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王都編

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 宰相様から依頼された騎士団の団長が、俺たちが寝起きする場所へと案内してくれて居るのだが、視線が痛いのなんの・・・。

 そりゃーそうだろ。

 いきなり王都に来た田舎者が王家の紋章入りのナイフを持参し、しかも王子かも知れないって事だろ?

 注目の的になるのは仕方ないかぁ(あーあ。すっかり内側の声も男性言葉になっちゃったよ)

 アレクの記憶との記憶…。

 どっちが強く出てるか?って言ったらアレクだよなぁ…18年と数日じゃあ18の勝・・・ゲホゲホ。

「アレク」

「どうしたバルト」

「敵意むき出しにされてっぞ」

「あー…なるほど。よそ者扱いってか」

 空気がひんやり冷え切って居るのが見ても判る。

 平民から爵位を持つ騎士となった者たちからの視線は、俺だけに留まらずバルトにも向けられて居るようだった。

「王様の隠し子ごときが騎士になろうなど、身の程知らずめ…」

「平民の癖して生意気な」

 粗方の予測は出来て居たが、平民試験を受けられるんだがな。

 こう言う場所は実力主義。

 試験まで「こいつら」「耐えられる」かな?

「・・・今からでも試験して構いませんが?」

「そうだな。早ければ早いほど良い。騎士を目指した事、後悔して貰うぞ」

 あー…そっち?それ多分、無理だわ。

 屈強な数名の騎士と、同じくらいの技量だろうと見込まれてしまった(巻き込まれてしまった)騎士、そして団長が鍛錬場へと俺たちを誘導して行く。

 バルトとは小声で会話・・・。

(流石に言いすぎてないか?アレク)

(これくらい野盗30以上、倒して来てんだぞ?楽勝だろ)

(ぷっ…確かにな)

「では初めに騎士試験を受けに来た者と木剣で戦って貰おう。制限時間は5分…はじめっ!」

 5分と掛からず、俺もバルトも相手を叩きのめしたのだから、騎士たちは驚きを隠せて居ないねー(白目)

「なっ!?」「そんな…馬鹿な!」「今日到着したばかりの平民だぞ?!」

「「終わりですか?」」

 バルトと声が重なってしまったが、1対1なら負ける事は無い。

「くっ…残りの全員で、こいつらを叩きのめせぇ!!」

 お~…集団で来ますか。

 ま、楽勝だろうけど気は抜く訳に行かないよな。

 カンカン…と規則正しく木刀(って言うのか?木の形をした剣)が交わりあう音と、倒れて行く騎士の音。

 そして驚愕におののく騎士たちの「化け物」と言う声(失礼な奴らめ)

 粗方の騎士を叩きのめした所で団長と副団長が木刀では無く、本物の剣で俺たちに切り掛かって来た。

「「う、嘘だろ?!真剣と木刀じゃあ負けは確実じゃねぇか!」」

 負かす(殺す)為の手段に選んだんだろうな、とは思うが…いくらなんでも分が悪い。

「アレク!」「バルト!」

 素早く移動して、見学して居る騎士の腰から剣を奪い取ると、団長と副団長が振り下ろす剣を受け止める事に成功した。

 その瞬間

「団長と副団長…そこまでだ!卑怯な手段で相手を打ちのめしたりすれば、我が騎士団の名誉に関わるぞ!」

 と声高らかに制止の声が掛かった。

 ピタ…と固まった団長らしき人物が、顔色を真っ青にして、声を掛けた人物の方へと顔を向ける。

「ラ、ランフォース様っ?!」

「アレクシス殿とバルト殿を客間へ案内して居ると聞いて来てみれば、殺意むき出しで戦う等、有り得ぬな。そなたらの所業…団長と副団長の任を解き、更には身分の剥奪をもされかねぬ案件だぞ」

 うっわぁ~…The王子様っ!って立ち姿だ。

 茶系の髪色に青い瞳、背丈は170有るか・・・スリムな体型に似合う黒の騎士服。

 ってランフォース様も騎士なのか…取り敢えず命は繋がったな
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