2 / 2
白
しおりを挟む
「お嬢ちゃん達、ひょっとして天帝さんの巫女かい?」
「んぐ?!」
後から突然かけられた声に、縹はまとめて口に入れた饅頭をのどに詰まらせた。
「お婆ちゃん、知ってるの?」
織部の問いに、店内から持ってきたお茶を縹に渡しながら茶屋の老婆がほほ笑む。
「このお嬢ちゃんの腕の模様な」
縹の腕の刺青を指しながら、老婆は店の柱を見る。
年季の入った店の柱には同じ模様が彫られていた。
「あの山は昔悪い大蛇が出て、天帝さんの巫女が退治してくださったとワシが子供の頃聞かされとった。この世を創った天帝さま、本当に在りなさったんやねぇ」
80歳くらいだろうか。老婆は感慨深げに縹を見つめる。
「わたしまだ16だよ」饅頭をお茶で流し込んだ縹が、言いながら織部を見る。
「私だってまだ18です」すかさず織部。「…先代かしらね?」
休憩からしばらく歩いたとき、織部が森の奥に顔を向ける。
「見つけたぞ」
先に探索に出ていた白が森から駆け寄ってきた。
「あの山の麓の谷だった?」
「そうだ…なんで知ってる?」
ドヤ顔の縹に眉を顰めながら白が聞く。
「なるほどね。この辺りは伝承がちゃんと語り継がれているわけか…無駄に調べちゃったな」
饅頭のお土産を緋から受け取りながら白がつぶやく。
「でも白の目は何でも見えて便利でいいじゃん」
「何でもは見えん。世界の果ての向こう側は見えんし、散歩は曲がり角の向こうが見えないからこそ楽しい」
弓の弦を撫でながら白が縹に答える。
「神器『白線』かあ。5年位前って言ってたっけ、天帝さまに会ったの」
弓の弦を見ながら織部がたずねる。
「ああ。…たしかに初めて光が見えた時は感激したけどな」
白の瞳は名前の如く真っ白である。彼女は生まれついての全盲である。
その白い瞳が饅頭の入った袋を見る。
「織部が余分に饅頭食ってるのが見えても面白くはないな」
「なッ……!!」
織部は顔を真っ赤にして飛び上がった。
「やっぱり結界か。綠花じゃ分からなかった訳ね」
むき出しの岩が広がる谷の洞窟の前で、織部は頭のサークレットに触れながら話す。
「温泉街が繁盛するほどの活火山だ。緑も少ないし仕方ないさ」
白が話しながら辺りを一望し続ける。
「よし、織部はここで待機してくれ。3人で見てくる」
「はーい」
お昼を食べて少し眠気のあった緋と縹が伸びをしながら返事をする。
「何かあったら手を振るわ。気をつけてね」と織部。
「面白いねーこれ」
「おー」
後ろから、縹と緋がぼんやり緑に光る棒を振り回しながらはしゃぐ。
「帝の遣いが持ってきてたやつか」
帝とは皇帝のことである。
茶屋の老婆と違い、市井の人にとって天帝 ―― この世を創った存在 ―― は年々お伽話の存在となりつつある。だが皇帝にとっては違う。
どのような継承であれ皇帝となる人物は代々天帝の存在を強く意識し、その巫女である彼女らとの関係を維持する。創造主には敵わなくとも、彼女らとは不可侵の関係を維持し、物資の「支援」を行うことで、皇帝、人の頂点としての威厳を保ちたいのだ。
「化学反応のライトか。色々思いつくもんだな」
「お~」と、ひたすら棒を振る緋。
しばらく進む。白の目があれば結界の本体まで辿り着くのは問題がない。むしろ、結界の中だけが見えない状態のおかげで彼女の目にはより分かりやすいルートとして映ってしまう。
洞窟は一本道の溶岩洞のため、細くなったり低くなったりといったこともなく、暗い以外は快適ですらある。そのせいか、縹の集中力は真っ先に切れてしまった。
「白ぉ、飽きた」
「あとちょっとだろ。何言ってんだ」
「あーきーたー何か面白い話してー」
「お前なあ…」
「白は、なんで天帝と契約したの?」
唐突にこのタイミングで、縹ではなく緋からの問いに面食らう。
「なんだよ藪から棒に」
まあいいか、と深いため息の後に白は続けた。
「さっき織部も言ってたろ? 私が天帝に会ったのは5年ほど前だ。それまで光がどういうものかすら知らなかった私の頭の中が、突然光ったんだ」
「自分が作ったこの世界にはまだ綻びがある。それを直してくれたら願いを何でも一つ叶える…皆も知ってるだろ?」
緋がうなずく。
縹が聞く「白は何をお願いしたの?」
「言ってなかったっけ? 皆と同じで、単に普通の目だよ」
暗闇の先を見たまま白が続ける。
「目が見えないのは生まれつきだし、普通に育ててくれる両親もいた。だから不便だったが、まあ不幸じゃなかった。だから願いごとというより、何でも独りでやれる状況が欲しかったんだ。それが手に入るっていうから天帝の刀になった。それだけさ」
縹が何か言おうとしたのを白が手を上げて遮る。
「着いたぞ。お迎えだ」
ライトのぼんやりした緑色に照らされる周辺には変化は見えないものの、緋も縹も洞の奥からどんどん強くなる気配に体の毛が逆立つ。
「ありゃ蛇か竜だな。ポン刀でないと斬れんぞ」
闇を見ながら白が言う。
「せまいなーここ」
あまり緊張感のない縹。
「追っかけてきそうだし、いったん出よう」
言うや、二人をヒョイと脇に抱えて走り出す緋。もと来た道を走り出す。
「追いつかれそうだぞ。道見えるのか?」
抱えられたまま白が言う。
「覚えてる」
と緋は言い、続けざまに囁く。
「踊れ、紅絲帶」
緋の手足と腰の帯がふわりと波を描き、3人は真っ暗な洞窟を入口へ、まるで魔法の絨毯に乗っているようにスキップしていく。
洞窟の入口に近づき、洞窟と同じサイズの白い大蛇が追いかけてくるのが見える。
「縹の受け持ちだな」
「おっけー」
同時に周りが真っ白になる。緋が勢い余って洞の出口から二人ごと50mほど上空へ飛び出したせいだ。縹の目が眩む。
(光…白もこんな気持ちだったのかな)
何も見えない中を無重力で浮かぶ中、縹が考える。少し手足が痛む。
順応して見えてきた空を向きながら縹がふっと「ふつうの…かぁ」とつぶやいて笑い、唱える。
「T.A.T.O.O.起動、P.O.N.T.O.・リライト」
唱えながら腰の小刀2本を両手で引き抜き、続ける。
「藍皮書、開け ――」
縹の両手両足に鮮やかで精密な刺青が、表示されたように浮かび上がる。
右手の小刀の鎬を左の二の腕へ、左手の小刀の鎬を右の二の腕へ当てる。
ジュッ…と、焼けた鉄板に落とした水滴のような音がする。
両手を前に振り出し、小刀を両腕から剥がす。
さっきまで縹の両腕で浮かんでいた刺青が鮮やかに小刀に転写され、バチバチと打ちたての鋼のように火花を上げる。
縹はくるりと地面に向きを変え、小刀を構えて頭から落ちる。
出てきた洞窟めがけて。
追いかけてきた白い蛇が洞窟から頭を出した瞬間、その眉間にトン、と縹の小刀がめり込んでゆく。
「おかえりー」
緋が白を抱えて織部のそばに着地する。
「あれが結界だな。何かの通路を守っていたみたいだな」
縹に刺されて痙攣しながら消えてゆく大蛇を見ながら白。
「裏道みたいな感じね。どこに通じていたのかしら…」
結界の蛇が力を失ったせいか、織部がさっそく深部の音をその場で探っている。
「見えないな」
白が洞窟を見ながら目を細める。世界の果てまで見える目で。
「天帝の目を以てしても見えない場所というのは、問題ね。地の綻びなのかしら」
「だろうな。おかしなものが澱んで、大蛇の結界なんてものが結ばれ出すわけだ」
言いながら白は矢を数本取り出し、構える。
「神技、『一途』」
いま、白の目は見えているのではない。
この弓に張られた一本の糸、神器『白線』は天帝との契約で受けた借り物である。
この糸は世界の全てと繋がり、その振動を白に像として視せている。
何物をも見通すその目を使うたび、白は、逆に自分が未だ何も視えていない事を強く感じていた。
洞の入口めがけて続けざまに放つ。
矢はまるで鳥のように、ゆるやかに方向を変えながら洞に飛び込み消えてゆく。
しばらくして、洞の奥から地鳴りが響きだす。
少しの地震のあと、洞は崩れ去った。
「よし、ここは終わりだ」
「今日中に次の町まで行けるかしらね」
「疲れたー。のんびり野宿しようよ」すっかり普段の縹。
「宿そばの飯屋、うまそうだが」白が彼方を見ながら呟く。
「えー! やっぱり白の目いいなー! 緋ちゃんおぶってー!」
「やだー」
四人は、だらだらと夕暮れ迫る街道に消えていった。
「んぐ?!」
後から突然かけられた声に、縹はまとめて口に入れた饅頭をのどに詰まらせた。
「お婆ちゃん、知ってるの?」
織部の問いに、店内から持ってきたお茶を縹に渡しながら茶屋の老婆がほほ笑む。
「このお嬢ちゃんの腕の模様な」
縹の腕の刺青を指しながら、老婆は店の柱を見る。
年季の入った店の柱には同じ模様が彫られていた。
「あの山は昔悪い大蛇が出て、天帝さんの巫女が退治してくださったとワシが子供の頃聞かされとった。この世を創った天帝さま、本当に在りなさったんやねぇ」
80歳くらいだろうか。老婆は感慨深げに縹を見つめる。
「わたしまだ16だよ」饅頭をお茶で流し込んだ縹が、言いながら織部を見る。
「私だってまだ18です」すかさず織部。「…先代かしらね?」
休憩からしばらく歩いたとき、織部が森の奥に顔を向ける。
「見つけたぞ」
先に探索に出ていた白が森から駆け寄ってきた。
「あの山の麓の谷だった?」
「そうだ…なんで知ってる?」
ドヤ顔の縹に眉を顰めながら白が聞く。
「なるほどね。この辺りは伝承がちゃんと語り継がれているわけか…無駄に調べちゃったな」
饅頭のお土産を緋から受け取りながら白がつぶやく。
「でも白の目は何でも見えて便利でいいじゃん」
「何でもは見えん。世界の果ての向こう側は見えんし、散歩は曲がり角の向こうが見えないからこそ楽しい」
弓の弦を撫でながら白が縹に答える。
「神器『白線』かあ。5年位前って言ってたっけ、天帝さまに会ったの」
弓の弦を見ながら織部がたずねる。
「ああ。…たしかに初めて光が見えた時は感激したけどな」
白の瞳は名前の如く真っ白である。彼女は生まれついての全盲である。
その白い瞳が饅頭の入った袋を見る。
「織部が余分に饅頭食ってるのが見えても面白くはないな」
「なッ……!!」
織部は顔を真っ赤にして飛び上がった。
「やっぱり結界か。綠花じゃ分からなかった訳ね」
むき出しの岩が広がる谷の洞窟の前で、織部は頭のサークレットに触れながら話す。
「温泉街が繁盛するほどの活火山だ。緑も少ないし仕方ないさ」
白が話しながら辺りを一望し続ける。
「よし、織部はここで待機してくれ。3人で見てくる」
「はーい」
お昼を食べて少し眠気のあった緋と縹が伸びをしながら返事をする。
「何かあったら手を振るわ。気をつけてね」と織部。
「面白いねーこれ」
「おー」
後ろから、縹と緋がぼんやり緑に光る棒を振り回しながらはしゃぐ。
「帝の遣いが持ってきてたやつか」
帝とは皇帝のことである。
茶屋の老婆と違い、市井の人にとって天帝 ―― この世を創った存在 ―― は年々お伽話の存在となりつつある。だが皇帝にとっては違う。
どのような継承であれ皇帝となる人物は代々天帝の存在を強く意識し、その巫女である彼女らとの関係を維持する。創造主には敵わなくとも、彼女らとは不可侵の関係を維持し、物資の「支援」を行うことで、皇帝、人の頂点としての威厳を保ちたいのだ。
「化学反応のライトか。色々思いつくもんだな」
「お~」と、ひたすら棒を振る緋。
しばらく進む。白の目があれば結界の本体まで辿り着くのは問題がない。むしろ、結界の中だけが見えない状態のおかげで彼女の目にはより分かりやすいルートとして映ってしまう。
洞窟は一本道の溶岩洞のため、細くなったり低くなったりといったこともなく、暗い以外は快適ですらある。そのせいか、縹の集中力は真っ先に切れてしまった。
「白ぉ、飽きた」
「あとちょっとだろ。何言ってんだ」
「あーきーたー何か面白い話してー」
「お前なあ…」
「白は、なんで天帝と契約したの?」
唐突にこのタイミングで、縹ではなく緋からの問いに面食らう。
「なんだよ藪から棒に」
まあいいか、と深いため息の後に白は続けた。
「さっき織部も言ってたろ? 私が天帝に会ったのは5年ほど前だ。それまで光がどういうものかすら知らなかった私の頭の中が、突然光ったんだ」
「自分が作ったこの世界にはまだ綻びがある。それを直してくれたら願いを何でも一つ叶える…皆も知ってるだろ?」
緋がうなずく。
縹が聞く「白は何をお願いしたの?」
「言ってなかったっけ? 皆と同じで、単に普通の目だよ」
暗闇の先を見たまま白が続ける。
「目が見えないのは生まれつきだし、普通に育ててくれる両親もいた。だから不便だったが、まあ不幸じゃなかった。だから願いごとというより、何でも独りでやれる状況が欲しかったんだ。それが手に入るっていうから天帝の刀になった。それだけさ」
縹が何か言おうとしたのを白が手を上げて遮る。
「着いたぞ。お迎えだ」
ライトのぼんやりした緑色に照らされる周辺には変化は見えないものの、緋も縹も洞の奥からどんどん強くなる気配に体の毛が逆立つ。
「ありゃ蛇か竜だな。ポン刀でないと斬れんぞ」
闇を見ながら白が言う。
「せまいなーここ」
あまり緊張感のない縹。
「追っかけてきそうだし、いったん出よう」
言うや、二人をヒョイと脇に抱えて走り出す緋。もと来た道を走り出す。
「追いつかれそうだぞ。道見えるのか?」
抱えられたまま白が言う。
「覚えてる」
と緋は言い、続けざまに囁く。
「踊れ、紅絲帶」
緋の手足と腰の帯がふわりと波を描き、3人は真っ暗な洞窟を入口へ、まるで魔法の絨毯に乗っているようにスキップしていく。
洞窟の入口に近づき、洞窟と同じサイズの白い大蛇が追いかけてくるのが見える。
「縹の受け持ちだな」
「おっけー」
同時に周りが真っ白になる。緋が勢い余って洞の出口から二人ごと50mほど上空へ飛び出したせいだ。縹の目が眩む。
(光…白もこんな気持ちだったのかな)
何も見えない中を無重力で浮かぶ中、縹が考える。少し手足が痛む。
順応して見えてきた空を向きながら縹がふっと「ふつうの…かぁ」とつぶやいて笑い、唱える。
「T.A.T.O.O.起動、P.O.N.T.O.・リライト」
唱えながら腰の小刀2本を両手で引き抜き、続ける。
「藍皮書、開け ――」
縹の両手両足に鮮やかで精密な刺青が、表示されたように浮かび上がる。
右手の小刀の鎬を左の二の腕へ、左手の小刀の鎬を右の二の腕へ当てる。
ジュッ…と、焼けた鉄板に落とした水滴のような音がする。
両手を前に振り出し、小刀を両腕から剥がす。
さっきまで縹の両腕で浮かんでいた刺青が鮮やかに小刀に転写され、バチバチと打ちたての鋼のように火花を上げる。
縹はくるりと地面に向きを変え、小刀を構えて頭から落ちる。
出てきた洞窟めがけて。
追いかけてきた白い蛇が洞窟から頭を出した瞬間、その眉間にトン、と縹の小刀がめり込んでゆく。
「おかえりー」
緋が白を抱えて織部のそばに着地する。
「あれが結界だな。何かの通路を守っていたみたいだな」
縹に刺されて痙攣しながら消えてゆく大蛇を見ながら白。
「裏道みたいな感じね。どこに通じていたのかしら…」
結界の蛇が力を失ったせいか、織部がさっそく深部の音をその場で探っている。
「見えないな」
白が洞窟を見ながら目を細める。世界の果てまで見える目で。
「天帝の目を以てしても見えない場所というのは、問題ね。地の綻びなのかしら」
「だろうな。おかしなものが澱んで、大蛇の結界なんてものが結ばれ出すわけだ」
言いながら白は矢を数本取り出し、構える。
「神技、『一途』」
いま、白の目は見えているのではない。
この弓に張られた一本の糸、神器『白線』は天帝との契約で受けた借り物である。
この糸は世界の全てと繋がり、その振動を白に像として視せている。
何物をも見通すその目を使うたび、白は、逆に自分が未だ何も視えていない事を強く感じていた。
洞の入口めがけて続けざまに放つ。
矢はまるで鳥のように、ゆるやかに方向を変えながら洞に飛び込み消えてゆく。
しばらくして、洞の奥から地鳴りが響きだす。
少しの地震のあと、洞は崩れ去った。
「よし、ここは終わりだ」
「今日中に次の町まで行けるかしらね」
「疲れたー。のんびり野宿しようよ」すっかり普段の縹。
「宿そばの飯屋、うまそうだが」白が彼方を見ながら呟く。
「えー! やっぱり白の目いいなー! 緋ちゃんおぶってー!」
「やだー」
四人は、だらだらと夕暮れ迫る街道に消えていった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

