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拳塔町に行くの巻
吉報
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「おはようございます、六反園君」
ターコイズブルーの夏らしい、シンプルながらもきっとお高いものであろうノースリーブのワンピースをまとって悠然と佇む左衛門三郎のお嬢様が品のいい辞儀を見せた。手には大きなつばの縁が波打っている麦わら帽子。きっとこれもお高いのだろう。もちろん、その背後には三苫ちゃんと三次が当たり前のようにいる。
一番乗りを狙ってかなり早めに家を出たものの、待ち合わせ場所である於牟寺駅に着いたときには、すでに見慣れた三人組がいたわけで出鼻を挫かれた格好ではあるが、今日の行き先とメンバーを思えばむしろ女子に出迎えられて気分がいいくらいだ。
三苫ちゃんはざっくりとした白いオフショルダーのサマーニットにウエストのリボンがキュートな黒いミニスカートだった。剥き出しの肩や編み目から覗くキャミソールの紐や生地がなかなかにセクシー。三次はいつものようにピンストライプの黒いスーツと無表情を着崩すことなく律儀にまとっていた。……たしか今は夏なんだがな。
「意外だな、お嬢様が参加するなんて」
「ナナミさん直々のお誘いを断るなど、愚行以外のなにものでもありません。喜んで同行させて頂くことにしました」
同感。
その朗報、いや福音がもたらされたのは先週のことだった。
◇
「もしもし、ロクちゃん?」
それはむかしのテレビ番組を観ながら好物の激めんを啜っていたときのこと。
端末からいつもと変わらない癒しボイスが飛び込んできた。
ナギの親父さんが所有するビデオライブラリには俺たちの年代には目新しい番組が詰まっていて何度観ても飽きることはない。
その中から気に入ったモノをダビングさせて貰っては、こうして観るのが楽しみだったりする。番組にしろ歌にしろ、最近のモノとは比べ物にならないくらいこの時代のコンテンツは奥深くてアツい。
安っぽかったり馬鹿馬鹿しかったりもするが、今のテレビ番組には感じられない作り手側の熱がビンビンに伝わってくるのが最大の違いだ。
ワンタンを口に放りながらテレビのボリュームを下げる。
今観ているのは当時お茶の間を賑わせたであろう古き良き時代の公開録画形式のクイズバラエティでマントを羽織った老若男女が登場し、何をやっている人かを推理する、まあなんてことのないモノだが、これが意外と面白い。
この回は初視聴だから新鮮な気持ちで観られる。
……ん?
放送の最後、いわゆるトリとして出てきた女性を見て一瞬、胸が高鳴った。
長い黒髪の赤いマントに包まれたその女性はナナミさんによく似ていた。背が高いところもそっくりだ。サテンの艶がどこがエロティックでムダに情欲をかき立てる。
「来週から夏休みでしょ? それで一緒に海に行こうかなって」
無音の画面に注視していると、幼なじみがそんなことを切り出した。
悪くない申し出はあるが、誘うなら俺じゃなく、ナギと、それもふたりっきりで行くべきだろう。
「ナギちゃんは都合悪いんだって」
ナギのやつ、なにか予定でもあるのか。夏休みに幼なじみと海。グッと関係を深めるには最高のシチュエーションだろうに。
「ロクちゃんも都合が悪いならむりしないでね」
こちらの思惑など知らぬようにどこまでもシギヤの声は明るい。
「まさかと思うが、お前とふたりで、じゃないよな」
テレビの中では解答者の質問タイムに入っている。
「ええとね、左衛門三郎さんと三苫さん、三次さんに」
能面顔がぽんと脳裏に浮かぶ。ふたりきりじゃないなら妙な気構えも必要はないが、三次かあ。
「……五百旗頭君と五十棲君……」
あ、こりゃパスだな。
「すまんな、シギヤ。俺は」
「アツミさんとお姉ちゃん」
………………………………………ん?
「お、お姉ちゃんって」
「お姉ちゃんだよ」
シギヤはひとりっ子だ。こいつがいうお姉ちゃんは一人だけ。
「ナ、ナナミさんもくるのか?」
画面に映るナナミさん似の女性が何を訊かれたのか、くすくすと笑った。……笑い方まで似てやがる。
「うん。アツミさんがお姉ちゃんを誘ったら、私たちも一緒にってなったんだって」
そ、
「それを早くいえーーーーー!」
喜びのあまり身悶えるように声を張り上げる。
ナナミさんの美しい姿態を瞬時に呼び起こし、想像力を総動員してナナミさんの完全無的なその身体に水着――もちろんビキニ――を着せる。
色は何がいいかな。赤、青、黄、緑、いやピンクってのもなかなか。黒とか紫もアダルティックでいい。
……よし、ここはテレビの中のナナミさん似の女性を包んでいるマントにちなんで艶かしい輝きを放つサテンの、赤いビキニだ。
輝く太陽の下、碧い海をバックに、透きとおるような白い肌のナナミさんに日焼け止めを塗るのはもちろん俺の役目だ。穢れを知らない俺の十本の指がそのしなやかな腕と脚、たわわな胸、張りのあるヒップにうるおいとよろこびを与える―――。
「……ナ、ナナミさん、ここですか?」
「もっと下かな」
「……こ、ここですか?」
「もうちょっと下よ」
「……こ、こ、ここ、ですか?」
「そう、そこ」
「……ほ、ほ、ほ、ほ、ほんとにここでいいんでしょうか?」
「ええ」
ぬりぬりぬり。
「ど、どんな感じでしょう」
「……ん、上手。今度はもうちょっと下にずらしてくれる?」
「………………こ、これ以上ず、ずらしてしまうますと、せ、せ、乳首に当たるかもなのですが」
「そうね」
「い、い、い、い、いいのでしょうか」
「いいわよ」
「……はひ、で、では」
ぬりぬりぬりぬりぬり……ぷにゅ。
「……ん」
「……す、す、すみません」
「ふふ、構わないわよ。続けて」
「は、はひ」
ぬりぬりぬりぬりぬり……くにゅ。
「……ん、ふぅ……、六反園君、上手……よ」
あああああ、もう、死んでもいい。
「死んだら海に行けないよ」
冷静なシギヤの声がした。
「ロクちゃんは水着持ってる?」
去年プール用に買ったのがあるが、行き先は海でなんといってもナナミさんが参加するとなれば新調するのが義務というものだろう。
期日や待ち合わせ時間、場所を確認し、礼をいって切った。
海パンは明日にでも買いに行こう。
「……ふぅ」
残りのスープを飲み干し、テレビのボリュームを戻すと、ノースリーブのカットソーに短パン姿のアイドルデュオが新発売だというインスタント麺の宣伝をしていた。当時大人から子供まで幅広い層に人気があったという、今では考えられないような一大ブームを巻き起こしたふたりはなぜかボクシングのグローブを装着して踊っている。袋麺とボクシングの関連性はまるで分からないが、いったいどういうセンスしてるんだ。
CMが明けると、司会者の掛け声でナナミさん似のお嬢さんがちょうどマントを脱ぐところであった。ナナミさん同様、いかにもお淑やかといった感じのその人は白いタンクトップにやけに丈の短い真っ赤なトランクスを合わせていた。そして手には……、
『えぇー、ボクサーなの?』
『うそー!』
『驚いたね、どうも』
俳優だというゲスト解答者がかきむしるかのように手でアタマを押さえて感嘆の声を上げるその横でやはりゲストのアイドルが開いた両手を口に充てて自己の存在感を積極的にアピールし、もうひとりの解答者であるベテラン落語家は唖然としながら手にした扇子で額を叩いている。三者三様、見事な役割分担である。
ちなみにそれぞれの答えは、
【スタントマン】
【ちんどん屋さん】
【スペースインベーダー】
……いつの時代もはなから正解を捨てて受けを狙いに行く人間はいるものだ。
どこか恥ずかしげな、さっきのアイドルみたいな赤いボクシングのグローブをはめた例のナナミさん似のお嬢さんはミットを装着した男を相手にパンチを打ち始めた。
『おぉ、様になってるねえ』
『かっこいい』
『いやはや』
バスンバスン激しい音を撒き散らしながら、お淑やかな佇まいから一転、なるほどボクサー然とした表情と動きを見せる偽ナナミさんにあごに手を充てた男優はそっち方面に詳しいのか頷きつつ感心しきりであった。アイドルは自分でも打ってるつもりになっているのか真似するようにカラダを動かし、口をぽかんと開けたままの落語家は信じられないものでも見るように首を振りながら扇子で自分の顔を仰ぎはじめた。
続いてカメラは会場にいる観客たちを映し出した。
やはりみな、驚愕といった面持ちである。
最近じゃボクシングだの格闘技に打ち込む女が増えたみたいだが、それでもやはり色物扱いの域は出てはいないだろう。そういう男がメインのスポーツをやればすぐにめずらしがって騒いでくれるから、遊びのつもりでやるヤツも多いと聞く。
容姿が人並みでも途端に「美しすぎる○○」なんて勝手に呼んでくれる。イヤないい方だが不細工が過激なコスプレをやってちやほやされる構図に似ていなくもない。
ひと通りパンチを打ち終えて顔がやや上気している偽ナナミさんに司会者がボクシングをはじめたきっかけ――ラストで主人公が真っ白に燃え尽きるので著名な漫画の熱心なファンであるらしい――やら普段のライフスタイル――普段はOLをやっていてウインドウショッピングが趣味――、好きな男性のタイプ――逞しくて頼りがいのある心の広い人――など、ありがちなやり取りののち、ゲストの感想でしめて番組は終わった。この偽ナナミさんも孫がいてもおかしくない年齢になっているだろうなとひとりごちると、アタマを振った。
古い考えは承知でいうが、やはり女がボクシングなんて以ての外だ。
その時点でいくらナナミさんに似ていようともこのお嬢さんはダメだ。
女はナナミさんのように見掛けも内面もお淑やかでなければいけない。
そして来週にはそのナナミさんと海に行くのだ。
例のクイズ番組は音を消した辺りから観直そうとも思ったが、ボクサーという事実を知って一気に萎えてしまい、もう寝ることにした。
とはいうものの、降って沸いたようなナナミさんのお誘いに胸の鼓動は抑えられず、眠りについたのは空が白みはじめた頃だった――。
ターコイズブルーの夏らしい、シンプルながらもきっとお高いものであろうノースリーブのワンピースをまとって悠然と佇む左衛門三郎のお嬢様が品のいい辞儀を見せた。手には大きなつばの縁が波打っている麦わら帽子。きっとこれもお高いのだろう。もちろん、その背後には三苫ちゃんと三次が当たり前のようにいる。
一番乗りを狙ってかなり早めに家を出たものの、待ち合わせ場所である於牟寺駅に着いたときには、すでに見慣れた三人組がいたわけで出鼻を挫かれた格好ではあるが、今日の行き先とメンバーを思えばむしろ女子に出迎えられて気分がいいくらいだ。
三苫ちゃんはざっくりとした白いオフショルダーのサマーニットにウエストのリボンがキュートな黒いミニスカートだった。剥き出しの肩や編み目から覗くキャミソールの紐や生地がなかなかにセクシー。三次はいつものようにピンストライプの黒いスーツと無表情を着崩すことなく律儀にまとっていた。……たしか今は夏なんだがな。
「意外だな、お嬢様が参加するなんて」
「ナナミさん直々のお誘いを断るなど、愚行以外のなにものでもありません。喜んで同行させて頂くことにしました」
同感。
その朗報、いや福音がもたらされたのは先週のことだった。
◇
「もしもし、ロクちゃん?」
それはむかしのテレビ番組を観ながら好物の激めんを啜っていたときのこと。
端末からいつもと変わらない癒しボイスが飛び込んできた。
ナギの親父さんが所有するビデオライブラリには俺たちの年代には目新しい番組が詰まっていて何度観ても飽きることはない。
その中から気に入ったモノをダビングさせて貰っては、こうして観るのが楽しみだったりする。番組にしろ歌にしろ、最近のモノとは比べ物にならないくらいこの時代のコンテンツは奥深くてアツい。
安っぽかったり馬鹿馬鹿しかったりもするが、今のテレビ番組には感じられない作り手側の熱がビンビンに伝わってくるのが最大の違いだ。
ワンタンを口に放りながらテレビのボリュームを下げる。
今観ているのは当時お茶の間を賑わせたであろう古き良き時代の公開録画形式のクイズバラエティでマントを羽織った老若男女が登場し、何をやっている人かを推理する、まあなんてことのないモノだが、これが意外と面白い。
この回は初視聴だから新鮮な気持ちで観られる。
……ん?
放送の最後、いわゆるトリとして出てきた女性を見て一瞬、胸が高鳴った。
長い黒髪の赤いマントに包まれたその女性はナナミさんによく似ていた。背が高いところもそっくりだ。サテンの艶がどこがエロティックでムダに情欲をかき立てる。
「来週から夏休みでしょ? それで一緒に海に行こうかなって」
無音の画面に注視していると、幼なじみがそんなことを切り出した。
悪くない申し出はあるが、誘うなら俺じゃなく、ナギと、それもふたりっきりで行くべきだろう。
「ナギちゃんは都合悪いんだって」
ナギのやつ、なにか予定でもあるのか。夏休みに幼なじみと海。グッと関係を深めるには最高のシチュエーションだろうに。
「ロクちゃんも都合が悪いならむりしないでね」
こちらの思惑など知らぬようにどこまでもシギヤの声は明るい。
「まさかと思うが、お前とふたりで、じゃないよな」
テレビの中では解答者の質問タイムに入っている。
「ええとね、左衛門三郎さんと三苫さん、三次さんに」
能面顔がぽんと脳裏に浮かぶ。ふたりきりじゃないなら妙な気構えも必要はないが、三次かあ。
「……五百旗頭君と五十棲君……」
あ、こりゃパスだな。
「すまんな、シギヤ。俺は」
「アツミさんとお姉ちゃん」
………………………………………ん?
「お、お姉ちゃんって」
「お姉ちゃんだよ」
シギヤはひとりっ子だ。こいつがいうお姉ちゃんは一人だけ。
「ナ、ナナミさんもくるのか?」
画面に映るナナミさん似の女性が何を訊かれたのか、くすくすと笑った。……笑い方まで似てやがる。
「うん。アツミさんがお姉ちゃんを誘ったら、私たちも一緒にってなったんだって」
そ、
「それを早くいえーーーーー!」
喜びのあまり身悶えるように声を張り上げる。
ナナミさんの美しい姿態を瞬時に呼び起こし、想像力を総動員してナナミさんの完全無的なその身体に水着――もちろんビキニ――を着せる。
色は何がいいかな。赤、青、黄、緑、いやピンクってのもなかなか。黒とか紫もアダルティックでいい。
……よし、ここはテレビの中のナナミさん似の女性を包んでいるマントにちなんで艶かしい輝きを放つサテンの、赤いビキニだ。
輝く太陽の下、碧い海をバックに、透きとおるような白い肌のナナミさんに日焼け止めを塗るのはもちろん俺の役目だ。穢れを知らない俺の十本の指がそのしなやかな腕と脚、たわわな胸、張りのあるヒップにうるおいとよろこびを与える―――。
「……ナ、ナナミさん、ここですか?」
「もっと下かな」
「……こ、ここですか?」
「もうちょっと下よ」
「……こ、こ、ここ、ですか?」
「そう、そこ」
「……ほ、ほ、ほ、ほ、ほんとにここでいいんでしょうか?」
「ええ」
ぬりぬりぬり。
「ど、どんな感じでしょう」
「……ん、上手。今度はもうちょっと下にずらしてくれる?」
「………………こ、これ以上ず、ずらしてしまうますと、せ、せ、乳首に当たるかもなのですが」
「そうね」
「い、い、い、い、いいのでしょうか」
「いいわよ」
「……はひ、で、では」
ぬりぬりぬりぬりぬり……ぷにゅ。
「……ん」
「……す、す、すみません」
「ふふ、構わないわよ。続けて」
「は、はひ」
ぬりぬりぬりぬりぬり……くにゅ。
「……ん、ふぅ……、六反園君、上手……よ」
あああああ、もう、死んでもいい。
「死んだら海に行けないよ」
冷静なシギヤの声がした。
「ロクちゃんは水着持ってる?」
去年プール用に買ったのがあるが、行き先は海でなんといってもナナミさんが参加するとなれば新調するのが義務というものだろう。
期日や待ち合わせ時間、場所を確認し、礼をいって切った。
海パンは明日にでも買いに行こう。
「……ふぅ」
残りのスープを飲み干し、テレビのボリュームを戻すと、ノースリーブのカットソーに短パン姿のアイドルデュオが新発売だというインスタント麺の宣伝をしていた。当時大人から子供まで幅広い層に人気があったという、今では考えられないような一大ブームを巻き起こしたふたりはなぜかボクシングのグローブを装着して踊っている。袋麺とボクシングの関連性はまるで分からないが、いったいどういうセンスしてるんだ。
CMが明けると、司会者の掛け声でナナミさん似のお嬢さんがちょうどマントを脱ぐところであった。ナナミさん同様、いかにもお淑やかといった感じのその人は白いタンクトップにやけに丈の短い真っ赤なトランクスを合わせていた。そして手には……、
『えぇー、ボクサーなの?』
『うそー!』
『驚いたね、どうも』
俳優だというゲスト解答者がかきむしるかのように手でアタマを押さえて感嘆の声を上げるその横でやはりゲストのアイドルが開いた両手を口に充てて自己の存在感を積極的にアピールし、もうひとりの解答者であるベテラン落語家は唖然としながら手にした扇子で額を叩いている。三者三様、見事な役割分担である。
ちなみにそれぞれの答えは、
【スタントマン】
【ちんどん屋さん】
【スペースインベーダー】
……いつの時代もはなから正解を捨てて受けを狙いに行く人間はいるものだ。
どこか恥ずかしげな、さっきのアイドルみたいな赤いボクシングのグローブをはめた例のナナミさん似のお嬢さんはミットを装着した男を相手にパンチを打ち始めた。
『おぉ、様になってるねえ』
『かっこいい』
『いやはや』
バスンバスン激しい音を撒き散らしながら、お淑やかな佇まいから一転、なるほどボクサー然とした表情と動きを見せる偽ナナミさんにあごに手を充てた男優はそっち方面に詳しいのか頷きつつ感心しきりであった。アイドルは自分でも打ってるつもりになっているのか真似するようにカラダを動かし、口をぽかんと開けたままの落語家は信じられないものでも見るように首を振りながら扇子で自分の顔を仰ぎはじめた。
続いてカメラは会場にいる観客たちを映し出した。
やはりみな、驚愕といった面持ちである。
最近じゃボクシングだの格闘技に打ち込む女が増えたみたいだが、それでもやはり色物扱いの域は出てはいないだろう。そういう男がメインのスポーツをやればすぐにめずらしがって騒いでくれるから、遊びのつもりでやるヤツも多いと聞く。
容姿が人並みでも途端に「美しすぎる○○」なんて勝手に呼んでくれる。イヤないい方だが不細工が過激なコスプレをやってちやほやされる構図に似ていなくもない。
ひと通りパンチを打ち終えて顔がやや上気している偽ナナミさんに司会者がボクシングをはじめたきっかけ――ラストで主人公が真っ白に燃え尽きるので著名な漫画の熱心なファンであるらしい――やら普段のライフスタイル――普段はOLをやっていてウインドウショッピングが趣味――、好きな男性のタイプ――逞しくて頼りがいのある心の広い人――など、ありがちなやり取りののち、ゲストの感想でしめて番組は終わった。この偽ナナミさんも孫がいてもおかしくない年齢になっているだろうなとひとりごちると、アタマを振った。
古い考えは承知でいうが、やはり女がボクシングなんて以ての外だ。
その時点でいくらナナミさんに似ていようともこのお嬢さんはダメだ。
女はナナミさんのように見掛けも内面もお淑やかでなければいけない。
そして来週にはそのナナミさんと海に行くのだ。
例のクイズ番組は音を消した辺りから観直そうとも思ったが、ボクサーという事実を知って一気に萎えてしまい、もう寝ることにした。
とはいうものの、降って沸いたようなナナミさんのお誘いに胸の鼓動は抑えられず、眠りについたのは空が白みはじめた頃だった――。
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