そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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1 聖女開眼

29 男爵夫人とのお茶

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「本日、お茶をご一緒できないか、と奥様からご招待されています」

朝食後、マーシャさんからの爆弾発言があった。


今の私は、朝食は相変わらずとうさまと一緒に食べてる。

とうさまは少しずつ、気持ちが流れるようになってきたみたい。最初に会った時の「虚無」は段々と薄れていき、時折は、「やさしさ」とか「思いやり」が感じられるようになってきた。
でも、その底には「意地」もありそう。
人の心は複雑で私にはわからないことも多いけど、このままゆっくりとでいいから、傷ついたとうさまの心が癒されていくといいな、と思う。


昼食はお弁当を持って行ってジョセフと一緒に食べたり、セオドアと喧嘩しながら食べたり、使用人さんたちの食事
に混じらせてもらったり、いろいろ。

そう、ジョセフとはあの湖であってからすっかり仲良くなって、最近では一緒に剣の稽古やトレーニングをしたりすることもあるんだよ?
ふふふ、またセオドアと差がついちゃうね?


夕食は家族の食事に一緒に参加するのがまだ気まずくて、一人で食べている。
とうさまとあの男爵夫人とセオドアと一緒だよ?
もしかして、おっかないデボラまでわきに控えてるんじゃないの?
カオスすぎる。

男爵夫人ともなんとなく気まずくて、相変わらず小声で挨拶する程度の付き合いしかない。

そんな中今日の突然のお誘いだ。
まあ、でもそろそろ、呼ばれたから行ってみるしかないのかなぁ。
気乗りしないけど。

「‥‥‥わかりました。お伺いすると、お答えしてください。

同じ家に住んでるんだもんね?お屋敷だから、あんまり顔合わさないけど。
頑張って会いに行ってみよう、そう決めた。


マーシャさんに綺麗に服と髪を整えてもらい、男爵夫人に招かれた彼女のデイルームに伺った。

マーシャさんがノックする。
「お招きにより、ステラお嬢様がお伺いしました」

そう告げると、あの恐ろしいデボラがドアを開けた。
思わず、気持ちは後ずさる。
悲鳴を上げて逃げたくなる自分をなんとか奮い立たせるしかない。
怖いけど、今日は引き摺り込まれたわけではない、なんとか、頑張らないと。
怯える私に気がついたのか、マーシャさんが優しく声をかけてくれた。

「お嬢様、ご気分でも‥‥‥?」

はっと我に返る。
そう、行ってみようと決めたのは私だ。頑張れるだけ頑張らないと。

「大丈夫!」ニコッと笑って見せた。

「失礼します」そう挨拶すると、部屋に入った。

ドアのそばにはまだデボラが立っている。
足が震えるが、耐えろ、私。

「ステラでございます。お招きいただきまして、ありがとうございます。」

今日はマーシャさんもそばにいてくれる。
そう、危険があればすぐに誰かを呼びに行ってくれるはず。
頑張れ、私。
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