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私は家の外にちょこんと座っていた。
理由?
そんなの…
叱られたからに決まってるじゃないですかヤダー。
「…はぁ」
ママのお手伝いしようとして包丁握ったのが不味かったかな~。
まぁ確かに前世でもあんまり料理はしてないよ?
でも包丁と逆の手は猫の手ってのは覚えてるし片手でダーンってやるのもやんないし。
「…あ」
決定的な問題。
私…5歳児で今までお皿さえも運んだことのない子でした。
そりゃ怒るよねー怒るよねー怖いよねー。
…謝りますか。

「まま…ぱぱ…」
私は扉を少しだけ開けてこっそりと中を伺った。
「どうしましょう…アイルに酷いことを言ってしまったわ」
「…大丈夫だよ。ちゃんと謝ればアイルだって分かってくれるから」
…結構悩んでる感じ?
これは私から謝った方がいいよね。
「ままー!!ごめんなしゃーい!!」
私は椅子に座っていたママに飛びついた。
「アイル…ごめんなさい、ママも酷かったわよね」
「ううん。あいるわるいことちた。ごめんなしゃい。ままのおてつだいしよーとおもって…」
「あぁ…アイル、優しい子ね。でもアイルにはまだ早いわ」
「…うにゅ」
いつになったら許してくれるんだろうか…。


「しゅぷーひゅにゅーにゅひゅー」
「それなんのお歌?」
「なんとなくうたってみただけー」
「大人しくできるかな?もう少しで学園にも着くから」
「てすとがんばるー!!」
「…頑張ってね」
そう言うパパの顔はなんだか寂しそうだ。
「でも…れきしにがてー」
「パパもだよ。なんで生きていく上で必要ないものを学ぶんだろうね」
「ねー」
建国神話だけ知ってればいいでしょ。
あと周辺の国の名前。
「…平民が貴族の中で頑張れるとは到底思えない。アイル…きっと幼い頃から教育を施された貴族の子息、子女には叶わないよ」
「ぱぱ。やるまえからあきらめるの?あいるはちがうよ?あいるはあきらめない。やってだめだったらかえる」
「やって…受かってたら?」
「いっぱいべんきょーちてままとぱぱをやちなう!!」
「…娘に養われるの?僕。そんなに安月給?」
「…ぱぱ?」
私は急についてこなくなったパパを振り返った。
「アイル…やっぱり行くのやめよう?」
「いや」
パパが来ないなら私1人で行ってやるぞ。
私はパパを置いて先に歩き始めた。
ん?
学園までの道は知らないけどなんとなく勘で行けば当たるでしょ。
間違っても迷うだけ。
元来た道を戻って見たことのあるところまで行けばいいだけ。
「アイル!!迷子になるから勝手に行かないで!!」
「ぱぱおそい」
「そんなぁ…だってアイルに入学してほしくないし…」
「むすめのかのーせいをひてーするなー!!」
…いや、他の子には勝てる自信ある。
歴史以外は。
言葉も覚えたし計算は簡単だし。
「にゅーがくしたらいっぱいおてがみかくね~」
「入学するの決定なの!?平民は5人しか入れないんだよ!?」
…狭き門。
あの赤いおっきい門の有名大学以上に狭き門。
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