不幸は幸福の始まり【完結】

文字の大きさ
40 / 45

最終話

しおりを挟む
 * * * * * * * *

 阿呆に断罪が下された事をレイラにも報告しなければならない。

 その為、身分を偽る為に作られた屋敷に向かった。

「お帰りなさいませ旦那様」

「ああセバス、レイラとローガン殿は?」

「ローガン様は一度、領地に戻られるとおっしゃいまして、席を外しておられます。レイラ様は旦那様の御印を刺繍なさっておられます」

「では私室かな?」

「はい」

 レイラは新たに私の御印を刺繍して居るらしい。

 彼女が俺を思って1針1針、刺してくれて居るのを想像するだけで美しいと思えた。

 想像以上の姿を見る事となるのは、私たちの私室として使って居る部屋の扉を開けた時。

「メアリー、王太子妃としての勉学は午後からですわよね?」

「はい奥様」

 チク、チクと針を進める姿は、とても美しいが長時間は止めて欲しいな。

「レイラ、根を詰めては駄目だよ?」

 そのまま見て居たい気もしたけれど…疲れは禁物だからね。

「アレク!」

「ただいま。あの阿呆に断罪が下され刑が執行され全ては終わったよ」

「そう、ですか」

「気にして居るの?」

「いいえ。サバンナ様の行方を知りませんので…心配になりましたの」

 あの会話を交わす時、傍に居なかったから聞こえなかったんだろうな。

「君は嘘を吐かれて婚約破棄にまで持って行かれた令嬢を心配するのだね。やはり君は優しい人だ」

「そんな事はっ…」

「綺麗な金木犀になって来てるね」

 これ以上、阿呆の事を掘り下げなくて良いだろう。

 幸福は始まったばかりなのだから、今ある幸福に目を向けて貰おう。

「金木犀を刺繍するのは初めてですので少し心配だったのですが、出来て居ますでしょうか」

「ああ。上等な金木犀が出来る予感がするよ」

「まぁアレクったら言い過ぎですわ」

「言い過ぎぐらい構わないだろう?」

「ふふふ…アレクったら」

「メアリー、レイラの勉強は何処まで進んで居るかな?」

 俺と結婚したのだが、王太子妃としてのマナーなどは覚えて貰う期間が無いままだったので、遅くは無いだろうと言う兄上の進言で結婚後に侍女が教える形で覚え始めて居るのだ。

「順調に覚えて頂けております。これほどまでに理解をして下さる令嬢に初めてお会い致しましたもの。アレクサンダー様の隣に立ったとしても恥ずかしくないくらいまで覚えて下さってますわ」

「レイラは優秀な生徒だったのか。労わないと…ね」

 ウィンクで労いに何をするのか伝わったらしく、真っ赤に顔を染めて

「ア、アレクっ…」

 照れる姿も愛らしい。だが現実も知って貰わないとならない。

「兄上を支える騎士でも有るから危険な事へ赴く事も有る。レイラも覚悟しておいて」

 フェリシアとヴァリューから攻め込まれる事は皆無だが、それ以外の知られて無い場所から攻撃を受ける可能性は残されて居る。

 その時は、俺が最前線に立たなければならない。

 となると危険な任務となる訳で命の保証など、何処にも無いのだ。

 覚悟を持って送り出して貰わねばならない。

「・・・…はい…」

 未亡人になってしまうかも知れない…そんな顔をされたら

「レイラ、君を置いて戦場に行きたくないと、言ってしまいそうになるな」

 そう望んでは駄目なのだが望みそうだ。

「アレク…」

「レイラ君に出会って結婚できた事、本当に奇跡のように嬉しい」

「わたくしもアレクに保護して貰いヴィクトリアに根を降ろす事が出来て嬉しいわ」

 こうして不幸にも婚約破棄をされてしまったレイラは、最終的に俺との結婚と言う幸福を得る事が出来たのだった



最終話と言いつつ・・・番外編が有ったりする
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係

ayame@アンジェリカ書籍化決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

伝える前に振られてしまった私の恋

喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋 母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。 第二部:ジュディスの恋 王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。 周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。 「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」 誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。 第三章:王太子の想い 友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。 ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。 すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。 コベット国のふたりの王子たちの恋模様

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。

処理中です...