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十鳥オガミと上四元クシナ
導引
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ウェッジソールが舗装されて日も浅そうなレンガ色の歩道を心地よく蹴り上げる。
かかとがジップ仕様の編み上げのグラディエーターサンダルはこれからの時期に活躍するだろうと一目で気に入ってシーナと一緒に買った逸品だ。
フロントに配されたボタンが目を引く黒のプリーツミニスカートの開放感とシャーリングが効いた白いオフショルダーフリルカットソーの大胆さも気分高揚に一役買っている。
留め具と型押しがポイントのクリアバッグも今の季節には自然と馴染む。
本当だったら、シーナたちと遊ぶために考えていたコーディネイトだった。
急なキャンセルにもシーナもティナも理由は聞かずに納得してくれた。
今度、行きつけのコーヒーショップでカイザーロールとハムとチーズのホットサンド、食後にクラシックチョコレートケーキでも付けてあげよう。ティナはニューヨークチーズケーキも付けろとか……いや、ホテル・アピアランスのフルーツ&デザートバイキングに連れて行けとかいい出しそうだ。
ここに来るのは二度目。
間髪入れずにやって来た、招待もしていない招かれざる客たる私をどんな顔で迎えてくれるのやら。
あらためて見ると、本当、大きな家。バリアフリーの権化みたいな、大切な思い出と引き替えに生まれ変わったらしい家。
インターホンを押すと、「はい」と品のいい声が返ってきた。
「休日の早朝に申し訳ございません。わたくし上四元と申します。恐れ入りますが、オガミさんはご在宅でしょうか」
息を呑む気配があった。都合のいい解釈かもしれないけど、どこか嬉しそうな感じ。
「ただ今呼んで参りますので、どうぞお入りになって下さい」
お許しが出たので、門扉を開けてホワイトチョコレートを辿りながら玄関に向かう。
ポーチに立つと、厚いドアの向こうからかすかに会話が漏れ聞こえてきた。
ほどなく、ドアが開けられる。
「おはよう、十鳥さん」
渾身のモーニングスマイルに十鳥オガミはいつものクールビューティーフェイスを崩すどころかいっそうクールな部分を強めていた。
「何の用かしら」
「遊びに行きましょう?」
「約束した覚えはないのだけれど」
「サプライズよ」
「あなたはサプライズを多用し過ぎな気もするわ」
紫の花柄パジャマを着込んだ十鳥オガミは表情と声に敵意を隠そうともせずいい放った。彼女の纏っている丸首のそれは女子高生の趣味から大きく逸脱している。やはり入手先はおしゃれ工房なのだろうか。
休日の朝から招かれざる客の訪問に気分を害しているミス・フレンドの後方で何かそわそわしているご婦人が目に入る。
生成りのサマーニットに七分丈のカーゴパンツ、後ろ髪をスカーフでまとめたその容姿は事前情報がなければお母さんだと認識していたと思う。
「初めまして、わたくし上四元クシナと申します。オガミさんには日頃からとても親しくして頂いています」
十鳥オガミは黙って聞いていたけど、その切れ長の目には間違いなく疑念と嫌悪が渦巻いている。
「まあまあ、ご丁寧に。わたくしオガミの祖母のイワでございます」
イワさんは声にも負けない品のいい笑顔で私を歓迎してくれた。ちょっとはお孫さんも見習って欲しいところ。
「出かけるのね」
イワさんにそう振られた十鳥オガミはいえ、と控えめにしかし毅然と拒絶を表明した。
「お友達が誘って下さっているのに何をいうの」
その言葉に十鳥オガミは一瞬、ためらいを見せた。そしてそれは私も。
……友達、か。
「たまには遊んできなさい」
イワさんに促された十鳥オガミは困惑顔を見せていたけれど、ため息を一つ吐くと、観念したように自室へ戻っていった。
中でお待ちになって下さいというイワさんに甘えて、上がらせもらうことにした。
玄関ホールと繋がる吹き抜けの恩恵を受けた開放感抜群のリビングは今の時期は問題はなさそうだけど、冬は厳しそうだ。
いや、バリアフリーが行き届き、ホームエレベーターまで備えた豪邸だ。その辺りもきちんと配慮されているのだろうし、そもそも外野の私が思案するようなことでもない。
「上四元さんはお住まいはどちら?」
パイン材のダイニングテーブルにアイスコーヒーを置きながら、イワさんはとても興味深げに訊いてきた。おばあちゃんというよりはお母さんと呼んだ方がしっくりくる若々しさは秘訣を質問したくなるほどである。
「婀娜尼です。小学校二年のときに於牟寺から引っ越してきました」
「新興住宅街の方ね。あちらはずいぶん賑やかでしょう。学校はどちら?」
「瓊紅保女子に通っています」
「確か制服が人気のあるところね。上四元さんはそう、お嬢様なのねえ」
女子高イコールお嬢様学校ではもちろんないのだけど、なぜか瓊紅保女子は世間ではそう思われているみたい。ナポレオンアーマーの功罪か。
「あの子にこんなきれいなお友達がいたなんて……本当、モデルさんみたい」
世辞には聞こえない自然さでイワさんは感嘆するようにため息を吐く。同世代や異性にいわれても聞き流すところだけれど、人生経験が豊富なご婦人にいわれると照れくさくも素直に受け入れられる不思議。
「モテるでしょう。男の子は放っておかないわよねえ……本当、きれい」
さすがにくすぐったくなってきた。その男子たちをボクシングジムに誘い込んでは一戦を申し込み、キャンバスに沈めていると知ったら、どういう顔をされるんだろう。
「ところで今日はどちらまで?」
考えてなかったけれど、ちょっと遠出をするつもりではあった。
「電車で行くことは決まっているんですが、行き先は気分次第ということで」
今日初めて会った小娘の行き当たりばったりなプランにもイワさんは若いうちはそうでないとねと笑って見せた。こういうおばあちゃん、いいな。
階段から気配が降りてきた。
夏服姿の十鳥オガミはその格好も手伝って清楚なお嬢様然とホールに佇んでいた。さすがにジャケットは脱いだようだけど、こういう日まで制服とはさすがというかなんというか。
「オガミ」
イワさんが財布を開けながら、近づくと、それを悟った十鳥オガミが制した。
「持ちました、大丈夫です」
「何いってるの、あなたのことだから電車賃に毛が生えた程度しか持っていかないんでしょう?」
ふたたび困惑顔になる。イワさんの前ではクールビューティーも形無し、か。こういうオガミちゃんはもっと見たい。
持っていきなさいとお札を数枚、手に握らせる。
「こんなにいりません」
「いいから」
おばあちゃんに押されっぱなしの孫の姿に口元が緩むのを我慢しながら玄関へ向かう。
「上四元さん、よろしくお願いしますね」
丁寧にアタマを下げられ、こちらも恐縮しながらアタマを下げ返す。
「アイスコーヒーご馳走様でした。オガミさん、お借りします」
「行ってきます」
言動のみならず生き方まで柔和さを漂わせているようなイワさんに見送られ、十鳥オガミと共にバリアフリーのモデルルームみたいな豪邸を出た。
「どういうつもりかしら」
門扉を後ろ手で閉めながら十鳥オガミは眼光鋭く攻撃を開始する。
「いいでしょう。おばあさまもたまにはっておっしゃっていたじゃない」
「都合よく祖母を出さないで」
心底不快そうに眉を歪める。
「あなたはどんなときでも制服なのね。ジャケットを脱いだのは評価するけど」
ブラウスにネクタイの組み合わせは女子の夏服としてはこの辺ではめずらしい。
「学生だもの。当然でしょう」
らしい返しではあるものの、こういう日にはどんな私服をお召しになるのか楽しみにしていた身としては不満が残る。
「制服なのがそんなに納得できないのかしら」
よほど顔に出ていたらしい。これはいけない。機嫌を損ねてやはり行かないといい出されてはたまらない。
「あなたの私服にちょっと興味があったのよ。制服がダメというわけじゃないから気にしないで」
「私服ならこの間見たでしょう」
何を今さらと蔑むようにこちらを見やる。この間……?
と、脳裏にあのフレンドファッションが鮮明に甦る。
「面倒な人ね」
十鳥オガミは踵を返すと門扉に手をかけた。
「着替えるの? これから?」
「あなたが水を向けたのでしょう」
まさかとは思うけれど、あのTシャツと伸び伸びジーンズ姿が脳裏に呼び起こされる。
「まったく一緒ではないわよ。色違いになるけれど」
フレンドファッション、ふたたび。
「制服でいいわ」
期待した私が愚かだった。
「本当に面倒な人ね。そんなに他人を翻弄するのが楽しいのかしら」
十鳥オガミは呆れたような視線を容赦なくぶつけてくる。他人を翻弄するのは確かに楽しいけれど、今のは他意はないのだ。信じてくれないだろうけど。
「ねえ、普段からあの格好で外出してるの?」
「すぐに済むような用事、近所に出かけるようなときはそうね、あの格好かしら。外出するときは基本的に制服よ」
賢明。
「どこに連れ出すつもりかしら。祖母が電車賃がどうとか口にしていたけれど」
十鳥オガミは服の話などどうでもよさげに歩を早めながら、訊いてきた。何度か歩く姿を見ているけど、本当、早歩きだ。
「特に考えてないかな。気の向くまま、ってことで」
「あなたにとって人を振り回すことは畢生の大事業、ライフワークみたいなものなのね」
その皮肉はけっこう、効くわね。十鳥さん。
*
会多戸市は人口百万人を超える政令指定都市らしい。
産業は第三次産業がメインで政策としてコンパクトシティを推進している、とこの街にも土地やビルを持つ伯父さんから聞いたことがある。
瓊紅保の何倍もあるペデストリアンデッキでは毛細血管を走る白血球みたいに人々が忙しなく行き来している。
「ずいぶんと遠くまで来たのね」
十鳥オガミは感心したような口調で辺りを見渡した。
数時間前の瓊紅保駅構内。なじるような視線を背中に容赦なく受けながら、券売機の前で突然、閃いた行き先がここだった。
電車の中ではロングシートに座った私を避けるように彼女は隣りの車両に移動し、ボックスシートに座ると持ってきた文庫本を開き、持参したらしいお菓子を食べていた。
きっとあれが今の私たちの心の距離ということなんだろう。
「どこをどう歩くのか、決まっていないのよね」
直前まで行き先を決めかねていたのだからそういう皮肉も当然。でも、会多戸は伯父さんに何度か連れて来てもらっているし、ティナたちとも一度来ている。お姉ちゃんもナナミさんとよく遊びに来ているみたいだしで未知の土地というわけでもない。
会多戸には老舗のデパートやファッションを中心とした複合ビルなどが多数ある。
中でも瓊紅保ではお目にかかれないファッションブランドがたくさんテナントとして入っている他、雑貨、書店、飲食店、映画館が犇いているスロゥフ会多戸店は一日中いても飽きない楽しさだ。
「目星は付けているから安心して」
十鳥オガミはこんなところまで連れて来て安心もないでしょうというような目でこちらを黙って見ていたけど、そのあとは大人しくついて来ていた。
何ヶ月ぶりかのスロゥフは撤退したブランドと参入したブランドが若干入れ替わっており、ファッションフロア以外のテナントもいくつか変化があった。幸い、私のお気に入りのショップは健在だ。
さっそく該当フロアに移動すると、店員さんが笑顔でやって来た。
「お久しぶり、上四元さん」
「ご無沙汰しています」
後方にいる十鳥オガミを認めた店員さんがお友達? と訊いてくる。
何と答えようか躊躇していると、いいえと凜とした声が飛んだ。
「知り合い以上友達未満、ということで」
私の説明に店員さんは苦笑を見せた。
今日は当初からここに来るつもりじゃなかったので、他のブランドで固めてしまったのが悔やまれる。もちろんそういう気遣いはいらないのだろうけど、ちょっと気が引ける。
「あなたがよく着ている洋服のお店かしら」
こういうところは初めてなのか、物珍しげにしている十鳥オガミがつぶやく。
けっこう観察眼は鋭いようだ。
ここに来たのはもちろん自分が欲しい物があるからだけど、もう一つ。
夏向けのバックスタイルのワンピースを手にすると、試着を願い出た。でも着るのは私ではない。
「十鳥さん」
この場に馴染むことを徹底的に拒否するような体で佇んでいる十鳥オガミの手を引いて試着室に押し込むと、黒のワンピースとネックベルトを手渡す。
「着てみて」
カーテンを閉める直前、首だけ残してそういうと、返事を待たずに引っ込んだ。
不機嫌オーラを漂わせてすぐに出てくることはもちろん、想定済み。だけど、妙な確信があった。
かすかな吐息が漏れたあと、衣服を脱ぐ気配がした。
十鳥オガミがどういう下着を身につけているのか非常に気になる。一気にカーテンを引きたい衝動を必死に抑えて、しばらく待つと、着脱の音が消えた。
「開けていい?」
返事はなかった。裏返せばダメではないということ。
開けるとそこにいたのは女王様。
ただでさえ切れ長の目が特徴的なクールビューティー、読みは大当たり。いちいちいわなくてもネックベルトもきちんと付けている。あとは……。
「どうぞ」
振り向くと、空気を読んだ店員さんがベルトやリングの付いたミドル丈のブーツを持って待機していた。彼女の靴のサイズは把握している。ブーツのそれを確認して目の前に在す女王様に差し出す。
「……………」
憮然たる面持ちで受け取ると、どう処理していいのか分からないのか、異国の特産物でも見るような目線をブーツに向けている。すかさずサイドジッパーを引いて頷いてみせると、素直に白い足を入れた。
武装完了。
ターンをリクエストしてもしそうにないので、女王様と化してからずっと押し黙ったままの彼女の肩を軽く捻ってバックスタイルを拝ませていただく。
「おお……」
店員さんのみならず他のお客さんからも感嘆の声が上がる。
大胆に開いたバックから覗く透き通るような白い肌と腰の辺りに配された編み上げ部分が絶妙に溶け込んでいる。肩紐ともどもなかなかにセクシー。
手動のターンを止めて正面からあらためて眺める。
似合う。似合いすぎる。似合いすぎて……笑いが込み上げる。
クリアバッグの外ポケットの留め具を外して端末を取り出すと、店員さんに撮影する旨を伝えて女王様に向けた。
「……と、撮るわね、き、記念……に……」
ハマリすぎて逆に笑いが止まらなくなった。その様子に気づいた通路を歩く人や他のショップにいた人たちが何ごとかと集まってくる。
横隔膜の引きつりが生み出す震えのせいで腕が安定せず、なかなかピントが合わない。
「……い、いくよぉ……」
カシャッ。
足だけしか写っていない。しかもボケているし。
「も、もう一回……ね」
カシャッ。
やはりずれる。今度は胸の辺り。もう一回。
「………あ」
見世物と化したことにいい加減しびれを切らしたのか、女王様はブーツを脱ぐと、カーテンを引いて試着室に篭ってしまった。残念。
女王様が十鳥オガミに戻る間、ほとんど胸から下は生地がないエロティックなショートカットソーとミニワンピースにもなりそうなオフタートルのノースリーブニットを買った。
「とてもお似合いでしたよ」
会計を済ませると、十鳥オガミが店員さんにワンピース一式を返していた。
「お騒がせしました」
にこりともしない通常営業な表情で軽い辞儀を見せると、十鳥オガミが一足先にショップを後にしていた。
「また来ますね」
「ありがとうございました。知り合い以上友達未満の方にもよろしくお伝え下さい」
店員さんと挨拶を交わすと、相変わらず早歩きの十鳥オガミを追った。
かかとがジップ仕様の編み上げのグラディエーターサンダルはこれからの時期に活躍するだろうと一目で気に入ってシーナと一緒に買った逸品だ。
フロントに配されたボタンが目を引く黒のプリーツミニスカートの開放感とシャーリングが効いた白いオフショルダーフリルカットソーの大胆さも気分高揚に一役買っている。
留め具と型押しがポイントのクリアバッグも今の季節には自然と馴染む。
本当だったら、シーナたちと遊ぶために考えていたコーディネイトだった。
急なキャンセルにもシーナもティナも理由は聞かずに納得してくれた。
今度、行きつけのコーヒーショップでカイザーロールとハムとチーズのホットサンド、食後にクラシックチョコレートケーキでも付けてあげよう。ティナはニューヨークチーズケーキも付けろとか……いや、ホテル・アピアランスのフルーツ&デザートバイキングに連れて行けとかいい出しそうだ。
ここに来るのは二度目。
間髪入れずにやって来た、招待もしていない招かれざる客たる私をどんな顔で迎えてくれるのやら。
あらためて見ると、本当、大きな家。バリアフリーの権化みたいな、大切な思い出と引き替えに生まれ変わったらしい家。
インターホンを押すと、「はい」と品のいい声が返ってきた。
「休日の早朝に申し訳ございません。わたくし上四元と申します。恐れ入りますが、オガミさんはご在宅でしょうか」
息を呑む気配があった。都合のいい解釈かもしれないけど、どこか嬉しそうな感じ。
「ただ今呼んで参りますので、どうぞお入りになって下さい」
お許しが出たので、門扉を開けてホワイトチョコレートを辿りながら玄関に向かう。
ポーチに立つと、厚いドアの向こうからかすかに会話が漏れ聞こえてきた。
ほどなく、ドアが開けられる。
「おはよう、十鳥さん」
渾身のモーニングスマイルに十鳥オガミはいつものクールビューティーフェイスを崩すどころかいっそうクールな部分を強めていた。
「何の用かしら」
「遊びに行きましょう?」
「約束した覚えはないのだけれど」
「サプライズよ」
「あなたはサプライズを多用し過ぎな気もするわ」
紫の花柄パジャマを着込んだ十鳥オガミは表情と声に敵意を隠そうともせずいい放った。彼女の纏っている丸首のそれは女子高生の趣味から大きく逸脱している。やはり入手先はおしゃれ工房なのだろうか。
休日の朝から招かれざる客の訪問に気分を害しているミス・フレンドの後方で何かそわそわしているご婦人が目に入る。
生成りのサマーニットに七分丈のカーゴパンツ、後ろ髪をスカーフでまとめたその容姿は事前情報がなければお母さんだと認識していたと思う。
「初めまして、わたくし上四元クシナと申します。オガミさんには日頃からとても親しくして頂いています」
十鳥オガミは黙って聞いていたけど、その切れ長の目には間違いなく疑念と嫌悪が渦巻いている。
「まあまあ、ご丁寧に。わたくしオガミの祖母のイワでございます」
イワさんは声にも負けない品のいい笑顔で私を歓迎してくれた。ちょっとはお孫さんも見習って欲しいところ。
「出かけるのね」
イワさんにそう振られた十鳥オガミはいえ、と控えめにしかし毅然と拒絶を表明した。
「お友達が誘って下さっているのに何をいうの」
その言葉に十鳥オガミは一瞬、ためらいを見せた。そしてそれは私も。
……友達、か。
「たまには遊んできなさい」
イワさんに促された十鳥オガミは困惑顔を見せていたけれど、ため息を一つ吐くと、観念したように自室へ戻っていった。
中でお待ちになって下さいというイワさんに甘えて、上がらせもらうことにした。
玄関ホールと繋がる吹き抜けの恩恵を受けた開放感抜群のリビングは今の時期は問題はなさそうだけど、冬は厳しそうだ。
いや、バリアフリーが行き届き、ホームエレベーターまで備えた豪邸だ。その辺りもきちんと配慮されているのだろうし、そもそも外野の私が思案するようなことでもない。
「上四元さんはお住まいはどちら?」
パイン材のダイニングテーブルにアイスコーヒーを置きながら、イワさんはとても興味深げに訊いてきた。おばあちゃんというよりはお母さんと呼んだ方がしっくりくる若々しさは秘訣を質問したくなるほどである。
「婀娜尼です。小学校二年のときに於牟寺から引っ越してきました」
「新興住宅街の方ね。あちらはずいぶん賑やかでしょう。学校はどちら?」
「瓊紅保女子に通っています」
「確か制服が人気のあるところね。上四元さんはそう、お嬢様なのねえ」
女子高イコールお嬢様学校ではもちろんないのだけど、なぜか瓊紅保女子は世間ではそう思われているみたい。ナポレオンアーマーの功罪か。
「あの子にこんなきれいなお友達がいたなんて……本当、モデルさんみたい」
世辞には聞こえない自然さでイワさんは感嘆するようにため息を吐く。同世代や異性にいわれても聞き流すところだけれど、人生経験が豊富なご婦人にいわれると照れくさくも素直に受け入れられる不思議。
「モテるでしょう。男の子は放っておかないわよねえ……本当、きれい」
さすがにくすぐったくなってきた。その男子たちをボクシングジムに誘い込んでは一戦を申し込み、キャンバスに沈めていると知ったら、どういう顔をされるんだろう。
「ところで今日はどちらまで?」
考えてなかったけれど、ちょっと遠出をするつもりではあった。
「電車で行くことは決まっているんですが、行き先は気分次第ということで」
今日初めて会った小娘の行き当たりばったりなプランにもイワさんは若いうちはそうでないとねと笑って見せた。こういうおばあちゃん、いいな。
階段から気配が降りてきた。
夏服姿の十鳥オガミはその格好も手伝って清楚なお嬢様然とホールに佇んでいた。さすがにジャケットは脱いだようだけど、こういう日まで制服とはさすがというかなんというか。
「オガミ」
イワさんが財布を開けながら、近づくと、それを悟った十鳥オガミが制した。
「持ちました、大丈夫です」
「何いってるの、あなたのことだから電車賃に毛が生えた程度しか持っていかないんでしょう?」
ふたたび困惑顔になる。イワさんの前ではクールビューティーも形無し、か。こういうオガミちゃんはもっと見たい。
持っていきなさいとお札を数枚、手に握らせる。
「こんなにいりません」
「いいから」
おばあちゃんに押されっぱなしの孫の姿に口元が緩むのを我慢しながら玄関へ向かう。
「上四元さん、よろしくお願いしますね」
丁寧にアタマを下げられ、こちらも恐縮しながらアタマを下げ返す。
「アイスコーヒーご馳走様でした。オガミさん、お借りします」
「行ってきます」
言動のみならず生き方まで柔和さを漂わせているようなイワさんに見送られ、十鳥オガミと共にバリアフリーのモデルルームみたいな豪邸を出た。
「どういうつもりかしら」
門扉を後ろ手で閉めながら十鳥オガミは眼光鋭く攻撃を開始する。
「いいでしょう。おばあさまもたまにはっておっしゃっていたじゃない」
「都合よく祖母を出さないで」
心底不快そうに眉を歪める。
「あなたはどんなときでも制服なのね。ジャケットを脱いだのは評価するけど」
ブラウスにネクタイの組み合わせは女子の夏服としてはこの辺ではめずらしい。
「学生だもの。当然でしょう」
らしい返しではあるものの、こういう日にはどんな私服をお召しになるのか楽しみにしていた身としては不満が残る。
「制服なのがそんなに納得できないのかしら」
よほど顔に出ていたらしい。これはいけない。機嫌を損ねてやはり行かないといい出されてはたまらない。
「あなたの私服にちょっと興味があったのよ。制服がダメというわけじゃないから気にしないで」
「私服ならこの間見たでしょう」
何を今さらと蔑むようにこちらを見やる。この間……?
と、脳裏にあのフレンドファッションが鮮明に甦る。
「面倒な人ね」
十鳥オガミは踵を返すと門扉に手をかけた。
「着替えるの? これから?」
「あなたが水を向けたのでしょう」
まさかとは思うけれど、あのTシャツと伸び伸びジーンズ姿が脳裏に呼び起こされる。
「まったく一緒ではないわよ。色違いになるけれど」
フレンドファッション、ふたたび。
「制服でいいわ」
期待した私が愚かだった。
「本当に面倒な人ね。そんなに他人を翻弄するのが楽しいのかしら」
十鳥オガミは呆れたような視線を容赦なくぶつけてくる。他人を翻弄するのは確かに楽しいけれど、今のは他意はないのだ。信じてくれないだろうけど。
「ねえ、普段からあの格好で外出してるの?」
「すぐに済むような用事、近所に出かけるようなときはそうね、あの格好かしら。外出するときは基本的に制服よ」
賢明。
「どこに連れ出すつもりかしら。祖母が電車賃がどうとか口にしていたけれど」
十鳥オガミは服の話などどうでもよさげに歩を早めながら、訊いてきた。何度か歩く姿を見ているけど、本当、早歩きだ。
「特に考えてないかな。気の向くまま、ってことで」
「あなたにとって人を振り回すことは畢生の大事業、ライフワークみたいなものなのね」
その皮肉はけっこう、効くわね。十鳥さん。
*
会多戸市は人口百万人を超える政令指定都市らしい。
産業は第三次産業がメインで政策としてコンパクトシティを推進している、とこの街にも土地やビルを持つ伯父さんから聞いたことがある。
瓊紅保の何倍もあるペデストリアンデッキでは毛細血管を走る白血球みたいに人々が忙しなく行き来している。
「ずいぶんと遠くまで来たのね」
十鳥オガミは感心したような口調で辺りを見渡した。
数時間前の瓊紅保駅構内。なじるような視線を背中に容赦なく受けながら、券売機の前で突然、閃いた行き先がここだった。
電車の中ではロングシートに座った私を避けるように彼女は隣りの車両に移動し、ボックスシートに座ると持ってきた文庫本を開き、持参したらしいお菓子を食べていた。
きっとあれが今の私たちの心の距離ということなんだろう。
「どこをどう歩くのか、決まっていないのよね」
直前まで行き先を決めかねていたのだからそういう皮肉も当然。でも、会多戸は伯父さんに何度か連れて来てもらっているし、ティナたちとも一度来ている。お姉ちゃんもナナミさんとよく遊びに来ているみたいだしで未知の土地というわけでもない。
会多戸には老舗のデパートやファッションを中心とした複合ビルなどが多数ある。
中でも瓊紅保ではお目にかかれないファッションブランドがたくさんテナントとして入っている他、雑貨、書店、飲食店、映画館が犇いているスロゥフ会多戸店は一日中いても飽きない楽しさだ。
「目星は付けているから安心して」
十鳥オガミはこんなところまで連れて来て安心もないでしょうというような目でこちらを黙って見ていたけど、そのあとは大人しくついて来ていた。
何ヶ月ぶりかのスロゥフは撤退したブランドと参入したブランドが若干入れ替わっており、ファッションフロア以外のテナントもいくつか変化があった。幸い、私のお気に入りのショップは健在だ。
さっそく該当フロアに移動すると、店員さんが笑顔でやって来た。
「お久しぶり、上四元さん」
「ご無沙汰しています」
後方にいる十鳥オガミを認めた店員さんがお友達? と訊いてくる。
何と答えようか躊躇していると、いいえと凜とした声が飛んだ。
「知り合い以上友達未満、ということで」
私の説明に店員さんは苦笑を見せた。
今日は当初からここに来るつもりじゃなかったので、他のブランドで固めてしまったのが悔やまれる。もちろんそういう気遣いはいらないのだろうけど、ちょっと気が引ける。
「あなたがよく着ている洋服のお店かしら」
こういうところは初めてなのか、物珍しげにしている十鳥オガミがつぶやく。
けっこう観察眼は鋭いようだ。
ここに来たのはもちろん自分が欲しい物があるからだけど、もう一つ。
夏向けのバックスタイルのワンピースを手にすると、試着を願い出た。でも着るのは私ではない。
「十鳥さん」
この場に馴染むことを徹底的に拒否するような体で佇んでいる十鳥オガミの手を引いて試着室に押し込むと、黒のワンピースとネックベルトを手渡す。
「着てみて」
カーテンを閉める直前、首だけ残してそういうと、返事を待たずに引っ込んだ。
不機嫌オーラを漂わせてすぐに出てくることはもちろん、想定済み。だけど、妙な確信があった。
かすかな吐息が漏れたあと、衣服を脱ぐ気配がした。
十鳥オガミがどういう下着を身につけているのか非常に気になる。一気にカーテンを引きたい衝動を必死に抑えて、しばらく待つと、着脱の音が消えた。
「開けていい?」
返事はなかった。裏返せばダメではないということ。
開けるとそこにいたのは女王様。
ただでさえ切れ長の目が特徴的なクールビューティー、読みは大当たり。いちいちいわなくてもネックベルトもきちんと付けている。あとは……。
「どうぞ」
振り向くと、空気を読んだ店員さんがベルトやリングの付いたミドル丈のブーツを持って待機していた。彼女の靴のサイズは把握している。ブーツのそれを確認して目の前に在す女王様に差し出す。
「……………」
憮然たる面持ちで受け取ると、どう処理していいのか分からないのか、異国の特産物でも見るような目線をブーツに向けている。すかさずサイドジッパーを引いて頷いてみせると、素直に白い足を入れた。
武装完了。
ターンをリクエストしてもしそうにないので、女王様と化してからずっと押し黙ったままの彼女の肩を軽く捻ってバックスタイルを拝ませていただく。
「おお……」
店員さんのみならず他のお客さんからも感嘆の声が上がる。
大胆に開いたバックから覗く透き通るような白い肌と腰の辺りに配された編み上げ部分が絶妙に溶け込んでいる。肩紐ともどもなかなかにセクシー。
手動のターンを止めて正面からあらためて眺める。
似合う。似合いすぎる。似合いすぎて……笑いが込み上げる。
クリアバッグの外ポケットの留め具を外して端末を取り出すと、店員さんに撮影する旨を伝えて女王様に向けた。
「……と、撮るわね、き、記念……に……」
ハマリすぎて逆に笑いが止まらなくなった。その様子に気づいた通路を歩く人や他のショップにいた人たちが何ごとかと集まってくる。
横隔膜の引きつりが生み出す震えのせいで腕が安定せず、なかなかピントが合わない。
「……い、いくよぉ……」
カシャッ。
足だけしか写っていない。しかもボケているし。
「も、もう一回……ね」
カシャッ。
やはりずれる。今度は胸の辺り。もう一回。
「………あ」
見世物と化したことにいい加減しびれを切らしたのか、女王様はブーツを脱ぐと、カーテンを引いて試着室に篭ってしまった。残念。
女王様が十鳥オガミに戻る間、ほとんど胸から下は生地がないエロティックなショートカットソーとミニワンピースにもなりそうなオフタートルのノースリーブニットを買った。
「とてもお似合いでしたよ」
会計を済ませると、十鳥オガミが店員さんにワンピース一式を返していた。
「お騒がせしました」
にこりともしない通常営業な表情で軽い辞儀を見せると、十鳥オガミが一足先にショップを後にしていた。
「また来ますね」
「ありがとうございました。知り合い以上友達未満の方にもよろしくお伝え下さい」
店員さんと挨拶を交わすと、相変わらず早歩きの十鳥オガミを追った。
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・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
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