溶ける背徳、秘め事の灯

春夏冬

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秘め事の結末

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あまねの胸が強く揺さぶられる。ずっと恐れていた言葉なのに、同時にずっと欲しかった言葉でもあった。

涙でにじむ視界の中、清澄の顔が近づき、彼の熱が確かに触れる距離にある。

「……あまねが望むなら、何度でも言うよ。“俺と付き合ってほしい”って」

切実な響きに、あまねは喉の奥が詰まり、声にならない嗚咽をこぼす。

けれど、清澄はそこで言葉を止めなかった。

「でも……正直、今さら“付き合う”なんて言葉じゃ、俺は足りない」

息を呑むあまねの瞳を、清澄は真剣に覗き込む。


「あまね。俺と結婚して」

その瞬間、胸の奥が熱く跳ねた。信じられない言葉に、あまねは瞬きを繰り返し、震える声を絞り出す。

「……え……?」

頭の中が真っ白になる。夢なのか現実なのか、それすら判断できない。

「そ、んな……急に……」

揺れる声音に、清澄は即座に首を振る。

「俺は、最初からそのつもりだった」

淡々とした響きの奥には、揺るぎない決意が滲んでいた。

あまねの胸の堰は、そこで完全に崩れた。溢れ出した涙が頬を伝い落ち、清澄はその一粒一粒を丁寧に指先で拭い取り、苦笑を滲ませる。


「あまねを抱いたときから、決めてた。……霧翔が在学中って事でまだ言えなかったけど、本当はもっと早く言って、あまねの全部を俺のものにしてしまいたかった」

言葉を受けるたびに、心の奥にあった恐れや迷いがほどけていく。清澄の瞳には、ただ真っ直ぐな未来だけが宿っていた。

「……あとは、あまねの覚悟だけだよ」

静かな囁きに、胸が締め付けられる。

息を整えようとするほどに嗚咽が込み上げ、震える唇を必死に噛みしめる。

「……俺と、家族になってくれる?」

言葉を返したいのに、喉が震えて声が出ない。心臓の鼓動がやけに大きく響き、耳の奥で痛いほど反響する。

ほんの数秒なのに、永遠のように長い沈黙が流れた。

清澄の手が、今にも離れてしまいそうなほど力を失う。その不安に押されるように、あまねは目をぎゅっと閉じ、深く息を吸い込んだ。

そして──大きく頷いた。

「……はい」

その言葉を口にした瞬間、張りつめていたものが一気にほどけ、彼の腕の中で涙が溢れ出す。

けれどそれは、もう恐れや不安の涙ではなかった。未来へと踏み出すための、決意の涙だった。


「清澄さん……私も、あなたを愛してます」






****



新しい春の柔らかな風が吹き抜け、咲き始めた校門の桜がはらはらと舞い落ちる。

清澄はその中、校舎を見上げながら立っていた。

弟の霧翔が無事に卒業を迎え、あまねが教師としても心置きなく清澄と向き合える日が、ようやく来た。

「清澄さん!」

少し駆け足で近づいてきたあまねの声は、嬉しさを隠しきれていない。その表情を見た瞬間、清澄の胸の奥がじんわりと温かさで満たされる。

「来てくださったんですか?」

「うん。さっき霧翔にもおめでとうって伝えたところ。あっちはさっさと友達と打ち上げ行って、あっさりしたもんだよ」

「ふふ、そうですね」

あまねはほんの少しだけ迷い、けれどもう後ろを振り返ることなく、清澄の胸に身を寄せた。

「……これからは、人目も気にせず、こうして清澄さんに触れられるんですね……」

胸元に顔を埋めた声は、まだ少し震えていた。
けれど清澄には、その小さな震えさえ愛しく思えた。

自然と笑みが浮かび、腕を回して強く抱き寄せる。

「私……清澄さんとしたいことが、たくさんあるんです」

「したいこと?」

「はい。外で手を繋いだり、買い物に行ったり……ただ一緒に並んで歩いて……そんな当たり前のことを」

言葉を重ねるたびに、抑えてきた願いが堰を切ったように溢れ出す。清澄は微笑み、あまねの髪を指で梳きながら囁いた。

「……もちろん。あまねのしたい事、これから全部叶えよう」

視線が重なった瞬間、あまねは輝くような笑みをこぼす。その笑顔は、清澄が長い間抱えていた寂しさをすっかり埋めてしまうほどに眩しかった。

固く繋がれたあまねの左手には、清澄が贈ったダイヤの指輪が、光を受けてきらめいていた。










Fin….
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