『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』外伝〜おっさんは電子頭脳の夢をみるか!?〜

たみぞう

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おっさんは電子頭脳の夢をみるか!?

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 「ねえ、透って、未来に行って戻って来たんでしょう? 未来の私ってどうなってる? いい女になってるかなあ」


 桜がいきなりそんな事を聞いてきて俺は少し前の事を思い出す。実際には未来で起こる話なんだが俺にとっては昔のことなんだ、訳がわからないって? まあまあ、少し長くなるが聞いてくれ。


ーーーー世界R0347 平成30年ーーーーーーーーーーーーー


 俺は、羽村 透(はむら とおる)今年で五十一になるしがない初老のおっさんだ。

今日もあくせく働き口を探している。面接に向かっている途中だ。


 つい最近まで俺は小さいながらも従業員を雇ってデザイン事務所の様なものを経営していた。最初は右肩上がりで年商が2億近いこともあった。

 しかしリーマンなんちゃらを境に景気が悪くなり、借金も膨らみ、どんどん厳しくなっていたところにトドメの震災だ。いっきに仕事が減った、

 そりゃそうだろ、みんなあるものでどうにかしなきゃならないのにわざわざかっこつけて高いもの作るはずはない。


 そして耐えきれず、破産した。個人も破産したから借金は帳消しだがまわりからは恨まれ同じ仕事はもうできない、てことで今この状態だよ。なまじ社長なんてやってたから、今の状況はよくわかる。いい給料なんてこの東北じゃ無理だ。しかもこの歳じゃどう頑張ってもいいとこなんてあるわけない。


 そうだよ、もう何件目かもわからねーよ。でも働かざる者食うべからずだ。嫁さんも愛想尽かして別れちまったし、独り身で貧乏なのはしょうがねーが、とりあえず生きなければ明日はない。そう自分に言い聞かしてんだよ俺は、頑張れよ、見返してやるぜ、逃げてった奴らをよ。


「さて、次は今流行のミネラルウォーターのルート営業か、よし頑張るよっと」


 そう言って俺は次の会社のドアをくぐった。


「今日面接の予定の羽村と申します。」


「はい、伺っております。所長の有海です。」


 ん? どこかで聞いたような名字だな? とは思ったが、名刺を貰い打ち合わせのテーブルに着く。


「あのー、羽村さんて、丘町の出身ですよね? 丘町高校」


 まあ履歴書出してんだからそのくらいわかるだろうとか思ったが、


「はい、そうです。もうかなり前に出てますけどね。」

 そう、俺は家が馬鹿ないい加減な親だったためはやくに家を飛び出したのだった。高校卒業してからもうあの町には帰っていない。もう30年以上戻っていないからまったく思い出さなかった。


「同級生に有海 桜(ありうみ さくら)っていませんでしたか?」


 向かいに座った彼からそう聞かれると、俺はふと思い出すのだった、懐かしい桜並木とコンクリートの校舎、そして机の斜め前に座っていた少し髪の茶色い俺と同じくらいの背の活発な少女を。


「ああ、いましたよ、委員長、確か3年間委員長で学年トップで剣道インターハイ行った子」


「姉なんです、私の」


 ああ、だからかあった時なぜか桜の花の匂いを思い出したのは。いつもなぜか俺の斜め前、席替えあっても何故かどちらかの斜め前だったっけ?なんでだ?まったく接点なかったけどフツメンの俺と校内一の美女では。


「憧れの的でしたよ、うちらの代では、お元気ですか? きれいでしたよね、今でもおきれいなんでしょうね」


 ほんの軽い社交辞令のつもりでそう答えたんだが、彼の次の言葉で絶句した。


「亡くなりました。7年前に」


 マジ!? カンベンして、重いよ、なぜ面接でそんな話をするんですか? どう答えるのが正解なの? 教えてくれ。


「え? そうだったんですか、知らなかったこととはいえ失礼しました。ご愁傷様です」


「なぜこんな事を言ったかといいますと、亡くなる少し前、心不全だったので、全然元気だったんですけど、こう言ったんですよ姉が、『私ねずっと好きだった人がいたんだ、羽村 透って言うんだけどね、高校卒業してからあってないけど、好きだって言えなかった事が心残りなの』って」


 はあ? 意味わからん、まったく話したことないぞ? なぜだ?フツメンのちびの俺になんでだ?かなりパニックになっていた俺に、彼はこう続けた。


「小学校の時に、児童会の書紀だったんですよね? 二人共、それで児童会の会議中にみんなの前で黒板に議録を書いているときに、何度も漢字を忘れて困っているところをさり気なく教えてくれて恥をかかないですんだってのが心に残っていたらしく何も言わないけどすごい心が優しい人なんだって好きになったらしいです」


 マジ? むー確かに中学で自分の能力に諦めるまでは神童だった小学生時代、色んな事にチャレンジしたっけ、書紀もやったなそういえば。でもそんな事を覚えてるのか? 女子ってこええ!


「すいません、丘町の事ってあまり覚えてないんです。申し訳ない」


 そう言って俺は頭を下げた。そこからは通常の面接になり終わった。


「では、結果は後ほど携帯にご連絡します。」


 そう言われて会社を出た俺は、柄にもなく昔を懐かしく思っていた。


「今頃言われてもな、その頃言ってもらえれば今が少しは変わってたかもな」


 そうだよ、なんで言ってくれないかね、タイムリープできねえかな? この歳になって厨二病を発症しちまった俺は、ラノベやネット小説に癒やしを求めていたのだ。リープものや異世界ものは大好物だ。


 そしてそれは唐突に起こった。


 目の前の空間に亀裂が入ったのだ、そしてよくわからない空間がその先に見えていた。もうどうにでも良かった俺は、迷わずその空間に足を踏み入れた儚い希望を願って……。


 だが、俺を待っていたのはエネルギー兵器による爆発だったその爆発によって俺は体の大半を失い、死んだと思ったのだった。



ーーーー世界000 地球歴0125年ーーーーーーーーーーー


 俺のいた世界とは別の平行世界で何故か俺は生きていた。しかもご丁寧に15歳の肉体と人間を遥かに凌駕する身体能力、そして頭の中には俺をサポートしてくれるAIまでいてくれる。まさに完璧、究極の人間だった。そして覚醒した俺の前にいるのはこの世界の研究所所長 ライアンさんだ。


 「無事、AIも起動したようですね。」


 ライアンさんからこの世界の事、そして俺の身に起こったことを聞いた、そしてこれ以上は急成長できない事、しかし俺の世界の過去に戻る事は可能なことを知った。


「そうだよ! 過去に戻れるなら、またあいつのそばに行けるじゃん」


 そう俺は10代の体に途方もない能力を手に入れた。あいつ、桜の事を見守れるじゃんか、よしそうしよう、もっと鍛えてあいつに見合う男になってこっちから告白してやる。


「では軍の訓練を受けさせてください。」


 そうこの世界000は、大きな戦争の真っ只中だった。まず、世界000についてだが、平行世界はこの世界を0として754発見されているらしい、で俺のいた世界は右の0347、この右とか左ってのはよくわからないが進化の同じものが右、違う進化をたどったものが左と分けているらしく俺には理由はわからない。


 それで、この世界も俺のいた世界と同じような進化をたどってきた世界なわけだが、この世界では100年前に石油は枯渇し人類は滅亡の危機にあった。まあよくある話だが資源を求めて最終戦争になったってことだ。そして地球の全人口は6億にまで減ったそうだ、単純に50億人は死んでしまったのだ。生き残った人々は、ものすごく研究したのだろう、遂に高エネルギー物質を発見する。そしてこれは元素の元素になりうるものでまた、人間が自由に操ることが出来ると言う事を発見する。これがナノマシンズと呼ばれるものだ。


 そう、この発見により新たな文明が築かれるのだが、人類は同じ過ちを犯したくなかった。地球国家の誕生だ、一つになることで生き残ったものすべて平等に恩恵を受ける事ができるようになったのだ。


 だが、平和は続かなかった、人間は平和に飽きたのだ。おかしなことだが何不自由なく生きていると人は欲求を抑えられなくなる、何か刺激が欲しくなるのだ。それがある地域で起こった。地球歴0102年のことらしい、独立国家を名乗りだした者たちがいたのだ。新地球連合と名乗り、地球連邦に宣戦布告した彼らは平和に慣れていた地球連邦を次々に撃破し領土を急速に広げていき、今では地球の3分の1は新地球連合のものになっている。


 彼らはナノマシンズを使い、どんどん新しい兵器を作り20年以上も抵抗を続けている。連邦も兵器を進化させているが今まで優位に立つことができていなかったのだ。しかし2年程前、ここの所長ライアンさんはある発見をする、平行世界への行き方だ。亜空間を作り出せれば隣り合う世界に行くことができることがわかった。この亜空間はこちらともつながっているためこの中を移動できれば誰にも見られず敵地へ乗り込むことが可能になり、衛星を亜空間内にとどまらせたり、通信を亜空間経由で行ったりとかなり優位に戦争が可能になった。


 が、しかし連合側は、最終手段に出ることになる、人を送り込むのだ。連邦内で突然、人間がモンスターに変わると言う恐ろしいもので、物理的攻撃に強くそして、破壊することにしか考えられない、一度変化してしまったらもう人間には戻らなくなる。もう完全に非人道的な兵器だった。戦勝者ベクターと呼ばれるそれは、ある特殊な薬によって変化する。敵味方関係なく薬を打たれたものはベクターとなり破壊が終わるまでまさに勝つまで戦い続けるのだった。俺のこの体はベクターを倒すために開発されている実験体なのだそうで、AIチップが埋め込まれた人間も初めてらしい。


 そしてまた連邦軍の目的もベクターの殲滅だ。ベクターを倒すべく、兵器も開発され、日々訓練を受ける。その訓練を受けるのだ、俺は。


 いろいろとこの体の機能について一通りレクチャーを受け、だいたい使いこなせるようになった頃、俺は新兵として連邦軍の訓練所に配属された。


 もちろん、俺の体は試作段階の実験体なので、周りは普通の人間だ。AIを通じてデータが研究所に蓄積されるため、訓練に参加すること及び実戦にいくことも大歓迎と言われているので問題はないが、浮かないかと心配だった、コミュ障出しな俺。


まず最初に入寮することになり、部屋へ着くと、相部屋は俺の他に三人。みんな同じ年くらい15、6歳の新兵たちだ。


「よろしくな、俺はトオル」


「ああ、よろしく。俺はレックス、そしてこっちがマック、あっちがテツオ」


 金髪と赤毛とゲジ眉と覚えておこう。ゲジ眉は日本ぽい感じだな?沖縄かアイヌ人の血でも入ってるのか。


「みんなよろしく!」


 と挨拶して、和気あいあいで過ごせたのはその日だけだった。俺より前に入隊している新兵たちは基礎訓練を終えていて、ある程度体ができていた。そのため次の日から所謂、ブートキャンプってやつに突入する。


 まああれだ戦争映画でありがちの、何週間か体力と精神を極限まで痛めつけ、闘志と連帯感を植え付けるやつだ、サーイエッサーと言えってやつだな。


俺にとっては地獄だった。生まれて50年のほほんと生きてきた奴が規律正しく極限状態の訓練なんて想定外だよ、まじで。ただ、体力的にまったく問題はなかった、この体さまさまだよ。でもね精神的にやられるの辛い、俺褒めて伸びるタイプなんだけどね。


 そんなこんなで、最後の行軍演習が終わり、無事兵隊として務める事ができることになった。


 いやー、行軍の最後に上官が並んで拍手で迎えられた時はキャラじゃねえのに涙出た、みんなと抱き合って喜んだよ、まんまと乗っかっちまったな、作戦どおり一体となったよみんな。


 そして次の日からは、部隊に配属されて、実戦に向かう。俺の部屋のみんなは、同じ隊で、昔日本だったところ今は地形も変わり朝鮮半島と地続きになっている、中国だったところの半分は連合領でつまり最前線なわけだが、なんかわくわくしている俺がいる。


 「金髪も赤毛もゲジ眉もせっかく残ったんだ、明日からも死ぬなよ!」


「その呼び方は確定かよ!お前こそ死ぬなよ!」


そう言いながら輸送機を降りる。遠くで威嚇射撃の音がする。最前線に来たのだ。


 着隊の挨拶もそこそこに、宿舎に荷物をおき、すぐに合流、俺と金髪、赤毛とゲジ眉に分かれる。俺たちはすぐに上官二人と共に偵察任務についた。高機動車風のそれに乗り込み、危険地帯近くまで近づくと、すぐさま車体を隠蔽し、歩いて丘を登り穴を掘り身を潜め偵察する。


「なんでこういうのはアナログなんだ?面倒だな」


 愚痴をこぼすと上官にどやされる。


「黙って偵察してろ、すぐ近くまで攻めてきてるんだぞ。」


「イエッサー」


「いいよ、そういうの」


 意外にゆるい上官なのだった。


 偵察任務は特に変わったこともなく、一日、一日と過ぎていった。そして、何日か経ってそれは起こった。


『マスター、何かが時空を歪ませているようです。亀裂ができます。気をつけてください』


 交代で寝ていた俺はアリスの声で目を覚ます。何事かと眼をAR表示に変え、周囲を索敵する。すると前方に亀裂ができるのを発見する。


「中尉! 前方に亜空間変動のようなものが見えます、うちで誰か来る予定ですか?」


 そう上官に尋ねるが。


「いやそんな話は聞いていない、全員撤退戦準備だ! 敵かもしれない」


 全員、武器を手に塹壕から外に出て、じりじりと下がり始める。


『マスター、会敵します』


 アリスがそう告げた。瞬間、前方の亀裂から飛行艇が現れた。


「敵の輸送艇です」


 金髪がそう叫んだ。俺は連合の飛行艇を初めて目にして、動くこともできず固まっていたけど


「新人! 動け! はやくに高機に乗れ逃げるぞ!」


 そう上官に怒鳴られ、やっと正気を取り戻した俺は、高機動車に向かって走り出した。敵の飛行艇は3機で編隊を組み動き出し、こちらに迫っていた。


 はやくに高機動車に向った仲間が偽装をとき、エンジンをかけてみんなをあおっているところになんとか追いついたのだが、今度は、上官が叫んだ。


 「やばいぞ! ベクターだ!」


 飛行艇の一機から鎖に繋がれた人たちがぞろぞろと出てきているのが見えたが、その先頭が叫んだかと思うと、突然、体が青白く光出し変異し始める、それに伴い、次から次へと変異し始めた。


「ベクターって、元はうちの人間なのか?」


 そう、俺の目の前で変わっていったのは、俺と同じ隊服を着た兵士たちだった。同じ人間が荒れ狂い鎖を引き千切り戦いを求めて前進していく様に驚き、足がすくんだ。俺は彼らと戦えるのだろうか?


 そう、自問自答していると、俺達の後方で亀裂が起こり連邦軍の輸送艇が姿を表す。俺達の通信を聞き、味方が現れたのだ。歩兵隊と戦車が次々に姿を表す。


 歩兵の中に赤毛とゲジ眉の姿も見えた。


「俺たちも、合流だ、ベクターだけは基地まで行かせてはならん。絶対に殲滅する」


 上官にそう命令された俺たちは、カービン型エネルギー銃を手に隊に合流する。


「金髪、クロ、死ぬなよ!」


 目ざとく俺たちを見つけたゲジ眉がそう叫ぶ。


「うるせー! そっちこそな」


 口でこそ軽口を言っていたが、俺は初めてのベクター戦に緊張していた。しかも相手は同じ連邦の人間だ、だがベクターになってしまったものは決して戻らない、しかもベクターには時間制限がある。半日しか持たないのだ、ベクターは半日12時間で体内にできた新しい器官、所謂コアにナノマシンズを圧縮しため続ける。半日ギリギリまで圧縮され続けたナノマシンズは高度のエネルギー体のため特異点をつくる、つまりブラックホールだ、ブラックホールになってしまったコアは周囲2キロ半径を飲み込み消滅する。つまりベクターの周りは何も残らないのだ。


 そんなものが、何体もできてしまったら、大きな街ですら一瞬でなくなるだろう。だからなんとしても12時間以内に殲滅をしなければいけない。そのために、俺達はいるのだ。


 現状、エネルギー銃の徹甲弾でコアを貫くしか方法はない。組織的に、ベクターの足を止め、正確に狙うのだ。もちろん物理的な弾はなんの意味もないベクターには弾かれて効かないのだ。徹甲弾はエネルギーを極限まで圧縮し貫通性だけを追い求めた今のところ最新平気なのだ。


 今のところベクターは8体、変異したばかりだから、青く光っているが時間とともに赤みがかっていき、最終的には真っ赤になる、そうなる前になんとかしなければいけない。前線基地なんか2、3体いれば跡形もなくなる。


「お前たち、行くぞ」


 合流し、俺達、偵察班は1つの隊に組み込まれ、出撃する、ちなみにミサイルとかそんなもんはもう撃っても防御ネットに阻まれて意味がない。爆弾もしかり、エネルギー弾による攻撃しか有効ではないこの時代はゲリラ戦のようなものだ。俺の時代の電子戦が懐かしいぜ。そうこうしてるうちにベクターの目の前、まず戦車からの砲撃で地面に穴を開け、足止めに入る。俺たちは集団でベクターの足を狙い炸裂弾を撃ち続け、ベクターを動けなくする。


 そこに一人のスナイパーが狙いをつけコアを破壊する。そういう算段だが、そうも上手くはいかない、相手の歩兵隊がいるからだ。連合も銃を撃ってくる、それを掻い潜りながら、足止めするわけだ。


「アリス、敵の歩兵隊にターゲットロックオン」


『了解、マスター。敵歩兵隊の中心にロックオンします。』


「金髪! お前の銃の制御を俺に渡せ! 敵にロックオンした」


「了解ターゲットスコープをお前にリンクする」


 金髪のターゲットをアリスの衛星とリンクさせると二人同時に、常人にはできない速さで炸裂弾を撃ち放つ。いく筋ものエネルギーの光が短く尾を引き相手歩兵へとぶち当たる。炸裂音とともに歩兵隊3個小隊が吹っ飛ぶ。


「ホントすげーな、クロのそれ」


「後方支援なら任せろよ!」


そんな事を言い合いながら、ベクターの足止めにはいる。改めて見ると大きさ10メートルはある体躯、とてつもないパワー、そしてあらゆるものを壊していく。もう人間じゃないな、吹っ切った俺は、足に向かって銃を打ち続けた。ここがチャンスとスナイパーがトリガーを引く。一筋の光がコアへと短く伸び突き刺さる。バキイという音とともにコアが割れベクターが動きを止める。そして溶解していくのだ。ためていたエネルギーに耐えきれず。


「次だ、行くぞ!」


 上官の命令により次を倒しに動き出した俺達に、悲痛な叫び声が上がる。


「薬弾だ! 気をつけろ! 当たるとベクターに変わる!」


 そう、連合がベクターに変異させる薬を込めた弾を打ち始めたのだ、俺以外は個人で防御ネットを使えない生身の人間なのだ。


「金髪! 近くによれ! その程度ならネットが届く、みんなも俺の後ろに入ってください!」


そう言ってネットを張りながら、隊員たちに駆け寄る。しかし、他の隊に被害が出ていた、今ここで一緒に戦っていた仲間がベクターに変わったのだ。


「おい、あれ赤毛じゃねえか?」


 そう、俺の斜め後方の部隊に薬弾を受けたものがいた。赤毛だった。突然、唸りだし赤毛はその赤い髪の毛をむしりだし、青白くそしてどんどんでかくなっていきベクターへと変わったのだ。


「赤毛ー! ちくしょうもうだめだ」


 変異したものは戻らない、殲滅するしかないのだ。半数まで減っていたベクターはまた数を増やし、どんどん基地へと迫っていた、基地からも応援がどんどん出てくるが、減っては増えを繰り返していた。まずい、基地を抜けられたら、街に入る。このままではまずい、そう俺は考えていた。しかし、隊のみんなも今まで一緒にいた人間が相手ということもあり、なかなか殲滅できそうになかった。


 「やばいぞ! 徹甲弾が効かないのがいる!」


 誰かが、そう叫んだ。俺はそちらを向いた。確かに2、3体感じが違うのがいた、何か硬そうに見えた。マジかよ。もうどうにかしないとまずいぞ。基地を間近に見た俺はそうつぶやく。


「アリス、衛星を一個落とす、成層圏の中に亜空間転移して、俺の合図で重力を加速させ、隕石としてここに落とせそれしかないだろ」


『それは無謀です。このあたり半径10キロどころの被害ですまないかもしれませんよ?』


「そのくらいのパワーがないとここはだめだろう。頼むやってくれ」


『わかりました、マスター、偵察衛星の一つを上空に転移させます、マスターの合図で加速を開始します。この星に影響がない程度に加減はしますけど』


「ああ、よろしく頼む」


そう言うと俺は上官に駆け寄り、作戦を話す。俺の能力は連邦軍は全員知っているから、理解し、即座に全員撤退し始めた前線基地にいた隊員たちもすべて、亜空間転移し始めたのだ。


 ほぼ、撤退が終ると、連合は意味がわからず、基地の方へ進軍していたのだが、


「なんでお前らがいるんだよ、金髪、ゲジ眉」


「あ、だってよ、赤毛は俺達の仲間だぜ最後くらいは看取りたいだろ」


 そう二人は、目に涙を浮かべていた。ああそうだな、この何週間か一緒に訓練を耐えてきた仲間だな。そう思うと俺も少し涙が滲んでくる。きっついな年寄りは涙腺がゆるい。


「さてアリス、俺たちを亜空間に転移、このまま衛星の加速を開始」


『了解、亜空間に移送完了、衛星落下加速開始』


一瞬、目の前がブレると明らかに通常とは違う空間にいる俺達は、空から隕石が落ちてくるのを見ていた。一瞬のことなので連合軍は何もわからず蒸発半径20キロに渡りクレーターと化したのだった。


 このことは、連邦軍内で機密事項となり、世間では大規模な隕石落下が起きた事になっている。


 俺達は赤毛の冥福を祈り、次の日からも前線で戦闘するのだった。


 かくして、半年が過ぎ俺は〈星落とし〉と通り名までついて、やめないでくれと懇願されたのだが、俺には守らなきゃいけない人がいる。帰らなくては、彼女のもとに。そう強い思いを胸に、帰路の旅へと向かったのだ。


 だが、わからないことがあった、徹甲弾が効かないベクターはあれ以来出ていない。なぜあのときベクターは進化したのか?誰もわかっていないのだ。まあ連合軍は何か分かっているのかもしれないのだが……。


 そして俺は本当に懐かしい80年代のあの場所へとは着くのだった。


ーーーーーーーーー異世界 マリオン王国ーーーーーーーーーー


「だから、俺は未来に行ったんじゃなくて違う地球に飛ばされたの、だから桜の未来なんてわかりません!」


「何だあ、つまんない」


そう俺はお前を守るために強くなって戻ってきたんだ。お前に告白できるように……。だからこの世界でお前を絶対死なせない。


笑ってる桜を見ながら俺はまたそう誓うのだった。

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