祝福のキスが、婚約コースに!?【番外編追加】

Hikarinosakie

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不穏【R18】

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"ファルベルス王国”のとある某所。
早朝ーーと言ってもまだ薄暗い中。
その男は口元の髭を整えながら鏡を見ていた。
彼の目は血走り、鋭く、まるでナイフのように尖っている。


「旦那様……タオルを……」
側仕えから、タオルを勢いよく受け取ると、髭剃り後の洗顔した顔を荒々しく吹き上げる。
「ふんっ……!!」

唇が悔しげに歪み、歯を食いしばる。

「許せん……何度思い出しても腸がひっくり返る思いだ……」

側仕えの彼の、眉がピクリと震える。
よく見ると口元は必死に結んでいるが、たまに波打っている。

「月日が経っても夢にまで見る始末……あやつらにも……同じような屈辱を……」

男は、拳を震わせながら、乱暴に扉をしめ、部屋を後にした。

側仕えの彼は、それまで我慢していた口元を緩ませ、そっと安堵の息をついた。






リィナが、こちらに嫁いできて2ヶ月が経った。
うさぎ耳事件のあの日、夜には魔力が回復し、なんとか呪いをといた……のだが。
敵を油断させるために、うさぎ耳がとれても、大勢の前に出る時は、フード生活をすることにしたらしい。

リィナは周りの環境にもなれ。
アストとのハネムーン期も終了し、昼間は自室で過ごすことも多くなってきた。
とはいえ執務の間にもリィナに会いにアストは抜け出して来てくれる……のだが。




「……リィナ……その男は」
目を丸くしたアストが、扉を開けて固まった。
まるで氷づけにされたかのように動きがきごちない。


(どうしたのかしら……)

「あら、アスト。今日も仕事の合間にきてくれたの?」

「リィナ様、お顔動かさぬよう」

「あらごめんなさい、ヒュー」
リィナはヒューに謝ると、鏡の方を向いた。

「いやいやいや、リィナ……どういうことだ。なぜ彼がここに……?」
(確か……彼はリィナの護衛だったはず。出会った時も彼女のそばにいた)

ヒューと呼ばれた茶髪の彼は、整った顔立ちをしており、一瞬、ちらりとこちらに視線を向けるも直ぐにリィナの髪型へと目線を戻す。

彼はアストの国の騎士服に身を包んでいたものの、リィナの髪型を素早く編み込み、合間に花飾りを差し込んでいった。

その手さばきは素人ではない。
もはや立派なプロだ。

まさかこの男と今まで2人きり……!?
ひやりと心が氷のように凍るも、周りを見渡してみると扉の入口にはきちんとメイド達も立っていて、アストは胸をなでおろした。


「あら、……ちゃんと陛下にも許可を頂いていたと思うのだけど、御髪係として連れていくって……聞いてなかった?」
「お、おぐしがかり!?」

(護衛ではなく……!?)

ヒューは淡々と最後の仕上げを終えると、きちりと姿勢を正し、今度はアストの方へ向き直った。


その瞳は、驚きに目を見張るアストの表情を目にして、 どこか察したように少しだけ眉尻を下げ、同情めいた色を宿す。

「本来であれば、こちらから先にご挨拶に伺うべきところ……無礼をお許しください。
ヒュー・アフローテ、29歳になります。本日付で正式に騎士隊へ編入いたしました。以後、お見知りおきくださいますよう」


「あ……いや。父上が許可したのなら、問題はない、のだが。……いや、どこから突っ込んでいいやら……」

アストは呆気にとられながらも、ヒューに手を差し出す。
ヒューはそれに目を見張るも、次の瞬間、目を細めて微笑む。
2人はしっかりと握手を交わしたーー

「よろしく、ヒュー」

「光栄です、殿下。どうぞ、よろしくお願いいたします」

はずだったのだが、一瞬、ぎゅっ……と必要以上の力強さで握られ、アストの眉が寄る。


ヒューの表情は一見、好青年のようににこやかな笑みに見えた。


だが、俺の視線を感じたのか、口端が弧を描き、まるでこちらを試す表情になった。


(こいつ……)

しかし、リィナは2人の様子に全く気が付かず、にこにこ笑みを浮かべていた。

「ヒューは、お父様から下賜された護衛なの。頼りになるのよ」

化粧台から立ち上がり、アストに微笑みかけるリィナは、最高に可愛らしかった。


両サイドを編み込みながらも、髪の長さは保っており、花々が美しく彼女の魅力を引き立てていた。

まるで彼女の魅力を分かっているのは、己だというようなヒューの技術……胸にチリッと痛みが走った。


「……アストエル殿下も、リィナ様に翻弄されておいでのようで……ご苦労さまです」

「ヒューったら……そんなことないわよね、ね、アスト?」

「あ……あぁ」
しかし、ヒューへの複雑な感情はその言葉に掻き消え。
代わりに。
アストの頭には一瞬ーーうさぎ耳に、喜んで無邪気に笑う、あの日の彼女が蘇る。


昼間、城のあらゆる所へこっそりと連れ出され、花畑で座らされたかと思うと、その光景に「可愛いかわいい」と愛でられ……。


さらには、白い壁の向こうから、上半身と頭だけを出して、そっとリィナの方を覗き込むように命じられ……彼女はそれだけで嬉しそうに目を輝かせていた。

無邪気な笑みには心が踊るが、けれど、恥ずかしさと、屈辱と、どこか疼くような甘い痛みに苛まれた日だった。

(彼女には……たしかに翻弄されっぱなしだ……)


それでも、アストがヒューからリィナの方に視線を向けると、ふわりと頬を紅潮させて、笑みを浮かべてくれる。


彼女の微笑みは、忙しい毎日の活力となっていた。
(この笑みに弱いんだよな……)

一方……リィナも。
(アスト……うさ耳……可愛かったな)


彼を見る度に思い出す、あの、可愛らしいアスト。
つい、頬が熱くなってくる。


あまり、言うと怒られるので心の中で思い出しては愛でているのだが。

普段は優しげで男らしいアストだが、動物の耳がついただけでどうしてあぁも可愛らしくなるのか。

「そうだ、リィナ、今夜は仕事早く片付きそうなんだ。19時頃に執務室に来てくれないか?」


「分かったわ……忙しいのに顔を見に来てくれてありがとう」


頬にキスを贈り合いながら、さっと踵を返す。
「あぁ、じゃあまた」

名残惜しげに仕事場へと戻るも、先程のヒューの態度にモヤモヤするばかりだ。


(これは勘だが、……きっと、向こうも、思うところがあるだろう)

だが、リィナは俺の妻だ。
焦ることはないーーそう思うのに、どこか胸がざわついた。


アストが退室したあと、ヒューはリィナに耳打ちをする。

「姫さま……今の殿下は、例の猫耳の方でいらっしゃいますね?」

ヒューの言葉に、リィナは思い出したかのように笑う。

「そうなのよ!……まぁ色々あって……不思議なご縁よね」

「不思議な縁というか……」

(また姫さま、俺の知らないところで何をされたのか……)

「左様ですか……まぁ、陛下が許可された結婚ですから……私からは何も言えませんが」

「まぁまぁ……貴方の言いたいことは分かってるわ。でも、言えないのよ。心配いらないわ。……私、ちゃんと幸せだから」


リィナはヒューに、全てを納得させることは出来ないと、分かっていた。

(ヒューからしたら、不審点だらけだものね……)

でも。根掘り葉掘り聞かれなくてよかった。

まさか、宿屋で祝福のキスをしたご縁で……なんて、何かない限り口が裂けても言えない気がする。

リィナは小さく息をついた。






「まぁ、アストの兄君が?」
「そうだ……今日は珍しく部屋から出てこちらに来てくれるらしい。最近は本当に会わなくて……一体何を考えているのか分からないな」


夜、夕食を共に食べた2人は、執務室にて座っていた。
窓から見える庭園は暗く、ほのかな街灯によって照らされていた。


「遅いな……早く用事を済ませてリィナとゆっくりしたいのだが」

「ふふ、アストったら。最近は忙しかったものね……」

兄の話をする時は、アストが等身大に見えた。
いつもは王子殿下の顔をしている彼だが、家族の話をする時だけは、その表情は柔らかい。
(なんだかんだ、兄君のことを心配してらっしゃるのね)


と、そのときだった。

トントン。

「どうぞ」

ノック音とともに、扉が開かれた。

「兄上、お久しぶりですね。元気にされていましたか」

そこには、黒髪の美形が、立っていた。
黒を基調とした上質な騎士服に、肩口や袖には銀糸の装飾がさりげなく施されている。
腰には細身の剣を携え、胸元には王家の紋章をあしらった銀のブローチが光っていた。

確か名前はユリオス・ベーグブルグ・グラヴィル。
アストは22歳だから、2つ上のユリオスは24歳のはず。そして第1王子キース様は27歳。

ユリウス様は……アストとはまた対象的だ。
アストが、太陽なら、彼は月だ。


(……アストの兄君……似ているようで、全く違うわね)

彼の視線がアストから、私に向けられる。
じっと真っ直ぐに見つめられる視線に、小さく身動ぎする。

(そんなに、見つめられると……ドキッとしちゃうわ)


「お初にお目にかかります。リィナ・アクアリータ・ベーグブルグ・グラヴィルと申します。よろしくお願いします」

ドレスをつまみながら一礼する。
そう、2ヶ月も経つというのに、これが初対面だった。
結婚式では見かけただけで、お話する機会もなかった。

返事を待つも、彼はゆっくりと頷くだけだった。

(あ、あら……?)

怒っている訳ではなさそう。
けれど、アストが言っていた通り。
全く一言も話さない。

そのまま二人で顔を見合せつつも、彼から渡された箱を受け取る。
戸惑っているうちに、踵を返して直ぐに帰ってしまわれた。

「アスト……?なんだったのかしら」
困り眉のリアナが、箱を持ったアストに尋ねる。

「なになに……どうやら結婚祝いの品らしい。……メッセージカードには、どうやら兄上も、見た事はないらしいが、東方で新婚に贈ると喜ばれる、流行りの品だと書いてある」

「まぁ、何かしら。開けてみて?」

「そうだな」

箱の包装紙を破き、アストが箱を開けーー素早く閉じた。
「アスト……??なんだか顔色が悪いわよ」


「い、いや、見間違いか?」


ごくりと飲み込むような音がアストからした。
(一体、贈り物はなんだったのかしら……)

今度こそ二人で箱を開けた。

果たしてそこには……


長い棒が鎮座してあった。



「っ……!!な、な、……兄君、どうしてこれを選んだんだ」

「まぁ、なにかしら……この緑の品物は。……なんだか妙につやつやで……茄子にも似ているけれど」

「艶々って……んん、リィナ……は、分からないのか。……無垢すぎて……可愛い」

「無垢って……もう私も19歳よ、そんなはずないわ」

目を丸くして、けれども怒ったようにアストを見つめる。


「それで怒ってるつもり?その純真な所が可愛い。リィナはそのままでいてくれ。」


ははっと笑いながらアストはリィナの頭を撫でる。


それでも、優しく撫でられると心がぽかぽかと温かくなって、先程までの怒りも消え、嬉しくなってしまうのだから、少しだけ悔しかった。


リィナはそっとため息をつく。

「もう……なんだか、アスト、私の事純真無垢だと思ってるようだけど……そんなことないのよ?」

「はいはい……。ところで……むしろ兄上が知らないことの方が衝撃かもしれない」

「だから、これは何?……焦らさないで」

蚊帳の外みたいに感じられて、ぷくっと頬を膨らませると、アストが「可愛いっ」と言って抱きしめてきた。

違う違う、そうじゃなくて、箱の中身が知りたいのだ。

これじゃあいつまで経っても教えてもらえなさそう。



と、思っていたのに。

「え?……え?アスト?」



はだけたドレスを、身にまとい、リィナは潤んだ瞳でアストを見つめる。


胸を隠そうとすると、アストにとめられた。

「……リィナが使いたいっていうから」
「えっ……と、でも、どうして脱ぐ必要があるの?」


執務室の重厚なテーブルにリアナは座り、彼女の太ももの間にはアストが身体を滑り込ませ、リィナの胸元にキスをした。

「きゃあっ……アスト、……まさかこんなところで?」
「リィナが悪い。……散々煽るから」
「煽ってなんか……」


新婚夫婦が使うものだと教えたら、リィナがどうしても、知りたいと言うから。

「直接身体で教えるよ、リィナ……」
そう言ってゆっくりとアストが唇で、リィナの頂きに、優しく触れた。


「んっ、アスト」


頬を真っ赤にさせて、リィナが観念したようにアストの肩に手を置く。

しっとりと吸い付くように、それでいてどこか楽しそうに、リィナが息を乱す度にアストは嬉しそうに微笑む。

(なんで……こんな……アストに触れられるだけで、熱くなってくる……)

首筋にちゅっと甘いキスをされる。
アストの口元から熱い吐息を感じた。


色気がある彼の艶っぽい表情に、リィナの下腹部がきゅうっと甘く疼く気がした。
アストにしがみついている指先も小さく震える。

「あ……やっ……」
アストの唇は、首筋、鎖骨、胸元へと這い降りていく。

ドレスの布地がするりと上がり、太ももに冷たい空気が触れたかと思うと、次の瞬間にはアストの手が優しく肌を撫でていた。

(触り方が……)

はっ、吐息が漏れてしまう。
私が声を我慢していると、アストが笑う気配がした。


優しさが滲むような笑い方で、リィナはきゅうっと胸が締め付けられる。

(そういう所が……好き)

(まるで、……私の事可愛くて仕方ないって言うような……笑い方が)

アストの気持ちが擽ったくて、でも嬉しくて。
心にじんわりとした幸せな気持ちが広がる。


「リィナ……祝福のキス……残ってるよね?」

「あ、えぇ……残ってるわ」

アストの、問いに戸惑いながらも、小さく頷く。

この国ではまだ、救済活動をしていない。

そういえば国王様たちは私の力を知っているのだろうか。


「じゃあ、今日は諦めて」

「……分かったわ……」

(キスはなし……ってことよね?)

その事に、ほんの少しだけ寂しさを感じてーーリィナの、唇が小さく震えた。

だが。

頬にアストの、手が触れたかと思うと。


ーーちゅっ。


「きゃぁ……ぁんっ……!!」


キスをされたその瞬間、驚きで目を見張るリィナ。

同時に耐え難いほどの快楽の海に襲われて、声を上げながらびくびくと身体を震わせた。

体の奥の、熱が一気に高まる。

「くっ、……っ……リィナの祝福のキス、相変わらず凄いな」
びりびりと腰が疼くような、焼け付くような甘くて重い快楽が、アストにも襲いかかる。

「あっ……身体が……やっ、」
執務室の重厚なデスクの上で、リィナは思わずアストにしがみつき、何度も快感をいなすように短く息を吐いた。

「もう……あ、どうして?……諦めてなんて言うから……てっきり」

先程の快楽で高まった身体の熱さに、息を乱しながらも抗議する。
その瞳はすっかり潤んでいた。
頬は赤く染まり、息を乱す彼女に、アストは目を奪われる。

「祝福のキスを残すことを諦めてくれってことだったんだ……すまない。リィナ……」

優しく肩を滑らせるように触れると、リィナはそれだけで恥ずかしそうにこちらを見つめてくる。

(リィナの顔だけで……気持ちが上がるのに。祝福のキスまでされたら……)

(襲いたくなる。……がむしゃらに彼女のからだを貫いて、いじめて、泣いても離してやれないような……)

そんな、衝動性と、戦っているとは、まさかリィナも分からないだろう。

額から汗が流れ落ちるのがわかる。

(まだ……だ。リィナに気持ちよくなってもらいたい)
1度瞑目し、再びリィナに視線をやる。

「リィナ……今からすることは、俺たちだけの秘密だ」
「え?……ぇえ、もちろん」

(よく分からないけど……秘密って言われたら……ドキドキしちゃう)

戸惑いながらもこくんと頷くと、ふっと、優しい眼差しでアストに、抱きしめられる。
そのアストは、先程の贈り物を持って、なにやらボタンを押したようだ。


ぶぅううううん……。
低音で、細かく振動したその品を、リィナに、向ける。

キョトンとしたリィナに、アストは笑いかける。
「リィナ……逃げちゃダメだよ?」
そう言ってアストはリィナの背中に腕を回した。



「きゃうっ……!!」
それを脚の付け根に軽くあてがう。
アストの、思わぬ行動に、止める暇も無かった。


「ぁあっ……アスト……だめっ……やぁ」

これが正しい使い方、なの?


リィナは愕然とした。


(まさか……あの、クールで爽やかな顔をしたユリウス様が、こんなものを私たちに……?)


「リィナ……可愛いな。蕩けた顔よく見せて」

「ひゃあっ……だめぇえ……ぁあ……」
思わず情けない声が零れる。

それは、小刻みにぶるぶると震えて、リィナの身体の奥へ、直接届くような甘い刺激を送り込んでくる。

「や……っ、あ……!あっ……アスト……ぁん」
「声……我慢しなくていいから」

細かく震えるものが、弱いところを探るように押し当てられて。
リィナはきゅうっと脚を震わせ、アストにしがみついた。

アストも、そんなリィナの痴態を見せられ、これ以上ないほど昂るのがわかる。

「リィナ……君、今どんな顔してるかわかる?」
「いや……ぁあっ……見ないで……」


感じすぎて太ももをきゅっと閉じたくなるも、アストがそれを許してくれない。

ぎゅうっと、足に力を入れてアストに抱きつく。
生理的な涙が、瞳からじわっと溢れ、頬にこぼれ落ちる。

「リィナ……いつもは君が俺で遊ぶから、今度は俺が君で遊ぶ番だな」

「遊ぶなんて……そ、そんなこと、……」


あまりの快楽に腰が引けそうになるも、アストが阻止するように、リィナの腰に手を回し、ぐっと力強く固定している。

そのため、アストがソレを押し付ける度にびくびくと震えることしか出来ない。


「やぁ……あ、あっ、アスト……これ、だめぇ」

強い刺激に、ぎゅっとアストの服を握りしめる。


(ぁあ、うそうそ、……もう……いっちゃう)

アストを見ると、優しい眼差しで……。
きゅうっと心が締め付けられ。

「ぁあっ……!!」

アストを見ながら、びくんびくんと腰が震え、高みへと導かれた。
しかし、その最中にも、容赦なくアストはぐりっとそのまま押し付けてくる。


「今、いってるから……やだぁっ……あっ!」
敏感になった所へ刺激を受けて、気持ちいいというより辛くなる。


「いや、アスト、お願い……っ」

「リィナ……泣くほど良かったのか?」


そんな彼女の様子を見たアストは、困ったように眉を下げた。
(やり過ぎたな……)
ついつい、うさ耳で、散々遊ばれたあの時のお返しとばかりに、意地悪しすぎた。

それというのも、彼女の反応が可愛すぎたのだ。

「アスト……」


そう言って、彼女が懇願するように俺の名前を読んだ。

リィナから、すりっと頬ずりをされて、抱きしめられる。

「もういじめないで」
「ごめん……リィナ」


どうやら少し呼吸が落ち着いてきたようだ。
まだまだ力が入らないリィナを抱き上げる。


「きゃっ、……え?、なに?」

そうして、隣りのソファまで連れていき、押し倒した。


「え……あ……まさか、ここで?」


よく考えたらここは執務室だ。


先程までの自分の痴態を思い出して、リィナは身体が熱くなるのを感じた。


(どうしよう……誰かきたら)

再び、ぶわっと頬が赤くなり、リィナの視線が揺れる。


甘い吐息が漏れ、それでも期待に目が潤んでいるようにも思える。

(リィナ……意外と……こういうシチュエーション好きなのだろうか)
ふと、彼女のそんな様子を見たアストは、愛らしく感じてリィナの頬に手を当てて温もりを感じた。

「すきだよ、リィナ」

「うん……私も好き」
戸惑うように、けれどもはっきりと言葉にしてくれる。

(……また今度、リィナの期待にこたえてやらないとだな)



そんなことを考えられているとは知らないリィナは、ドキドキと高鳴る心臓を感じていた。


スカートがアストの手によってゆっくりとめくれられ、下着の紐をするりと外される。

余裕のないその手つきに、アストを見る。
彼の熱い眼差しに、自然と足を広げていた。

「リィナ……濡れてる。……足も自分で開いて……大胆だな」
「だ、だって……恥ずかしいけど……私も、アストが欲しくて」

「くっ……そんなこと言われたら」

余裕を失ったアストは、自身の昂りを取り出すと、リィナの、奥まったそこにあてがう。


「あ……アスト……優しくね?」

「あぁ……もちろん」

先端だけで入口を揺する。
リィナが甘い声を上げながら、アストを抱きしめた。

「リィナ……」
それは無意識だった。
彼女の奥に進むと同時に、つい、キスをしてしまったのは。


「きゃっあっ……ぁあっ……!」
「くっ……やばい」


腰から一気に快楽が広がり、2人はびくびくと身体が揺れた。


かと思えば、アストが、タガが外れたかのように、腰を動かす。


「あ、……あっ、……ふぁっ……アスト、気持ちいい」
「んっ……リィナ……中、熱くて、からみついてくる」


ソファという狭い所ながらも、2人が抱き合うようにしてその存在を確かめあった。


男らしく眉を寄せながらも熱に浮かされたような眼差しで私を見つめてくるアストに、きゅんと胸が高鳴る。


(私……アストの感じてる顔好き……)

「あっ、……ふぁっ……好き、好きなの」


彼に甘く揺さぶられ、優しく抱きしめられると、心に幸せな気持ちが広がって、自然と身体は彼がもっと欲しくてたまらなくなり、求めてしまう。


「俺も、リィナが、たまらなく好きだ」

首筋をキスをされ、時折吸われながらも、腰の動きはとまらない。


(やだ、……私、また……)


どんどん気持ちが、身体の熱が、高まり、……。

アストの背中に、回していた指先に、きゅっと力が入る。

それだけで分かったらしい。

ふと笑う声が耳元で聞こえた。

「リィナ……限界……?」
「ど、どうして分かるの?……きゃあっ!……ぁっん」


いきなりキスをされ、リィナは電撃を身体に受けたかのような強い快感を感じながらいってしまった。
自然とぎゅっと目を閉じてしまう。

「くっ……リィナ、リィナ」
アストが、今までにない程腰を動かし、そしてーー。
アストの熱がじんわりとリィナの中に広がったのを感じた。

(アストの……)


終わったあとも、アストはゆるゆると腰を動かし……その度に温かいものを、リィナの中は感じとった。

(赤ちゃん……欲しいかも)
ふと湧き上がる気持ち。

アストの首筋に顔を埋めるながら、リィナの足はアストの身体にからみつく。

「リィナ……?」
アストは、今までにない行動をするリィナを不思議に思って彼女の表情を伺った。

「ふふ、アストとの赤ちゃん欲しいなって……」


そういってふんわりと笑う彼女をみたら、昂りがまた熱を持つのが分かった。


「リィナ……」
額にそっとキスをすると、リィナは嬉しそうに口元が緩んだ。

しかし。

「リィナ……またしたくなった」
そう言ったら。

「え……?」
リィナは驚きに目を丸くした。
「え?ちょっと……?」

慌ててアストの腕から逃げ出そうとしたリィナだったが、窓辺の前で捕まってしまった。


「リィナ……そうか、ここでしたかったんだな」

「やぁっ……違う、ちがうからっ……ぁあっ」


叫びも虚しく、窓辺に手をついた状態でアストのものを受け入れた。


「リィナ……そんなこと言って、ここは喜んでるみたいだけど」
「きゃうっ……アスト……ぁっ……ぁあっ」


そう言ってドレスを着たまま、甘く、奥まで腰を打ち付けられ。

それから贈り物で、また、前をもてあそばれたりと。

散々な夜となった。

「あ、アストの、ばかーー!」

(でも、……たまには、いつもとは違う場所もいいかも)

リィナの声が、闇夜に甘く溶けていった。








ーーーーーーーーーーーー
ブクマ、ハートありがとうございます!
期待に応えたい思いで頑張りました^^
次をお楽しみに
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