俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
155 / 288
第十五章 階段を上る

第155話 チュートリアル:ハッキリ

しおりを挟む
 ~~お昼時。

「やーーー」

 ――ぽちゃ……

「――はーい! 美人お姉さんの女神でーす! (^^)vブイ!」

「わー!」

 お昼時。木こりの小年はボロボロのいつもの斧を湖畔に投げ込む。それが二人の決まった合図でした。

 出会ったあの日から、木こりの少年は調子よく木を伐採し、休憩がてら足繫く通うのです。

「じゃあ、言葉の練習、できるかな?」

「わーい!」

 言葉も舌足らずの純粋な少年。発育の遅れた理由はとても酷い境遇故の運命。ふくよかな女性に買われ今まで生きていました。

 この可哀そうな少年を助けたい。

(あ~^笑顔が可愛い♡ その笑顔でご飯三杯はイケる♡ 今日もクンカクンカするぅう!)

「ええとぉ……」

(今すぐペロペロしたい♡ あの耳たぶをテカテカになるくらいペロペロしたい♡)

 女神様は慈愛に満ちた顔で少年を見るのです。

 それからというもの、過行く春。

「じゃあ、今日は魔術を教えちゃうよ?」

「わーい!」

 幕が開けた夏。

「風よ!」

 ――ビュッ!! バキバキィ!!

「おおおお! 簡単に木が倒れたねぇ!」

「女神さまのおかげさまです!」

 色んな事を分り始めた秋。

「――も゛う我慢できない゛い゛!! ボクくんは星の数を数えていればいいのよ♡」

「ううぅぅぅぅ! 女神さま、ボク怖いよぉ……」

「あぁあぁあぁ昇ってくる昇ってくるぅう♡ 精通したばかりの青髪美少年の純粋な心を弄んで信頼されてから一気に襲い掛かるこの背徳感♡♡ 恐怖心で子孫を残そうとする本能故のバキバキ美少年お○○○ォ♡♡ オ゛オ゛♡ アクメくるぅ♡ 美女お姉さん女神のショタ喰いキチゲマックスなる゛ううう♡ ショタお○○○でアクメくるぅううううううううう♡♡♡♡♡♡♡♡♡――」

 何か失った冬。

 少年は悪い女神様に食べられてしまうのです。

 怖かったね! 少年!

「わああああああん!」


 女神様に出会ってから春が訪れました。

「おいクソガキ。ちったぁ使い物になってきたじゃねぇか」

「ありがとう……ございます……」

「ッへ。まったく誰がこいつに言葉を教えたんだか……。いいか坊主。姉御のお気に入りだからって調子ずくなよ? 姉御を怒らせたら手が付けられねぇんだ」

 男が暴力をふるわなくなったのはちゃんと仕事をこなした結果です。木こりの仕事を全うすれば、固いパンは柔らかいパンにも変わっていきます。

「はむ……」

 魔術を教えてくれた女神様に感謝する少年でした。

 そして夜。

 今日もこの時間がやってきたのです。

 ――コンコンコン。

 ノックが三回。それがルール。

「入りな」

「失礼します……」

 部屋へと入り、そっとドアを閉める少年。

「……」

 鍵はかけませんでした。

「最近調子が良い様じゃないかい? 男共も機嫌がいいのがその証拠だよぉ」

「ありがとう、ございます」

 桃色のカーテンに写る影。一年前とは比べ物にならないほど、ふくよかさを増した女性がそこにいました。

「さぁ! 今日もシテもらおうかねぇ」

「……」

 桃色のカーテンには脚を広げる影。

 いつも通りの光景。

「……ん? どうしたんだい」

 うつむき動かない少年は。

「早くおし! このウスノロ!」

 心底。

「もう、舐めたくないです……」

 気持ち悪かった。

「――あ゛?」

 低い低い声。部屋の温度が下がるのを感じた少年は、身を護る様に片腕を触るのです。

「今、なんて言ったんだい。もう一度、ハッキリ喋りなさい」

 少年が聞いていた猫撫で声の濁声が、今は恐ろしく重く響く声へと変貌しています。

 ――ハッキリと喋りなさい。

 そう問われた少年は、ハッキリと言うのです。

「舐めたくない!」

「なぁんだと!!」

「くさい!」

「くさ!?」

「汚い!」

「き――!?」

「綺麗じゃない!」

「っく!? 言わせておけばあああああ!!」

 ものの一瞬でカーテンが畳まれると、伸びてきた太い手が少年の綺麗な青髪を乱暴に掴むのでした。

「いいかい!! 身寄りのないあんたを奴隷商から買ったのはあたしだよぉ!? あんたはあたしの物なんだよぉ!!」

 飛んだ唾が少年の顔にへばりつく。

「他のガキどもと違って従順だと思って可愛がってたのにこの仕打ちかい!? ハッキリしすぎなんだよこのおバカ!!」

「ううぅぅぅぅ!」

 純粋な少年は戸惑いました。

 ハッキリ言えと言われてハッキリ言ったのに、優しかったふくよかな女性はますます怒鳴る始末。少年の心を曇らせるのです。

「ううぅぅぅぅくさい!」

「まだ言うかい!?」

「息くさい!!」

「」

 女性は何も言い返せません。

 事実なのです。

「ええい!!」

 ――バチン!

「!?」

 突然、痺れをきたした女性は少年の頬を叩くのです。

「この恩知らずが!」

 ――バチン!

「誰のおかげで食えてると思ってるんだい!!」

 ――バチン!

「あんたはあたしの物!!」

 ――バチン!

「所有物なんだよ!!」

 ――バチン!

 何度も何度も。

 ――バチン!

 何度も何度も頬を叩かれるのです。

 少年は苦痛に打ちひしがれていました。

 だからでしょう。

「――嫌!」

「あ! 待てクソガキ!」

 やっとの思いで女性の部屋を飛び出したのは。

「誰か!! あのクソガキが逃げ出したよ!! 速く追いかけろおぉおお!!」

 使い古した斧を持ち出し、ひたすら走る少年。

「――いたぞ!」

「あそこだ!!」

「嫌!!」

 悪意ある男たちが少年を追いかけます。

 額から汗が流れ、握った斧が汗で滑りそうになり、息も切れます。

 でも少年は走り続けました。

 後ろから追手が迫っていても、少年は走り続けました。

 そして――

「むー!」

 少年だけが知っている――知っていた湖畔に辿り着きます。

「ックソ! はぁ、はぁ、とんでもなく逃げ足が早えガキだな」

「アニキぃ、しんどいッス」

「おいクソガキ! 俺の忠告を無下にしやがって!」

 追手の男たちがぞろぞろと追いついて来ました。

 少年は岩場で微動だにせず、しっかりと斧を握るのです。

「――おいクソガキ! 覚悟はできてるんだろうねぇ!!」

 ふくよかな女性、三人がかりでおぶられ遅れて登場。

 おぶった男たちは息も絶え絶えです。

「むー」

 絶体絶命。

 男たちに背を向けた少年は、迷わず斧を湖畔に投げ入れるのでした。

「っへ、所詮はガキか。諦めがついた――」

 瞬間、二つの月明かりが集約したように、湖畔の中心に光が射すのでした。

 まぁなんてことでしょう。

 水の中から純白のローブを羽織った絹の様な肌の美しい女性が現れるのです。後光を放ち宙に浮かぶそれは物語で聞いた女神そのもの。

 ふくよかな女性と男たちは開いた口が塞がりません。

 水に浮かぶ女神はこう言うのです。

「あなた達が手を出したのは私の少年ですか? それとも私が手を出したお気にの少年を襲ったのはあなた達ですか?」

 誰も何も答えれません。女神の言葉が理解できないからです。

「むぅぅ……」

「可哀そうに、あのクソババアがクッサイ○○○をボクくんに宛がったのね。……だから妙に慣れてたのか……」

 笑顔で毒づく女神様。

「――おお、女神さまが降臨なされた……!」

 ふくよかな女性が跪く。

「女神様! どうかあたしを世界一綺麗な女に変えて下さい! それと世界一大金持ちにさせて下さい! それと美男子に――」

 身の程を知らない願いを傲慢にも要求する女性。

(いや何言ってんだ姉御……)

(絶対無理だろ)

 その光景を男たちはドン引きで見守るのでした。

 当然女神は回答を下すのです。

「は? 叶える訳ねぇだろバーカ」

 下唇を噛み方眉を器用に上げながらそう言った。

「下等な下衆風情が粋がってんじゃねーよ」

 木々が揺れ、風が起きる。

「これから私とボクくんのドチャエロしっぽりんほんほ夫婦生活が待ってんだよ。お前ら、邪魔」

 感情の無い女神の瞳。

 フィンガースナップ。

「発動。藍嵐タイフーン

「――ぁ」

 この後。世界は嵐によって地形の変更を加えるのでした~~
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...