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第十一章 本戦
第100話 チュートリアル:J・カビラ
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《――って事で東京都攻略者学園トーナメント! 実況はJ・カビラがメインパーソナリティでお送りします! 学園都市ドームは満席で熱気が凄いです! 千客万来とはこのです! クゥ^~! 最高!! この後は開会式に続き、さっそく第一回戦で――》
午前十時。
「ああ! ほらパパ、早く座って! もうすぐオープニングセレモニーよ!」
「分かってるが今日は腹の調子がなぁ……」
「昨日会社仲間とバカみたいにお酒飲んだからバチが当たったのねぇ」
「oh……」
天井窓から朝日が日を指す広めな社宅。そのリビングにあるソファに萌の母、花房 有栖が深々と座り――
《ゲスト解説者は皆さんご存じ、ヤマトサークルの一番槍! 西田メンバーですクゥ^~~!!》
《ヤマトサークルの西田です――》
「会場は満員御礼らしいなぁ! こりゃ大舞台だ!」
萌の父、花房 蓮司が調子の悪い腹部をさすり、有栖の隣へこれまた深々と座った。
「萌ったら大丈夫かなぁ。あの子変に緊張するところあるでしょ?」
「俺たちがいない間、きっと色んな経験をしているはずだ……。我が子を信じて雄姿を見届けようじゃないか……! なあママ」
「パパ……」
「「♡」」
萌が居ればいつもの様にツッコんでいる場面。
テーブルにはつまめる肴に上質なワインボトルにグラス、累々の銘柄が鎮座。
所属する部署は違えど夫婦。息子の晴れ姿を見るためにこの週は夫婦そろって休みを取った。
日本では朝からお酒を飲むのは風土や風習を除き一般的ではないが、朝からワインやシャンパンを口にするヨーロッパ諸国では古くから愛された風習だ。
「乾杯」
「ふふ、乾杯」
コンッ
爽やかなのどごしで始まる休日は、とても優雅なもの。
世界中を飛び回って職務を全うする花房夫妻は、すでに日常の一部として浸透している。
「おお! セレモニーが始まった!」
テレビから流れる映像はめくるめくPV。予選の集大成。選手たちが奮闘する表情や行動、そのすべてがページを捲る様に次々と映し出され、やがてそれらは文字の一部だったと演出。「東京都攻略者学園トーナメント」と大きくタイトルを掲げた。
「……マー○ルみたいだな」
「パパ、偉い人に怒られるわよ」
「怒られるのは運営なんだよなぁ」
くだらない話のさなかでもセレモニーは続いていく。
花火が上がり、会場を盛り上げる演出。
広い広い闘技舞台。それを覆う様に観客席があり、来場者がごった返しになる程の密。
会場二階に設けられたVIPスペースには、日本が誇るヤマトサークルだけではなく、各国の有名サークルも鎮座。言わずもがなスカウト目的な側面もあるが、日本の学生の実力を視察しに来ていた。
闘技舞台を燃えさせ、観客席をバリバリと電撃で網羅するネオンライトのビーム。観客は大いに盛り上がる。
最後には吊られている中央の四方を向く大きなモニターに「東京都攻略者学園トーナメント」と大きく映り、会場全体に効果エフェクトが激しく散らばった。
ワーワーと沸く会場。
しかし、青い空が吹き抜けている天井に、漆黒の帳がおりる。
それを皮切りに沸いたオーディエンスは段々と口を開くのを止め、会場が静かになると、ッバン、と一筋のライトが闘技舞台の中央に点灯。そこには一際ライトを反射する頭部を携えた東京都攻略者学園のドン、ふくよかな校長がいた。
誰もがその光沢に注目する中、息を吸った校長。
「……これより! 東京都攻略者学園トーナメント! 開催の宣言をします!!」
宣言と共に眩しい程の明りが付き、漆黒の帳は嘘の様に晴れ晴天を見せる。
隕石でも落ちた様な大きな大きな歓声。それはテレビを見ている花房夫妻も同様に歓声をあげていた。
「生徒の皆さんは大変頑張った――私も凄く楽しみで――であるからして――」
校長の挨拶が続く。
SNSでは「校長の話が長い!」「ハゲ!」「おっさんデブ」など、日本人の悪癖を凝縮した一言で溢れていた。
《――あ、ハイ。ここでトーナメント表を改めて見てみましょう!》
余りにも長い校長のスピーチに上層部が業を煮やしたのか、巻の指示で入りここでJ・カビラがそう言った。
テレビにはトーナメント表が映っている。
《西園寺 L 颯くん、氷室 雹くん、津田 輝樹くん、戸島 司くん。以上四名が不戦勝&シード扱いで二回戦進出です! クゥ^~!!》
《三年は西園寺くんと上賀澄くん。二年は戸島くん、一年は氷室くんですか……。確かにこの四人の実力は周知のものですからね》
花房夫妻はワインを一口飲む。
「今日は月野くんがいるAブロックと、萌がいるBブロック、合計四戦するんだったよなママ」
「そうね。……まあ三年の颯くんが不戦勝なのは当然の事ね」
「西園寺グループか……。財閥の力が働いて不戦勝と言いたいところだが、彼の実力は折り紙つき。実力で勝ち取ったものだろう」
「……とりあえずBブロック一回戦目よ! 萌の対戦相手はどんな子なの?」
タブレットを操作し、運営公式サイトのプロフィールを見てみる二人。
「津田 輝樹くん、三年だ。身に宿るチャクラ操作に秀でていて忍法を駆使し戦うだってさ。……魔法やら法術、次には忍法ときたか。スキルも色々あるんだねママ」
「戦闘かじってる私に聞くのも良いけど、色々話しちゃうとパパ怒るでしょ? ネタバレだって」
「グヌヌ! その塩梅が難しいんだよなぁ……!」
トーナメント表がテレビから消え、J・カビラと西田メンバーがお互いの意見を話している。
《――様々な声を頂いく中、なぜ花房くんがシード権じゃないんだと多くの声が上がっていますが》
《それも当然ですね。戸島くんも魔法を行使する実力はありますが、萌くん、彼ほど名実とも実力があり有名な学園の生徒はいないですから》
《ええ》
《なぜシード権が彼じゃないのか。答えは簡単です。「強い奴と闘いたい」――彼はそう言ってシード権を放棄しました》
西田メンバーが代弁して言ったこのワードは、少しだけSNSのトレンドに入った。
《クゥ^~!! カプ○ンが怒って来そうな謳い文句ですねぇ!》
後にカプコンの株価が少しだけ上がる事となる。
「おお! ついに始めるぞ!」
《選手入場です! クゥ^~!!》
会場が暗くなると、すぐに青い稲妻が会場全体に発生。稲妻の向かう先は西の入り口。
薄く蒸気が漂う場から出てきたのは、ジャージ姿の月野 進太郎。
「……よし」
余裕綽々通常運転。黄色の線が腕に浮かび上がると、ガントレットが出現。装着完了。
「キャー月野くんよパパ!」
「がんばれー!!」
中央大画面には「二年Bクラス 月野 進太郎」と大量に折り重なった鉄の背景を背にデカデカと宣伝。
「進太郎ーーーー!! ファイトーーーー!!」
一際大きな女性の声援が会場に響いた。
そして闘技舞台を包んでいた青い稲妻が赤に変わり、東側の入り口に集中。
薄く蒸気が漂う場から出てきたのは、肘、膝にガード。伸縮性のある薄い胸当てを着こんだ生徒、佃 満が登場した。
沸くオーディエンス。
例の如く大画面には「二年Dクラス 佃 満」と無数の斬撃の線を背景に大きく宣伝。
「よろしくー! がんばりまーす!」
中央付近で待っている月野に向かう間にも、オーディエンスに手を振って声援に応えた佃。
そして相まみえる二人。
「バリア纏うから服装自由だけど、ジャージなんだね」
「お前はダンジョンに入る時の服装か」
「いいでしょコレ! 意外と動きやすいんだよ」
一言二言話すと、大柄な男が間に入る。
「二人とも、準備はいいか」
レフェリーを任されたのは銀獅子のリーダー、獅童 猛。
獅童の問いに月野は構え、佃は得物のナイフを手に取り、低く構えた。
――そして。
「はじめええええええええええ!!!!」
開始の合図。獅童は手で空を斬った。
「「――ッ!!」」
跳躍し握った拳を振りかざす月野。
それに対応しようとナイフをチラつかせる佃。
予選からの因縁が今、ぶつかり合う。
午前十時。
「ああ! ほらパパ、早く座って! もうすぐオープニングセレモニーよ!」
「分かってるが今日は腹の調子がなぁ……」
「昨日会社仲間とバカみたいにお酒飲んだからバチが当たったのねぇ」
「oh……」
天井窓から朝日が日を指す広めな社宅。そのリビングにあるソファに萌の母、花房 有栖が深々と座り――
《ゲスト解説者は皆さんご存じ、ヤマトサークルの一番槍! 西田メンバーですクゥ^~~!!》
《ヤマトサークルの西田です――》
「会場は満員御礼らしいなぁ! こりゃ大舞台だ!」
萌の父、花房 蓮司が調子の悪い腹部をさすり、有栖の隣へこれまた深々と座った。
「萌ったら大丈夫かなぁ。あの子変に緊張するところあるでしょ?」
「俺たちがいない間、きっと色んな経験をしているはずだ……。我が子を信じて雄姿を見届けようじゃないか……! なあママ」
「パパ……」
「「♡」」
萌が居ればいつもの様にツッコんでいる場面。
テーブルにはつまめる肴に上質なワインボトルにグラス、累々の銘柄が鎮座。
所属する部署は違えど夫婦。息子の晴れ姿を見るためにこの週は夫婦そろって休みを取った。
日本では朝からお酒を飲むのは風土や風習を除き一般的ではないが、朝からワインやシャンパンを口にするヨーロッパ諸国では古くから愛された風習だ。
「乾杯」
「ふふ、乾杯」
コンッ
爽やかなのどごしで始まる休日は、とても優雅なもの。
世界中を飛び回って職務を全うする花房夫妻は、すでに日常の一部として浸透している。
「おお! セレモニーが始まった!」
テレビから流れる映像はめくるめくPV。予選の集大成。選手たちが奮闘する表情や行動、そのすべてがページを捲る様に次々と映し出され、やがてそれらは文字の一部だったと演出。「東京都攻略者学園トーナメント」と大きくタイトルを掲げた。
「……マー○ルみたいだな」
「パパ、偉い人に怒られるわよ」
「怒られるのは運営なんだよなぁ」
くだらない話のさなかでもセレモニーは続いていく。
花火が上がり、会場を盛り上げる演出。
広い広い闘技舞台。それを覆う様に観客席があり、来場者がごった返しになる程の密。
会場二階に設けられたVIPスペースには、日本が誇るヤマトサークルだけではなく、各国の有名サークルも鎮座。言わずもがなスカウト目的な側面もあるが、日本の学生の実力を視察しに来ていた。
闘技舞台を燃えさせ、観客席をバリバリと電撃で網羅するネオンライトのビーム。観客は大いに盛り上がる。
最後には吊られている中央の四方を向く大きなモニターに「東京都攻略者学園トーナメント」と大きく映り、会場全体に効果エフェクトが激しく散らばった。
ワーワーと沸く会場。
しかし、青い空が吹き抜けている天井に、漆黒の帳がおりる。
それを皮切りに沸いたオーディエンスは段々と口を開くのを止め、会場が静かになると、ッバン、と一筋のライトが闘技舞台の中央に点灯。そこには一際ライトを反射する頭部を携えた東京都攻略者学園のドン、ふくよかな校長がいた。
誰もがその光沢に注目する中、息を吸った校長。
「……これより! 東京都攻略者学園トーナメント! 開催の宣言をします!!」
宣言と共に眩しい程の明りが付き、漆黒の帳は嘘の様に晴れ晴天を見せる。
隕石でも落ちた様な大きな大きな歓声。それはテレビを見ている花房夫妻も同様に歓声をあげていた。
「生徒の皆さんは大変頑張った――私も凄く楽しみで――であるからして――」
校長の挨拶が続く。
SNSでは「校長の話が長い!」「ハゲ!」「おっさんデブ」など、日本人の悪癖を凝縮した一言で溢れていた。
《――あ、ハイ。ここでトーナメント表を改めて見てみましょう!》
余りにも長い校長のスピーチに上層部が業を煮やしたのか、巻の指示で入りここでJ・カビラがそう言った。
テレビにはトーナメント表が映っている。
《西園寺 L 颯くん、氷室 雹くん、津田 輝樹くん、戸島 司くん。以上四名が不戦勝&シード扱いで二回戦進出です! クゥ^~!!》
《三年は西園寺くんと上賀澄くん。二年は戸島くん、一年は氷室くんですか……。確かにこの四人の実力は周知のものですからね》
花房夫妻はワインを一口飲む。
「今日は月野くんがいるAブロックと、萌がいるBブロック、合計四戦するんだったよなママ」
「そうね。……まあ三年の颯くんが不戦勝なのは当然の事ね」
「西園寺グループか……。財閥の力が働いて不戦勝と言いたいところだが、彼の実力は折り紙つき。実力で勝ち取ったものだろう」
「……とりあえずBブロック一回戦目よ! 萌の対戦相手はどんな子なの?」
タブレットを操作し、運営公式サイトのプロフィールを見てみる二人。
「津田 輝樹くん、三年だ。身に宿るチャクラ操作に秀でていて忍法を駆使し戦うだってさ。……魔法やら法術、次には忍法ときたか。スキルも色々あるんだねママ」
「戦闘かじってる私に聞くのも良いけど、色々話しちゃうとパパ怒るでしょ? ネタバレだって」
「グヌヌ! その塩梅が難しいんだよなぁ……!」
トーナメント表がテレビから消え、J・カビラと西田メンバーがお互いの意見を話している。
《――様々な声を頂いく中、なぜ花房くんがシード権じゃないんだと多くの声が上がっていますが》
《それも当然ですね。戸島くんも魔法を行使する実力はありますが、萌くん、彼ほど名実とも実力があり有名な学園の生徒はいないですから》
《ええ》
《なぜシード権が彼じゃないのか。答えは簡単です。「強い奴と闘いたい」――彼はそう言ってシード権を放棄しました》
西田メンバーが代弁して言ったこのワードは、少しだけSNSのトレンドに入った。
《クゥ^~!! カプ○ンが怒って来そうな謳い文句ですねぇ!》
後にカプコンの株価が少しだけ上がる事となる。
「おお! ついに始めるぞ!」
《選手入場です! クゥ^~!!》
会場が暗くなると、すぐに青い稲妻が会場全体に発生。稲妻の向かう先は西の入り口。
薄く蒸気が漂う場から出てきたのは、ジャージ姿の月野 進太郎。
「……よし」
余裕綽々通常運転。黄色の線が腕に浮かび上がると、ガントレットが出現。装着完了。
「キャー月野くんよパパ!」
「がんばれー!!」
中央大画面には「二年Bクラス 月野 進太郎」と大量に折り重なった鉄の背景を背にデカデカと宣伝。
「進太郎ーーーー!! ファイトーーーー!!」
一際大きな女性の声援が会場に響いた。
そして闘技舞台を包んでいた青い稲妻が赤に変わり、東側の入り口に集中。
薄く蒸気が漂う場から出てきたのは、肘、膝にガード。伸縮性のある薄い胸当てを着こんだ生徒、佃 満が登場した。
沸くオーディエンス。
例の如く大画面には「二年Dクラス 佃 満」と無数の斬撃の線を背景に大きく宣伝。
「よろしくー! がんばりまーす!」
中央付近で待っている月野に向かう間にも、オーディエンスに手を振って声援に応えた佃。
そして相まみえる二人。
「バリア纏うから服装自由だけど、ジャージなんだね」
「お前はダンジョンに入る時の服装か」
「いいでしょコレ! 意外と動きやすいんだよ」
一言二言話すと、大柄な男が間に入る。
「二人とも、準備はいいか」
レフェリーを任されたのは銀獅子のリーダー、獅童 猛。
獅童の問いに月野は構え、佃は得物のナイフを手に取り、低く構えた。
――そして。
「はじめええええええええええ!!!!」
開始の合図。獅童は手で空を斬った。
「「――ッ!!」」
跳躍し握った拳を振りかざす月野。
それに対応しようとナイフをチラつかせる佃。
予選からの因縁が今、ぶつかり合う。
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