悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ

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もう15歳

18

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 さて、クラスメイトですが、扉の隙間から覗き見ていたイングリッド様と、そのお付きの方2人が同じクラスでした。それからイングリッド様のお友達・・・なのか取り巻きなのかは不明な伯爵令嬢2人、子爵令嬢1人と、その他合わせて計22人のクラスです。
 ちなみに1学年3クラスで、どのクラスもだいたい20人前後ですよ。

 殿下の忠告通りにスカートをはいていったおかげか、1限目の歴史の先生には何も言われませんでした。私の全身を値踏みするように見て、なんとも言えない表情をしてはいましたが。
 そして喜ばしいことに、授業内容はチェリ先生にみっちり教え込まれたレベルのようで、ひと安心です。ただ、うろ覚えの人名や、地名、年号を覚え直す必要がありますけれども。

 2限目の算術は、転生者なら余裕の内容。日常生活で利用するくらいの計算なら、何桁だろうとお茶のこさいさいです。欲を言えば、電卓が欲しいところですがね。

 午前の授業後、昨日と同じ目立たないテラス席で、昨日と変わらない昼食を・・・いえ、少し違いました。朝の給仕、胸の名札によるとウェイタル君が、プルプル震えながらも給仕を行ってくれたのです。
 可哀想に。他にも給仕がいるのに、一番若いからか私の担当にされてしまったようでございます。

「ありがとうございます、ウェイタルさん」

 料理を持ってきてくれた時に、名前を呼んで労ってみたら凍りつかれたので、次回からは名前を呼ぶのをやめようと思います。



 午後の選択授業ですが、本日は3限目が武術で、4限目が言語学でございます。
 現在、午後の選択授業は仮登録の状態なので、見学後、自分に合わなければ変更申請をすることができます。

「きゃあああ!! ルーカス様! 尊い!!」
「レオンハルト様!! 愛してる!」

 武術を選択していない令嬢がたの黄色い声援が飛び交う中、ルーカスとレオンが木剣を手に戦っています。ルーカスが剣を選択したのは、前に戦った生徒から「はい」と手渡されたので、使ってみるかという軽い流れですね。
 ルーカスは剣より拳で戦う方が得意なので、大剣使いのレオンに押され気味です。レオンもそれがわかっていますから、胸元のボタンを3つ目まで外し、シャツをズボンから出した状態で、色気を振りまきながら余裕でルーカスを追い詰めていきます。
 いちいちシャツの裾をはためかせて、中をチラ見せするのを止めなさい。免疫のない令嬢がたが魅了されて、すごい事を口走っているではないですか。

「ちっ」

 木剣を弾かれたルーカスが悔し気に顔を歪ませると、レオンの胴を狙って蹴りを放ちました。レオンは後ろへ跳んで距離をとろうとします。そうはさせまいとルーカスが走り寄り、拳を繰り出しました。レオンは不安定な体制のままルーカスへ向かって、木剣を閃かせます。結果、ルーカスの拳はレオンの顔間際で止められ、レオンの木剣はルーカスの首に寸止めされています。

 両者の動きが止まったタイミングで、審判である先生が宣言しました。

「ルーカス・テトラディルは失格! 頭部攻撃は禁止だと言ったろう?」
「あ・・・しまった。」

 普段も決まり手の時はお互い寸止めでやめますからね。レオンは顔面をそうそう狙わせてくれませんし、ついいつも通りやってしまったのでしょう。
 ルーカスはバツが悪そうに拳を引き、その手でひとつに纏めていた髪を解きます。ふるふるっと軽く頭を振ると、天使の輪が煌めくように艶やかな藍色の髪が揺れます。悔しさからか伏せられた瞳がすこし潤んでいて、なんとなく漂う微かな色気を感じ、令嬢がたがほうっとため息を漏らしました。

「・・・なんか負けた気分」

 レオンが不満げに唇を尖らせました。
 貴方の色気はだだ漏れ過ぎて、ありがたみが薄いからです。無意識なのでしょうけど、暑いからといってシャツの前を摘まんでパタパタさせるのはやめなさい。令嬢がたが赤面して視線をそらしていますよ。

「クラウド、次は私たちですね」
「・・・・・・・・・・・・はい。」

 隣に立つクラウドを見上げると、すっっっごい嫌そうな顔で返事をしました。
 往生際が悪いですよ。ジャケットを脱ぐのは諦めてあげたのですから、大人しく私の相手をなさい。

「時間無制限。頭部攻撃、魔法禁止。対戦相手が異性の場合、男子は武装不可だ。両者、準備はいいか?」

 今日の授業内容は「お互いの実力を知ろう!」というオリエンテーリングです。先生の思い付きで、ペアを決めてその相手と1対1で対戦をすることになりました。ほとんどの新入生たちは見学のつもりで鍛錬着を持ってきていませんでしたから、制服のまま戦っています。
 まあ、ゲームでは毎回そうでしたがね。

「よろしくお願いします」
「・・・よろしくお願いいたします」

 私は薙刀の代わりに片方の先端に綿が付いた槍使用者用の長い木の棒を、クラウドは丸腰で斜に構えます。クラウドが視線を落とさないように、私の上半身へ固定しているのを感じ取って、思わずにんまりとしました。
 長年の付き合いで判明したクラウドの弱点。

 それはハニートラップ!

 女性慣れしていないからなのか、露出度が高い服装の時ほど、なぜか私の勝率も高いという事がわかっています。それでもやっと五分五分ですけれども。
 実力を見せ合う場で、王子様方目当ての生徒がほとんどですがギャラリーがいて、女生徒でも目をそらす制服着用。さらに私に有利なハンディキャップ付き。
 少々・・・いえ、かなり大人げないですが、やる以上は勝ちにいきますよ! なにせカーラがラスボスですからね!

「始め!」

 掛け声とともに突きを繰り返してクラウドとの距離を確保します。いくら戦闘特化型のクラウドでも、そう易々と槍の間合いには入ってこられません。
 頭は駄目なので、肩から下を狙って攻撃を繰り出しながら、すり鉢状に観客席が並んだ鍛錬場の、直径100メートル未満ほどの広いリングの上でクラウドを端へ追い詰めていきます。

 クラウドの右肩を狙って突いた時、体を斜めにして避けたクラウドが間合いに入ってきました。引いた棒の持ち手の方を横なぎに払いましたが、捕まれて封じられてしまいます。
 本来ならばここで距離をとるところなのですが、逆にクラウドへ近づきました。棒を間に向き合うかたちになったのを、棒へ膝を乗せて体重をかけることでクラウドの体を前のめり気味にさせます。低くなった顔へ絶えず存在を主張する狂気たちを近付けると・・・クラウドの手が緩んだので、棒に足首をひっかけつつバク転をして距離をとり、再び棒を構えました。

 ちなみにスカートの下には同じ柄の短パンをはいていますから、下着がみえることはありません。
 いえね。そもそもはスカートをひるがえすこと自体がアウトなのですが、はしたなかろうと、嫁入り前だろうと、嫁に行くつもりが全くないので、いいんです!!

「くふふ・・・」

 予想通りの展開ににんまりすると、クラウドが渋い顔をしながら構えました。

 そこから先は、なんというか・・・ラテンダンスのような感じですね。引き寄せられては、離れるを繰り返すような。まあ、クラウドに私を引き寄せているつもりはありませんが。

 クラウドに棒や腕を捕まれたら、引き寄せられるようにして彼の懐へ入ります。この時にクラウドの体へ、やらしい感じで触れたり、体を密着させたりするのがポイント。手が空いていなければ、首へ噛みつくフリをするのも有効ですよ。
 動揺したクラウドが掴んでいた手を離してくれます。
 そしてそこへ肘鉄などの一撃を与える! といっても、男女の力の差は埋めきれないので、食らわせてもクラウドが倒れることはなく。
 でも距離を置かれれば棒の出番ですから、結果オーライです。

 私を殴る蹴るする気がなく、ひたすら捕まえて拘束しようとしてくるクラウドにしか使えない手ですけどね。

「は・・・くぅ・・・」

 散々ペースを乱したので、クラウドの息が上がっていきました。顔も赤いですし、少し辛そうです。
 そろそろですね。

 無駄に狂気たちをたゆんとさせながら棒を構えると、クラウドの視線が泳ぎました。
 その隙を狙って距離を詰め、腹を狙う・・・と見せかけて棒をクラウドの足の間へ差し込みます。クラウドの太ももを支点にぐっと棒を彼の背中側へ押せば、棒に片足を取られたかたちになりました。横に近かった棒を縦にしつつ、傾いでいくクラウドの体へ体当たりをします。
 両肩を掴まれましたが、万歳をして抜けました。そこへクラウドの足の間を通って、跳ね上がってきた棒が私の背へ縦に帰ってきたので右手で掴みます。倒れかかっているクラウドの首を左手で掴んで後ろへ押し倒し、馬乗りになりました。
 右手の棒の綿が付いた方。刃の側をクラウドの胸に当てて、チェックメイトです!

「勝負あり! カーラ・テトラディルの勝ち!」

 はあはあ言いながら立ち上がると、クラウドが両手で顔を覆っていました。その手が小刻みに震えています。
 私に負けるのは初めてではないのですが、ギャラリーの前なのが震えるほどに屈辱だったのでしょうか。跨いだまま見下ろしていたら、震える声でクラウドが言いました。

「あの・・・見えます」
「あら。ごめんなさい」

 つい勝利に浸ってしまいました。
 慌てて退くと、のっそりとクラウドが起き上がります。手を貸そうと近づきかけたら、すちゃっと勢いよく立ち上がりました。
 なんだ。元気ですね。

「・・・えげつない手を使ったな。テトラディル侯爵令嬢」

 リングから降りようと、審判役の先生の横を通った時にぼそっと言われました。

「反則ではございませんでしょう?」

 にっこり笑って見せると、先生はため息をつきます。そしてリング横で観戦していた生徒たちへ向かって言いました。

「今の最後の一手が目で追えた奴は優をやる。後で口頭試問に来い」

 リング外へ降りた私とクラウドに代わり、リングに上がった殿下とアレクシス様が苦々しい顔でつぶやきます。

「この空気の中で戦うとか、どんな拷問なの・・・」
「同感だ・・・」

 ルーカスたちの時は黄色い歓声を上げていた令嬢がたは、水を打ったように静まり返っています。
 皆が息を飲んで見守る中、殿下とアレクシス様は木剣を構えました。 

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