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篠原

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第十七章  栄真子の新婚、新居生活  ~すべてが初めてな新妻!~

第十七章 ㉙

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新婚旅行出発日の朝。
つまり、ハネムーン第一日。
または、愛の旅初日。

2人のアパート先に、車が着いた。
着けてくれた…って言った方が良い。


そう、義時からすれば義姉。
真子からしたら、結婚相手の家族。
もう、結構それなりに仲良くなっている
頼りになる『お義姉さん』だ。
 結婚式直後の超バタバタしている時も
手伝いに来てくれた…、お弁当まで持って
きてくれて…。
「あれは嬉しかったなぁ!
サプライズで……。
今回も、本当、助かるっ!!
絶対に、お土産いっぱい買ってこない
とだなぁ……」と、思い出す。



かわいい、そして新しく出来た
『義妹ちゃん』と、おまけで―本人には
言わないけれど―義弟の義時のために、
美織は、朝早くから、車を出した。
 まぁ、自分たちも新婚旅行の時、
かなりの荷物だったし、送ってもらって
助かった―親友にだけど―。
だから、当然のごとく…。
『義妹ちゃん』と義時の新婚旅行の話を
聞いて、すぐに手をあげた。
 もう1つは、やっぱり、たまには、
自分1人の時間がほしい……!
子どもたちのことは、堂々と、
パパ―配偶者―に任せられるから。
「私は、朝早く、空港まで、送らないと
いけないの。
だから、この子たち、よろしくネ!」と。
 そう。2人を空港で降ろせば、あとは、
束の間だけれど、普段あんまりない、
『貴重な1人時間』だ!
 1人で、車を運転しながら、思いっきり、
歌えるだろうし……!!




車内で。
騒がしかった!
義姉の美織と妻の真子が……。
ちなみに、義時は、かなりの荷物とともに、
後部座席に押し込め(?)られた。
妻と義姉は、運転席と助手席で盛り上がって
いる。
「車で羽田まで行って、空港の駐車場に
止めておこう、って思ってたんです……。
でも、電話で訊いたら、それだと、スゴイ
料金とられるって…。
だから、本当に、助かりますッ!」と妻。
「良かったぁ!
そう言ってもらえて、嬉しい…。
実はね、私も、ドライブ好きだからさ。
それに、帰りはさ、1人の時間とれるしさ。
……それねぇ、主婦にとっちゃぁ、本当に
重要で、レアなんだよぉ!
だから、名乗り出たのさッ!
まぁ、真子ちゃんもいつか、そのうち、
分かるようになると思うよ、主婦の辛さ!」
「へ…へぇ、ちょっと、怖いですね」


笑いながら義姉が、言う。
「逃げれないよ!そのうち、赤ちゃん
生まれるんだからさ!!」
「そうですね!」と即答し、頷く妻。
 自分からすれば、ちょっと、気が早すぎる
ような感じ……だけど、それが、女…女性
ってもんだろうし、ここで、口を挟むと
絶対に、運転席&助手席から冷たく鋭い
視線と『お責めの言葉』が飛んでくる
だろうから、やめた……。


なので。
……うるさいから、静かにしてもらいたい
のもあって。
あと、これ以上、変な方に(?)話が
いかないように、義時は、義姉に言った。
「いやぁ、本当、感謝です!
帰りも、迎えに来てくれるって?」
すぐに返ってくる。
「当然だよ!かわいい義妹がさ、
疲れて、クタクタになって戻ってくる。
それに荷物もあんだからさ!
迎えにいかない、わけが、ないじゃん!」
 あ……。俺のためって言うのはないのネ。
全部、真子のためか……、と理解する。
つまり、自分は、オマケ。




そして。
笑顔で手を振る美織に送られて、
2人は、羽田空港のターミナルの中に
入った。
正直、義時は、「もしかしたら、この人、
空港の中までついてくるのかな?」と
ヒヤヒヤしていた。
さすがに、もう、そこは遠慮願いたい。
でも、この流れだと、妻と義姉が仲良く
話しながら空港内を歩き、自分はその後に
トボトボついていく感じ……。
 だけど、それは、言えない。


なので。助かった。
義姉は、空港に入らず、帰ってくれた。
まぁ、こんなこと口からは、恐ろしくて
出せないけれど。



真子は、2人分のチケットを手にして、
搭乗の手続きや、荷物の預けなどをした。
ちなみに、自分たちがいるのは、国内線の
ターミナル。
持っているチケットには、『羽田発長崎行』
とある!
















(著作権は、篠原元にあります)
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