残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか

文字の大きさ
16 / 26

ウォルターとヴィンセント

翌朝、髪型を変えて登校したアンジェリカに教室はどよめいた。初等部からずっとひっつめ髪だったアンジェリカの変化に皆が驚いたのだ。

「おはよう、アンジェリカ。髪を下ろしたんだね。すごく似合うよ」

早速ヴィンセントが話し掛ける。アンジェリカは俯くことなく微笑んで答えた。

「おはようございます、ヴィンセント殿下。昨夜、いろいろ試してみたのです。慣れなくて、今朝は時間が掛かってしまいました」

髪をセットするメイドはいないのかな、とヴィンセントは少し不審に思ったが口には出さなかった。

「君の美しい髪は下ろしているとさらに魅力を増すね」

アンジェリカを褒めちぎるヴィンセントにクラスメイトは笑いを堪えるのに必死だった。あのくすんだ金髪を美しいだなんて!

その時、ドアが開いてウォルターが教室に入って来た。皆、シンと静まり彼がどうするかを固唾を呑んで見守った。

アンジェリカの隣に座っているヴィンセントを一瞥すると、ウォルターはスタスタと近寄って来た。そしてヴィンセントを完全に無視してアンジェリカに話し掛けた。

「おはよう、アンジェ。今日の髪はどうしたの? 似合わないよ」

「おはよう、ウォルター……でも私、今日はこの髪にしたかったの」

アンジェリカはハッキリと言おうとしたが、唇が震えてしまっていた。

「失礼、ウォルターくん。僕は留学生のヴィンセントだ。彼女の髪はよく似合っていると思うよ」

ウォルターはやっとヴィンセントに目をやり、嫌そうに口を開いた。

「僕はアンジェリカに話しているんだ。君はあっちに行ってくれないかな」

「ウォルター!」

ウィリアムが割って入って来た。

「ウォルター、失礼な事を言うな! 彼はアステリアの王子だぞ? ここが教室でなかったら君は護衛に取り押さえられているぞ」

教室の後ろに控えていたニールとリアは明らかに殺気を放っていた。

ウォルターは微かにうろたえて、頭を下げた。

「これは失礼しました……休んでいて知らなかったもので」

ヴィンセントはニール達に目で合図を送り殺気を消させると、

「いや、構わない。教室では僕らは同じ立場だ」

ウォルターは頭は下げつつも上目遣いでヴィンセントを睨みつけていた。

その時始業のチャイムが鳴り、教師が入室した。ヴィンセントはアンジェリカの隣にしっかりと座り、ウォルターは離れた席に座るしかなかった。




その日一日、ヴィンセントはアンジェリカの側にいてガードしていた。だがヴィンセントが教師に呼ばれたほんの僅かな隙をついてウォルターはアンジェリカを裏庭に連れ出した。

「どういうことだい? アンジェ」

「……」

「こんな目立つ髪型をして。しかも男生徒と話したりして。僕が婚約を申し込んだこと忘れたの? そりゃあまだ返事はもらってないけど、君の父親が勿体ぶってるだけだろう? どうせ君に申し込む人は他にいないんだから、この話を受けるしかないんだ。僕の家は男爵だけど、金ならたくさんある。君の妹が第二王子に輿入れするための支度金だって用意してあげられるんだ。こんないい話はないだろう?」

ウォルターはアンジェリカの下ろした髪を一束取って引っ張った。

「それなのにあんな隣国の王子の気を引こうとするなんて、君ってこんな不誠実だったんだね。僕はずっと君の力になってきたのに。ロバ顔で友達のいない君の側にずっといたのに。君がそんな態度を取るなら、婚約は白紙にさせてもらうよ。そうなると君、困るよねえ?」

ウォルターは何度も髪を引っ張る。強い力では無いが、威圧するには充分だ。

「あいつは三ヶ月で国に帰るんだよ? それまでの間、ロバ顔の女をからかって退屈を凌ごうとしてるだけさ。本気にするなんて馬鹿だよ。わかったら、明日からまたひっつめ髪に戻すんだね」

「……です」

「何? 聞こえないよ」

「……嫌です」
感想 15

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

「もう十分に生きていると思っていた私に、殿下は毎日花を置いていきました」

まさき
恋愛
侯爵家を出て、二年が経った。 離縁のことは、もう誰にも話さない。 王都の外れに小さな部屋を借り、伯爵家の令嬢に刺繍を教え、静かに、過不足なく生きている。 泣いたのはいつだったか、もう思い出せない。 それで十分だと、思っていた。 ある晩、馴染みの花屋の前で、男が立っていた。 「セラフィーナ」 三年ぶりに聞く声が、当然のように名前を呼ぶ。 ヴィンセント王太子殿下――幼い頃から、ただひとり、自分を名前で呼び続けてくれた人。 「王宮へ来てください」 「お断りします。私はもう、十分に生きていますので」 翌日、部屋の前に花が一輪あった。 その翌日も。また翌日も。 受け取らない。でも、捨てられない。 必要とされなくても生きていける。 それはもう証明した。 だからあなたは、私を揺るがさないでください。 せっかく、平らになった心だったのに。 これは、ひとりで立つことを選んだ女が、 それでも誰かの隣へ帰るまでの物語。

お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。 その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。 しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。 貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。 そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位