残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか

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ヴィンセントの怒り

アンジェリカとヴィンセントの放課後デートは瞬く間に学園中に知れ渡った。女生徒は悔しがり、男生徒は不思議がった。

「どうしてあの残念姫を?」と。

ウォルターと取り合いになるぞ、と面白がる輩もいた。それまでは、アンジェリカに執着するウォルターを変わり者だと思いこそすれ誰も気に留めていなかったが、まさかの強力なライバル登場にこの先どうなるのかと賭けを始める者もいた。

当のウォルターは今日も休みだった。初等部の頃から休みがちだったが、この一年は特に休みが多かった。週に一度登校出来ればいい方である。

「ウォルターって奴はアンジェリカのことが好きなのか?」

ヴィンセントはウィリアムに尋ねた。

「ああ、不思議なことにね。初等部の頃からずっとさ。いつも彼女に引っ付いて、他の子が近寄ろうもんなら手を出してでも排除していたからな。クラスでは『ナイト』と呼んで揶揄していたよ」

「そんな人がいるのにどうしてあんなにアンジェリカは自分を卑下しているんだろう」

たった一人でも自分を好きでいてくれる存在があればあそこまで卑屈にならないのでは、と彼は考えていた。

「二人の会話を聞いていた者によると、ウォルターはアンジェリカを貶してばかりいるそうだよ。ロバのような顔で笑うな、人前に出るな、背中を丸めて目立たないようにしろってね」

「何?……なんて奴なんだ! 何でそんな奴とアンジェリカは一緒にいるんだ」

「彼女は友達がいないからなあ。一人ぼっちは寂しいからじゃないか」

ヴィンセントは怒りに燃えた。今の話を総合するに、アンジェリカが孤立しているのもあんなに卑屈な性格になったのも全てウォルターのせいではないか。

「決めたよ、ウィリアム。僕は必ず彼女をウォルターから救い出す。そして彼女を幸せにする」

メラメラと闘志を燃やすヴィンセントに、ウィリアムは

「あ……うん、……」

という曖昧な返事しか返すことは出来なかった。あんな残念姫を好きになるなんて、と内心呆れていたからだ。

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