異能専科の猫妖精

風見真中

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旧友編

エレベーターにて

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 夕食を終えた俺とネコメとリルは、呼び出しに応じて諏訪先輩の元に向かっていた。
「リルさんは、お眠ですか」
「最近飯食ったらすぐ寝るんだよ、こいつ」
「成長期ですね」
 それはどうだろう。異能生物の成長ペースって普通の狼と同じなのかな?
 リルは俺の腕の中で丸まり、気持ち良さそうに寝息を立てている。この辺は本当に子どもというか、動物的というか。
「大地君、こっちです」
 ネコメに案内されて向かう場所は、寮の地下にある生徒会役員用の部屋、執務室。
 寮の地下行きのエレベーターには、生徒会室同様に普通の生徒では立ち入れない、霊官専用の階がいくつかあり、執務室もその一つらしい。
 正規の霊官ではない俺はネコメに案内される形でエレベーターに乗り、電子パネルに手帳のICをかざすネコメを眺める。
「実は私も、執務室には行ったことがないんです。基本的に生徒会役員しか用向きのない部屋ですから」
「生徒会役員って、ちょっと優遇されすぎてねえか?」
 生徒会役員は校舎内にシャワー完備の生徒会室に、同じ階に私室まで用意されている。
 それに加えて寮には役員専用の部屋だなんて、ちょっとした戸建住宅並みに部屋があるではないか。
 対して、同じ霊官のネコメは一般の生徒と比べてそこまで優遇されている様子はない。
「生徒会役員は特別ですよ。学校内の仕事の他に、異能関係の仕事が霊官の支部から回ってきたりしますから」
「支部から?」
「はい。霊官の人数はそこまで多くありませんし、小さな事件は手が回らないんです」
 確かに、霊官は異能の自衛官のようなものだが、一般的にその存在が知られている自衛官より人数が少ないのは想像に難くない。
 霊官が全部で何人いるのか知らないが、全国に人を回しているのであれば人手不足なのも頷ける。
 エレベーターが目的の階に着くまで話すこともなかったので、俺はもう少し霊官について踏み込んで聞いてみることにした。
「聞いたことなかったけど、霊官の支部っていくつあるんだ? 中部支部ってのがあるのは聞いたけど」
 この辺りの霊官をまとめる中部支部。そのトップはネコメの保護者でもある。
「全部で八つです。中部の他に、関東、関西、東北、北海道、北陸、四国、九州にあります。細かい管理施設は無数にありますが、その全てがいずれかの支部の下部組織になります」
「それは、少ないな……」
 異能、ファンタジー組織の支部なら多いような気もするが、これが自衛隊の駐屯地のようなものだと考えれば、驚くほど少ない。
 そりゃ学生にも仕事が回ってくるわけだ。
「他にも、本部と呼ばれる場所があるらしいですが、所在は明かされていません」
「明かされてないって、ネコメも知らないのか?」
「はい。本部の場所や規模は本部所属の霊官、もしくは各支部の幹部クラスでないと知ることが許されないんです」
 正規の霊官にも本部の場所が知らされていないとは、おかしな話だ。
「なんでそんなに秘密主義なんだ?」
 異能や霊官の存在が一般的には秘匿とされているのは分かるが、身内とも言える霊官にもそこまで秘密主義なのは理解できない。
「霊官本部は、この国の異能の最期の砦。絶対に倒れては行けない組織なんです。この間の事件でも分かると思いますが、霊官の中にも色んな人がいます。全ての霊官に本部の所在を明らかにすることはリスクが大きいんです」
 なるほど。確かに先の一件を考えると、藤宮のような行動を起こすものが他にいてもおかしくない。
 霊官も決して一枚岩ではないってことか。
「ちなみに各支部のお膝元に異能専科はありますので、学校も全国に八つです」
「へぇ、異能専科も八つなのか」
 異能専門の国立学校、異能専科。この鬼無里校は中部支部の管轄ってことになるんだな。
 確かにその方が仕事を回すのもスムーズに行くのかもしれない。
「多分、会長に呼ばれたのも仕事絡みだと思いますよ」
「……それって、俺たちに霊官の仕事を回す気ってことか?」
「はい」
 いや、なんでだよ。
「なんで俺たちがそんなことしなきゃならないんだ?」
「この学校の霊官のトップは会長です。私みたいな普通の霊官はその部下に当たりますから」
「……その場合、俺の立場は?」
「えっと、霊官の見習いで、私の部下になるので……」
 下の下ですよね。分かってますよ。
「立場が低いのは分かるけど……それだけの理由で自分たちの仕事をこっちに回すのか?」
 先輩たちはこれだけ優遇されてるんだから、回ってきた仕事くらい自分たちで解決してくれと思う。
「回ってくる仕事は大小あります。私たちに回ってくるような仕事よりもっと大きな案件を会長たちは抱えているんですから」
 ネコメの言い分は分かるが、そこまで達観していられない。俺はそこまで大人じゃないのだ。
「釈然としねえな……」
 ぶすっとした態度の俺に、ネコメは苦笑いを浮かべた。
「これも霊官になるためのインターンだと思って下さい」
 納得いかねえ。
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