追う者

篠原

文字の大きさ
上 下
173 / 278
第十六章 義時と真子の挙式 ~純白のドレスと運動靴!?~

第十六章 ④

しおりを挟む
(ここでは、第七章①と第七章②と
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)









新婦控室で、真子は、真正面に座る
久世小羽を見つめた。
かかってきた電話に出て、誰かと話して
いる。
「多分、旦那さんだろうなぁ」と、
真子は思った。


自分たちより、ちょっと早く式を挙げた
先輩。
そして、同じ中学校出身。
中1、中3の時に同じクラスだった。
3年生の時は、生徒会の副会長をやって
いた。
卒業式の日、声をかけたかったん
だけど、勇気がなくて、結局、話かける
ことはできなかった、のに……。
「今、こうやって、私の結婚式に来て
くれてるなんて……!」。
真子の胸が熱くなる。




真子は、それまでのことを
振り返る。


あの夜。
結局は、小滝先生が、全員分のを
払ってくれた。
先に帰ったカップルは、自分たちの
分のお金を置いていったけど、最後
まで残った、私たちの分は、小滝先生が
「良いんです、良いんです!皆さん、
私の話をよく聞いてくださったので、
お礼ですよ!」と言って……。


それで、そうだ……。
お開きになるまで、結局、ずっと、
小滝先生は、男性2人にいろいろと
話してた。
そのうちに、なぜか、義時と、
もう1人の男性もうるさいほどに
なってて……。
男性3人がすごく盛り上がってるから、
苦情が来るんじゃないかと……、
ひやひやしたっけ…。

で、自分と小羽ちゃんの2人は…。
静かに、話したんだよね。
そう。
最初に、気づいたのは小羽ちゃん。
「あの、もしかして……。
柳沼さんって、奈良の出身ですか?
いえ、その……。間違ってたら、
すみませんが、中学の時に一緒だった
奥中真子さん……?」。


あの時は、まさに、デジャブ……。
やよいちゃんと再会した日のことを
思い出した。



それで、すぐに、思い出したんだ。
「あの小羽ちゃん!?」。
中学の校門を出ながら、
もう2度と会えないんだろうなぁと
考えてた、あの小羽ちゃん!!

それからは、男性陣が盛り上がる
横で、思い出話に花を咲かせたよね。
小羽ちゃんは、「こんな再会って、
あるんだね!映画みたい……」と
言ってた。
同感だったなぁ。




って言うか、私って、そういうの
多くない……?
そろそろ通話が終わりそうな、
小羽を見つめて、真子は、そう思った。



新婦控室で、真子と小羽は、
『ウエディング・セミナー』の4回目
の日のことを振り返って話した。
で、約束した。
「また、2人だけで……、あっ、
ゆずちゃんも誘って、同期3人女子
だけで、お寿司屋行こうね!」と。

ちなみに、ゆずちゃんと言うのは、
真子と小羽と一緒に受講していた
女性の名前。
つまり、あのレストランで、急用
のため早く帰った女の子だ。



話を戻す。
『ウェディング・セミナー』の4回目。
その日、義時は、仕事のトラブルで、
どうしても参加できなくなった。
義時から連絡を受け、それを、小滝
牧師に伝える真子。
小滝牧師は、「わかりました。
彼には、あとで、罰として、
補習を受けてもらいます」と言った
けど、顔は笑っていた。

で、真子だけは、カップルじゃなく、
一人で、その日参加した。
正直、寂しい。
気まずい……。

でも、それも最初のうちだけだった。
だんだんと、気にならなくなった。
小滝牧師のさりげない気遣いも
嬉しかった。

すべてのプログラムが終わって…。
真子が、一人で帰ろうとしていた時
だった。
後ろから声をかけられた。

振り返ると、小羽だった……。
小羽が言う。
「柳沼さん。
このあと、どっか行きません?
うちの彼、このあと、夜勤だから、
すぐに職場に行かないといけないの。
そっちも一人でしょ。
だから、女二人で、夕食行かない?」。

その彼が、真子に会釈して、一足早く
教会を出て行った。
もう1組のカップル―ゆずちゃん達―は、
教会の中で、まだ、小滝牧師と、
話している。
相談か何かか……?


嬉しくて、真子は、即答した!
「いいね!行く!!」。


で、女子2人は、夜の街に出て行った
のだ。
入ったのが、回転寿司店。
慣れた感じで店内を歩きながら小羽が
振り向く。
「ここね、よく、彼とくる店なんだ。
値段の割に、味も鮮度もネタの大きさ
も抜群だよ!」。


『ウェディング・セミナー』帰りの
未婚女子二人、食べる気満々であった
……。











(著作権は、篠原元にあります)
しおりを挟む

処理中です...