そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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2 学園編

62 音楽のない世界?

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「なんかさあ。静かすぎない?」

私はふと気がつくと言った。
素敵なお店に素敵なスイーツとお茶、あちこちのテーブルから聞こえてくるたわいもない会話。
でも、何かが足りない。
そう、音楽が足りないんじゃない?

普通、どこのお店に行っても、音楽が流れてるよね?
お店の雰囲気を盛り上げたり、食欲をそそるような音楽とか?
座っているだけで気分が浮き立つような。
それともリラックスするような。

「何言ってるの?普通でしょ」
セオがこともなげに言う。

「音楽が足りないと思うんだけど‥‥‥?」
「音楽ぅ?」
セオが眉を寄せる。
「音楽というのは、教会で歌う、歌のことですか?」
リーラがキョトンとした顔をしている。
「なぜ、このお店と教会が関係があるんですか?」

え?なんで教会?私も分からないけど。

皆で顔を見合わせる。
話が通じていない?私おかしなこと言ってる?

「お店で音楽を流すのって普通のことじゃない‥‥‥?」
楽しくなるような音楽とか、リラックスするような音楽とか?

「普通どころか、異常じゃない?」

セオが私の目を見る。
「ステラ、大丈夫?お店で音楽を流すなんて話聞いたこともないよ。歌は教会にしかないものだよ?」
「えっ?」
ちょっと待って、どういうこと?
「だって、教会の人たちが屋敷で歌ったり踊ったりしてたよね?」
「あれは聖女様が顕現したことを祝う特別な歌だったんだよ。気が付いてなかったの?」
「それは気が付いていたけど、教会以外に歌がないってこと‥‥‥?」
「まあ、それが普通だね」
「‥‥‥!」

私が驚いてジョセフとリーラの顔を見ると、二人は同意するように頷いている。
まさか‥‥‥!?
「うれしい時とか、悲しい時とかに、音楽がないってこと?」
驚きすぎて、信じられない。

辛い時とか、悲しい時に歌に慰めてもらうこともない?
元気を出したい時に、歌に背中を押してもらうこともないってこと?

「音楽は聖女様を讃えるためのものでしょ?何を言ってるんだよ」
セオドアが呆れきった顔で私を見た。
「聖女様を讃えるためのもの‥‥‥!?それだけ?」
「音楽とは神聖なもの。それ以外の用途は教会で許していないよ。しかも聖女様の顕現を祝うための歌を大声で歌うことも禁止されたし、どこに音楽があるわけがあるのさ」

え…嘘でしょ?
まさか、私が禁止させたってこと?
私が嫌がったから?
ちょっと待ってよ。そんな意図じゃない。

別に私は音楽家じゃないよ?でも、日常に音楽がないってのは、どうなの?
そういえば、この世界に来てから音楽を楽しむって体験をしたことがなかった。
なんで、今まで思いつきさえしなかったんだろう?

私は思わず立ち上がった。

「教会に‥‥教会に連れて行って。今すぐ」

会わなくちゃ、教会の人に。そして確認しないと。なぜこの世界には歌が教会にしかないの?

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