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2 学園編
63 教会での奇跡
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カフェでリーラとジョゼフに別れを告げ、教会に向かった。
二人は私たちと離れることを心配してついてきてくれようとしたけど、正直教会に行ってどのくらい時間がかかるのかもわからないし、目的も曖昧だし断って帰ってもらうことにした。
この世界に来てから教会に足を踏み入れるのは初めてだった。
何故って。
なんとなく恐ろしかったから。
私のことを聖女認定されてしまったら、と思うと恐ろしくて近くによる気にすらならなかった。
奇跡が起きてしまったら、逃げられなくなってしまうのではないかと、恐ろしくて。
自分の人生を自分で選ぶことすらできず、「聖女として」生きることを強要されてしまうのではないか、と。
でも、この世界に音楽がないことを知ってしまい、しかも一部には自分に責任があるかもしれないということも知った。どうしても確かめたくて、今までの怖さがなんだったのだろうと思うほど、今の私には迷いがなくなっていた。
本当は、この時こそ、迷うべきだったんだ。後から考えると。
でも不思議なほどそういう気持ちがなかったんだ。
教会への道を勇気を出して一歩一歩進む。
なぜか、足元から教会に近づいていることが伝わってくる。
引き寄せられるようにして教会にどんどんと近づいていった。
教会の建物に入るため、石段を踏みしめるたび、音楽のようなものが耳の中で鳴り響いている。
身体が教会の中に引き寄せられるように前に進んでしまう。
見えない力に背中を押されるような、手を引っ張られているようなパワーを感じる。
そしてそのままの勢いで教会に一歩足を踏み入れたその瞬間のことだった。
私の足元が光り輝く。
歓喜の声が、歌が耳の中で鳴り響く。
実際に聞こえているものなのか、自分の頭の中だけなのかわからない。
そのまま引き寄せられるように祭壇に進むと、教会全体が金色の光を放ち始めた。
音が溢れる。
喜びの声。
歓迎の歌。
心地よい調べ。
感情が揺さぶれ、瞳が金色に揺らめいていることが自分でもわかった。
ああ、ここは聖女のいるべき場所。
聖女を歓迎する場所なのだ。
心地よい。
光は強さを増し、教会から外へと溢れ出て街全体を金色に染め上げた。
この瞬間、今まで聞こえていた音楽が空耳ではないこと、輝く光が幻ではないことがはっきりとわかった。
「奇跡が起こった」
「聖女様‥‥‥!!」
あちこちから声が聞こえてくる。
はっと我に返る。
(どうしよう‥‥‥こんなことになるなんて)
さっきまでの操られていたような高揚感はしゅんと音を立ててどこかに消えてしまっていた。
怖い。聖女だとバレてしまった。ここにうずくまってしまいたい。
「ステラ‥‥‥」動揺する私に気がついたのか、セオドアの気遣うような声が聞こえてくる。
「セオ‥‥‥どうしよう。こんなことになるとは思わなかった。司祭様にあって話を聞きたかっただけなの」
小さな声でセオドアに言うと、セオドアは困ったような顔をしていた。
「スー、ここは逃げられないよ。ここまで来たら。立ち向かうしかない」
祭壇から振り返ると、そこにはいつの間にか集まってきた人でびっしりと埋め尽くされていた。皆、額付いている。
何人いるかはわからないが、はるかに年上の頭の白い人たちまでが私に向かってまるで土下座するように頭を垂れていた。
「セオ‥‥」
私は動揺してセオの顔を見た。
セオも呆然としている。
どうしたらいいのかわからない。
だって、私はただの女の子にすぎない。前世の記憶を少し持っているだけのただの女の子で聖女には程遠い。一体何を求めてこんな私に頭を下げているの?
何も応えることができないのに、一体どうしたらいいの?
ガクガクと体の底から震えが走る。肩が、手が震えている。
私の唇も震えていることがわかる。
そのことがなお、私の動揺を誘ってしまう。
私たちが予想を越える事態に戸惑い、立ちすくんでいると、突然、教会の入り口がざわついた。
入り口から細身だが背の高い男の人が入ってくる。逆光のため、顔はよく見えない。
教会の中で額付く人たちの中、その人は私たちに向かってまっすぐに進む。
(ハル‥‥)心の中で名を呼ぶと彼は私をちらりと見た。
アイスブルーの瞳が煌めく。
そして自分のマントを脱ぐと私の頭からマントをすっぽりと被せた。
「皆の者。聖女様は未だ幼きゆえ、本日のことは口外せぬ様望んでおられる。分かったな」
ハルヴァートは威厳に満ちた冷たい声で教会にいる人々に言い放つと、私を抱き上げて教会から連れ出し、待たせておいた馬車に放り込んだ。
当然お目付役のセオも弾かれた様に走って追いつくと、止められる間も無く馬車に乗り込んだ。
馬車が動き出した途端、ハルヴァートが私とセオを叱りつけた。
「教会で騒ぎを起こすなど。この痴れ者どもが」
二人は私たちと離れることを心配してついてきてくれようとしたけど、正直教会に行ってどのくらい時間がかかるのかもわからないし、目的も曖昧だし断って帰ってもらうことにした。
この世界に来てから教会に足を踏み入れるのは初めてだった。
何故って。
なんとなく恐ろしかったから。
私のことを聖女認定されてしまったら、と思うと恐ろしくて近くによる気にすらならなかった。
奇跡が起きてしまったら、逃げられなくなってしまうのではないかと、恐ろしくて。
自分の人生を自分で選ぶことすらできず、「聖女として」生きることを強要されてしまうのではないか、と。
でも、この世界に音楽がないことを知ってしまい、しかも一部には自分に責任があるかもしれないということも知った。どうしても確かめたくて、今までの怖さがなんだったのだろうと思うほど、今の私には迷いがなくなっていた。
本当は、この時こそ、迷うべきだったんだ。後から考えると。
でも不思議なほどそういう気持ちがなかったんだ。
教会への道を勇気を出して一歩一歩進む。
なぜか、足元から教会に近づいていることが伝わってくる。
引き寄せられるようにして教会にどんどんと近づいていった。
教会の建物に入るため、石段を踏みしめるたび、音楽のようなものが耳の中で鳴り響いている。
身体が教会の中に引き寄せられるように前に進んでしまう。
見えない力に背中を押されるような、手を引っ張られているようなパワーを感じる。
そしてそのままの勢いで教会に一歩足を踏み入れたその瞬間のことだった。
私の足元が光り輝く。
歓喜の声が、歌が耳の中で鳴り響く。
実際に聞こえているものなのか、自分の頭の中だけなのかわからない。
そのまま引き寄せられるように祭壇に進むと、教会全体が金色の光を放ち始めた。
音が溢れる。
喜びの声。
歓迎の歌。
心地よい調べ。
感情が揺さぶれ、瞳が金色に揺らめいていることが自分でもわかった。
ああ、ここは聖女のいるべき場所。
聖女を歓迎する場所なのだ。
心地よい。
光は強さを増し、教会から外へと溢れ出て街全体を金色に染め上げた。
この瞬間、今まで聞こえていた音楽が空耳ではないこと、輝く光が幻ではないことがはっきりとわかった。
「奇跡が起こった」
「聖女様‥‥‥!!」
あちこちから声が聞こえてくる。
はっと我に返る。
(どうしよう‥‥‥こんなことになるなんて)
さっきまでの操られていたような高揚感はしゅんと音を立ててどこかに消えてしまっていた。
怖い。聖女だとバレてしまった。ここにうずくまってしまいたい。
「ステラ‥‥‥」動揺する私に気がついたのか、セオドアの気遣うような声が聞こえてくる。
「セオ‥‥‥どうしよう。こんなことになるとは思わなかった。司祭様にあって話を聞きたかっただけなの」
小さな声でセオドアに言うと、セオドアは困ったような顔をしていた。
「スー、ここは逃げられないよ。ここまで来たら。立ち向かうしかない」
祭壇から振り返ると、そこにはいつの間にか集まってきた人でびっしりと埋め尽くされていた。皆、額付いている。
何人いるかはわからないが、はるかに年上の頭の白い人たちまでが私に向かってまるで土下座するように頭を垂れていた。
「セオ‥‥」
私は動揺してセオの顔を見た。
セオも呆然としている。
どうしたらいいのかわからない。
だって、私はただの女の子にすぎない。前世の記憶を少し持っているだけのただの女の子で聖女には程遠い。一体何を求めてこんな私に頭を下げているの?
何も応えることができないのに、一体どうしたらいいの?
ガクガクと体の底から震えが走る。肩が、手が震えている。
私の唇も震えていることがわかる。
そのことがなお、私の動揺を誘ってしまう。
私たちが予想を越える事態に戸惑い、立ちすくんでいると、突然、教会の入り口がざわついた。
入り口から細身だが背の高い男の人が入ってくる。逆光のため、顔はよく見えない。
教会の中で額付く人たちの中、その人は私たちに向かってまっすぐに進む。
(ハル‥‥)心の中で名を呼ぶと彼は私をちらりと見た。
アイスブルーの瞳が煌めく。
そして自分のマントを脱ぐと私の頭からマントをすっぽりと被せた。
「皆の者。聖女様は未だ幼きゆえ、本日のことは口外せぬ様望んでおられる。分かったな」
ハルヴァートは威厳に満ちた冷たい声で教会にいる人々に言い放つと、私を抱き上げて教会から連れ出し、待たせておいた馬車に放り込んだ。
当然お目付役のセオも弾かれた様に走って追いつくと、止められる間も無く馬車に乗り込んだ。
馬車が動き出した途端、ハルヴァートが私とセオを叱りつけた。
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