言葉で一瞬、泣きやんだかに見えたけど、次の瞬間、お姉ちゃんは耳を劈くような絶叫を合図に堰を切ったように泣き出した。
涙と鼻水と涎の体液で顔が、恥辱と恐怖の感情で心が、一緒くたにされぐしゃぐしゃになりながらただ子供みたいに泣きじゃくる。そんなボロボロのお姉ちゃんをしっかりと抱き締めながら、心底、愛おしいなと思った。
これでもうお姉ちゃんは私のものだ。誰にも渡さない。お姉ちゃんは私だけ思っていればいいんだから。
ブラウスのポプリン生地から立ち上る清潔な匂いを堪能しながら、私は狂ったように泣きじゃくるお姉ちゃんをあやすように、静かにいった。
「……お姉ちゃん。私はいつだってお姉ちゃんの味方だからね」
いつもはサイレントかマナーにしているので久しぶりに聴いた気がする。
相手はシーナ。今まさに鳴っているアリアを設定した本人だ。
選んだ理由を訊いたことがあったけど、私に合うから、イメージにぴったりだからだといっていた。つき合いが長い彼女だけどそのセンスは未だに自分の理解を超えている。
私は着信音にも待ち受けにも興味がないので逆にそういうことに凝るシーナやティナが好き勝手にカスタマイズしている。今鳴ったのもいつの間にかサイレント解除したのかもしれない。
シーナは開口一番、週末空いている? と訊いてきた。ここのところ個人的な用件にかかりっきりであまり遊べなかったので了解して切った。
父方か母方かの曾祖父だったか曾祖母が外国人のシーナはいわゆる混血だけれど、ワンエイスで血は薄まっているのでそうだといわれなければ分からない。女子にしては背があるので運動系クラブから勧誘されない日はないというくらい先輩たちから熱視線を浴びている。運動は嫌いではないけど積極的にする方でもなく、どちらかといえばインドア派の部類に入るのだろう。ただ、運動神経はあるみたいでジムで何度か一戦交えたときは経験者の私が押される展開になったこともある。ヘアバンドのおかげで清楚なイメージがあるけれど、背の高さで相殺されてしまっている。中学のときはそのギャップがいいのだと男子は力説していたけれど。
むしろ好戦的でスポーツに向いているのはティナの方だ。ストレス解消というわけでもないようだけど、よくジムに行きたがるし、勝ったらデートという甘言で男子に勝負を持ちかけてはその驚異的な腕力でもって、四六時中女子の気を引くことにしか興味のない夢見る思春期真っ只中の男子たちにくやし涙と大量の血を流させてきた。
「人のこといえないじゃない」
ティナはいつもそういうけれど、少なくとも私はゴングが鳴る前に真顔で「殺すつもりでいくから」なんて不穏当なことはいわないし、ましてや戦闘意欲をなくした相手に容赦なく拳を揮い続けるような無慈悲なことはしない。
シーナもティナにそそのかされて何度か男子と拳を交えたことはあるけれど、常時リードしながら渡り合っていたのはさすがであった。
ちなみにその顔立ちからハーフだクォーターだと指摘されるティナだけど、両親はともに日本人でそういう意味ではシーナとは立場が逆だ。
そんなことを考えているうち、沸々と誰かを殴りたくなってきた。中学時代にいい寄られた男子はみんな使っちゃったし、さすがにもう釣ることは無理かな。懲りずに再チャレンジしてくれる子がどこかにいないものか。
液晶画面を指でなぞりながら次々と消えては現れる名前をぼんやり眺める。
秒間何枚だったかの連写機能がどうとか、グラビア印刷を超えた高解像度ディスプレイがどうとか、こだわりの高音質がどうとか、相も変わらないむだな性能満載の端末は購入の決め手にひと役買ったフラットなデザインだけは気に入ってる。サイドにあるアルミ削り出し技術の頑張りが光る電源キーもいいアクセントになっている。
ふいに指が止まった。ゴールデンウィーク明けに登録したひとりの男子。同世代の男子はいちいち数えたこともないけど、たくさんデータとしてここに詰まっている。でも彼は特別。絶対的存在。直接会ってまだそんなに経っていないけど、私にとってかけがえのない人。
もっとも愛らしく、憎らしい、ずっとそばにいて欲しい相手であり、永久に消え去って欲しい相手。最愛にして最大の敵。
こんな感情を抱くなんて今までなかったし、今後もきっとない。
私を追って学校までやって来たあの日。私の放った挨拶代わりの初弾をかわしたのは彼が初めてだった。そのあとさらに二発も避けられた。初めての経験に胸が高鳴った。
それならとフットワークを絡めてちょっぴり本気で振った左と渾身の右のコンビネーションを受けても意識を保っていたのには本当に驚いた。
そのあとダウンはしたものの、目は死んでいなかった。そのあとノックアウトするまで重めのと軽めのを交互に打ち込んでいるときはまさに至福のひとときだったし、キャンバスに沈んだあとの情けない表情はとっても愛おしかった。このまま結ばれたいとさえ思ったけれど、強い思念のようなものが彼の目に浮かんで私の気持ちを殺いでしまった。
あのときだけじゃない。初めて会った日の公園で腕を組んだとき、ショッピングモールでいろいろなステーショナリーグッズを見ていたとき……。その強い思念は時折、現われては私の邪魔をする。
そして彼の家に押し掛けた二週間前、その思念の正体がなんなのか分かった。
週末にやって来た沢山のガールフレンド。私が出会うずっと前から彼と出会い、多くの時間を過ごしたであろう彼女たちとのひとときは決して無駄ではなかった。だから当初の予定よりずっと早くステイを切り上げ、翌週、彼女に会った――。
ピンクの看板が見えてきた。瓊紅保駅西口に直結するお姉ちゃんの勤務先。今日は午後出だから時間的に休憩している頃かな。いつも食事の前に5階のレストスペースに自販機で大好きないちごミルクを買って飲んでいるはず。
ペデストリアンデッキに見知った顔が現われた。おそらく直結しているアシュコ瓊紅保店から吐き出されたのだろう。
男子は――彼の親友、ロクデナシ君だったかな。少し離れて後ろを歩いているのはこの間、会った彼女。
そしてその二人の足並みなど無視して先を行くのは今、いちばんの好敵手。半袖シャツにネクタイのふたりとは違い、一人だけ緑のジャケットを着ている。なんとなくこれからの季節もずっと脱ぐことはないような気がする。
それにしても、さすがは勘者。彼のこととなるとフットワークも軽いようだ。
私はボクシングや彼を翻弄することでは味わうことのできない快感に胸を躍らせながら、踵を返した。
*
お姉ちゃんが帰宅したのは十時前だった。父は出張、母は旅行で帰宅してからの数時間、一人でいる家の中はとても閑散としていたけど、こういうのも悪くないなと思った。
「今日ね、十鳥さんたちが来たのよ」
帰宅して、開口一番、お姉ちゃんはそういった。
好んでよく着ている白い丸襟のブラウスは清楚で控えめで未だに純潔を守り通してるお姉ちゃんにはとてもよく似合っている。
「六反園君と羽二生さんと一緒に。めずらしい顔ぶれだと思わない?」
いつもこうやって他の子の話を嬉しそうに話すお姉ちゃんと眺めながら、よそでは私のことをこういう風に話してくれているのだろうかと考えたりする。
「それでね、十鳥さんたちがやって来た理由なんだけれど、ほら、最近ハヤサが入院したじゃない? 初産の上に切迫早産で不安だろうからってナナミも時間見つけては病院に顔を出していたらおかしなことになっちゃってたみたいで」
お姉ちゃんは本当におかしそうに笑いながら私の隣じゃなく、向かい合うようにソファーに腰を下ろした。黒のプリーツスカートから覗く両足はきれいに閉じられている。家の中、それも妹の前でくらいもっとリラックスすればいいのに、こういうきちんとした隙のなさはお姉ちゃんらしいけれど、私を苛立たせる要因でもあったりする。
「いつの間にか妊娠したナナミが産婦人科に出入りしているっていう話になってたの。そうしたらその噂を聞いた六反園君が勘違いしたとかでその確認に来たんですって」
かわいいわよね、とそんなことをいうお姉ちゃんの方こそかわいいと私は思う。
「仮にナナミさんが妊娠していたとして誰が相手なんだろう」
お姉ちゃんは私がいったことをよく理解できなかったのか、不思議そうに首を傾げていた。私は静かに立ち上がると、きょとんとしている愛しい人に近寄った。
「たとえば、弟さんとすごく仲がいいみたいだけど、そういう関係になっていてもおかしくはないと思うんだ」
「さっきから何をいってるの」
眉をひそめるお姉ちゃんもかわいい。
「だからね、ナナミさんが産婦人科に通っていたのは自分自身のことであって、その父親は弟さんの可能性だってあるって話」
「……クシナ、いっていいことと悪いことがあるわよ」
声にかすかな怒りが滲み出ている。当然だ。かけがえのない親友を愚弄されているのだ。そして何より―――。
「可能性がまったくないとはいえないよ?」
「やめて」お姉ちゃんの語気が強まる。「さっきから何なの、あなたがナナミやナギ君の何を知ってるっていうの」
これだ。親友のナナミさんだけじゃなく、その弟である彼に対する過剰なまでの渇愛ぶりはいつだって私の感情を不用意にかき乱す。
「さすがにお姉ちゃんほどは知らない。でもね、羽二生さんだったかな、彼女がナナミさんに対して尊敬以上の想いを抱いているのはよーく知ってる。そういうのを……レズっていうのかな。本当にいるんだね、そういう性癖の人」
お姉ちゃんの顔がみるみる紅潮していく。普段、怒らないお姉ちゃんのこういう表情はとても貴重だ。
「だからね、彼女には正常になって欲しいからナナミさんには申し訳ないけど、弟さんともども協力して貰ったの」
「……どういうこと?」
顔だけじゃなく、だんだん目も赤くなってきた。こういうお姉ちゃんもかわいい。ぞくぞくしてくる。
「羽二生さんにいったの。ナナミさんと弟さんはもう日頃から愛し合う仲だって。そしてその結果、赤ちゃんが」
瞬間、立ち上がったお姉ちゃんの右手が飛んできた。怒られるだけではなく、手も上げられるなんて今日は見たことのないお姉ちゃんがいっぱいだ。だけど、小さい頃から身についた技術が反射的にガードしてしまう。
きっと生まれて初めて手を上げ、そしてあっさり止められてしまったのだろう。悔しげに息を荒げたお姉ちゃんは続けて左手を振ってきた。これも防御。こういう場合、蹴りだとか頭突きとかさらなる攻撃パターンもあるだろうけど、格闘はおろか暴力そのものに縁のないお姉ちゃんにそんな品のないことなど出来るわけもなく、これが精一杯。
「……クシナァ!」
全力の攻撃を防がれたからではないだろう、目に涙を湛えたお姉ちゃんは今まで出したことのないような声で私の名を叫び、今まで見たことのないような目で私を睨みつけた。
初めて触れる、負の感情をむき出しにするお姉ちゃんの姿に感動を覚える。
私の頬を打つことが叶わなかった両の腕をだらしなく下ろしたお姉ちゃんはその場にへたり込んで、肩をふるわせて、声を押し殺すように静かに泣いた。
「……お姉ちゃん、情けない。情けないよ」
身も心もボロボロになりつつあるお姉ちゃんを抱き締めたい情念に駆られる。
でも、まだだ。まだ熟していない。
「…………いこ」
何かをいった気がする。形づくられていないその言葉の欠片を読み取ろうとすると、消え入りそうな声がゆっくりと補正した。
「一緒に行こう、お姉ちゃんと謝りに。ナナミとナギ君と羽二生さんと、迷惑かけた人たち全員に」
「どうして?」
とぼけたつもりはない。私は自分の好きなもののために行動したにすぎない。
「……いいから行くの。みんなにごめんなさいするの。一緒に行ってあげるから」
まるでいたずらをした我が子を諭すお母さんのようにいう。私にとっては姉でもあり母でもあるから違和感はない。さらにいえば友人でもあり――お姉ちゃんは認めないだろうけど――恋人でもあるのだ。
「……ね、クシナ? いい子だから……お願い、ね? クシナ、クシナ」
きっと自分でも何をいっていいのか分かっていないのだ。かわいそうなお姉ちゃん。でも、叶わぬ恋に身を焦がすお姉ちゃんの方がもっと、ずっとかわいそうで見ていられない。だから私はあの、ナナミさんに不浄で不埒な劣情を抱いているお嬢様に目を覚まさせてあげたようにお姉ちゃんもどうしようもできない現実から引っ張り上げてやらなくちゃいけない。
あのお姫様は、彼女に密かな想い――あの小さいくせに強くてしつこい思念の正体――を抱いている彼に、私の思惑通りなら手痛い一発を食らわせたはずだ。私が今まで放ったどんなパンチよりも効いたであろう、最高で最悪な一発を。
物理的な攻撃ならすぐに引いても精神的なものは後々まで傷を残す。最悪、一生。
同じようにこれから私がすることはお姉ちゃんも傷ついてしまうかもしれない。でもやらなくてはいけない。他でもない二人きりの姉妹なんだから。
「ねえ、お姉ちゃん」
ぐずぐずと泣きじゃくっているお姉ちゃんにやさしく話かける。まったく見込みがない女の子を慰めるみたいに。
「ナナミさんの弟さんのこと、好きなんでしょ?」
嗚咽によって小刻みに上下していた肩が止まる。できるなら口にしたくなかった言葉。
お姉ちゃんはじっと床を眺めたまま動かない。聞こえているはずだ。だけど、もう一度、はっきりと問いかける。
「ナナギ君のこと、好きだよね?」
小さな息が漏れた。お姉ちゃんなりの気合いのつもりだったのかもしれない。その甲斐あってか涙と涎でぐしゃぐしゃだった顔には笑みが浮かんでいる。でも残念、ちょっぴり引きつってる。
「……なに、いってるの?」
「だから、お姉ちゃんがナナギ君のこと好きだって話」
いくら頑張って笑顔を作っても付け焼き刃。ただでさえ引きつり気味なのが、どんどん崩れていく。お姉ちゃんの精神状態みたく。
「ナギ君は、ナナミの弟なのよ? あなたと同じ歳なの。知り合って長いし、ナギ君はすごくいい子だから弟みたいに思ってはいるけど、そういうのじゃないの」
変な勘ぐりはやめて、と震える声で抵抗する姿は小動物みたいでたまらなかった。ただ、親友の弟だから、歳が離れているから、そんなありがちで退屈な理由を使ってまで否定したのはがっかり。無理しないでよ、知ってるんだから。
「お姉ちゃん、ナナギ君の話をしているとき、すごく幸せそうな顔してるじゃない」
それは、とお姉ちゃんは息を必死に飲み込みながらまだ抵抗を試みるようだ。
「ナナミの弟だもの。よく知ってる子なのよ、知ってる子の話をして楽しそうにしちゃいけないの?」
じゃあ、外では私のことも楽しそうに話してくれてる?
「………えっ?」
いけない、本音が出てしまった。今はそんなこというべきじゃない。
「どうしてそう思ったかっていうとね」
これから口にすることを思うと、それを聞いたお姉ちゃんのことを思うと心の底から叫び出したい気分になる。人を殴るのとはまったく違う、別の愉悦。大好きなものを拳で、言葉で嬲り、汚し、陵辱する快感は何物にも代えがたい。
――――待っててね、お姉ちゃん。いま、楽にして、あげる。
「いつだったか、お姉ちゃんの部屋から声が聞こえたんだ」
あえて目を見ない。
「すごく切なそうな声。私心配したんだよ、夜中にあんな声が聞こえるんだもん。どこか苦しそうな、押し殺したような声だからうなされていると思った」
ここでお姉ちゃんを見遣る。何かを見られてしまったかのような絶望的な表情。
「よく耳を澄ましたら、ナギ君、ナギ君って、ナナミさんの弟の名前を呼ぶから何ごとかと思っちゃった」
強張った顔から血の気は失せて、ふたたび身体がゆっくりと静かに震え出す。怒りや情けなさから込み上げたさっきまでのとは種類の違う震え。それはきっと恥辱と、もう一つ。
「たとえばあのとき何か怖い夢でも見ちゃって、それで大好きなナナギ君の名前を呼んじゃったのかな?」
顔は伏せ、身を守るように自分の身体を抱きしめて震えを押えようと必死になるけれど、もうどうにもならない。ごめんね、お姉ちゃん。でも姉ちゃんも悪いんだよ?
「ねえ、お姉ちゃん、どんな夢見てたの? 聞かせて。どうして彼の、ナナギ君の名前呼んでたの?」
たぶん涙はもうあふれているのだろう。それが零れ落ちるのも時間の問題。そろそろ引導を渡すとき。
「聞き間違えじゃなきゃ、お姉ちゃん、こんなことをいってた」
確か――、といいかけたとき、お姉ちゃんはハッと顔を上げ、やめて、お願いだからやめてと怯えた目で懇願した。お姉ちゃんにこんな顔でお願いされるなんて初めての体験。だけど私はやめない。これはお姉ちゃんのためでもあるんだから。
「うん、確かこういってた」
私はあの夜、お姉ちゃんの部屋から聞こえてきた淫猥でいびつで哀しい女の独白を思い返しながら一字一句、ゆっくりとなぞった。
上四元アツミという、普段のお姉ちゃんを知る人は決して想像だにしない、できない禁忌にも近い吐露の数々は私の感情を激しく揺さぶり、カラダの中心にある、奥深い秘部にやんごとない熱をもたらした。
それは若く健康的な女としてはむしろ健全な願望。年下とはいえ、ひとりの男に恋焦がれ、その相手の子を欲することの何が問題なのだろう。
たくさんの子種を欲することの何が――――――。
すべて再現し終える前にお姉ちゃんは口を押えて、駆け出していた。逃げたわけじゃないのは行き先で分かった。
お姉ちゃんは洗面所に駆け込むと嘔吐していた。刺激が強すぎたようだ。すごくかわいそうだけど、でもこれは天罰。そして私の救いの手でもあるんだよ。
苦しそうなお姉ちゃんの背中を擦りながら、大丈夫? と訊いた。
私の存在に気付いたお姉ちゃんは目を見開き、怯えたように口を戦慄かせた。ふたたびへたり込むと、手のひらや腕で顔を覆ってしゃくり上げ始める。本当にかわいいお姉ちゃん、今、楽にしてあげるからね。
その手や腕を顔からそっと剥がし、しっかりと見つめながら、私はいった。
「ねえ、お姉ちゃん、気持ちよかった?」
その言葉で一瞬、泣きやんだかに見えたけど、次の瞬間、お姉ちゃんは耳を劈くような絶叫を合図に堰を切ったように泣き出した。
涙と鼻水と涎の体液で顔が、恥辱と恐怖の感情で心が、一緒くたにされぐしゃぐしゃになりながらただ子供みたいに泣きじゃくる。そんなボロボロのお姉ちゃんをしっかりと抱き締めながら、心底、愛おしいなと思った。
これでもうお姉ちゃんは私のものだ。誰にも渡さない。お姉ちゃんは私だけ思っていればいいんだから。
ブラウスのポプリン生地から立ち上る清潔な匂いを堪能しながら、私は狂ったように泣きじゃくるお姉ちゃんをあやすように、静かにいった。
「……お姉ちゃん。私はいつだってお姉ちゃんの味方だからね」
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