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卒業パーティー
アンジェリカが魔法によって姿を変えられていたという事実は瞬く間に知れ渡った。
人々は魔法の恐ろしさを知り、また何年も不遇な目に合っていたアンジェリカに心からの同情を向けた。
学園のクラスメイト達は皆、アンジェリカに謝罪をした。
「ごめんなさい、アンジェリカ。あなたを見た目で判断して笑ったり馬鹿にしたりして。私達の方が醜い心の持ち主だったわ」
「いえ、いいんです、皆さん。私こそ、自分で自分を貶めていたんだわ。そして勝手に卑屈になり、誰とも関係を築こうとしなかった。当然の報いです」
アンジェリカは卒業と共にこの国を去りアステリアに行ってしまうが、それまでの間改めて友情を築き直そうと約束し合った。
美しい女性が大好きなウィリアム王子はヴィンセントをかなり羨ましがった。同時に、アンジェリカの本当の姿を見抜けなかったことを悔やんだ。
「ヴィンセント、婚約者を交換してくれないかな……?」
などと笑えない冗談を言い、ヴィンセントからもクリスティンからも睨みつけられていた。
そして卒業の時期を迎え、学園では無事に卒業パーティーが催された。
マダム・リンドのドレスを着たアンジェリカはまばゆい程に美しく、生徒達や招待客から感嘆と称賛を集めていた。
ヴィンセントから贈られた豪華なティアラが頭上に輝き、薬指には大きなダイヤモンドの婚約指輪がはめられていた。
正装した凛々しいヴィンセントと共にダンスを踊ると、ドレスの紫色が様々な変化を見せ、アンジェリカの美しさをますます華やかに彩った。
あの誕生日から二ヶ月経ち、アンジェリカはようやく今の顔に慣れてきていた。
だが、今でも鏡を見るたびに以前の顔を思い出すのだ。長年悩み続けたあの顔。そしてヴィンセントが現れ、励ましてくれてやっと受け入れる事が出来、好きになれたあの顔。
(私には、この経験が必要だったのかもしれない)
アンジェリカはそう考えていた。
(あの六歳のままの私だったら、きっと嫌な人間に育っていたでしょう。美しさが全てだと思い込み、見た目だけで人を決めつけるようになっていたと思うわ。何の努力もしないままで……。辛い思いをしたからこそ、他人の気持ちを考えられるようになった。そして、ヴィンセントに出会えたのだわ)
「どうしたの? アンジェ」
ダンスの最中にふと考え込んでいたアンジェリカに、ヴィンセントが優しく尋ねた。
二人はもうすっかり、愛称で呼び合う仲になっている。
「何でもないの。ただ、ヴィンス、あなたに出会えて幸せだなあって……」
ヴィンセントは微笑み、僕の方が幸せだよ、と囁いた。
人々は魔法の恐ろしさを知り、また何年も不遇な目に合っていたアンジェリカに心からの同情を向けた。
学園のクラスメイト達は皆、アンジェリカに謝罪をした。
「ごめんなさい、アンジェリカ。あなたを見た目で判断して笑ったり馬鹿にしたりして。私達の方が醜い心の持ち主だったわ」
「いえ、いいんです、皆さん。私こそ、自分で自分を貶めていたんだわ。そして勝手に卑屈になり、誰とも関係を築こうとしなかった。当然の報いです」
アンジェリカは卒業と共にこの国を去りアステリアに行ってしまうが、それまでの間改めて友情を築き直そうと約束し合った。
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などと笑えない冗談を言い、ヴィンセントからもクリスティンからも睨みつけられていた。
そして卒業の時期を迎え、学園では無事に卒業パーティーが催された。
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だが、今でも鏡を見るたびに以前の顔を思い出すのだ。長年悩み続けたあの顔。そしてヴィンセントが現れ、励ましてくれてやっと受け入れる事が出来、好きになれたあの顔。
(私には、この経験が必要だったのかもしれない)
アンジェリカはそう考えていた。
(あの六歳のままの私だったら、きっと嫌な人間に育っていたでしょう。美しさが全てだと思い込み、見た目だけで人を決めつけるようになっていたと思うわ。何の努力もしないままで……。辛い思いをしたからこそ、他人の気持ちを考えられるようになった。そして、ヴィンセントに出会えたのだわ)
「どうしたの? アンジェ」
ダンスの最中にふと考え込んでいたアンジェリカに、ヴィンセントが優しく尋ねた。
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ヴィンセントは微笑み、僕の方が幸せだよ、と囁いた。
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