3 / 247
0 序章
3 前世?
しおりを挟む
夜が明けてから、明るくなった湖面をもう一度覗きこんだ。
(何だか、幼い‥‥‥)
月明かりだけのぼんやりとした輪郭よりもはっきりと、幼いステラが映し出された。
ゲームのイメージ画像から受ける印象よりもずいぶん年下に見える。
ゲーム開始時は16歳ぐらいだったような‥‥‥
(まだ、子どもなんだ‥‥‥一体何歳なんだろう?小学生ぐらいなのは間違いないけど‥‥‥でも面影がある。ヒロインだもん、やっぱり、美形だわ。)
自分の顔のはずなのに、なぜか他人のように見える。
前世ではもっと平凡な顔立ちだったはず。
陶磁器のように白く滑らかな肌。
卵型の顔立ち。
大きな瞳と細く高い鼻梁。
絹のように滑らかな輝きを放つプラチナブロンドの髪。
一見すると人形のように整いすぎていて冷たい印象を与えかねない顔立ちなのに、少し厚めの聖女に似つかわしくないセクシーな唇がバランスよく収まり、顔立ちに愛嬌とアンバランスな魅力を添えていた。
でも何よりも印象的なのは、その瞳。
中心部の藍色が金色で縁取られた金環の瞳は、身体のどこかに金環を持つ聖女の中でも最高位であるとされていた、はず。
一晩中痛みと寒さに苦しめられ、疲れを残す今ですら、その瞳は明るく人を癒す星のように輝き、見る人を魅了する力を持っていた。
(本当に、こんな瞳があるんだ‥‥‥今まで、黒とか茶色の目しかいなかったからな‥‥‥)
ズキン!鋭い痛みが走る。
(痛い。前世を思い出すと頭痛がするのかな)
まるで見えない存在から警告を与えられているかのように、前世に思いを馳せるのが恐ろしい。
(前世だってことだけはわかるけど‥‥‥いや、記憶があるんだから、前世ってことで合ってるんだよね?)
ゆっくりと瞼を閉じる。
そう、ここはゲームの世界。
なぜか分からないけど、確信がある。
そして、そのゲームに夢中になっていたのは‥‥‥妹?
ああ、そうだ妹だ。
高校2年生の‥‥‥ズキン‥‥‥愛理!
愛理が大好きなゲームだって言ってたな。
聖女なヒロインがあちこちのイケメンを攻略するゲームだって聞いて、それってテンプレじゃんって笑って話を聞かなかった覚えがある。
こんなことになるなら、ちゃんと話を聞いておけばよかった。
でも、イラストは綺麗だなって思ったからスチルは時々見せてもらってたんだよね。
確か全年齢版とR18版があって、年齢制限があるから代わりに買ってきてくれって頼まれたんだっけ。
お金払うからお願いって。ネットではR18版じゃないと本当のストーリーがわからないってコメが多いからとか言ってた。
お母さんにバレたら殺されるからダメ、って言って断ったなあ。
ふくれっ面してたけど、まあ、社会人的にはねぇ?
ズキン
あ、そうだ前世では社会人だった‥‥‥
そう、入社して1年?5年?それとも10年?わからない‥‥‥
彼氏もいたし、仕事も楽しいし、充実していたような、気がする。
ああ、でもそれ以上は思い出せない。
あの日、そうだ愛理と一緒に買い物に出かけたんだ。
愛理が新しい服を買いたいから付き合って、って。
可愛い愛理。年の離れた私の妹。
物心ついたときからずっとお姉ちゃん子だった。
いつも「お姉ちゃん、お姉ちゃん」ってじゃれついてきてかわいかったんだよね。
大人になったら一緒にお酒を飲もうねって約束してたんだ。
髪が‥‥‥長かったなあ。くしゃっと笑う笑顔がめちゃめちゃ愛らしくて。
そんな子がR18ゲームに興味を持つようになったんだって思ったこともあったなあ。
そう、思い出した。
あの日、私の前を白い猫が通り過ぎた。足元をすっと通り抜けられたから、よろけて‥‥‥
そうだ!よろけた時にちょうどこっちに車が突っ込んでくるのが見えたんだ。
とっさに私を支えようとした愛理を突き飛ばしたら、反動で車に向かって頭から突っ込むような形になっちゃったんだ。
ズキン。
ああ、そうだ、思い出した。
あの音、痛み、匂い。
愛理の身を裂くような叫び声。
私は車に轢かれたんだ。
「車に轢かれたら異世界転生」なんてテンプレあるわけないでしょって笑い飛ばしてたけど、現実になると笑えない。
一瞬たりとも面白いとか、ワクワクするとか思えない。
私には私の生活があったはずなのに。
家族も恋人も仕事もみんななくなってしまった。
しかも、子どもに転生するって、それはそれで、不安になる。
誰もいない小屋の中に殴られて転がされている子どもが幸せだとはとても思えない。
転生したってことは、世界も違うんだよね‥‥‥?
言葉や生活習慣とか適応できるんだろうか。
でも、何よりも。
「愛理泣いてるだろうなぁ・・・」
今まで自分が努力して築き上げてきた社会生活や仕事が全部なくなってしまったことは残念に思う。
それ以上に、家族と二度と会えないだろうことがつらい。
目の前で私が車に轢かれる瞬間を目撃してしまっただろう愛理のことを考えると、心配と悲しみで胸が潰れそうになる。
耳に残る愛理の叫び声。
助けを求めて叶わない絶望に満ちた声だけが耳に残る。
でも、もう戻れないだろう。
私がここにいるってことは、もう死んでしまったってことなんだろうな。これからはここで生きていくしかないんだ‥‥‥
陽は昇り、辺りを燦々と照らし始めていた。
湖は光り輝き、森が目覚める。
新しい1日が始まる。
風が髪を撫で、世界が新しく生まれ変わったことを知らせてくれた。
(頑張ろう。ここで頑張って生きていこう)
そう、決めたんだ。
(何だか、幼い‥‥‥)
月明かりだけのぼんやりとした輪郭よりもはっきりと、幼いステラが映し出された。
ゲームのイメージ画像から受ける印象よりもずいぶん年下に見える。
ゲーム開始時は16歳ぐらいだったような‥‥‥
(まだ、子どもなんだ‥‥‥一体何歳なんだろう?小学生ぐらいなのは間違いないけど‥‥‥でも面影がある。ヒロインだもん、やっぱり、美形だわ。)
自分の顔のはずなのに、なぜか他人のように見える。
前世ではもっと平凡な顔立ちだったはず。
陶磁器のように白く滑らかな肌。
卵型の顔立ち。
大きな瞳と細く高い鼻梁。
絹のように滑らかな輝きを放つプラチナブロンドの髪。
一見すると人形のように整いすぎていて冷たい印象を与えかねない顔立ちなのに、少し厚めの聖女に似つかわしくないセクシーな唇がバランスよく収まり、顔立ちに愛嬌とアンバランスな魅力を添えていた。
でも何よりも印象的なのは、その瞳。
中心部の藍色が金色で縁取られた金環の瞳は、身体のどこかに金環を持つ聖女の中でも最高位であるとされていた、はず。
一晩中痛みと寒さに苦しめられ、疲れを残す今ですら、その瞳は明るく人を癒す星のように輝き、見る人を魅了する力を持っていた。
(本当に、こんな瞳があるんだ‥‥‥今まで、黒とか茶色の目しかいなかったからな‥‥‥)
ズキン!鋭い痛みが走る。
(痛い。前世を思い出すと頭痛がするのかな)
まるで見えない存在から警告を与えられているかのように、前世に思いを馳せるのが恐ろしい。
(前世だってことだけはわかるけど‥‥‥いや、記憶があるんだから、前世ってことで合ってるんだよね?)
ゆっくりと瞼を閉じる。
そう、ここはゲームの世界。
なぜか分からないけど、確信がある。
そして、そのゲームに夢中になっていたのは‥‥‥妹?
ああ、そうだ妹だ。
高校2年生の‥‥‥ズキン‥‥‥愛理!
愛理が大好きなゲームだって言ってたな。
聖女なヒロインがあちこちのイケメンを攻略するゲームだって聞いて、それってテンプレじゃんって笑って話を聞かなかった覚えがある。
こんなことになるなら、ちゃんと話を聞いておけばよかった。
でも、イラストは綺麗だなって思ったからスチルは時々見せてもらってたんだよね。
確か全年齢版とR18版があって、年齢制限があるから代わりに買ってきてくれって頼まれたんだっけ。
お金払うからお願いって。ネットではR18版じゃないと本当のストーリーがわからないってコメが多いからとか言ってた。
お母さんにバレたら殺されるからダメ、って言って断ったなあ。
ふくれっ面してたけど、まあ、社会人的にはねぇ?
ズキン
あ、そうだ前世では社会人だった‥‥‥
そう、入社して1年?5年?それとも10年?わからない‥‥‥
彼氏もいたし、仕事も楽しいし、充実していたような、気がする。
ああ、でもそれ以上は思い出せない。
あの日、そうだ愛理と一緒に買い物に出かけたんだ。
愛理が新しい服を買いたいから付き合って、って。
可愛い愛理。年の離れた私の妹。
物心ついたときからずっとお姉ちゃん子だった。
いつも「お姉ちゃん、お姉ちゃん」ってじゃれついてきてかわいかったんだよね。
大人になったら一緒にお酒を飲もうねって約束してたんだ。
髪が‥‥‥長かったなあ。くしゃっと笑う笑顔がめちゃめちゃ愛らしくて。
そんな子がR18ゲームに興味を持つようになったんだって思ったこともあったなあ。
そう、思い出した。
あの日、私の前を白い猫が通り過ぎた。足元をすっと通り抜けられたから、よろけて‥‥‥
そうだ!よろけた時にちょうどこっちに車が突っ込んでくるのが見えたんだ。
とっさに私を支えようとした愛理を突き飛ばしたら、反動で車に向かって頭から突っ込むような形になっちゃったんだ。
ズキン。
ああ、そうだ、思い出した。
あの音、痛み、匂い。
愛理の身を裂くような叫び声。
私は車に轢かれたんだ。
「車に轢かれたら異世界転生」なんてテンプレあるわけないでしょって笑い飛ばしてたけど、現実になると笑えない。
一瞬たりとも面白いとか、ワクワクするとか思えない。
私には私の生活があったはずなのに。
家族も恋人も仕事もみんななくなってしまった。
しかも、子どもに転生するって、それはそれで、不安になる。
誰もいない小屋の中に殴られて転がされている子どもが幸せだとはとても思えない。
転生したってことは、世界も違うんだよね‥‥‥?
言葉や生活習慣とか適応できるんだろうか。
でも、何よりも。
「愛理泣いてるだろうなぁ・・・」
今まで自分が努力して築き上げてきた社会生活や仕事が全部なくなってしまったことは残念に思う。
それ以上に、家族と二度と会えないだろうことがつらい。
目の前で私が車に轢かれる瞬間を目撃してしまっただろう愛理のことを考えると、心配と悲しみで胸が潰れそうになる。
耳に残る愛理の叫び声。
助けを求めて叶わない絶望に満ちた声だけが耳に残る。
でも、もう戻れないだろう。
私がここにいるってことは、もう死んでしまったってことなんだろうな。これからはここで生きていくしかないんだ‥‥‥
陽は昇り、辺りを燦々と照らし始めていた。
湖は光り輝き、森が目覚める。
新しい1日が始まる。
風が髪を撫で、世界が新しく生まれ変わったことを知らせてくれた。
(頑張ろう。ここで頑張って生きていこう)
そう、決めたんだ。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる