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憧れている、人がいた。
探索者協会のデータベースに載っている情報は最低限。
メディアでの露出も極端に少ない。
にも拘らず、おれが探索者になった時には既に上位探索者として世間に知られていた。
そして今では、彼はこう認識されている。
日本最多のダンジョン踏破数保持者。世界最年少のSSS探索者と。
彼は主に、人気度の低いダンジョンを回っていた。
ランクの低い高いに拘らず。
踏破消滅依頼が出ているダンジョンを片っ端から。
ハイリスクもローリターンも気にする事なく。
10年前の、あの日。
こんな探索者が、いてくれれば。
両親も。おれの左腕も。左目も。
失う事は、なかったんじゃないか。
そう、思わせる程に。
彼は立て続けに、ダンジョンを踏破していった。
最初は複雑だった。
おれがその時彼に抱いた感情は、彼にとって理不尽な八つ当たりでしかなかったから。
どうしてあの時いなかった。どうして助けてくれなかった。どうして今更出てきた。
そんな、どうしようもない鬱屈だ。
しかしおれは。この感情がお門違いである事も、十二分に理解していた。
当然だ。当時おれはたったの7歳。ならば彼も、10歳だった筈だ。
そんな子供がダンジョンに。剰え踏破など出来る訳がない。
現実も理屈もおれにはきちんと見えていた。
そして世の不条理を呑み込んでしまえば、後に残るのは短期間で強者の一角へと上り詰めた彼への、純粋な興味関心だった。
どうやら彼の得物は、2本の短剣らしい。
速さに特化したスキルを持っている様だ。
大手ギルドが勧誘に失敗したと聞く。
ソロ活動を徹底し、頑なにパーティを組まないそうだ。
他探索者と交流をしないどころか会話も皆無な処から、どうも人嫌いという噂も。
けれど調べてみても出てきたのはこの程度だった。
協会の広報を取り寄せ、ネットで検索し、SNSを漁っても。
らしい、とか。みたいだ、とか。曖昧な表現ばかりが目に付いた。
だからおれは早々に調べるのを止めた。
全てが嘘ではないのだろうけれど。
確定でないなら、情報など集めても無意味だと思ったからだ。
そうしてその内、気にする事もなくなった。
彼に再び興味を持ったのは。高校1年の夏休み。
少し奮発して、2泊3日でホテルの部屋を取って、世田谷の特殊ダンジョンに通った事がある。
1層から5層まで。全く魔物の出てこないダンジョンだ。
しかもそれらの層には決して破壊出来ない宝石の草原、宝石の花畑、宝石の森があって、観光地と化している。
けれど100層を超えて尚、誰も最深の階層まで辿り着けていない、ダンジョンだった。
そんな、ダンジョンの113階層で。
それは圧倒的な力だった。
嵐の様に覆し得ぬ、暴力だった。
何よりも、美しい、剣の軌跡だった。
正に一騎当千。万夫不当の天下無双。
己の何十倍も大きな魔物、おれですら一目見て逃げた相手に。
裕々と。綽々と。
その立ち回りは最早、戦闘ですらない。只の、遊びだった。
その、戦い方を目の当たりにして。
おれは。
探索者協会のデータベースに載っている情報は最低限。
メディアでの露出も極端に少ない。
にも拘らず、おれが探索者になった時には既に上位探索者として世間に知られていた。
そして今では、彼はこう認識されている。
日本最多のダンジョン踏破数保持者。世界最年少のSSS探索者と。
彼は主に、人気度の低いダンジョンを回っていた。
ランクの低い高いに拘らず。
踏破消滅依頼が出ているダンジョンを片っ端から。
ハイリスクもローリターンも気にする事なく。
10年前の、あの日。
こんな探索者が、いてくれれば。
両親も。おれの左腕も。左目も。
失う事は、なかったんじゃないか。
そう、思わせる程に。
彼は立て続けに、ダンジョンを踏破していった。
最初は複雑だった。
おれがその時彼に抱いた感情は、彼にとって理不尽な八つ当たりでしかなかったから。
どうしてあの時いなかった。どうして助けてくれなかった。どうして今更出てきた。
そんな、どうしようもない鬱屈だ。
しかしおれは。この感情がお門違いである事も、十二分に理解していた。
当然だ。当時おれはたったの7歳。ならば彼も、10歳だった筈だ。
そんな子供がダンジョンに。剰え踏破など出来る訳がない。
現実も理屈もおれにはきちんと見えていた。
そして世の不条理を呑み込んでしまえば、後に残るのは短期間で強者の一角へと上り詰めた彼への、純粋な興味関心だった。
どうやら彼の得物は、2本の短剣らしい。
速さに特化したスキルを持っている様だ。
大手ギルドが勧誘に失敗したと聞く。
ソロ活動を徹底し、頑なにパーティを組まないそうだ。
他探索者と交流をしないどころか会話も皆無な処から、どうも人嫌いという噂も。
けれど調べてみても出てきたのはこの程度だった。
協会の広報を取り寄せ、ネットで検索し、SNSを漁っても。
らしい、とか。みたいだ、とか。曖昧な表現ばかりが目に付いた。
だからおれは早々に調べるのを止めた。
全てが嘘ではないのだろうけれど。
確定でないなら、情報など集めても無意味だと思ったからだ。
そうしてその内、気にする事もなくなった。
彼に再び興味を持ったのは。高校1年の夏休み。
少し奮発して、2泊3日でホテルの部屋を取って、世田谷の特殊ダンジョンに通った事がある。
1層から5層まで。全く魔物の出てこないダンジョンだ。
しかもそれらの層には決して破壊出来ない宝石の草原、宝石の花畑、宝石の森があって、観光地と化している。
けれど100層を超えて尚、誰も最深の階層まで辿り着けていない、ダンジョンだった。
そんな、ダンジョンの113階層で。
それは圧倒的な力だった。
嵐の様に覆し得ぬ、暴力だった。
何よりも、美しい、剣の軌跡だった。
正に一騎当千。万夫不当の天下無双。
己の何十倍も大きな魔物、おれですら一目見て逃げた相手に。
裕々と。綽々と。
その立ち回りは最早、戦闘ですらない。只の、遊びだった。
その、戦い方を目の当たりにして。
おれは。
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