俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十八章 VS傀儡君主

第200話 チュートリアル:バスター――

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「オラアアア!!」

「――」

 ガントレットパンチがグリーンエッグの顔にボディブロー。顔面が陥没したグリーンエッグはやや不服そうな顔で消滅。

「ブースト!!」

 ――ッドワオ!!

 ロケットパンチが炸裂し、何体もモンスターを倒してから腕に戻って来た。

「ッハ!!」

 倒しても。

「ッ!」

 倒しても。

「オラア!!」

 倒してもキリがない。

 泡沫事件の魚類モンスターの大群を彷彿とさせる勢い。実際には進太郎はホテルでの戦闘がメインだったが、押し寄せる数を目撃し経験している理由で外の状況も想像がついていた。

「はあ!」

「ソード!!」

 バカンスに来ていた攻略者たちが進太郎と同じく奮闘。来ている水着がどうにかなっていしまう恥じらいを捨て、一切の躊躇なくモンスターを倒していた。

「俺たちもいるぜ!!」

「加勢するぞ!!」

 街中に居た攻略者たちも続々と参戦。

 ボトリボトリと無限に落ちてくるモンスターに対し臆さない攻略者たち。

 ほんの少しだけモンスターの進行が弱まると、進太郎の側で歯がゆい思いをしていた姉御肌のまことが勢いよく立ち上がる。

「進太郎! 私の車まで行くよ!!」

「え? ちょ! まこと姉!?」

 爆発によりマリオネットに変えられる人を痛みながらも悔やみ、まことを護衛優先で守っていた進太郎。その対象が自ら移動するもので彼は焦って背中を追う。

「邪魔あ!!」

「むきゅ――」

 襲い来るハンプティダンプティ。ヤクザキックにより消滅。

(ええぇぇ……)

 まさかの蹴り一発でモンスターを仕留めた姉に進太郎はドン引き。ダメージを負っていた個体だったのか、それとも姉の破天荒がそうさせたのか、もう彼には分からない。

 圧されてる攻略者と共にモンスターを倒し、襲われる一般人を助けながら屋台に戻って来た二人。泡沫事件の時と同様に奇跡的に無事だった屋台。

 しかし。

「なッ!!??」

 その後ろに止めてあるワゴン車は側面が凹みサイドミラーが取れていた。

 ――ッブチ!!

 額に青筋を立てるまこと。

「まだまだローン残ってんのにッ!! よくもやってくれたわねぇ!!」

 スイッチ一つで自動開閉するバックドア。後部座席からおもむろに棒を取り出し、腕の力で勢いよくバックドアを閉めた。

 ――ダバン!!

「ふんっ!!」

 息まくまこと。

 車のドアが閉まる音には激しすぎる重音。車体も揺れた。一般女性の力ではそうはならんやろと進太郎は内心ツッコみ、彼女を怒らせない様にしようと固く誓う。

「オラア! クソモンスター共おお!!」

「ちょまこと姉!?」

 ただでさえ掃いて捨てる程居るモンスターに対し、まことはキレ気味で叫ぶ。隣の彼は正気を疑った。

「ぐにょ」

 案の定一体のハンプティダンプティがまことの声に気付きとぽとぽと歩いて来た。

「下がって!!」

 前に出る。

 しかし。

「退きなさい進太郎!」

「ちょ!?」

 アドレナリンが分泌されているのか、大柄の進太郎は容易く肩を引っ張られ後ずさった。

「こんな時の為に自衛免許取ってんのよ!!」

 持っている棒のスイッチを押すと、シャコッ! と両端が伸び、片方の先端が駆動。

「これが!!」

 器用に振り回して両手で構えた。

「――サスマタショックよ!!」

 ――グワッ! ビュイーン!!

 駆動した先端が広がり電流が流れた。

「サスマタショック……!!」

 正式名称:対軽モンスター撃退用携帯式刺股。

 通称、サスマタショック。

 泡沫事件と重なる頃に実施された免許制の講義。それはレベルの低いモンスターに限りではあるが、スキルを持たない一般人が戦闘訓練を重ね、有事に対処するための制度である。

 泡沫事件に歯痒い思いや思うところがあり、凄まじい倍率を勝ち取りまことは去年の冬に免許を取得。

「ぐにょ」

 襲い来るハンプティダンプティ。

「ハアアアア!!」

 太陽の光を反射する柄の長い刺股。

 ――ガシ!

 先端がハンプティダンプティを捕らえ拘束。

「くらえええええ!!」

 ボタンを押す。

 ――ッバリバリバリバリ!!!!

 ショックの名に相応しい高電圧。これには堪らずハンプティダンプティ。

「ぐにょにょにょにょにょ――」

 感電し、痙攣。

 ダメージを負い、露と消えた。

「――やった……?」

「スゲぇ……サスマタで倒せた……」

 必死ゆえに拘束したモンスターが消えた現状に頭が追いつかないまこと。

 徐々に頭が鮮明になっていくと、身の内から歓喜の産声が漏れた。

「やったーーーーー!!」

 年甲斐もなく両腕を上げその場で幾度もジャンプ。文字通り全身で喜びを表した。

「見た進太郎!! お姉ちゃんモンスター倒したよ!!」

「う、うん……みたみた……」

 笑顔を向けられた彼は予想外にも明後日の方向を向く。

 確かに進太郎はモンスターを倒したまことを見た。驚愕した。

 そして確かに見た。飛び跳ねた事でゆさゆさと揺れるまことの胸を。

(これがラッキースケベと言うものか……。眼福だ……)

 彼は高校男児。頬を染めながらも心の中で感謝した。

「ん?」

 向いている方向をよく見ると、まことと同じサスマタを持った人がチラホラといた。見覚えがあると進太郎は思い出すと、正体は海の家で働く従業員たち。意外にも健闘しており、連携を取って確実に一体一体倒していた。

「よーし!! 進太郎、ついてきなさい!!」

「え、ちょ、また!?」

 大人しく避難所に向かって欲しい心情だが、姉の暴走が加速し呆れて物も言えない彼。

「邪魔ああ!!」

「――ブ」

 横から襲ってきたグリーンエッグをヤクザキックで倒すまこと。

(もう蹴った方が早いって言ったら怒るんだろうなぁ……)

 走りながら放ったブーストガントレットを装着し直す進太郎。二人が向かうは果敢に戦う海の家の従業員の戦場。

「くらえ!!」

 ショックを浴びさせ確実にモンスターを倒すのをまじかで目撃。

「みんなお疲れさん!!」

「おう姉ちゃん!! 見ての通り忙しいからトロピカルドリンクは出せないぜ?」

「お姉さんも免許持ってたんですね」

「もちろんよ! うかうかしてられないしね!」

 会話で察せられる仲。休憩時間はトロピカルドリンクを頼むまことは、すでに店長と従業員たちとは仲が良い。

(え、集まって来てる)

 気付けばサスマタを持つ人々が集まり、一個団体にまで成る。

 同じく見渡したまことは頬を吊り上げ、高らかに声を張る。

「よし!! アレやるわよ!!」

「「「オウ!!!」」」

 サスマタ軍団が横一列に並ぶ。

「構えて!!」

 構える。

「連結!!」

 ガチャガチャガチャガチャ――

 サスマタの先端が開き、先端同士が合体・連結。

 一つとなり、大きな大きなサスマタになった。

「直線状に味方ナシ!!」

 確認。指摘。

「発射よーい!!」

 電流がバチバチと迸る。

 そして今こそ。

 全員の心を。

 一つに。

 放て!!

「「「サスマタ!!!」」」

「「「コレダアアアアアアアアアア!!!!!!」」」

 ――ドワオッッ!!

 正式名称:エレキテル・ショックウェーブ・ジェネレイティング・ヴォルテージ。

 対軽モンスター撃退用携帯式刺股を連結させ、複数体の殲滅を目的とした形態である。

 名称は悪ノリで決められたとの裏話。

 放たれた超高圧の電撃集約ビーム。大気を焦がし、放射線上のモンスターを跡形も無く粉砕した。

「「「おおおおおおおお!!!!!!」」」

 歓喜が渦巻くビーチ。攻略者たちにも引きを取たない活躍ぶりに、彼彼女らは称え合った。

 その光景が面白くない人物が一人。

「……ふーん。やるじゃん」

 上空で糸に座り事の成り行きを見ていたカルーディ。

「なんだろう。こっちもだけど、あっちも、そっちも、戦うスキルを持たない人間が無理して頑張ってるなぁ……」

 あっちもそっちも。それは別個体の自身を指す。

「まぁこの場で一番のお気に入りは彼女かなぁ♪」

 唇を舐め下賤な眼で見下す。その眼はまことを見ていた。

「サバサバしてそうな女ってぇ、案外堕としやすいから楽しみなんだよねぇ♪」

 サスマタで一掃されるもゲートからの投下は止まらない。

「おい! 海から来るぞ!!」

 海に落ちたモンスターたちが続々と上がってきた。

 ――キリがない。

 一気に沸いた希望が絶望の現実に突き落とされる。

「ック!!」

 進太郎の涅槃装甲ニルヴァーナ・アーマーが唸りをあげて彼を浮かせる。

 この場で一発の一撃があるのは進太郎の涅槃装甲なのは間違いない。

 しかし、モンスターが蔓延る今の状況ではサスマタコレダーと同様の範囲攻撃が必須。

 もう一手。

(もう一手欲しい!!)

 誰もがそう思った途端。

「――氷靴グラスヒール

 冷気を感じた。

 瞬間。

 ――パッッリィ!!

 大きな範囲でモンスター諸共海が氷漬けになった。

 進太郎は見た。

「ッ!!」

 夏風に揺らぐ眩しい銀髪。細身だが鍛え上げられた肉体。

「君は……一年の、いや、二年の――氷室くん!?」

「ども……」

 二年最強の人物――氷室雹。水着姿で登場
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