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4章
65話 復讐
しおりを挟む山岳ゾーンの頂上
山肌の草木に僅かに雪が積もり、大小の岩が立ち並んでいる。
今も粉雪が降り、見通しはあまり良くない
そこに深々と黒のフードを被った男が焚き火を前に静かに座っていた。焚き火の近くには肉を刺した串が数本刺さっている。
男が何かに気づき、視線を焚き火から上にあげる。
「何かようか?」
低い男の声が静かな空間に響く
「エニ村の人々を殺したのはお前だよね?山川 弍句」
男の言葉に返ってきたのは殺気が篭った声。
和歌太郎の声であった。
和歌太郎は質問権でエニ村を燃やした男の居場所を聞いたのだ。
そして男がいたのは山岳ゾーンの山頂。
加えて男は宝玉を持っていた。
男の名を山川 弍句
言わずもがな"炎上王の称号持ちである。
そして、名前の部分が赤く表示されていた。
「あぁ、そうだ。」
一切の動揺を見せず静かに答える山川
「認めるんだ……なぜ、あの人達を殺したんだよ!」
和歌太郎はあまりにも感情を出さない山川に怒りを露わにする。
しかし、山川に反応はない。
「死ぬべきやつらだったって事だ。」
あっさりと言い放つ山川
和歌太郎は一瞬目を見開いて、髪を逆立たせ殺気を漲らせる。
「このっ……人の命を……!…許さない!発動"物質の支配者"」
和歌太郎はいきなり"称号"を発動させた。
《物質の支配者》
自身から半径10メートルの任意の位置に自身の設計した部品を作成をできる。また作成した物質の材質は変更可能。
希少な物質になるほど使用時間が短縮する。
使用時間は10分。
和歌太郎は手を前に出し、空中に線を引いていく。
「スケッチ!モデル!……"真鍮BOX"!」
山川の頭上に巨大な立方体が出現
和歌太郎はそれをそのまま山川へと落下させた。
巨大な立方体がドーンっと地面に落ちる。
真鍮の立方体の重さは数トンは行く、当たればひとたまりもない。
「チッ……逃げられた」
和歌太郎が小さく呟き、背後へ剣を構える。
キンッ
剣がぶつかる音が鳴り響く
和歌太郎の剣は山川の杖のようなものを防いていた。
これには山川も驚いた表情を見せる。
「甘いよ!」
和歌太郎は杖を強引に剣で弾くと、反転し後ろ回し蹴りを山川の腹部へとたたき込んだ。
「ぐはっ!!」
直撃をうけて吹き飛ぶ山川。
なんとか空中で体勢を立て直し、地面を削りながら着地する。
「ふっ……やるな。さすがは称号持ちというわけか」
山川は口から血を地面へとペッと吐き出し、ローブを脱ぎ捨てる。
露わになったのは、鎧姿の眼鏡を掛けた20代後半くらいの男
「その鎧は……」
和歌太郎は山川の着用する鎧に驚く
鎧は鉄製ではなく、何かの鱗
紅蓮の鱗……
「これは"ドラゴンメイル"、ダンジョンのボスを倒した時の報酬だ…」
山川が鎧について答える。
「ドラゴン……」
やはりと和歌太郎は思った。
和歌太郎が向かったダンジョンの最下層で焼き殺されていたドラゴン。
この男が全ての元凶だと和歌太郎の瞳が憎悪に燃える。
「相当恨まれているっぽいな。だが俺も死んでやるわけにはいかない」
和歌太郎から向けられる強い敵意と殺意を受け止め、山川は異次元BOXより赤黒いオーラを放つ一本の長杖を取り出した。
「絶対に許さない!!スケッチ……」
和歌太郎は走りながら片手を前に出し宙へと線を引いていく。
「押し出し!」
山川から数メートル手前の位置に横長の直方体が完成
和歌太郎はデコピンを構えるようにして
「オフセット!!5メートル!」
人差し指を弾いた。
弾いた動作と同時に直方体が山川へと高速で移動。
横幅は2メートルもある直方体が高速で山川へと迫る。
躱す事は至難の技。
加えて、材質は万能鉄材のSUS430、板厚は100mm。当たれば即時の攻撃だ。
だが山川は落ち着いたまま杖を前に構える。
「……炎上王」
当たる瞬間聞こえた山川の声
ーー次の瞬間
巨大な鉄板は溶けた。
「な……一瞬で!?」
流石の和歌太郎も困惑。
それもそのはずSUSの1500℃
それほど低いわけでもない。加えて一瞬で溶かすには、その何倍もの熱が必要。
「俺の炎は全てを燃やす……灰に還れ"アーメン"」
山川の頭上に直径3メートルの巨大な炎の塊が出来上がった。
(熱い……肌が焦げそうだ)
炎の塊の影響で周囲の雪は全て溶け、氷点下近い気温も今では40℃と真夏の砂漠並み。
「灰の水曜日」
山川の炎の塊が和歌太郎へと放たれた。
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