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再び、カフェ・フェリスにて
放課後、ヴィンセントはまたアンジェリカに声を掛けた。
「アンジェリカ、今日もカフェに行かないかい?」
周りの目を気にする素振りを見せてはいたが、アンジェリカは今日は素直に
「はい」
と返事をした。ヴィンセントに手を取られ歩いて行くアンジェリカがいつもより背筋が伸びているように見えて、クラスメイトは不思議がり顔を見合わせた。
今日もカフェ・フェリスにやって来た二人はコーヒーを二人分、そしてチェリータルトとチョコレートケーキを注文した。初めてのコーヒーに、アンジェリカはとてもワクワクしていた。
「本当にいい香りです」
存分に香りを楽しんでから一口含んでみた。
「!」
「苦いかい?」
ヴィンセントが愉快そうに尋ねる。
「苦いです。でも、大人の味って感じがしますわ」
「慣れると美味しく感じるようになるよ。体にもいいらしいからね」
「甘いケーキとよく合いますね」
カスタードクリームとチェリーの載ったタルトを幸せそうに食べるアンジェリカをヴィンセントは目を細めて見つめていた。その視線に気付き、恥ずかしくなったアンジェリカは俯く。
「どうして俯いてしまうの? 僕は君がケーキを食べる可愛い顔が見たいのに」
「だって、こんなに長くてロバみたいな顔なのに……見られたら恥ずかしいです」
「ロバだって? 全然そんなことないよ。面長の美人顔じゃないか。それにね、ロバって愛嬌のある可愛い顔をしてるんだよ」
アンジェリカは意味がわからず目をキョトンとさせた。
「つまりね、君がロバに似ていようといまいと、どっちにしろ可愛いって僕は思ってるってこと」
恥ずかしさと嬉しさで真っ赤になった頬に手を当てたアンジェリカは、にこやかに微笑んで自分を見つめるヴィンセントと目が合った。
これまで、アンジェリカと目を合わせた人は皆、いけないものを見たかのようにフイっと視線を逸らしていた。なのにヴィンセントはこうして見つめ返してくれる。それだけでも温かな気持ちが湧き上がるのを感じた。
本当に、こんな私でも可愛いと思ってくれているのだろうか?
そんなはずが無いという気持ちと、信じたいという気持ちがアンジェリカの中で闘っていた。
「アンジェリカ、今日もカフェに行かないかい?」
周りの目を気にする素振りを見せてはいたが、アンジェリカは今日は素直に
「はい」
と返事をした。ヴィンセントに手を取られ歩いて行くアンジェリカがいつもより背筋が伸びているように見えて、クラスメイトは不思議がり顔を見合わせた。
今日もカフェ・フェリスにやって来た二人はコーヒーを二人分、そしてチェリータルトとチョコレートケーキを注文した。初めてのコーヒーに、アンジェリカはとてもワクワクしていた。
「本当にいい香りです」
存分に香りを楽しんでから一口含んでみた。
「!」
「苦いかい?」
ヴィンセントが愉快そうに尋ねる。
「苦いです。でも、大人の味って感じがしますわ」
「慣れると美味しく感じるようになるよ。体にもいいらしいからね」
「甘いケーキとよく合いますね」
カスタードクリームとチェリーの載ったタルトを幸せそうに食べるアンジェリカをヴィンセントは目を細めて見つめていた。その視線に気付き、恥ずかしくなったアンジェリカは俯く。
「どうして俯いてしまうの? 僕は君がケーキを食べる可愛い顔が見たいのに」
「だって、こんなに長くてロバみたいな顔なのに……見られたら恥ずかしいです」
「ロバだって? 全然そんなことないよ。面長の美人顔じゃないか。それにね、ロバって愛嬌のある可愛い顔をしてるんだよ」
アンジェリカは意味がわからず目をキョトンとさせた。
「つまりね、君がロバに似ていようといまいと、どっちにしろ可愛いって僕は思ってるってこと」
恥ずかしさと嬉しさで真っ赤になった頬に手を当てたアンジェリカは、にこやかに微笑んで自分を見つめるヴィンセントと目が合った。
これまで、アンジェリカと目を合わせた人は皆、いけないものを見たかのようにフイっと視線を逸らしていた。なのにヴィンセントはこうして見つめ返してくれる。それだけでも温かな気持ちが湧き上がるのを感じた。
本当に、こんな私でも可愛いと思ってくれているのだろうか?
そんなはずが無いという気持ちと、信じたいという気持ちがアンジェリカの中で闘っていた。
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