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2章
17話 ヨーキ
しおりを挟むこのデスゲームのクリアにプレイヤー同士の命の奪い合いは必要ない。という和歌太郎の考えに対し、ヨーキは首を縦には振らず
「それは無理だと思うぜ」
真剣な表情でポツリと告げた。
「何故だよ!このゲームのクリア条件は6つの宝玉を集める事。最後の1人まで殺し合うゲームじゃないはずだよ」
クリア条件は、チュートリアル時に伝えられた"6つの宝玉"を集めること。
「集める事だけならな……だか、このゲームにはクリア報酬があるだろ?」
「'何でも一つ願いを叶える"」
「そう。"何でも"それが大きな原因になるんだ」
「でもっ!自分や他人の命を天秤にかけるほどじゃないはずだよ!」
「あぁ、普通の人間ならな。「大金持ちになりたい」「モテたい」「最強の能力を持ってみたい」などという願いを持った俗にまみれた野郎共なら、命がかかった状況ならあっさり宝玉を渡すだろう」
「当たり前だよ。宝玉を守って殺されれば元も子もない……」
「でもな。この世には居るんだぜ……自分の命を賭けてでも叶えたい願いを持つ人間が」
「ーーーっ!」
和歌太郎は言葉を放てなかった。
何故ならヨーキの言葉、表情には強い意志。そして、瞳に奥に憎悪が燃えている。
そして、それは
(俺と一緒だ。村人達を絶対に生き返らせる。そう誓ったじゃないか)
焼き尽くされた村を見て、犯人を見つけ出し必ず仇をとり、村人達を願いを使い蘇らせると誓った和歌太郎。
表面上は平静を取り戻せたが胸の奥には未だに復讐の炎はメラメラと燃えている。
「分からなくはない。けど……」
気持ちが分かるからこその葛藤。
「はぁ、お前はいい奴だぜ」
ふとヨーキが微笑んだ。
呆気にとられる和歌太郎
「お前の事気に入った。色々と教えてやるから一緒に飯でも食おうぜ」
「う、うん。(なんか急に優しくなった)」
「じゃあ、ちょっと待ってろよ…」
「えっ!俺も手伝うよ」
「まぁ待つんだぜ」
手伝おうとした和歌太郎だがヨーキに止められる。
(一応村でもらった食器や食料は持ってるから出したほうがいいかな?でも待ってろって言われたし……)
和歌太郎が手持ちぶたさにオロオロとしていると、ヨーキは竹が少し開けた広場に移動し、地面に手を当てる。
「"粘土創造"」
ヨーキの手から灰色の泥のようなものが溢れ出す。
「泥?」
「いや、粘土だぜ」
すると泥が机、椅子、皿、フライパン、箸などに形を変えていく。
後で本人から教えられるが、ヨーキのスキルは『“粘土創造』粘土を創造し、自在に操るスキルであった。
「えぇ、めっちゃすごいし、後デザインもめっちゃいい。丸みを帯びるだけでなく、角ばる所は角ばるメリハリのあるデザイン!カッコいい」
目をキラキラさせ、絶賛する和歌太郎
「一応、大学では人間工学を学んで、今は家具メーカーで設計やってるから造形には自信はあるんだぜ」
「おぉ~。ちょっと触ってもいい?」
「おっと、ちょっと待ってくれ。実はこれでは完成じゃ無いんだ」
そう言ってヨーキは作り上げた粘土の造形物に手をかざす
「どいうこと?」
「"水分吸収"」
するとヨーキの手に粘土から出た霧のような物が吸い込まれていく。
「え!何これ!」
「これは水魔法の"水分吸収"対象の物質の水分を吸い出す魔法だ"これによって俺の粘土は金属以上の硬度を得る。」
「はぁ…いいな。ほんとスキルって不公平すぎるね」
あまりの相性の良いスキル構成とその能力に自信を無くし、肩をがっくしと落とす。
「どうしたんだ。ちなみにだけど、俺の粘土を操る粘土創造も水魔法も結構訓練したんだぜ」
「どういう事?」
「まず粘土の方は、造形に集中力、後体力もいる。最初の頃なんか棒を作るのさえ苦戦したんだぜ」
肩を竦めながら言うヨーキ
軽口で話すヨーキだが、そこには相当の努力があった事が窺える。
「そんな苦労が……そうだよね。俺はすぐ羨ましがっちゃうからな」
「まぁ、人間そんなもんだ。今日は積もる話もあるし、美味い飯を食おうぜ」
「うん、そうだね!」
その日、和歌太郎は久しぶりに心から楽しい晩ご飯を食べた。
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