DEATH GAME ー宝玉争奪戦

DP

文字の大きさ
31 / 81
2章

30話 超集中

しおりを挟む


戦闘開始から10分が経過し、和歌太郎とヨーキは各々の闘いでお互いの姿が見えないほど距離が離れ、それぞれ激闘を繰り広げていた。

side ヨーキ

「はぁ…はぁ…はぁ…(和歌太郎頑張ってくれ…正直助けに行けそうにない。正直ここまでとは思ってなかったぜ)」

息を切らしながら純白の短刀を構えるヨーキ
その眼前に立ち塞がる黒いマネキン
ヨーキが腕を切り落とした事により、デストロイモードとなり凶悪化したアロンである。

 速度は異常な程速く、無尽蔵のスタミナ。そして、恐怖の概念が無い故の捨身の攻撃。

 対するヨーキは、"魔装"による身体能力強化、短刀術と豊富な経験則で立ち向かうが、既に魔力は底を突きかけていた。

だが、殺戮兵器"アロン"は止まらない

鋭く思い攻撃がヨーキを襲う

そして、ついに"魔装"を維持出来ず、水色のオーラが消失する。

ーー格段に下がる身体能力

まるで嵐のようなアロンの攻撃により防戦一方になり、その場から動くことも出来ず、傷が増えていく。

「くっ!…(このままではヤバイぜ。何か手を」

必死で防御しながらも、起死回生の一手を捻り出そうと頭をフル回転させる。

だがヨーキより先に短刀の寿命が来た。

"パキンッ"

白い刀身が根本から折れる

(やばいっ!!)

止まらず振り下ろされるアロンの刃
短刀は折れ、防御は不能

(--あっ……死んだ)



*******


side 和歌太郎

「大体分かってきたぞ。」

何か掴んだようなセリフだが和歌太郎がいるのは家屋の中。
和歌太郎はひたすら近くの家屋を使って逃げ回っていた。

 そこで分かったは、madderの怪力と爆発的な速度は、怪力系のスキルを全身の各部位に応用したものだという事。故に直線的な加速しかできない。
 また体術はスキルではなく、電脳処理プログラミングの応用によるものだと言うこと。

(だけど……勝てるプランが浮かばない。あれだけ見栄を切ったのに)

和歌太郎は完全に勝機を見失っていた。

(あっ!またバレた!)

和歌太郎の嗅覚がmadderの接近を感知する。

"ドゴッーン"

爆音が轟き、家屋が吹き飛ぶ。

「そろそろ終わりよ。私の道を邪魔するものは殺す」

破壊された家屋からmadderが現れる。

(動きは読まれるし、力では負ける。速度においても瞬間的な速度では向こうが圧倒的に上。うーん、どうやったら勝てるんだ。)

「よし、俺は諦めることを諦める。」

悩みに悩んだ末に和歌太郎の答えは極めて簡潔であった。

「死ぬ気で攻撃する!」

地面を蹴り、何も考えずにmadderに突っ込む。
そこに的確にmadderの拳が迎え撃ってくる。

(避ける。目の前の攻撃を全力で避ける!)

避ける事に意識を集中させ、madderの拳を紙一重で避け続ける。

至近距離での攻防が繰り広げられる。

何も考えずに相手の動きに合わせて避ける事により、madderの読みが予知の域であっても、その読みに合わせて動く事で対処を可能にしていた。

「しぶとい……」

madderの鋭い突きが和歌太郎の頬を掠る。
当たれば確実に死ぬ、即死級の一撃

にも関わらず和歌太郎は恐れずに逆に剣による反撃を試みる。

だが全てmadderのガントレットに防がれる。
それも完璧に予測され対処される。

それでも和歌太郎は諦めない。
既に全身は傷だらけ満身創痍であるにも関わらず、動きを一切止めない。

ーーひたすら戦いにしていた。

(集中……集中……)

madderの攻撃を薄皮一枚ギリギリで避け続ける。
客観的に見ても優勢なのは完全にmadderである。

だがmadderの表情には微かに焦りの色が浮かび上がっていた。

「演算が合わない……情報が変化しているの」

困惑するmadder
何故なら和歌太郎に攻撃が掠らない回数が増えてきているからだ。

ーー超集中ゾーン

極限の集中状態
余計な思考、感情、情報が意識から消え、感覚が研ぎ澄まされ、通常時の数倍の力を発揮できる境地

死と隣り合わせの極限のストレスが和歌太郎の生存本能を刺激、更に死をも恐れぬ覚悟が和歌太郎を超集中ゾーンへと至らせた。

スーパーコンピュータ並みの高速演算と圧倒的な怪力が合わさったmadderの連撃を流れるような動きで避けていく。

動きが速くなったわけではない。むしろゆっくりになっとさえ思える。

徐々に戦いの流れが和歌太郎に向いてきた。

madderの眉間に僅かにシワが寄り、眼鏡の奥の瞳にはつい先刻までの余裕は無くなっていた。

そして、その焦りという感情が決定的なバグを産んだ。

(--見えた)

和歌太郎の動きが一気に激流と化す
一瞬で懐に飛び込み、腹部へ剣の柄による強烈な打突

「ーーカハッ……」

強烈な一打でmadderの身体がくの字に折れる。

(これで終わりだよ……ごめんね)

和歌太郎が後頭部へと剣の柄で狙う
剣の刃を向けないのは和歌太郎の生来の優しさであった。

だがその優しさは闘いにおいては致命的であった。
和歌太郎の一撃はmadderには届かなかった。

剣の柄が当たる瞬間、madderが地面を思い蹴り上げ、後ろへと吹き飛んだ。

着地も考えずに後ろへと跳んだmadderは、地面を転がりながら着地する。

「ふざけんな……」

着ている服が破け、砂まみれになったmadderが立ち上がる。
眼鏡のレンズはひび割れ、唇からは血が出ている。

「私は負けられないんだ!!絶対…!」

眼鏡を投げ捨て、前髪をかきあげる。
madderがついに本気になった。

その時

"ドスンッ!!"

突如轟音が鳴り響く。
和歌太郎とmadder、2人の間に何かが飛来したのだ。
土埃が舞い上がる。

「な、何!?」

和歌太郎は驚きながらも警戒を高める。

一方、madderは目を見開いて固まっている。

「……アロン…」

土埃が舞い止み、露わになったのは
無残に破壊された"アロン"であった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...