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婚約編

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 第二王子のお妃選び…その噂は瞬く間に広がりを見せ、多くの子女が目の色を変え、招待状を今か、今かと待ちわびて居た。

 一方のアレクは自室として与えられた部屋で、歴史やら礼儀作法やらを「詰め込まれ」疲労困憊が顔に出初めて居る。

(騎士になる為に王都を目指したアレクが、こんな事で苦労する事になるとは・・・)

 室内で襲撃を食らう恐れが無い為、バルトはアレクが詰め込んで行く歴史書などを片付けて居るのだ。

 アレクの勉強具合はすさまじく、平民では有り得ない程に吸収して行く為、目の下には隈が出来て悲惨な状態。

「殿下、少し休憩なさって下さい。
 倒れられては元もこうも有りませんよ」

 50冊ほど置かれて居た本を半分、棚へと直したバルトが休憩を促した。

「判って居るよ」

 ふぅ…と伸びをしながら凝り固まった体をほぐす。

「お茶を用意しましたので、どうぞ」

 侍女として選ばれた女性は、アレクを良く思わない女性では無いようで、毒が入って無いかなどを必ず確認してから出す優秀さを持って居る。

「あぁ、ありがとう」

 暖かい紅茶が疲れた体に染み渡って行く。

「1時間程、余裕が御座いますのでお休みになられて下さい」

「そうか…少しだけ目を閉じておく、
 バルト頼むぞ?」

「ああ」

 カップをソーサに置き、仮眠の為にソファーへ移動。

 即座に寝息を立てるアレク。

「・・・どれだけ疲れて居ようが顔に出さないとか…
 今までのアレクだと考えられんな」

「・・・今だけですわよ?殿下と呼ばなければ処罰されてしまいます」

「判って居るよ。
 アレク殿下と呼ぶか殿下と呼ぶ事にしてっから、
 心配すんな」

「確かに殿下は忙しすぎますわね」

「覚える事柄が多岐に渡るからと言っても詰め込み過ぎだろーが、と言いたかったんだが…」

 詰め込まなければ廃嫡だ!と言い出す輩が居ると言う事くらいバルトでも気づいて居る。

 歴史の勉強、マナーの勉強、言葉遣いにダンスレッスン…。

 村に居た頃ならばネイサンたちの襲撃が有るくらいで平穏だった、だが騎士になると言う夢を追いかけ村を出て王都に向かい、結果から言えば騎士では無く王族と言う厳しい世界の一員になったアレク。

 眠って居る時か休憩して居る時くらいしか、安らげる時間が取れなくなって居る。

「バルト様も休憩なさって下さいませ」

「いいのか?時間が来ればアレクは言わなくても目を覚ますだろうが…」

「貴方様まで倒れてしまったら誰が殿下の背中を守るのです?」

 アレクは背中を任せられるのはバルトしか居ない…と言ってくれ、傍に置く事を決めてくれた。

 それは普段から組んで居るからこその信頼・・・自分が倒れて守れないなど有ってはならないと思い、バルトも少しだけ休む事にしたのだった。

 穏やかな風が部屋に入り込み、眠って居るアレクの髪の毛を揺らす。

(眠って居る時年相応な青年の顔なのに、
 目を覚ませば王族の気品を纏う…どれだけの努力をしてきたのか、
 計り知れないわね)

 毛布を掛ける事はしない…。

 騎士を目指して居たから気配には敏感だと聞かされて居るからでは有るが、疲れて居る自分より若い青年の眠りを守りたいと思ったのだった
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