63 / 126
年上のひと
誘惑Ⅱ
しおりを挟む
「年上の彼女が来たんだって?」
アイカワさん経由で知ったのだろう、時間的に僕が仕事に入る頃に休憩しているシオノさんは興味深げに聞いてきた。
「いえ、姉の親友ですよ」
「……ほう」
その語感には疑念がうっすらと滲んでいる気がした。
「キミは実にモてるんだねえ」
感心しているようでしていない話しぶりでそんなことを口にすると、シオノさんは意味ありげにそこで切った。なんとなく、次の言葉が想像できる。
「特に年上の女性にさ」
さ、のところを強調する。視線は追ってはいなかったけれど、たぶんニカイドウさんに向けたのだと思う。
「その年上の女性にはシオノさんも入っているんですか」
「……いうねえ、キミ」
切り返されるとは思わなかったのか、一瞬、息を呑みながら何とか言葉を押し出すシオノさんに笑いそうになる。
化粧っ気はなく、話し方もフランクなシオノさんとは年上でありながらも同級生のように気軽に話せるのでけっこう会話が弾んだりする。いい意味でセックスアピールには縁遠い軽くパーマをあてたショートヘアも僕としては警戒心を抱かせない長所だと捉えている。
「そんなこというと、こっちも本気になるぞ」
「どういうことですか」
「今度デートしてよ」
ニカイドウさんの方から忙しなく聞こえていた梱包用のPPバンドのかさかさという音が一瞬、止まるのが分かった。
「デートくらいキミなら日常茶飯事なんでしょ」
自慢じゃないけれど、デートと呼べるような体験は未だにない。一時期、上四元クシナに振り回されていたことはアタマを過ぎったけれど、あれは違う。違うと思いたい。
「そんなこと、ないです」
「そうなのかあ?」
シオノさんは拍子抜けしたようにいうと、デートのこと考えておいてなと捨て台詞と共に売り場へ舞い戻っていった。
ぎゅうううううっとストッパーに通し終えたPPバンドを残酷に締め上げる音がバックルームに響く。まるで今のニカイドウさんの気持ちを表すかのような不穏で不吉な音に身が縮まる思いがする。
「……終わった、と」
ニカイドウさんは返本雑誌が詰まった梱包済みのダンボールを持ち上げると、バックルームの入り口に積み上げた。これらは閉店後に風除室に運ばれ、翌朝、雑誌を配送している運送会社の人が回収するのだ。
今日のニカイドウさんは何ごともなかったように、普段通りであった。
いつものように挨拶し、いつものように仕事に励んでいる。
「じゃあ、一君は文庫の方やってくれるかな」
その日も時間いっぱいまで返本作業に勤しみ、問題の帰宅時間になった。
心のどこかではまだみっともなく、アツミさんがまた迎えに来てくれないかなと願っていたりしたけれど、そんなことはないまま、ニカイドウさんが着替え終えてしまうのだった。
「お待たせ」
「………あ」
ニカイドウさんはオフショルダーのフリルカットソーにティアードのミニスカートを大胆に組み合わせていた。仕事中は薄めていた化粧も濃い目になっている。
「お先に失礼します」
いつもより高い声でそう挨拶するニカイドウさんは誰から見ても機嫌がよかった。
「……えっ、あの」
ニカイドウさんは僕の腕を取ると、身体をぴったりと寄せてきた。
「おいおい、不倫とか勘弁してくれよ」
店長の困惑の混じった冷やかしと同時に、店内が色めくのが分かった。
明日からどう対応すればいいのかと不安になる僕をよそにニカイドウさんの腕の締めつけはどんどん強くなっていく。
「見せつけちゃったね」
まるで恋人同士のような体で店を出、車に乗り込んだ途端にニカイドウさんは満足そうに笑った。
「どういうつもりですか」
抗議というにはあまりに情けない僕の問いにニカイドウさんは分からせてあげたの、とだけいうとキーを回した。
四つ目はいつもとは明らかに違うコースを走っている。
「昨日、一君と行きたいところがあるっていっていたでしょう?」
戸惑っているのが分かったのか、そう説明してくれるけれど、さっきの突飛な行動を含めて不安しか感じられない。
車はすぐに止まった。
どうやら公園のようだ。
「ここよ」
どう出たらいいのか思案していると、ニカイドウさんは先に車を出て歩き始めた。
断固として降りないという選択肢もあるのだろうけれど、それならそれで別の手段に出るのは経験則からおぼろげに理解していた。
「結婚前によく旦那とここに来たの」
外に出て後を追ってくる僕の気配を感じたのか、こちらを振り向くことなくそんなことをいう。
「あそこの噴水で初めてキスしたんだ」
なるほど、ライトアップされた公園の噴水はムードを持ち上げるのにひと役買っていた。もっとも、恋人たちの感情をかき乱す目的で設置されたものではないであろうけれど。
「ホテル代が惜しいからかそういう趣味かは知らないけど、ここに連れてきてはよくセックスしてたのよ。噴水をバックにしてこのベンチで励んだり、あっちの球場ではスタンドの芝生の上で頑張ったり」
まるで他人事のようにそんなことをいうニカイドウさんは至極楽しげであった。
「たまに覗かれているのを感じるんだけれど、かまわず最後までしちゃったり。本当、若かったなあ」
今でもじゅうぶん若いですよ、とでもいえばいいのだろうけれど、現状を鑑みればニカイドウさんのペースに巻き込まれるのは好ましくはない。
「ふたり揃って初体験が青姦なんておかしいでしょう」
……アオカンといものはよく分からないけれど、きっとあまりいい意味ではないであろうことは想像に難くない。
「ねえ、一君」
振り向いたニカイドウさんは噴水を引き立てているたくさんの光源と相俟って、とても、とても美しかった。
「抱いて」
めまいがした。
その直接的な根源が何なのか分からないけれど、いろいろなものが歪み始めているのはぼんやりと理解できていた。
「この服、一君のために着てきたのよ」
スカートの裾を持ち上げながらゆっくりとこちらにやって来る。そのままでも見えそうなミニなので、完全に布地が露出している。
「このパンティも一君に脱がせて欲しくてお気に入りを穿いてきたの」
編み上げのサンダルがコンクリートを踏みしめる音が止む。ニカイドウさんは僕の手を取ると、身体を密着させてしどけない息を吐いた。
「私、覚悟決めてきたんだ」
何のことかと発言の意図を探っていると、ニカイドウさんは表情と声に狡猾な妖艶さを乗せて耳元で囁いた。
「今日ね、危ない日なの」
握った手に力が入る。思いが果たされるまで絶対に離さないという決意表明に思えて逃れようのない恐怖を細胞レベルで感じる。
「私、一君の赤ちゃんが欲しい」
「………あ、あの」
さっきから歪みはじめている眼前の光景がさらに混沌とし、呼吸が乱れ、胸が苦しくなってきた。
いくらなんでも、誘われていることぐらい理解はできた。
しかし、相手は人妻だ。いや、立場もあるけれど、そういうことではない。こういうときはオトコとして素直に身を任せればいいのだろうけれど、やはりダメなものはダメだ。
「一君の元気でたくましい精子で妊娠したいの」
どうして僕のが元気でたくましいと分かるのかと聞きたかったけれど、今はそこまでの余裕はない。
そんなことを軽はずみに口にしたら一気に食いつかれる恐ろしさが今のニカイドウさんからは感じられる。
「……だ、ダメですよ、ダメです」
必死の抗議もむなしくこっちは準備万端じゃない、とアタマとは逆に滾りまくっている股間に手を伸ばされる。今まで誰にも触られたことのない未開地をあっさりと攻略されて目の前が真っ暗になる。
「しっかり種付けしてくれるまで帰さないんだから」
このニカイドウさんはきっと僕の知っているニカイドウさんではない。そんなことを考えながらなんとかこの状況から脱する手立てを考えてみるも、そうそう捻り出るものでもなく、時間だけがむなしく過ぎていく。
「……ほらあ」
待ちきれないといった風に僕の手を自分の臀部に誘導する。僕のために身につけてきたという面積の少ない生地に覆われたニカイドウさんのヒップはとてもきめ細やかで張りがあり、未成熟な煩悩をぶざまに肥大させるにはじゅうぶんであった。
ある劇作家曰く、誘惑から逃れる唯一の方法は抗うことなく屈することだという。
けれど。
「……いじわる。いつまで我慢する気なの?」
ニカイドウさんに誘われた僕の手は淫靡な割れ目に沿って下へと落ちてゆく。
「………! い、いや、ダメです、無理です」
指先に粘膜のような感触を覚えて、一気に引き出す。これは汗だと思いたかった。
「ニカイドウさん、やめましょう。こういうのよくないです」
「恥をかかせないで」
少し怒ったように息を漏らすと、ふたたび僕の手を取り、秘部へと導こうとする。
と、後方で人の気配を感じた。
これ幸いと、誰かいますよと小声で囁くと、ニカイドウさんは観客がいた方が燃えるじゃないと情欲をいっそう増幅させるかのように身悶える。外でどうとかいっていたあれは旦那さんの方ではなく、ニカイドウさんの趣味なのではないのだろうか。
「若い子ね。ちょっと刺激が強いかな」
おそらく期せずして猥雑な現場に遭遇してしまったであろうその若い子をからかうように眺めながらニカイドウさんは笑った。
「それにしても、ずいぶんと大きい子ね」
もう興味もなさげにいい放つと不穏当なカタチで子孫繁栄を望んでいる人妻さんはよりいっそう、身体を押しつけてきた。
大きい子、という言葉になんとなく引っかかりを覚えて、密着状態から脱却を必死で試みている状況を小賢しくアピールしながら、その大きい子を目の端で確認しようとし、確認してしまったことを激しく後悔した。
「……………あ」
白いヘアバンドをした女子にしては非常に背丈のある彼女は驚愕に目を見開いていた。
その名前を口にしそうになり、なんとか押しとどめる。ニカイドウさんには知っている子だと悟られたくなかった。
この世でもっとも醜いものを見たかのように顔を歪めて踵を返して足早に立ち去っていく彼女を僕はただ見送る他なかった。
セックスレスを公言する人妻さんを抱きかかえながら――。
アイカワさん経由で知ったのだろう、時間的に僕が仕事に入る頃に休憩しているシオノさんは興味深げに聞いてきた。
「いえ、姉の親友ですよ」
「……ほう」
その語感には疑念がうっすらと滲んでいる気がした。
「キミは実にモてるんだねえ」
感心しているようでしていない話しぶりでそんなことを口にすると、シオノさんは意味ありげにそこで切った。なんとなく、次の言葉が想像できる。
「特に年上の女性にさ」
さ、のところを強調する。視線は追ってはいなかったけれど、たぶんニカイドウさんに向けたのだと思う。
「その年上の女性にはシオノさんも入っているんですか」
「……いうねえ、キミ」
切り返されるとは思わなかったのか、一瞬、息を呑みながら何とか言葉を押し出すシオノさんに笑いそうになる。
化粧っ気はなく、話し方もフランクなシオノさんとは年上でありながらも同級生のように気軽に話せるのでけっこう会話が弾んだりする。いい意味でセックスアピールには縁遠い軽くパーマをあてたショートヘアも僕としては警戒心を抱かせない長所だと捉えている。
「そんなこというと、こっちも本気になるぞ」
「どういうことですか」
「今度デートしてよ」
ニカイドウさんの方から忙しなく聞こえていた梱包用のPPバンドのかさかさという音が一瞬、止まるのが分かった。
「デートくらいキミなら日常茶飯事なんでしょ」
自慢じゃないけれど、デートと呼べるような体験は未だにない。一時期、上四元クシナに振り回されていたことはアタマを過ぎったけれど、あれは違う。違うと思いたい。
「そんなこと、ないです」
「そうなのかあ?」
シオノさんは拍子抜けしたようにいうと、デートのこと考えておいてなと捨て台詞と共に売り場へ舞い戻っていった。
ぎゅうううううっとストッパーに通し終えたPPバンドを残酷に締め上げる音がバックルームに響く。まるで今のニカイドウさんの気持ちを表すかのような不穏で不吉な音に身が縮まる思いがする。
「……終わった、と」
ニカイドウさんは返本雑誌が詰まった梱包済みのダンボールを持ち上げると、バックルームの入り口に積み上げた。これらは閉店後に風除室に運ばれ、翌朝、雑誌を配送している運送会社の人が回収するのだ。
今日のニカイドウさんは何ごともなかったように、普段通りであった。
いつものように挨拶し、いつものように仕事に励んでいる。
「じゃあ、一君は文庫の方やってくれるかな」
その日も時間いっぱいまで返本作業に勤しみ、問題の帰宅時間になった。
心のどこかではまだみっともなく、アツミさんがまた迎えに来てくれないかなと願っていたりしたけれど、そんなことはないまま、ニカイドウさんが着替え終えてしまうのだった。
「お待たせ」
「………あ」
ニカイドウさんはオフショルダーのフリルカットソーにティアードのミニスカートを大胆に組み合わせていた。仕事中は薄めていた化粧も濃い目になっている。
「お先に失礼します」
いつもより高い声でそう挨拶するニカイドウさんは誰から見ても機嫌がよかった。
「……えっ、あの」
ニカイドウさんは僕の腕を取ると、身体をぴったりと寄せてきた。
「おいおい、不倫とか勘弁してくれよ」
店長の困惑の混じった冷やかしと同時に、店内が色めくのが分かった。
明日からどう対応すればいいのかと不安になる僕をよそにニカイドウさんの腕の締めつけはどんどん強くなっていく。
「見せつけちゃったね」
まるで恋人同士のような体で店を出、車に乗り込んだ途端にニカイドウさんは満足そうに笑った。
「どういうつもりですか」
抗議というにはあまりに情けない僕の問いにニカイドウさんは分からせてあげたの、とだけいうとキーを回した。
四つ目はいつもとは明らかに違うコースを走っている。
「昨日、一君と行きたいところがあるっていっていたでしょう?」
戸惑っているのが分かったのか、そう説明してくれるけれど、さっきの突飛な行動を含めて不安しか感じられない。
車はすぐに止まった。
どうやら公園のようだ。
「ここよ」
どう出たらいいのか思案していると、ニカイドウさんは先に車を出て歩き始めた。
断固として降りないという選択肢もあるのだろうけれど、それならそれで別の手段に出るのは経験則からおぼろげに理解していた。
「結婚前によく旦那とここに来たの」
外に出て後を追ってくる僕の気配を感じたのか、こちらを振り向くことなくそんなことをいう。
「あそこの噴水で初めてキスしたんだ」
なるほど、ライトアップされた公園の噴水はムードを持ち上げるのにひと役買っていた。もっとも、恋人たちの感情をかき乱す目的で設置されたものではないであろうけれど。
「ホテル代が惜しいからかそういう趣味かは知らないけど、ここに連れてきてはよくセックスしてたのよ。噴水をバックにしてこのベンチで励んだり、あっちの球場ではスタンドの芝生の上で頑張ったり」
まるで他人事のようにそんなことをいうニカイドウさんは至極楽しげであった。
「たまに覗かれているのを感じるんだけれど、かまわず最後までしちゃったり。本当、若かったなあ」
今でもじゅうぶん若いですよ、とでもいえばいいのだろうけれど、現状を鑑みればニカイドウさんのペースに巻き込まれるのは好ましくはない。
「ふたり揃って初体験が青姦なんておかしいでしょう」
……アオカンといものはよく分からないけれど、きっとあまりいい意味ではないであろうことは想像に難くない。
「ねえ、一君」
振り向いたニカイドウさんは噴水を引き立てているたくさんの光源と相俟って、とても、とても美しかった。
「抱いて」
めまいがした。
その直接的な根源が何なのか分からないけれど、いろいろなものが歪み始めているのはぼんやりと理解できていた。
「この服、一君のために着てきたのよ」
スカートの裾を持ち上げながらゆっくりとこちらにやって来る。そのままでも見えそうなミニなので、完全に布地が露出している。
「このパンティも一君に脱がせて欲しくてお気に入りを穿いてきたの」
編み上げのサンダルがコンクリートを踏みしめる音が止む。ニカイドウさんは僕の手を取ると、身体を密着させてしどけない息を吐いた。
「私、覚悟決めてきたんだ」
何のことかと発言の意図を探っていると、ニカイドウさんは表情と声に狡猾な妖艶さを乗せて耳元で囁いた。
「今日ね、危ない日なの」
握った手に力が入る。思いが果たされるまで絶対に離さないという決意表明に思えて逃れようのない恐怖を細胞レベルで感じる。
「私、一君の赤ちゃんが欲しい」
「………あ、あの」
さっきから歪みはじめている眼前の光景がさらに混沌とし、呼吸が乱れ、胸が苦しくなってきた。
いくらなんでも、誘われていることぐらい理解はできた。
しかし、相手は人妻だ。いや、立場もあるけれど、そういうことではない。こういうときはオトコとして素直に身を任せればいいのだろうけれど、やはりダメなものはダメだ。
「一君の元気でたくましい精子で妊娠したいの」
どうして僕のが元気でたくましいと分かるのかと聞きたかったけれど、今はそこまでの余裕はない。
そんなことを軽はずみに口にしたら一気に食いつかれる恐ろしさが今のニカイドウさんからは感じられる。
「……だ、ダメですよ、ダメです」
必死の抗議もむなしくこっちは準備万端じゃない、とアタマとは逆に滾りまくっている股間に手を伸ばされる。今まで誰にも触られたことのない未開地をあっさりと攻略されて目の前が真っ暗になる。
「しっかり種付けしてくれるまで帰さないんだから」
このニカイドウさんはきっと僕の知っているニカイドウさんではない。そんなことを考えながらなんとかこの状況から脱する手立てを考えてみるも、そうそう捻り出るものでもなく、時間だけがむなしく過ぎていく。
「……ほらあ」
待ちきれないといった風に僕の手を自分の臀部に誘導する。僕のために身につけてきたという面積の少ない生地に覆われたニカイドウさんのヒップはとてもきめ細やかで張りがあり、未成熟な煩悩をぶざまに肥大させるにはじゅうぶんであった。
ある劇作家曰く、誘惑から逃れる唯一の方法は抗うことなく屈することだという。
けれど。
「……いじわる。いつまで我慢する気なの?」
ニカイドウさんに誘われた僕の手は淫靡な割れ目に沿って下へと落ちてゆく。
「………! い、いや、ダメです、無理です」
指先に粘膜のような感触を覚えて、一気に引き出す。これは汗だと思いたかった。
「ニカイドウさん、やめましょう。こういうのよくないです」
「恥をかかせないで」
少し怒ったように息を漏らすと、ふたたび僕の手を取り、秘部へと導こうとする。
と、後方で人の気配を感じた。
これ幸いと、誰かいますよと小声で囁くと、ニカイドウさんは観客がいた方が燃えるじゃないと情欲をいっそう増幅させるかのように身悶える。外でどうとかいっていたあれは旦那さんの方ではなく、ニカイドウさんの趣味なのではないのだろうか。
「若い子ね。ちょっと刺激が強いかな」
おそらく期せずして猥雑な現場に遭遇してしまったであろうその若い子をからかうように眺めながらニカイドウさんは笑った。
「それにしても、ずいぶんと大きい子ね」
もう興味もなさげにいい放つと不穏当なカタチで子孫繁栄を望んでいる人妻さんはよりいっそう、身体を押しつけてきた。
大きい子、という言葉になんとなく引っかかりを覚えて、密着状態から脱却を必死で試みている状況を小賢しくアピールしながら、その大きい子を目の端で確認しようとし、確認してしまったことを激しく後悔した。
「……………あ」
白いヘアバンドをした女子にしては非常に背丈のある彼女は驚愕に目を見開いていた。
その名前を口にしそうになり、なんとか押しとどめる。ニカイドウさんには知っている子だと悟られたくなかった。
この世でもっとも醜いものを見たかのように顔を歪めて踵を返して足早に立ち去っていく彼女を僕はただ見送る他なかった。
セックスレスを公言する人妻さんを抱きかかえながら――。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる