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2章
16話 出会い
しおりを挟む「えーと、このまま真っ直ぐ数キロで村があるばすなんだけど…」
竹林ゾーンを進み初めて2日目、
ゲームクリアのための”宝玉"の情報を求めて村を目指し、残す所数キロメートルまで来ていた。
「それにしても霧が濃くなって来たような」
数十メートル先が真っ白で見えない程、周囲に霧がかかっていた。
そのため、和歌太郎の進みもより遅くなっていた。
加えて太陽は既に真上を過ぎ、夕方に差し掛かかり、辺りは薄暗くなってきている。
「魔物も心持ち減って来た……うーん、なんか怖いな。でももう少しで村だし」
このまま村まで行き切るか、今日はここで野宿でするかで悩む和歌太郎。
「"進まない方がいいぜ"」
「えっ!」
どこからか返ってきた声に驚く和歌太郎
同時に戦闘態勢に入る。
「誰!?」
剣を構え、五感を集中させ、先程の声より位置を特定する。
声のした場所はほぼ真上の竹と竹の間であった。
(全然気づかなかった…でもなんで??)
声の先には気配を感じとれなかった以上の驚きの光景があった。
「竹と竹の間にベッド!?」
頭上高く、4本の竹を支点に灰色のベットのようなのか浮かんでいたのだ。
「よぉ!今降りるぜ」
ベッドから顔を出した青年が竹を伝って滑り降りてきた。
和歌太郎は少し距離を取り警戒する。
(何この人!?敵なのかな!?でも、敵だったら気づかせるのは変だし……)
「よく寝たぜ。えーと、固まっている所悪いけど、俺はアリヨ。お前は?」
地面に着地するや否や自己紹介を始める黒髪のアリヨという青年。
見たところ人族で、和歌太郎と同年代くらいの平凡などこにでもいそうな青年である。
「え……とツッコミたいところは山ほどあるけど、俺は和歌太郎だよ。」
「和歌太郎か、よろしくお願いするぜ」
握手を求め手を差し出すアリヨ。
和歌太郎もそれに答え手を差し出し握手を行う
「(うーわ、悪い人では無さそうだよね)こちらこそ、よろしく!って!え!?」
だが和歌太郎の手は空を切った。
「はぁ……大丈夫か?」
アリヨが手を引っ込めたのだ。
そして額を抑え溜息を吐くアリヨ
「えっ!何か俺したかな??」
オロオロとする和歌太郎。
「はぁ~1つずつ言っていくぜ。なんかお前はあいつにちょっと似てるしな。」
「えっ!何??ってかあいつ??」
「俺の大切な人だぜ。それにしても人を信用しすぎだぜ。お前"ステータス"って使ってるか?」
「使ってるよ。自分のステータスは逐次確認するようにしてるからね。」
当然とばかりに答える和歌太郎。しかし、アリヨの反応は真逆で更にため息を吐く。
「ステータスってのは、自分だけじゃなく、他の対象にも使えるんだぜ」
「他の対象?」
「全く知らないって感じだな。もしかしてチュートリアル中に魔物に襲われでもしたか?」
「えっ!なんでわかったの?」
アリヨという青年に出会ってから数分驚きっぱなしの和歌太郎。
「はぁ~図星だぜ。これはチュートリアルの後半に説明を受ける内容だ。なぜ分かったかというと、俺たちのスタート地点は初クエストのために魔物の近くに転送されている。故に遅かれ早かれ魔物に遭遇するようになってるわけだ。で大抵のプレイヤーはチュートリアルが終わるまでに魔物が気付いて遭遇するってわけだ。」
「で、アリヨさんは何故見つからなかったの?」
「俺は気配を感じて、安全なところに即移動して対処した。それより俺に対してステータスと念じてみろ」
和歌太郎は言われた通り心の中で"ステータス"と念じる。
すると男の頭上にステータスが現れた。
「えーと、名前がヨーキ=アリ!?人族。え!アリヨって言うのは」
ステータスには名前と種族が記されている。
「そう真の名はヨーキだぜ。ステータスを知っているか試したんだ。すまなかったな。改めてよろしくだぜ。ちなみにプレイヤーのステータスは白色の文字、この世界の住人は黒色、そして、赤色の字で表示されるプレイヤーがいるんだが、分かるか?」
(なるほど、ステータスの色で見分ける事が出来るわけか。俺のイメージだと赤は警告、だから)
「……人を殺したプレイヤーとかかな?」
「惜しいな。赤色表示はこの世界の住人を殺したプレイヤーだぜ」
「この世界のプレイヤー?」
「あぁ、そうだぜ。この世界に住む村人達とかが対象だ。ちなみにこのゲームの嫌な所だが俺たちのようなプレイヤーは殺しても赤色表示にならない」
「それって…」
和歌太郎は何かを言いかけて口を噤む。
「あぁそうだぜ。このゲームはプレイヤー同士の争い殺し合うことを是としているという事だぜ」
「なんで!宝玉を奪い合うだけなら殺すまでしなくても……」
和歌太郎はこのデスゲームに参加し、最低な人間とは言えプレイヤーを1人殺した。そして、お世話になった村は別のプレイヤーによって滅ぼされた。
人の命が簡単に失われる世界だと言うことは理解している。
しかし、心の底では命まで奪わなくとも宝玉を得れるのでは無いかと考えていた。
元々和歌太郎は、争いを一切好まない優しい人間である。
故に人の悪意や想いというものを掴めずにいる。それ故にプレイヤー同士で争い合うこのゲームの在り方が理解できないでいた。
ーーだが、ヨーキの考えは違っていた。
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