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3章
60話 多古山 vs イツカ
しおりを挟むヨーロッパ風の建物が立ち並ぶ噴水広場にて、
「なるほど、貴方のスキルは推進力と重量を操るスキルのようですね」
眼鏡を左手の中指で押し上げながら杖をかざすイツカ
杖の先から膨大な魔力と共に雷鳴が轟き、パレットで高速移動する多古山に向かう。
「そういうアンタは生粋の魔法使いやな。まぁ、そんな攻撃当たるはずがないけどな」
しかし、多古山はイツカが放った雷鳴をパレットを【推進力】で急旋回させ避ける。
イツカの種族はエルフ族、身体能力に補正がかかる獣人族とは異なり、魔法の使用に補正がかかる。
そのため、イツカが放つ魔法はどれも強大であった。
「ですが、貴方も私に近づく事はできないようですね…」
イツカの魔法は特殊魔法の雷魔法
その特性は、効果範囲の広さと速度の速さ。
例え多古山が速くとも、雷魔法の速さと効果の広さは危なく、接近する事が出来ずにいた。
「うっさいわ!これでも喰らっとけ!!」
多古山がスリリングショットで鉄玉を放つ。
鉄玉は【重量操作】で数倍の重さになり、【推進力】にてその発射速度も数倍になっている。
その威力は銃弾にも劣らない。
しかし、放たれた鉄玉はイツカの手前で起動を変え、イツカを避けるように後ろへと飛んでいった。
「残念でしたね…プラズマシールドにより私に攻撃は聞きませんよ」
イツカの周囲には高電力のバリアが張り巡らされており、強い磁界が発生。その磁界により鉄玉の軌道がそらされたのだ。
多古山はチッと舌打ちをして距離を取る。
(相性悪すぎやわ……やけどあいつの魔法は電気なのは確定や。やったら)
多古山はチラリと噴水に目をむける。
「私の雷魔法は攻防一体です。そして貴方がどれくらい速くとも雷は勝てませんよ。」
イツカの身体に莫大な黄色の魔力がほどばしる。
そして魔力が杖の先に凝縮され
「ー落ちなさい!!落雷!!」
噴水広場に幾筋もの雷が落ちる。
遅れて鳴り響く轟音
その威力はまるで天災……噴水は壊れ、地面は焦げ、建物の窓は割れている。
光と音が収まった時、その場に残っていたのはイツカのみであった。
「やりすぎてしまいましたね。さて主のために宝玉を集めに行きましーーうぐっ!!」
多古山の死亡を確信し、その場を後にしようとしたイツカの背後に大きな衝撃が走る。
イツカはあまりのダメージに吹き飛び、顔面を地面に殴打。
眼鏡が割れて吹き飛ぶ
(くっ……なんですか!?…一体)
痛みに耐えながら顔を上げるイツカ
「危なかったわ……ほんまギリギリやった」
イツカの霞む視界には悠然と歩く多古山。
何故か全身水に濡れている。
「ど、どうやって……」
イツカには分からなかった。
広範囲に雷を落とす最大範囲の大魔法を凌いだ方法が
「簡単な事や。水は電気を通す。そして、俺の推進力は触れたものに指向性を与えることも可能や。要するに水のバリアって奴やな」
得意げに話す多古山
多古山はイツカの技の発動の瞬間。
近くにあった噴水の水を噴射させ、自身の周りにドーム状の水の屋根を作り、雷の向きを曲げたのである。
そして、雷が収まると同時に称号"疾風の鴉を発動、空に移動し、スリリングショットによる奇襲を行なったのだ。
多古山はうつ伏せに倒れ伏すイツカへと近づいていき、声をかける。
「残念やったな……」
「私の負けみたいですね…」
潔く自身の負けを認めるイツカ
多古山の鉄玉を背に受け、折れるまではいかなくとも行動不能のダメージを受けていた。
「ーーじゃあな」
多古山がイツカを気絶させるべく、後頭部に向けて手刀を振り下ろす
"ダンッ"
「ーーなんの真似や…?」
多古山の手刀が地面を叩いた。
イツカが直前で動いて避けたのだ。
「もう勝負は決まってんのに何故逃げたんや。命までは取らんつもりーーっ!」
多古山は言葉を途中で切りあげ、推進力を使ってイツカから距離をとった。
「チッ……殺せんかった。」
先程多古山がいた場所にはイツカの拳が振り下ろされ、地面が陥没していた。
「なんで動けるんや!!」
驚く多古山
「さっきはもう1人の俺がお世話になったな。ふぅ……あんま調子乗ってんなよ」
豹変したイツカから肌をピリつかせるほどの濃厚な殺気が放たれた。
「どないなってんねん……ほんまに」
警戒を最大にする多古山
「発動"理不尽なる暴力"……クソ野郎のてめぇに本当の暴力を見せてやるよ」
イツカが獰猛な笑みを浮かべる。
いつの間にか傷は回復していた。
言葉を失う多古山。
(同じ人物やのに……雰囲気、気配、殺気全てが違う。まるで野獣や…)
イツカの真の人格、"理不尽なる暴力"のイツカ
2人の闘いはここから激化する。
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