91 / 147
もう15歳
18
しおりを挟む
さて、クラスメイトですが、扉の隙間から覗き見ていたイングリッド様と、そのお付きの方2人が同じクラスでした。それからイングリッド様のお友達・・・なのか取り巻きなのかは不明な伯爵令嬢2人、子爵令嬢1人と、その他合わせて計22人のクラスです。
ちなみに1学年3クラスで、どのクラスもだいたい20人前後ですよ。
殿下の忠告通りにスカートをはいていったおかげか、1限目の歴史の先生には何も言われませんでした。私の全身を値踏みするように見て、なんとも言えない表情をしてはいましたが。
そして喜ばしいことに、授業内容はチェリ先生にみっちり教え込まれたレベルのようで、ひと安心です。ただ、うろ覚えの人名や、地名、年号を覚え直す必要がありますけれども。
2限目の算術は、転生者なら余裕の内容。日常生活で利用するくらいの計算なら、何桁だろうとお茶のこさいさいです。欲を言えば、電卓が欲しいところですがね。
午前の授業後、昨日と同じ目立たないテラス席で、昨日と変わらない昼食を・・・いえ、少し違いました。朝の給仕、胸の名札によるとウェイタル君が、プルプル震えながらも給仕を行ってくれたのです。
可哀想に。他にも給仕がいるのに、一番若いからか私の担当にされてしまったようでございます。
「ありがとうございます、ウェイタルさん」
料理を持ってきてくれた時に、名前を呼んで労ってみたら凍りつかれたので、次回からは名前を呼ぶのをやめようと思います。
午後の選択授業ですが、本日は3限目が武術で、4限目が言語学でございます。
現在、午後の選択授業は仮登録の状態なので、見学後、自分に合わなければ変更申請をすることができます。
「きゃあああ!! ルーカス様! 尊い!!」
「レオンハルト様!! 愛してる!」
武術を選択していない令嬢がたの黄色い声援が飛び交う中、ルーカスとレオンが木剣を手に戦っています。ルーカスが剣を選択したのは、前に戦った生徒から「はい」と手渡されたので、使ってみるかという軽い流れですね。
ルーカスは剣より拳で戦う方が得意なので、大剣使いのレオンに押され気味です。レオンもそれがわかっていますから、胸元のボタンを3つ目まで外し、シャツをズボンから出した状態で、色気を振りまきながら余裕でルーカスを追い詰めていきます。
いちいちシャツの裾をはためかせて、中をチラ見せするのを止めなさい。免疫のない令嬢がたが魅了されて、すごい事を口走っているではないですか。
「ちっ」
木剣を弾かれたルーカスが悔し気に顔を歪ませると、レオンの胴を狙って蹴りを放ちました。レオンは後ろへ跳んで距離をとろうとします。そうはさせまいとルーカスが走り寄り、拳を繰り出しました。レオンは不安定な体制のままルーカスへ向かって、木剣を閃かせます。結果、ルーカスの拳はレオンの顔間際で止められ、レオンの木剣はルーカスの首に寸止めされています。
両者の動きが止まったタイミングで、審判である先生が宣言しました。
「ルーカス・テトラディルは失格! 頭部攻撃は禁止だと言ったろう?」
「あ・・・しまった。」
普段も決まり手の時はお互い寸止めでやめますからね。レオンは顔面をそうそう狙わせてくれませんし、ついいつも通りやってしまったのでしょう。
ルーカスはバツが悪そうに拳を引き、その手でひとつに纏めていた髪を解きます。ふるふるっと軽く頭を振ると、天使の輪が煌めくように艶やかな藍色の髪が揺れます。悔しさからか伏せられた瞳がすこし潤んでいて、なんとなく漂う微かな色気を感じ、令嬢がたがほうっとため息を漏らしました。
「・・・なんか負けた気分」
レオンが不満げに唇を尖らせました。
貴方の色気はだだ漏れ過ぎて、ありがたみが薄いからです。無意識なのでしょうけど、暑いからといってシャツの前を摘まんでパタパタさせるのはやめなさい。令嬢がたが赤面して視線をそらしていますよ。
「クラウド、次は私たちですね」
「・・・・・・・・・・・・はい。」
隣に立つクラウドを見上げると、すっっっごい嫌そうな顔で返事をしました。
往生際が悪いですよ。ジャケットを脱ぐのは諦めてあげたのですから、大人しく私の相手をなさい。
「時間無制限。頭部攻撃、魔法禁止。対戦相手が異性の場合、男子は武装不可だ。両者、準備はいいか?」
今日の授業内容は「お互いの実力を知ろう!」というオリエンテーリングです。先生の思い付きで、ペアを決めてその相手と1対1で対戦をすることになりました。ほとんどの新入生たちは見学のつもりで鍛錬着を持ってきていませんでしたから、制服のまま戦っています。
まあ、ゲームでは毎回そうでしたがね。
「よろしくお願いします」
「・・・よろしくお願いいたします」
私は薙刀の代わりに片方の先端に綿が付いた槍使用者用の長い木の棒を、クラウドは丸腰で斜に構えます。クラウドが視線を落とさないように、私の上半身へ固定しているのを感じ取って、思わずにんまりとしました。
長年の付き合いで判明したクラウドの弱点。
それはハニートラップ!
女性慣れしていないからなのか、露出度が高い服装の時ほど、なぜか私の勝率も高いという事がわかっています。それでもやっと五分五分ですけれども。
実力を見せ合う場で、王子様方目当ての生徒がほとんどですがギャラリーがいて、女生徒でも目をそらす制服着用。さらに私に有利なハンディキャップ付き。
少々・・・いえ、かなり大人げないですが、やる以上は勝ちにいきますよ! なにせ私がラスボスですからね!
「始め!」
掛け声とともに突きを繰り返してクラウドとの距離を確保します。いくら戦闘特化型のクラウドでも、そう易々と槍の間合いには入ってこられません。
頭は駄目なので、肩から下を狙って攻撃を繰り出しながら、すり鉢状に観客席が並んだ鍛錬場の、直径100メートル未満ほどの広いリングの上でクラウドを端へ追い詰めていきます。
クラウドの右肩を狙って突いた時、体を斜めにして避けたクラウドが間合いに入ってきました。引いた棒の持ち手の方を横なぎに払いましたが、捕まれて封じられてしまいます。
本来ならばここで距離をとるところなのですが、逆にクラウドへ近づきました。棒を間に向き合うかたちになったのを、棒へ膝を乗せて体重をかけることでクラウドの体を前のめり気味にさせます。低くなった顔へ絶えず存在を主張する狂気たちを近付けると・・・クラウドの手が緩んだので、棒に足首をひっかけつつバク転をして距離をとり、再び棒を構えました。
ちなみにスカートの下には同じ柄の短パンをはいていますから、下着がみえることはありません。
いえね。そもそもはスカートをひるがえすこと自体がアウトなのですが、はしたなかろうと、嫁入り前だろうと、嫁に行くつもりが全くないので、いいんです!!
「くふふ・・・」
予想通りの展開ににんまりすると、クラウドが渋い顔をしながら構えました。
そこから先は、なんというか・・・ラテンダンスのような感じですね。引き寄せられては、離れるを繰り返すような。まあ、クラウドに私を引き寄せているつもりはありませんが。
クラウドに棒や腕を捕まれたら、引き寄せられるようにして彼の懐へ入ります。この時にクラウドの体へ、やらしい感じで触れたり、体を密着させたりするのがポイント。手が空いていなければ、首へ噛みつくフリをするのも有効ですよ。
動揺したクラウドが掴んでいた手を離してくれます。
そしてそこへ肘鉄などの一撃を与える! といっても、男女の力の差は埋めきれないので、食らわせてもクラウドが倒れることはなく。
でも距離を置かれれば棒の出番ですから、結果オーライです。
私を殴る蹴るする気がなく、ひたすら捕まえて拘束しようとしてくるクラウドにしか使えない手ですけどね。
「は・・・くぅ・・・」
散々ペースを乱したので、クラウドの息が上がっていきました。顔も赤いですし、少し辛そうです。
そろそろですね。
無駄に狂気たちをたゆんとさせながら棒を構えると、クラウドの視線が泳ぎました。
その隙を狙って距離を詰め、腹を狙う・・・と見せかけて棒をクラウドの足の間へ差し込みます。クラウドの太ももを支点にぐっと棒を彼の背中側へ押せば、棒に片足を取られたかたちになりました。横に近かった棒を縦にしつつ、傾いでいくクラウドの体へ体当たりをします。
両肩を掴まれましたが、万歳をして抜けました。そこへクラウドの足の間を通って、跳ね上がってきた棒が私の背へ縦に帰ってきたので右手で掴みます。倒れかかっているクラウドの首を左手で掴んで後ろへ押し倒し、馬乗りになりました。
右手の棒の綿が付いた方。刃の側をクラウドの胸に当てて、チェックメイトです!
「勝負あり! カーラ・テトラディルの勝ち!」
はあはあ言いながら立ち上がると、クラウドが両手で顔を覆っていました。その手が小刻みに震えています。
私に負けるのは初めてではないのですが、ギャラリーの前なのが震えるほどに屈辱だったのでしょうか。跨いだまま見下ろしていたら、震える声でクラウドが言いました。
「あの・・・見えます」
「あら。ごめんなさい」
つい勝利に浸ってしまいました。
慌てて退くと、のっそりとクラウドが起き上がります。手を貸そうと近づきかけたら、すちゃっと勢いよく立ち上がりました。
なんだ。元気ですね。
「・・・えげつない手を使ったな。テトラディル侯爵令嬢」
リングから降りようと、審判役の先生の横を通った時にぼそっと言われました。
「反則ではございませんでしょう?」
にっこり笑って見せると、先生はため息をつきます。そしてリング横で観戦していた生徒たちへ向かって言いました。
「今の最後の一手が目で追えた奴は優をやる。後で口頭試問に来い」
リング外へ降りた私とクラウドに代わり、リングに上がった殿下とアレクシス様が苦々しい顔でつぶやきます。
「この空気の中で戦うとか、どんな拷問なの・・・」
「同感だ・・・」
ルーカスたちの時は黄色い歓声を上げていた令嬢がたは、水を打ったように静まり返っています。
皆が息を飲んで見守る中、殿下とアレクシス様は木剣を構えました。
ちなみに1学年3クラスで、どのクラスもだいたい20人前後ですよ。
殿下の忠告通りにスカートをはいていったおかげか、1限目の歴史の先生には何も言われませんでした。私の全身を値踏みするように見て、なんとも言えない表情をしてはいましたが。
そして喜ばしいことに、授業内容はチェリ先生にみっちり教え込まれたレベルのようで、ひと安心です。ただ、うろ覚えの人名や、地名、年号を覚え直す必要がありますけれども。
2限目の算術は、転生者なら余裕の内容。日常生活で利用するくらいの計算なら、何桁だろうとお茶のこさいさいです。欲を言えば、電卓が欲しいところですがね。
午前の授業後、昨日と同じ目立たないテラス席で、昨日と変わらない昼食を・・・いえ、少し違いました。朝の給仕、胸の名札によるとウェイタル君が、プルプル震えながらも給仕を行ってくれたのです。
可哀想に。他にも給仕がいるのに、一番若いからか私の担当にされてしまったようでございます。
「ありがとうございます、ウェイタルさん」
料理を持ってきてくれた時に、名前を呼んで労ってみたら凍りつかれたので、次回からは名前を呼ぶのをやめようと思います。
午後の選択授業ですが、本日は3限目が武術で、4限目が言語学でございます。
現在、午後の選択授業は仮登録の状態なので、見学後、自分に合わなければ変更申請をすることができます。
「きゃあああ!! ルーカス様! 尊い!!」
「レオンハルト様!! 愛してる!」
武術を選択していない令嬢がたの黄色い声援が飛び交う中、ルーカスとレオンが木剣を手に戦っています。ルーカスが剣を選択したのは、前に戦った生徒から「はい」と手渡されたので、使ってみるかという軽い流れですね。
ルーカスは剣より拳で戦う方が得意なので、大剣使いのレオンに押され気味です。レオンもそれがわかっていますから、胸元のボタンを3つ目まで外し、シャツをズボンから出した状態で、色気を振りまきながら余裕でルーカスを追い詰めていきます。
いちいちシャツの裾をはためかせて、中をチラ見せするのを止めなさい。免疫のない令嬢がたが魅了されて、すごい事を口走っているではないですか。
「ちっ」
木剣を弾かれたルーカスが悔し気に顔を歪ませると、レオンの胴を狙って蹴りを放ちました。レオンは後ろへ跳んで距離をとろうとします。そうはさせまいとルーカスが走り寄り、拳を繰り出しました。レオンは不安定な体制のままルーカスへ向かって、木剣を閃かせます。結果、ルーカスの拳はレオンの顔間際で止められ、レオンの木剣はルーカスの首に寸止めされています。
両者の動きが止まったタイミングで、審判である先生が宣言しました。
「ルーカス・テトラディルは失格! 頭部攻撃は禁止だと言ったろう?」
「あ・・・しまった。」
普段も決まり手の時はお互い寸止めでやめますからね。レオンは顔面をそうそう狙わせてくれませんし、ついいつも通りやってしまったのでしょう。
ルーカスはバツが悪そうに拳を引き、その手でひとつに纏めていた髪を解きます。ふるふるっと軽く頭を振ると、天使の輪が煌めくように艶やかな藍色の髪が揺れます。悔しさからか伏せられた瞳がすこし潤んでいて、なんとなく漂う微かな色気を感じ、令嬢がたがほうっとため息を漏らしました。
「・・・なんか負けた気分」
レオンが不満げに唇を尖らせました。
貴方の色気はだだ漏れ過ぎて、ありがたみが薄いからです。無意識なのでしょうけど、暑いからといってシャツの前を摘まんでパタパタさせるのはやめなさい。令嬢がたが赤面して視線をそらしていますよ。
「クラウド、次は私たちですね」
「・・・・・・・・・・・・はい。」
隣に立つクラウドを見上げると、すっっっごい嫌そうな顔で返事をしました。
往生際が悪いですよ。ジャケットを脱ぐのは諦めてあげたのですから、大人しく私の相手をなさい。
「時間無制限。頭部攻撃、魔法禁止。対戦相手が異性の場合、男子は武装不可だ。両者、準備はいいか?」
今日の授業内容は「お互いの実力を知ろう!」というオリエンテーリングです。先生の思い付きで、ペアを決めてその相手と1対1で対戦をすることになりました。ほとんどの新入生たちは見学のつもりで鍛錬着を持ってきていませんでしたから、制服のまま戦っています。
まあ、ゲームでは毎回そうでしたがね。
「よろしくお願いします」
「・・・よろしくお願いいたします」
私は薙刀の代わりに片方の先端に綿が付いた槍使用者用の長い木の棒を、クラウドは丸腰で斜に構えます。クラウドが視線を落とさないように、私の上半身へ固定しているのを感じ取って、思わずにんまりとしました。
長年の付き合いで判明したクラウドの弱点。
それはハニートラップ!
女性慣れしていないからなのか、露出度が高い服装の時ほど、なぜか私の勝率も高いという事がわかっています。それでもやっと五分五分ですけれども。
実力を見せ合う場で、王子様方目当ての生徒がほとんどですがギャラリーがいて、女生徒でも目をそらす制服着用。さらに私に有利なハンディキャップ付き。
少々・・・いえ、かなり大人げないですが、やる以上は勝ちにいきますよ! なにせ私がラスボスですからね!
「始め!」
掛け声とともに突きを繰り返してクラウドとの距離を確保します。いくら戦闘特化型のクラウドでも、そう易々と槍の間合いには入ってこられません。
頭は駄目なので、肩から下を狙って攻撃を繰り出しながら、すり鉢状に観客席が並んだ鍛錬場の、直径100メートル未満ほどの広いリングの上でクラウドを端へ追い詰めていきます。
クラウドの右肩を狙って突いた時、体を斜めにして避けたクラウドが間合いに入ってきました。引いた棒の持ち手の方を横なぎに払いましたが、捕まれて封じられてしまいます。
本来ならばここで距離をとるところなのですが、逆にクラウドへ近づきました。棒を間に向き合うかたちになったのを、棒へ膝を乗せて体重をかけることでクラウドの体を前のめり気味にさせます。低くなった顔へ絶えず存在を主張する狂気たちを近付けると・・・クラウドの手が緩んだので、棒に足首をひっかけつつバク転をして距離をとり、再び棒を構えました。
ちなみにスカートの下には同じ柄の短パンをはいていますから、下着がみえることはありません。
いえね。そもそもはスカートをひるがえすこと自体がアウトなのですが、はしたなかろうと、嫁入り前だろうと、嫁に行くつもりが全くないので、いいんです!!
「くふふ・・・」
予想通りの展開ににんまりすると、クラウドが渋い顔をしながら構えました。
そこから先は、なんというか・・・ラテンダンスのような感じですね。引き寄せられては、離れるを繰り返すような。まあ、クラウドに私を引き寄せているつもりはありませんが。
クラウドに棒や腕を捕まれたら、引き寄せられるようにして彼の懐へ入ります。この時にクラウドの体へ、やらしい感じで触れたり、体を密着させたりするのがポイント。手が空いていなければ、首へ噛みつくフリをするのも有効ですよ。
動揺したクラウドが掴んでいた手を離してくれます。
そしてそこへ肘鉄などの一撃を与える! といっても、男女の力の差は埋めきれないので、食らわせてもクラウドが倒れることはなく。
でも距離を置かれれば棒の出番ですから、結果オーライです。
私を殴る蹴るする気がなく、ひたすら捕まえて拘束しようとしてくるクラウドにしか使えない手ですけどね。
「は・・・くぅ・・・」
散々ペースを乱したので、クラウドの息が上がっていきました。顔も赤いですし、少し辛そうです。
そろそろですね。
無駄に狂気たちをたゆんとさせながら棒を構えると、クラウドの視線が泳ぎました。
その隙を狙って距離を詰め、腹を狙う・・・と見せかけて棒をクラウドの足の間へ差し込みます。クラウドの太ももを支点にぐっと棒を彼の背中側へ押せば、棒に片足を取られたかたちになりました。横に近かった棒を縦にしつつ、傾いでいくクラウドの体へ体当たりをします。
両肩を掴まれましたが、万歳をして抜けました。そこへクラウドの足の間を通って、跳ね上がってきた棒が私の背へ縦に帰ってきたので右手で掴みます。倒れかかっているクラウドの首を左手で掴んで後ろへ押し倒し、馬乗りになりました。
右手の棒の綿が付いた方。刃の側をクラウドの胸に当てて、チェックメイトです!
「勝負あり! カーラ・テトラディルの勝ち!」
はあはあ言いながら立ち上がると、クラウドが両手で顔を覆っていました。その手が小刻みに震えています。
私に負けるのは初めてではないのですが、ギャラリーの前なのが震えるほどに屈辱だったのでしょうか。跨いだまま見下ろしていたら、震える声でクラウドが言いました。
「あの・・・見えます」
「あら。ごめんなさい」
つい勝利に浸ってしまいました。
慌てて退くと、のっそりとクラウドが起き上がります。手を貸そうと近づきかけたら、すちゃっと勢いよく立ち上がりました。
なんだ。元気ですね。
「・・・えげつない手を使ったな。テトラディル侯爵令嬢」
リングから降りようと、審判役の先生の横を通った時にぼそっと言われました。
「反則ではございませんでしょう?」
にっこり笑って見せると、先生はため息をつきます。そしてリング横で観戦していた生徒たちへ向かって言いました。
「今の最後の一手が目で追えた奴は優をやる。後で口頭試問に来い」
リング外へ降りた私とクラウドに代わり、リングに上がった殿下とアレクシス様が苦々しい顔でつぶやきます。
「この空気の中で戦うとか、どんな拷問なの・・・」
「同感だ・・・」
ルーカスたちの時は黄色い歓声を上げていた令嬢がたは、水を打ったように静まり返っています。
皆が息を飲んで見守る中、殿下とアレクシス様は木剣を構えました。
63
あなたにおすすめの小説
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜
水月華
恋愛
レティシア・ド・リュシリューは婚約者と言い争いをしている時に、前世の記憶を思い出す。
そして自分のいる世界が、大好きだった乙女ゲームの“イーリスの祝福”の悪役令嬢役であると気がつく。
母親は早くに亡くし、父親には母親が亡くなったのはレティシアのせいだと恨まれ、兄には自分より優秀である為に嫉妬され憎まれている。
家族から冷遇されているため、ほとんどの使用人からも冷遇されている。
そんな境遇だからこそ、愛情を渇望していた。
淑女教育にマナーに、必死で努力したことで第一王子の婚約者に選ばれるが、お互いに中々歩み寄れずにすれ違ってしまう。
そんな不遇な少女に転生した。
レティシアは、悪役令嬢である自分もヒロインも大好きだ。だからこそ、ヒロインが本当に好きな人と結ばれる様に、悪役令嬢として立ち回ることを決意する。
目指すは断罪後に亡命し、新たな人生をスタートさせること。
前世の記憶が戻った事で、家族のクズっぷりを再認識する。ならば一緒に破滅させて復讐しようとレティシアには2つの目標が出来る。
上手く計画に沿って悪役令嬢を演じているはずが、本人が気が付かないところで計画がバレ、逆にヒロインと婚約者を含めた攻略対象者達に外堀を埋められる⁉︎
更に家族が改心して、望んでいない和解もさせられそうになるレティシアだが、果たして彼女は幸せになれるのか⁉︎
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる