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第十二章 有りし世界
第123話 チュートリアル:依頼
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「……護衛依頼ですか?」
「はい。こちらが私どもが用意した依頼の詳細です」
そう言って鞄からファイルが出され、優星が見やすいようにコーヒーカップが二つ置かれたテーブルにそっと置かれた。
ファイルを開く優星。
スラスラと流し読みで読もうとした時だった。
一つの項目が目につく。
「危険度ランクが載っていないのですが」
「こちらの依頼、危険度ランクは度外視しています」
「……そう……ですか……」
危険度ランク――文字通りそれは国連が正式に依頼したモノの危険度を指す。Eランク~Sランクまであり、依頼の難易度が高く、生存率が低くなるにつれランクが上がっていく。
大小問わずサークルには国連が用意した依頼を受ける事が可能。ダンジョンに自生する植物の採取、モンスターがダンジョンから脱走するダンジョンブレイク。それを未然に防ぐ間引き等、様々な依頼がある。
それらをサークルが自発的に受けるか、こうして国連から依頼と言う形で来ることもある。
東京都攻略者学園トーナメント。招待された優星のサークル――ファイブドラゴンはメンバー共々満喫し、個人的に応援していた友人の花房 萌の敗退を惜しむも、学勉に勤しむ学生の力に驚愕し、優星は満足したトーナメントだった。
不動 優星、大金星。
マーメイドレイドでの功績を称えられた結果、国連から心ばかりの賞金を貰ったサークルファイブドラゴン。心ばかりと謳った賞金は開いた顎が閉まらないほどの金額。その一部を使い繁華街で念願の事務所を構えたのだった。
トーナメントが終わった翌日の金曜日。
「みんな時間にルーズだな」
構えたばかりの事務所を早朝から荷解きする優星。相変わらず自由奔放なチームメイトに一人愚痴を溢し、段ボールが積まれている事務所でコーヒーを飲んでいた時に来客として来たのが国連に属する女性――四十物 静香だった。
「……」
要点だけを見てペラペラと捲る優星。
ため息を付きコーヒーを一口飲んだ。
「四十物さん。この護衛の依頼はあまりにも不気味すぎます」
「……と言うと」
「度外視された危険度、護衛対象が詳細不明な用人に加え、この依頼は俺たちファイブドラゴンの指名ではなくあくまで俺個人への指名だという事です」
真っ直ぐ射貫く優星の眼。その眼を受けても眉一つ動かさない四十物はあえて押し黙った。
(……この依頼、あまりにも――)
護衛依頼なのにも関わらず護衛対象がシークレット。サークルとして何度も受けて見慣れた依頼書に見たことの無い危険度。そしてサークルとしてではなく優星個人に依頼された件。
二秒にも満たない思考で考えつく答え。
(……君主絡みか)
自分を特別視する要素。思い当たるのはそれしかないと思った優星。
目を閉じながら再度コーヒーを飲んだ優星。カップを置き、四十物に目を向けた。
「ルー――」
「非常に危険を伴う可能性がある依頼です。そして不動さんだからこその選抜だと受け止めて欲しい。我々国連はそうお伝えします」
多くは言わせない。そして多くは語らない。
とって付けた甘い賛美にも似た言い様。このやり取りで十分だと優星は思った。
「……ちなみに何ですが、もし俺が依頼を断ったら?」
「強制的に攻略者の権限を剥奪、そしてサークルファイブドラゴンは法的処置を持って解散する事になりますね」
蟹の髪型を撫で困惑する蟹。
「それ受ける以外選択肢無いじゃないか……。危険と言ってるのに無理やり呼ぶのって脅しですよね」
「ええ脅してますね! それ程に不動さんのお力が必要だと受け取ってください!」
困り果て一周回って笑う優星に、同じく笑顔の四十物。
「えーとぉ」
ポンポンと慣れた操作でタブレット端末を笑顔で操作する四十物。
「報酬はこのくらいですねぇ」
そう言ってタブレットをこれ見よがしに見せた四十物。
「ッッ~~!?!?」
蟹、まさかのエ○ル顔。同じジャ○プ作品だからと言って程がある。
「あ、これは前報酬で、依頼が無事に成功したあかつきにはこれくらいですかねぇ」
「」
不動優星。驚きのあまり幽体離脱。
昇りに昇った幽体が昇天しかけた所、地球ん中でオゾンより下なら問題無いと踏ん張り無事帰還。これには満足町の不満足期を乗り越えた満足もサティスファクション。おもわずハーモニカが奏でられる。
「引き受けます!」
二つ返事で依頼を受けた。
それから一週間後の金曜日。
この依頼に関する事は他言無用となっており、一応はサークルメンバーに友人と出かけると一報。恋人兼ファイブドラゴンのメンバーであるアキラには普段より一層の愛をそそいだ結果、感づいたアキラは優星に無事で帰る様に思いを馳せた。
明朝に不動宅へ迎えの車が。
これ見よがしの高級車。しかも黒ガラスが厚い防弾性。
(まるで大統領の気分だな……)
車に乗り込むと中には護衛依頼を提示してきた四十物静香が居た。軽く挨拶すると同時に乗り込む。
「……黒ガラス。景色を見せないと?」
「これから向かうのは国連が管理する機密ですからねぇ。攻略者の中には特殊な眼を持つ方も居るので、そういった方には目隠しもしますよ?」
「……そうですか」
短いやり取りをしつつ車は移動。VIP待遇な車内は広く、中には冷蔵庫も完備。
「てりやきバーガーいりますか?」
「……朝食は食べてきました」
車内に充満する美味しそうな匂い。仲良くナゲットとポテトをシェアする二人だが、世間話も束の間、二時間強で車が停止した。
「あ、着いたようですね」
(……停止直前に感じた上り坂を走る浮遊感。これは……)
四十物が先に降り続く優星。
車から降り立つと驚愕した。
「ッ!?」
広い広い何処かの中。天井に見えるのは強固な素材の骨組み。重い駆動音を立てながら閉まる搭載口。その光景を見て優星は思った。
(軍用の輸送機か……!?)
戦争映画、アクションやアドベンチャー映画によく出てくる船内に酷似。優星の予想は当たっていた。
「おいおい~、あんたが来たって事は俺の予想は当たってたって事だな」
聞き覚えのある声。
優星は声の方へ振り返った。
「っよ! 久しぶりだな」
「に、西田メンバー……!」
ヤマトサークルの一番槍。西田 信彦、登場。
報道されたテレビでも記憶に新しいトーナメント解説者の時も、一切崩さない軽装姿。シャ○・アズナブルが赤いように、カズ○ーザーも赤いように、西田もそれに乗っ取りいつもの軽装姿だった。
「まさか西田メンバーが……。いや。当然ではあるか」
かくも珍しくない。西田が予想通りだと言った事に紐づき、優星の予想が当たった。二人の特別な共通点はたった一つ。君主の家臣と会話、戦闘をした経験だった。
思わず息を飲んだ優星。
「とりあえず離陸してから飯でも食おうぜ。人生最後の飯になるかもなぁ~」
「嫌な事言わないで下さいよ……」
ケラケラと笑う西田に着いて行く優星。
一つ上の階で椅子に座りシートベルト。アナウンスがされ、加速度と共にGが体感を襲う。
離陸しシートベルトを外せる様になると迷いなく西田が立ち上がった。
ついて行く優星。
機内を移動するとこれまた豪華な内装。場違いだと内心思いつつも、西田の提案通りバーのカウンターで食事をした。
今回の依頼の話だったり世間話だったりを交わしていると、四十物が姿を現わし二人にジュースのパックを持って来た。
「四十物さん、これは?」
「ドリンクです!」
「間違ってないが笑顔で飲める物じゃねーぞ」
笑顔で手渡してきた四十物に引きつる印象の顔をする西田。何のジュースかと疑問を出す蟹。
「これを飲むとあら不思議。メタ○ギアで言うところのらりるれろ現象だ。魔法か魔術かが練り込まれてるらしくてな、国連が指定した守秘義務を許可が出るまで口が裂けても言えなくなる。まぁ喉がつっかえる感じ」
そう言って勢いよく飲む西田。喉仏を唸らせ飲み切る。
「ふぅ。味は悪くないのがさらにイラつくポイントだな」
「……飲みなれてるんですね」
「まぁな。俺って有能だから。ッハハ」
西田の話を半分聞き流しながら優星もぐいと飲んだ。
(……炭酸抜きスプライトみたいな味だ)
二人を乗せた輸送機は進む。
この先を占う様な雨雲を目指して。
「はい。こちらが私どもが用意した依頼の詳細です」
そう言って鞄からファイルが出され、優星が見やすいようにコーヒーカップが二つ置かれたテーブルにそっと置かれた。
ファイルを開く優星。
スラスラと流し読みで読もうとした時だった。
一つの項目が目につく。
「危険度ランクが載っていないのですが」
「こちらの依頼、危険度ランクは度外視しています」
「……そう……ですか……」
危険度ランク――文字通りそれは国連が正式に依頼したモノの危険度を指す。Eランク~Sランクまであり、依頼の難易度が高く、生存率が低くなるにつれランクが上がっていく。
大小問わずサークルには国連が用意した依頼を受ける事が可能。ダンジョンに自生する植物の採取、モンスターがダンジョンから脱走するダンジョンブレイク。それを未然に防ぐ間引き等、様々な依頼がある。
それらをサークルが自発的に受けるか、こうして国連から依頼と言う形で来ることもある。
東京都攻略者学園トーナメント。招待された優星のサークル――ファイブドラゴンはメンバー共々満喫し、個人的に応援していた友人の花房 萌の敗退を惜しむも、学勉に勤しむ学生の力に驚愕し、優星は満足したトーナメントだった。
不動 優星、大金星。
マーメイドレイドでの功績を称えられた結果、国連から心ばかりの賞金を貰ったサークルファイブドラゴン。心ばかりと謳った賞金は開いた顎が閉まらないほどの金額。その一部を使い繁華街で念願の事務所を構えたのだった。
トーナメントが終わった翌日の金曜日。
「みんな時間にルーズだな」
構えたばかりの事務所を早朝から荷解きする優星。相変わらず自由奔放なチームメイトに一人愚痴を溢し、段ボールが積まれている事務所でコーヒーを飲んでいた時に来客として来たのが国連に属する女性――四十物 静香だった。
「……」
要点だけを見てペラペラと捲る優星。
ため息を付きコーヒーを一口飲んだ。
「四十物さん。この護衛の依頼はあまりにも不気味すぎます」
「……と言うと」
「度外視された危険度、護衛対象が詳細不明な用人に加え、この依頼は俺たちファイブドラゴンの指名ではなくあくまで俺個人への指名だという事です」
真っ直ぐ射貫く優星の眼。その眼を受けても眉一つ動かさない四十物はあえて押し黙った。
(……この依頼、あまりにも――)
護衛依頼なのにも関わらず護衛対象がシークレット。サークルとして何度も受けて見慣れた依頼書に見たことの無い危険度。そしてサークルとしてではなく優星個人に依頼された件。
二秒にも満たない思考で考えつく答え。
(……君主絡みか)
自分を特別視する要素。思い当たるのはそれしかないと思った優星。
目を閉じながら再度コーヒーを飲んだ優星。カップを置き、四十物に目を向けた。
「ルー――」
「非常に危険を伴う可能性がある依頼です。そして不動さんだからこその選抜だと受け止めて欲しい。我々国連はそうお伝えします」
多くは言わせない。そして多くは語らない。
とって付けた甘い賛美にも似た言い様。このやり取りで十分だと優星は思った。
「……ちなみに何ですが、もし俺が依頼を断ったら?」
「強制的に攻略者の権限を剥奪、そしてサークルファイブドラゴンは法的処置を持って解散する事になりますね」
蟹の髪型を撫で困惑する蟹。
「それ受ける以外選択肢無いじゃないか……。危険と言ってるのに無理やり呼ぶのって脅しですよね」
「ええ脅してますね! それ程に不動さんのお力が必要だと受け取ってください!」
困り果て一周回って笑う優星に、同じく笑顔の四十物。
「えーとぉ」
ポンポンと慣れた操作でタブレット端末を笑顔で操作する四十物。
「報酬はこのくらいですねぇ」
そう言ってタブレットをこれ見よがしに見せた四十物。
「ッッ~~!?!?」
蟹、まさかのエ○ル顔。同じジャ○プ作品だからと言って程がある。
「あ、これは前報酬で、依頼が無事に成功したあかつきにはこれくらいですかねぇ」
「」
不動優星。驚きのあまり幽体離脱。
昇りに昇った幽体が昇天しかけた所、地球ん中でオゾンより下なら問題無いと踏ん張り無事帰還。これには満足町の不満足期を乗り越えた満足もサティスファクション。おもわずハーモニカが奏でられる。
「引き受けます!」
二つ返事で依頼を受けた。
それから一週間後の金曜日。
この依頼に関する事は他言無用となっており、一応はサークルメンバーに友人と出かけると一報。恋人兼ファイブドラゴンのメンバーであるアキラには普段より一層の愛をそそいだ結果、感づいたアキラは優星に無事で帰る様に思いを馳せた。
明朝に不動宅へ迎えの車が。
これ見よがしの高級車。しかも黒ガラスが厚い防弾性。
(まるで大統領の気分だな……)
車に乗り込むと中には護衛依頼を提示してきた四十物静香が居た。軽く挨拶すると同時に乗り込む。
「……黒ガラス。景色を見せないと?」
「これから向かうのは国連が管理する機密ですからねぇ。攻略者の中には特殊な眼を持つ方も居るので、そういった方には目隠しもしますよ?」
「……そうですか」
短いやり取りをしつつ車は移動。VIP待遇な車内は広く、中には冷蔵庫も完備。
「てりやきバーガーいりますか?」
「……朝食は食べてきました」
車内に充満する美味しそうな匂い。仲良くナゲットとポテトをシェアする二人だが、世間話も束の間、二時間強で車が停止した。
「あ、着いたようですね」
(……停止直前に感じた上り坂を走る浮遊感。これは……)
四十物が先に降り続く優星。
車から降り立つと驚愕した。
「ッ!?」
広い広い何処かの中。天井に見えるのは強固な素材の骨組み。重い駆動音を立てながら閉まる搭載口。その光景を見て優星は思った。
(軍用の輸送機か……!?)
戦争映画、アクションやアドベンチャー映画によく出てくる船内に酷似。優星の予想は当たっていた。
「おいおい~、あんたが来たって事は俺の予想は当たってたって事だな」
聞き覚えのある声。
優星は声の方へ振り返った。
「っよ! 久しぶりだな」
「に、西田メンバー……!」
ヤマトサークルの一番槍。西田 信彦、登場。
報道されたテレビでも記憶に新しいトーナメント解説者の時も、一切崩さない軽装姿。シャ○・アズナブルが赤いように、カズ○ーザーも赤いように、西田もそれに乗っ取りいつもの軽装姿だった。
「まさか西田メンバーが……。いや。当然ではあるか」
かくも珍しくない。西田が予想通りだと言った事に紐づき、優星の予想が当たった。二人の特別な共通点はたった一つ。君主の家臣と会話、戦闘をした経験だった。
思わず息を飲んだ優星。
「とりあえず離陸してから飯でも食おうぜ。人生最後の飯になるかもなぁ~」
「嫌な事言わないで下さいよ……」
ケラケラと笑う西田に着いて行く優星。
一つ上の階で椅子に座りシートベルト。アナウンスがされ、加速度と共にGが体感を襲う。
離陸しシートベルトを外せる様になると迷いなく西田が立ち上がった。
ついて行く優星。
機内を移動するとこれまた豪華な内装。場違いだと内心思いつつも、西田の提案通りバーのカウンターで食事をした。
今回の依頼の話だったり世間話だったりを交わしていると、四十物が姿を現わし二人にジュースのパックを持って来た。
「四十物さん、これは?」
「ドリンクです!」
「間違ってないが笑顔で飲める物じゃねーぞ」
笑顔で手渡してきた四十物に引きつる印象の顔をする西田。何のジュースかと疑問を出す蟹。
「これを飲むとあら不思議。メタ○ギアで言うところのらりるれろ現象だ。魔法か魔術かが練り込まれてるらしくてな、国連が指定した守秘義務を許可が出るまで口が裂けても言えなくなる。まぁ喉がつっかえる感じ」
そう言って勢いよく飲む西田。喉仏を唸らせ飲み切る。
「ふぅ。味は悪くないのがさらにイラつくポイントだな」
「……飲みなれてるんですね」
「まぁな。俺って有能だから。ッハハ」
西田の話を半分聞き流しながら優星もぐいと飲んだ。
(……炭酸抜きスプライトみたいな味だ)
二人を乗せた輸送機は進む。
この先を占う様な雨雲を目指して。
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