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⑧偶然だね?
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「お昼ご飯どうしよう」
あれから、結局寮の一室に戻ったアリセアだったが、考えこみすぎたのかいつの間にかベッドの上で寝てしまっていて。
身体が、疲れていたようで、時刻は13:00だ。
「すっかり寝ちゃった」
気だるい身体を起こし、うーんと身体を伸ばす。
ベッドサイドにあるお水を口に含んで、髪をといた。
今頃ユーグスト殿下は何してるだろう。
ご公務だから、昼間は誰かと会って話している可能性が高い。
通信機能が付いた腕時計をつけているし、朝の男性のことを相談するためにも、通信してみようか、なんて思ったのだけど。
「邪魔にはなりたくないし、せめて夜にしてみようかな」
そもそもそのための魔道具を、ユーグが公務先に持っていっているのかも分からないけど。
さてと。
気持ちを気を切りかえて、今度は外出する相談を、殿下の従者、ヤールにしようと思ったのだが……。
よく考えたらヤールも、寮住まいかな?
男子寮の中にある寮母さんがいる受付窓口にまで入るのは、なんだか抵抗がある。
女性はもちろん勝手に中には入れないだろうし。
うーん、男子寮の近くまで行ったら、だれか男性生徒が付近にいるかもしれない。
その人に言付けを頼む?
それが一番名案に思えた。
腕時計にはヤールの登録はないから、今度教えてもらおうかな?
アリセアはそうと決まったらすぐに用意して、今度は男子寮の近くまで行くことにした。
「休みだから皆、この時間になったら意外と外で遊んでるのね」
周りを見渡すと、生徒がやはりちらほらいて。
寮住まいの生徒は、外出しなくても過ごせるようにちょっとした憩いの場も設けてあり、遊び道具もそろっているので、時間は潰せる。
食堂の横にも、休日のみ稼働しているカフェもあるのだけど。
やっぱり外の空気も吸いたくなるわけで。
散策がてら、お昼ご飯を外で食べたいなと思ったわたしは、男子寮の方へ向かった。
*******
「晴れて良かったね?」
どうしてこうなったのだろう。
私の隣で、鼻歌を歌いながら歩いているのは、皆様の想像通り?フォートである。
寮に近づいた途端、アリセア~!と大声で叫ばれて。
気がついたら、馬車に乗って市民が暮らす街へと繰り出していた。
このクォーニァ街は、馬車で30分ほど。
学園から少しだけ遠いが、平民や学園の貴族も立ち寄る大きな街である。
大きな広場を中心に十字に別れた交差した道を起点として、屋台やカフェ、スイーツ、食堂、居酒屋、武器や等、あらゆるお店がズラっと並んでいた。
「あれ、ここってお花屋さんがなかったかしら」
アリセアが、ふと立ち止まり、周囲を見渡して違和感に気がついた。
そこはぽっかりと空き地になっていて……。
記憶を辿るように、ぼんやりとした街なみを、思い返す。
懐かしい……でも、理由は思い出せない。
胸の奥に、小さな痛みのようなものが走る。
まるで何か大切なものが抜け落ちたかのような。
「アリセア、そういう何気ない景色を覚えているところ……素敵だね。視点がやっぱり、女の子だな」
フォートが目を細めて楽しそうに笑いかけてきた。
そう言われると、なんだか気恥ずかしくなった。
「アリセア何食べる?」
「うーん。そうだね」
隣のフォートをちらっと、見上げると、眩しそうに街を見渡していた。
話を聞くと、来たのは久しぶりらしい。
普段学園の人も訪れる近場の町は正反対にあって、10分で行ける距離である。
なので生徒もそちらの方が気軽に行けるのだ。
それにしても。
今日も、彼が私の隣にいるとは、……これではなんだかいつもと変わらない一日になりそうで、アリセアは少しだけ苦笑した。
「食べたいもの、特に考えてなかったのだけど。パスタとか、……何か甘いものかなぁ」
「それなら先日他のやつに聞いた人気店はどうだろ。最近学園でも話題になってる」
「じゃあ。そこにしましょ」
フォートはこの社交力を活かした情報収集が、得意らしい。
今から行くカフェは、薔薇の形のアップルパイが人気らしく。
歩きながら話していると知らないことばかり教えてくれるのだが。
「ヤールに聞かなくて大丈夫だったかしら」
無意識に呟いた小さな声が、どうやら耳に届いたらしい。
「ヤールって、あの殿下の付き人?なんでわざわざ聞く必要がある?」
眉を寄せて困惑した彼の言葉に。
「ん~なんて言ったらいいか」
まさか倒れたあの日から記憶をなくして、色々あって、心配されているとは言えないし。
「あぁ。殿下が、心配性だから?"アリセア嬢”も大変だな」
「ん……そうね、そんな感じかしら」
詳しく話すことは無いよね。
心配かけないようにお昼ご飯食べたらすぐ帰ったらいいし。
「まぁ、今日は俺が一緒にいるし、アリセアの護衛は任せろ」
「え?あ、ありがとう」
確かに女性のひとり歩きよりはフォートのように強いひとがいてくれた方が助かる。
でも、後日にでも、勝手に外出したことを、殿下たちに謝らないと、と思った矢先。
遠くの方に、人だかりが見えた。
私の場所からは人が小さく何が起こっているのか全然分からなかったのだけど、
「あれ、もしかして」
フォートが、眉を寄せながら首を傾げた。
「ユーグスト殿下なんじゃ?」
「ぇえ?!」
アリセアは、フォートの言葉に目を開き驚く。
それが本当なら、フォート、目が良すぎ!
お店がそちら方面だということで、私達も必然的に人だかりに近づく事になった。
果たして、フォートの言った通り、そこにはユーグスト殿下がいた。
「殿下、ここが市民の憩いの場の、今大人気のカフェでして、地元でとれる魚や、お肉。そしてお花や果実を使ったお菓子を作っています」
「知らなかったな。最近オープンされたのですか?」
「はい、オープンして1ヶ月です。春になると……ちょうど最近ですね。"山あか”という、さくらんぼの1種が、山で実り、それがまた香りも良いのです。こちらは通常のさくらんぼとは違い、あまり量は取れません。が、お菓子やケーキのアクセントにとても重宝しております」
「それは……1度食べてみたいものだ」
「はい、宜しければこの後ぜひ」
どうやら殿下は市長と話をしているようで、彼が地元の名産品を紹介したり、街の様子を熱心に説明をしていた。
今日のユーグは、濃紺の長いロングコートを着ており、淡いグレーのシャツと白いスラックス姿に、ブーツをあわせた格好で。
学園で見る格好とはまた違い、きらきらしているように感じる。
穏やかに受け答えをするユーグに、群衆に混じり、アリセアはドキドキして、見ていたのだけど。
「アリセア!どうする?」
すぐ近くの耳元で、フォートの小さな声がする。
「うん……だよね」
私もなんて答えていいか分からず途方に暮れる。
フォートによると、私たちがこれから行こうとしていたカフェに、殿下も入るようだ。
ユーグが公務で訪問したカフェに、婚約者でありながら、呑気にカフェに訪問することは出来ない気がする。
「殿下がこっちに気がついたら……おそらくアリセアも公務に巻き込まれる」
「え?」
「殿下は嫉妬深いってこと」
「……??まさか!そんな事はないよ」
嫉妬云々も意味が分からなかったが、それと公務となにが関係しているのか。
こそこそどうするか2人で話していたら、
いつの間にか周りが静かになっていて。
「……?」
なに?
アリセアは顔を上げて周りを見渡した。
気がつけば、群衆の視線が一気に自分に注目されていて。
「アリセア」
なんとユーグストも、じっとこちらを見ていたのだ。
「……?!」
「偶然だね?」
彼は花が綻ぶような顔で笑いかけてきたのだった。
あれから、結局寮の一室に戻ったアリセアだったが、考えこみすぎたのかいつの間にかベッドの上で寝てしまっていて。
身体が、疲れていたようで、時刻は13:00だ。
「すっかり寝ちゃった」
気だるい身体を起こし、うーんと身体を伸ばす。
ベッドサイドにあるお水を口に含んで、髪をといた。
今頃ユーグスト殿下は何してるだろう。
ご公務だから、昼間は誰かと会って話している可能性が高い。
通信機能が付いた腕時計をつけているし、朝の男性のことを相談するためにも、通信してみようか、なんて思ったのだけど。
「邪魔にはなりたくないし、せめて夜にしてみようかな」
そもそもそのための魔道具を、ユーグが公務先に持っていっているのかも分からないけど。
さてと。
気持ちを気を切りかえて、今度は外出する相談を、殿下の従者、ヤールにしようと思ったのだが……。
よく考えたらヤールも、寮住まいかな?
男子寮の中にある寮母さんがいる受付窓口にまで入るのは、なんだか抵抗がある。
女性はもちろん勝手に中には入れないだろうし。
うーん、男子寮の近くまで行ったら、だれか男性生徒が付近にいるかもしれない。
その人に言付けを頼む?
それが一番名案に思えた。
腕時計にはヤールの登録はないから、今度教えてもらおうかな?
アリセアはそうと決まったらすぐに用意して、今度は男子寮の近くまで行くことにした。
「休みだから皆、この時間になったら意外と外で遊んでるのね」
周りを見渡すと、生徒がやはりちらほらいて。
寮住まいの生徒は、外出しなくても過ごせるようにちょっとした憩いの場も設けてあり、遊び道具もそろっているので、時間は潰せる。
食堂の横にも、休日のみ稼働しているカフェもあるのだけど。
やっぱり外の空気も吸いたくなるわけで。
散策がてら、お昼ご飯を外で食べたいなと思ったわたしは、男子寮の方へ向かった。
*******
「晴れて良かったね?」
どうしてこうなったのだろう。
私の隣で、鼻歌を歌いながら歩いているのは、皆様の想像通り?フォートである。
寮に近づいた途端、アリセア~!と大声で叫ばれて。
気がついたら、馬車に乗って市民が暮らす街へと繰り出していた。
このクォーニァ街は、馬車で30分ほど。
学園から少しだけ遠いが、平民や学園の貴族も立ち寄る大きな街である。
大きな広場を中心に十字に別れた交差した道を起点として、屋台やカフェ、スイーツ、食堂、居酒屋、武器や等、あらゆるお店がズラっと並んでいた。
「あれ、ここってお花屋さんがなかったかしら」
アリセアが、ふと立ち止まり、周囲を見渡して違和感に気がついた。
そこはぽっかりと空き地になっていて……。
記憶を辿るように、ぼんやりとした街なみを、思い返す。
懐かしい……でも、理由は思い出せない。
胸の奥に、小さな痛みのようなものが走る。
まるで何か大切なものが抜け落ちたかのような。
「アリセア、そういう何気ない景色を覚えているところ……素敵だね。視点がやっぱり、女の子だな」
フォートが目を細めて楽しそうに笑いかけてきた。
そう言われると、なんだか気恥ずかしくなった。
「アリセア何食べる?」
「うーん。そうだね」
隣のフォートをちらっと、見上げると、眩しそうに街を見渡していた。
話を聞くと、来たのは久しぶりらしい。
普段学園の人も訪れる近場の町は正反対にあって、10分で行ける距離である。
なので生徒もそちらの方が気軽に行けるのだ。
それにしても。
今日も、彼が私の隣にいるとは、……これではなんだかいつもと変わらない一日になりそうで、アリセアは少しだけ苦笑した。
「食べたいもの、特に考えてなかったのだけど。パスタとか、……何か甘いものかなぁ」
「それなら先日他のやつに聞いた人気店はどうだろ。最近学園でも話題になってる」
「じゃあ。そこにしましょ」
フォートはこの社交力を活かした情報収集が、得意らしい。
今から行くカフェは、薔薇の形のアップルパイが人気らしく。
歩きながら話していると知らないことばかり教えてくれるのだが。
「ヤールに聞かなくて大丈夫だったかしら」
無意識に呟いた小さな声が、どうやら耳に届いたらしい。
「ヤールって、あの殿下の付き人?なんでわざわざ聞く必要がある?」
眉を寄せて困惑した彼の言葉に。
「ん~なんて言ったらいいか」
まさか倒れたあの日から記憶をなくして、色々あって、心配されているとは言えないし。
「あぁ。殿下が、心配性だから?"アリセア嬢”も大変だな」
「ん……そうね、そんな感じかしら」
詳しく話すことは無いよね。
心配かけないようにお昼ご飯食べたらすぐ帰ったらいいし。
「まぁ、今日は俺が一緒にいるし、アリセアの護衛は任せろ」
「え?あ、ありがとう」
確かに女性のひとり歩きよりはフォートのように強いひとがいてくれた方が助かる。
でも、後日にでも、勝手に外出したことを、殿下たちに謝らないと、と思った矢先。
遠くの方に、人だかりが見えた。
私の場所からは人が小さく何が起こっているのか全然分からなかったのだけど、
「あれ、もしかして」
フォートが、眉を寄せながら首を傾げた。
「ユーグスト殿下なんじゃ?」
「ぇえ?!」
アリセアは、フォートの言葉に目を開き驚く。
それが本当なら、フォート、目が良すぎ!
お店がそちら方面だということで、私達も必然的に人だかりに近づく事になった。
果たして、フォートの言った通り、そこにはユーグスト殿下がいた。
「殿下、ここが市民の憩いの場の、今大人気のカフェでして、地元でとれる魚や、お肉。そしてお花や果実を使ったお菓子を作っています」
「知らなかったな。最近オープンされたのですか?」
「はい、オープンして1ヶ月です。春になると……ちょうど最近ですね。"山あか”という、さくらんぼの1種が、山で実り、それがまた香りも良いのです。こちらは通常のさくらんぼとは違い、あまり量は取れません。が、お菓子やケーキのアクセントにとても重宝しております」
「それは……1度食べてみたいものだ」
「はい、宜しければこの後ぜひ」
どうやら殿下は市長と話をしているようで、彼が地元の名産品を紹介したり、街の様子を熱心に説明をしていた。
今日のユーグは、濃紺の長いロングコートを着ており、淡いグレーのシャツと白いスラックス姿に、ブーツをあわせた格好で。
学園で見る格好とはまた違い、きらきらしているように感じる。
穏やかに受け答えをするユーグに、群衆に混じり、アリセアはドキドキして、見ていたのだけど。
「アリセア!どうする?」
すぐ近くの耳元で、フォートの小さな声がする。
「うん……だよね」
私もなんて答えていいか分からず途方に暮れる。
フォートによると、私たちがこれから行こうとしていたカフェに、殿下も入るようだ。
ユーグが公務で訪問したカフェに、婚約者でありながら、呑気にカフェに訪問することは出来ない気がする。
「殿下がこっちに気がついたら……おそらくアリセアも公務に巻き込まれる」
「え?」
「殿下は嫉妬深いってこと」
「……??まさか!そんな事はないよ」
嫉妬云々も意味が分からなかったが、それと公務となにが関係しているのか。
こそこそどうするか2人で話していたら、
いつの間にか周りが静かになっていて。
「……?」
なに?
アリセアは顔を上げて周りを見渡した。
気がつけば、群衆の視線が一気に自分に注目されていて。
「アリセア」
なんとユーグストも、じっとこちらを見ていたのだ。
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